ハイライト FY2017 2Q

藤田晋氏(以下、藤田):みなさま、お忙しいなか当社の第2四半期の決算説明会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。

当社は9月決算ですので、ちょうど3月末をもって上期が終わったという、今回の決算のご説明です。

この1-3月期ですけれども、全体を見てひと言でいえば「順調な四半期であった」と言えると思います。

当社の広告代理店事業がとくにそうなんですけれども、3月末が当社の広告主側の決算の時期でもありますので、3月の数字が伸びやすいということもあって、第2四半期は売上の増収率が上がりやすい傾向にあるのですが、過去最高の売上を記録しています。

営業利益に関しましては、今はAbemaTVの先行投資時期の真っ只中ではあるんですけれども、それを除いた既存事業だけで言えば、過去最高の数字を更新したという結果になっています。

続いてAbemaTVです。ちょうど今、1周年記念をやっておりますけれども、順調に拡大を続けております。これについては後ほど詳しくご説明させていただきます。

先ほど、広告主の決算期でもあると申し上げた広告事業に関しては、非常に好調な時期であったと言えると思います。

ゲーム事業ですが、既存の売上が堅調に推移したのに加えて、3月16日にリリースした、『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』というタイトルが新たにヒットしまして、完全に当社の主要タイトル入りをする規模の数字になりましたので、これがまた今後のゲーム事業の業績に効いてくると思います。

連結売上高

売上の推移のグラフはこちらのとおりです。今、先行投資時期であるとか、ゲーム事業によってボラティリティが生まれやすいと見られがちな時期ではありますが、当社は長い事業の継続性を重視して経営をしておりますので、長期に渡って、一貫して、業容の拡大を続けているというかたちになっています。

連結営業利益

営業利益に関しましては、先ほど「AbemaTVを除けば最高益である」と言いましたのは、既存事業の営業利益137億円とAbemaTVのマイナスがクオーターで58億円で、合わせると79億円の利益になっています。

販売管理費

販売管理費は、この期はトータルで見ると横ばいであったというかたちになっています。

連結役職員数

今はもう、役職員数が4,000を超えておりまして4,153名です。またこの4月に連結で300名の新入社員が入っておりますので、3クオーター以降はまた人数が増えるかたちになります。

損益計算書

PLで見ると、このようなかたちです。前回の決算説明会でも同じ話をしましたが、今、非常に最終利益が出づらい時期です。

AbemaTVの投資は100パーセント、当社は60パーセント出資の会社ではありますが、100パーセント取り込み、一方で、利益を出しているサイゲームスなどの子会社が少数(株主)持分法を引いて、純利益を出すという会計制度になっておりますので、今はちょっと当期純利益が出づらい時期ではあります。

前回の決算説明会で発表しましたけど、DOEを5パーセント以上に保つという目安の数字を持っておりますので、特損とか特益も踏まえて、純利益が足りない場合も、DOEは維持するという考え方をしております。

貸借対照表

バランスシートで見ると、こちらのようなかたちになっています。大きな変化はございません。

2017年度業績見通し

2017年度、9月まであと半年ですけれども、業績の見通しです。すでにご説明しておりますとおり、今期は先行投資の時期ということで、280億円という営業利益目標というか、見通しをすでに発表しております。

連結業績の進捗

それに対しての進捗です。だいたい50パーセントくらいの推移で、当期純利益の進捗が遅れています。これは先ほど申し上げた、(当基純利益が)出づらい体質に加えて、一部特別損失を計上しているためです。最終的にはなんとか達成したいと思っています。

事業別営業利益の進捗率

事業別で見ますと、進捗はだいたい50パーセント台ですので、ほぼ計画線と言っていいと思います。これは広告、ゲーム、メディアそれぞれの進捗です。今、半分を過ぎたところですから、ちょうど半分くらいの進捗であるということです。

インターネット広告事業 売上高(四半期)

個別の事業についてご説明させていただきます。まずインターネット広告事業です。直近でずっとそうなのですが、好調と言っていいような推移をしております。当然、過去最高で第2クオーターの売上が525億円です。

インターネット広告事業 市場比較

これは2012年を100とした場合の成長率です。この4〜5年、マーケットの成長を大きく上回る成長をやってきております。この理由というのは、完全にスマートフォン広告の成長を捉えたからです。

インターネット広告事業 スマートフォン広告

当社のスマートフォン広告の推移です。見ていただくとわかりますように、一番左端の数字で言うと、ほとんどゼロの状態から、この5〜6年で事業の大半を占めるまで、急拡大をさせたということが、当社の強みになっています。

インターネット広告事業 強化分野(インフィード広告)

さらに2013年から4年くらいの推移です。インフィード広告がとくに大きく伸びてきています。

インターネット広告事業 強化分野(動画広告)

このクオーターは動画(広告)もグンと伸びまして、これはYouTubeやFacebookに入っている広告が大半を占めています。

今後はAbemaTVの売上も強化していくつもりですので、そういったものも含んで、まだ成長が期待できる分野であると思います。まだ始まったばかりという感じです。

インターネット広告事業 営業利益(四半期)

インターネット広告事業の営業利益の推移です。代理店手数料が決まっていて、なかなか儲かりづらい事業であると。長年に渡って、同じような認識でそのようにご説明していたのですが、なんだかんだ言って、クオーターで50億円規模の利益を出す事業体になりましたので、しっかりとした稼ぎ頭になったと言っていいと思います。

営業利益率については、ずっと聞かれるのですが、中長期に渡って見てわかるとおり、だいたい10パーセント前後をずっとウロウロしています。だいたいこのくらいの水準だと思っていただいたほうがいいと思います。

ゲーム事業 売上高(四半期)

続きまして、ゲーム事業です。この事業は、ゲームのイメージとは裏腹に、1個のタイトルが当たるとドーンと数字が上がって、飽きられるとドーンと下がるというものではなくて、1個のタイトルが当たると、運用によってわりと長く成長し、衰退し始めてもけっこう長く稼げる事業だと思います。

それぞれのグラフの色は、過去の(ゲームタイトルの)公開年度ですが、直近のクォーターで見ると、過去に出したものはだいたい横ばいなのですが、2017年が始まってまだ3ヵ月ですけれども、今期に始まったものが上に乗っかってきています。

先ほども言いましたけど、3月16日に(公開した)『バンドリ!』が大きなヒットになりまして、ここが新たに乗ってきましたので、また新たな成長フェーズに入れそうな手ごたえを得ています。

ゲーム事業 営業利益(四半期)

営業利益の推移はこちらのとおりです。これは広告宣伝費や一部のボーナス的なものも含めた人件費によって多少動くものですが、このような推移になっています。

ゲーム事業 セールスランキング

セールスランキングです。主力タイトルはこのようなものがありましたが、これに加えて3月にリリースした『バンドリ!』が新たに入ったというかたちになります。

決算は半月しか取り込んでいませんが、そこからもう1ヵ月以上経っておりますので、ちゃんとしたヒットタイトルになったという手ごたえはもう得ております。

こちらは事前に「Abema TV」でアニメを先行配信して、その後リリースをしたゲームです。事前登録段階から手ごたえをつかんでいたのですが、リリースしてしっかりとヒットしたというかたちになります。

すでに出したもので『BlackRoseSuspects』『茜さすセカイでキミと詠う』というタイトルもありますが、こちらも大ヒットとまではいかないのですが、サードクオーター以降、手堅いものになりそうな感じです。今後は楽しみなタイトルが立て続けに出ますので、しっかりと当てていきたいと思っています。

それ以外にも『グランブルーファンタジー』のアニメを「AbemaTV」で先行で流させてもらいましたが、大変な人気コンテンツになっていたり、『神撃のバハムート』『夢王国と眠れる100人の王子様』といったアニメ展開もしていくことで、ヒットしたコンテンツをオリジナルIPとして育てるという動きもやり始めました。

メディア事業 売上高(四半期)

続いてメディア事業です。メディア事業は今、「AbemaTV」の投資時期ということで、社内では「耐えいていればいい」というかたちで言ってはいたんですけれども。

アメーバブログが反転してまた伸びてきたことや、新たにマッチングアプリの領域が当社で育ってきたというようなことがありますので、新しい収益源としてまた伸びてきたというかたちになります。

マッチングアプリの数字は公表していませんが、月で2〜3億円ぐらいの規模になってきておりまして、今後育っていく分野ではないかなと思っています。

ブログの運用改善によって「Amebaアプリ」全体の数字が復調基調というか、しばらく横ばいがずっと続いていたんですけども、リニューアルして、改善したことによってまた伸び始めてきております。

先ほど2〜3億円規模になったと言った、マッチングアプリの(売上の)大半を占めているのがこの『タップル誕生』というサービスです。

これはちょっと数字の表記が間違っているのですが、相手のことを「気に入った」と意思表示したのが4,086万組あったということで、こういったところで晩婚化・少子化に貢献していきたいと思っています。

メディア事業 AbemaTV

続いて「AbemaTV」です。(2016年の)4月11日に始めましたので、今ちょうど1周年ということで、1ヶ月がかりで1周年記念特番をやっておりまして、今週と来週のゴールデンウィークで一番の山場を迎えるという感じです。

まず「AbemaTV」ですが、1年間やってきて1,600万ダウンロードを突破しました。

去年、アプリを表彰する賞を軒並み受賞しまして、アプリの賞はいくつもありますが、やはりその中でも大賞を獲れる、優秀賞ではなく最優秀賞というのは極めて貴重であると思いますが、ほとんどその最優秀賞を取ったというアプリになっています。

僕ももう会う人会う人に「AbemaTV、調子はどう?」と言われて、要はみんな「よくわからないから社長に聞いてみよう」という感じで聞いてくるんだと思いますが、順調に伸びており、その後、右肩上がりにしっかりと地に足をつけているような伸び方をしていると思っています。

今マンスリーアクティブユーザー(MAU)は約750万。4月は800万を超えてくると思います。年末年始はちょっと極端に伸びるというのと、大規模プロモ―ションをやっていたということもあるのですが、そこの数字に地力をつけて戻ってきたというか、達しつつあるという感じだと思います。

ウィークリーアクティブユーザー(WAU)は400万台ということで、これも4月にまた伸びると思います。「ウィークリーアクティブユーザーが1,000万人になったら、マスメディアになってマネタイズをしたい」と言っていますけれども。

これはわりと僕の中で感覚値で言っていた数字なんですが、なんとなく感覚的にも1,000万という数字はあながち間違っていないなという感触を得ています。

ある日突然なにかが起きて、一気に1,000万人いくことはないのですが、そんな長い年月は見ていませんが、しっかり運用して積み上げていけば着実に前年比何割アップ……何割アップ、というかたちで行き着ける数字だという手ごたえを得ています。

ただ外部の指標で、各動画サービスのアクティブユーザー数を出してもらうと、もう「AbemaTV」は出してすぐ、そういったアプリの中でユニークユーザーが1位になってしまいます。

「無料なので当たり前」ということは言えますが、そういう意味でいうと、市場自体を自分たちでフロンティアのように開拓しているようなものです。もともと(市場が)あったわけではないので。

そういう意味では、1日で一気になにかの市場を奪うというわけではありませんが、着実に開拓していきたいと考えています。

メディア事業 AbemaTV(利用者の年齢・利用者の性別)

これは利用者数と利用者の属性データです。前回とほとんど変わっていませんが、だいたい10代・20代・30代前半で、「AbemaTV」のユーザーは7割を占めているので、大半は若い人が使っているサービスだと思っていただいていいと思います。

ずっと「改善したい」と申し上げている、女性比率が低い点ですが、まだほとんど改善が見られませんで、なんとか男女半々にもっていきたいと考えています。

男性のほうが新しいものをすぐ試してくれるので、取り込みやすいところがあるんですけども、女性も1回使い始めると長く使ってくれるものだと思っていますので、ここはしっかりと腰を据えて取り組みたいと思っています。

メディア事業 AbemaTV(トピックス)

この3ヵ月と4月、「AbemaTV」にどういったことがあったかというものですが、1月は元旦に広告を入れたり、TVCMをバンバンやっていましたので、とくに年末年始がびっくりするぐらい伸びました。

それ以降はしばらく落ち着くだろうと申し上げましたけれども、2月、3月に粛々と新しいチャンネルを開設したり、番組を企画しながらやっておりまして、4月に入って一周年記念でまた大きく底上げを図っているというかたちです。

縦型視聴「Abemaビデオ」は、アンドロイド版がオープンして、いよいよ今日から本格的にスタートということなのですが、この縦型視聴「Abemaビデオ」で底上げを図っていきたいと思っています。

縦型に関して言えば、リリースしてもう数週間経ちましたけれども、我々の見ている数字では、全体のユーザーの視聴数視聴時間などが15パーセントぐらい底上げされたような感覚を得ています。

僕も「縦型にしてくれてありがとうございます」というコメントをすごくたくさんもらったのですが、最初に横型で不便にしたことでユーザーのみなさんから大変ありがたがられたのですが、我々としては考えがあってこうしていたことなので、結果的にリリースしてよかったと思います。

「Abemaビデオ」に関しては今日リリースしたもので本格スタートで、Abema会員になるとビデオは見放題で、だいたい全体の5分の1程度(のコンテンツを)無料で開放しているようなサービスで、今後一番力を入れていくものの1つになります。

「Abemaビデオ」の構成はこのようになっています。無料枠が全体の5分の1、有料枠が5分の4になっています。

先ほど「女性の獲得が課題である」と申し上げましたが『オオカミくんには騙されない』というタイトルは、我々の中ではかなりヒットしまして、若い女性を中心に大変話題になった当社のオリジナル作品です。圧倒的に年齢が若い女性が多いと。リニア視聴もするし、ビデオも見るという構造になっています。

4月から新編成でAbemaの9時台に主力コンテンツをよせておりまして、9時にAbemaTVを見るとだいたいおもしろいものがやっているという視聴習慣をつけようという試みでやっています。これを始めて、9時台の数字がグンと上がりましたので成果が見え始めているのではないかと思います。

あとはニュースですでに発表していますが、『報道ステーション』の放送が始まりました。もともと1年前にも「報道ステーションはできないんですか?」と無邪気に聞いてみたら、みんなにびっくりされたのですが、やはりこのようなニュース番組の中でも、非常にハイクオリティで作っているものをネットサービスに乗せることが1年前は信じられなかったのですが、1年やってきて、それができるメディアであると認められたのは大きな進化だと思います。

それと同時に「AbemaTV」のキャスター採用も開始しております。1年やってきて、この決算説明会のご質問の中でも競合の存在について聞かれましたが、結果からいうと、競合らしき競合は出てこないし、出る気配もない。

メディア事業 競合優位性

この事業で厳しいのは、コンテンツの獲得争いになって、コストが見えないほどそこに突っ込まなければいけなくなるというのが一番きついのですが、それはどうやらなさそうだと。

そういう意味でいうと、先ほど「フロンティアとして開拓していく」と言いましたけれども、比較的マイペースでやれる状況になったのではないかなと認識しています。

競合がなかなかできない理由として、まず日本国内ではテレビのコンテンツの制作能力、編成調達力というのは唯一無二みたいなもので、とくにニュース制作に関してはテレビ局以外はほぼできないし、番組制作においても同レベルの制作ができる会社はまず存在しないと思いますが、そのレベルのクオリティで調達をしなければいけない。

調達に関しても、主力のスポーツやドラマ、映画にしても競技にしても、基本的には全部テレビ局に集まっている構造になりますが、テレビ局がやらなければいけないというのがまず1つあるのと、それと同時にサービスそのもののユーザービリティ、コンテンツクオリティ、インターフェイスなどを卓越したもので作らなければいけない。するとこれは、ネット企業じゃないとできない。

この両方ができなければいけなくて、なおかつ僕がここで「200億円赤字出します」とか言っているので相当赤字が出る。かつ世界に成功した試しがないので、これを耐えうる、みんなを説得しながら進められる状況になければいけないので、結果からいうと同じことはできないと思っています。

これは我々にとって非常に大きなことで、とにかく時間をかけてもしっかりとこのビジネスモデルを成立させていきたいと。

そういう意味では、今後は自分たちとの闘いだと思っていますので、競争相手というよりはこのビジネスモデルをしっかりと腰を据えて成立させていこうと思っています。

「マスメディアを目指す」と最初から言っておりますけれども、その基準は1,000万WAUと言っているので、今は400万ぐらいですけど、粛々と「何パーセント増! 何パーセント増!」と目指していこうと思っています。

メディア事業 AbemaTVロードマップ

とくにテレビを見なくなったと言われる若い層が「AbemaTV」を見ておりますので、ひとたび「AbemaTV」に若い人が集まっているということになると、有力なコンテンツが当然ここに集まってくると。

コンテンツが「AbemaTV」にあることで、さらにそういった若い層が見にくるというポジティブスパイラルに乗せていけると思っておりますので、それに備えてしっかりとしたビジネスモデルも作っていこうということで、今、広告と課金ベースで組み立てていますけど、それが波及してシナジー効果を生んだ場合の収益源、テレビ局でいう放送外収入というようなものかもしれませんが、そういったものの準備も着手し始めたという段階です。

総括

改めまして、サイバーエンジェント全体を総括します。

中長期的な柱として「AbemaTV」を据えていこうと思っていますので、今はそれを育てる時期ということで、先行投資をさせてもらっています。

広告事業に関しては非常に好調な時期が続いておりますので、今後も市場成長を上回る増収率を達成していきたいと思います。

ゲーム事業に関しては、なかなかヒットするかしないか見えない事業ではありますが『バンドリ!』のヒットが出たことでひとまずホッとしたという状況の中で、また新たなヒットを目指してやっていくのと、既存タイトルをしっかり運用していこうと考えています。

メディアに投資して、スマートフォンに投資してやってきましたけど、今は動画事業に投資をしている時期ですので、ここをテコに十分な投資をして、さらなる大きな成長を遂げていきたいと考えています。

これは前回初めてお話した資料と一緒なのですが、経営指標としてDOE5パーセント以上を目安にします。

なんらかの理由で最終利益が毀損していたり、一時的な先行投資の時期によって業績を意図的に悪化させたときでも、中長期で株を持っておいてほしいというメッセージで、DOEが下がってきたら自社株買いなり、配当を増やすなりといった対応をしていきたいと考えています。以上です。どうもありがとうございました。