DeNA小林「チェレンジした、結果いろいろ失敗した」

小野:GREEの荒木さんに続きまして、DeNAのコバケンさん。ちょっと事前の打ち合わせが全くできなかったんですけども(笑)、どのようなスライド用意されてるのかわからないんですが。

小林賢治(以下、小林):ものすごくノリが違うので……。

小野:はい、是非じゃあその違うノリのものを。

小林:どうかご容赦くださいという感じですけど。あ、ちょっと(スライドが)前に進んじゃいましたね。

(会場笑)

小野:かなり違いますね(笑)。

小林:これはうちの会社のロゴを変えたわけじゃないんですけど、最近やたらうちの会社は左脳的すぎるって言われるので、そんな左脳偏屈集団ばかりではないってことを言いたかったってだけです。

(会場笑)

小野:いきなり攻めますね(笑)。

小林:ご心配をおかけしております。特にアナリストの方々に。前回もそうだったんですけど、僕ほとんどアナリストに質問されたっていうIRの延長みたいな感じで、今日もそうなるだろうなって思って来ました。前回のIVSでたくさん(タイトルを)作りますと、都合80本くらいですか。ま、こんな感じですね。ガンガン行こうぜと。で、結果、ショートしてしまったわけですが、一周目の感覚は、まさにこのスライドのように、地雷原を歩いているような感じでした。

小野:それ逃げてるわけではなくて、怖いところを歩いているというそういう絵ですね?

小林:アフガニスタンを裸足で歩くような感じですね。一定の手応えはあったんですけど。実際IRでも申し上げたんですけど、大ヒットの創出にはまだ繋がっていないのは確かです。「で、結局どうだったんですか」という質問は当然、そりゃみなさん聞きたいところだとおもいます。何のジャンルが当たるかというのが読めないので、幅広いジャンルでチャレンジした、その結果、いろいろ失敗もしました。

ただ一方で、先程の荒木さんのトライの話にも通ずるところがあるなと思ったんですけど、失敗がまったく生きない業界でもない気がして。確実に前進している感じっていうのは実は持ってます。だから次にどう進んでいくか、いかに地雷原を避けながら進めるかっていうのが大事だなと思ってます。

特にたくさんのゲームを作ってる会社さんからよく耳にすることなんですけど、一周回した経験を持ってるメンバーがどれだけいるかっていうのが結構競争力の差に繋がる印象はあります。これはプロデューサーにしろエンジニアにしろデザイナーにしろみんなそうですね。共通してあると思うんです。ジャンルはいろいろチャレンジするんですけど、こういう面は積み上げとかないとやばいと。

例えば、イニシャルのアセットのダウンロード。どういうタイミングでどういうふうにやらせるかとか、グロースハックだったらどういうふうにやるかっていうのは、いきなり出たとこ勝負ではダメで、何回も経験した人のほうが確実にうまくできるっていう感覚はあります。

あと、ファーストパーティだけじゃなくてセカンド、サード、あと1.5Pと読んでいるようなものもあるんですけど、共同開発の手法の中でDeNAが果たせる役割っていうのは確実にあるなっていうの実感としてあります。そういう意味で、いろんなパターンで国内、海外、セカンド、サードなど、いろんな会社さんと組んでいく中で、うちが付加価値を出せる領域が見えてきました。このへんをうちがどうレバレッジしていくかっていうのが一つの大きな課題だなと。

例えばレベルデザインとかが好例ですね。写真は南場智子で、彼女が別にマスだとは全く思ってないんですけどイメージとして捉えてもらえばと思うんですけど、僕も別にインテリではないんですけど一応置いときます。

(会場笑)

小野:これ刺激的なスライドですね(笑)。

モバイルゲームは“なんとなくできる”部分が重要

小林:これはパズ億というパズルゲームなんですけど、実はこのパズルゲームを作るときに、ああなるほどな、こんなに差が出るんだっていうのがあったんです。たとえば、多くのユーザーが詰まる面っていうのは当然あるんですね。ただ、みんながスタックするけどそれが課金に跳ね返る面、すなわちコンティニューしてでもやろうっていう面と、見事にそこでドロップするっていうのが分かれるのがあって、それってどういうUX(User Experience)の差なのかっていうのを考えたときに、実は頭を使わせすぎると負担を与えすぎてしまう、というのがみえてきました。

気楽なエンタメなので、ある程度“なんとなく”できるほうがいいんです。実際、「キャンディークラッシュ」ってなんとなくできる面が多いです。ぶっちゃけそこまで負荷をかけてないんです。このなんとなく感っていう面と、むっちゃくちゃ考えないとできない面って最初はあんまりわかんないですよね。これをどうやって調整してくかみたいなとこは、やっていくうちでわかってきたことですね。

これはあくまでも一つの例ですけども。こうやってずっと経験を共有して進化していくと、よりすごいものが作れるかもしれない。それによってよりいろいろな整備されていくもの、貯まっていくものっていうのはあって、技術面で言えば開発ツールとか共通ライブラリっていうのは当然貯まっていくものですし、マーケティングもやはりかなり経験が左右するなという気がしています。あとゲームデザインも先程申し上げたように、経験が必ず生きてくるところだなと。そうやって経験やノウハウを蓄積することで、より多くのものがチャレンジしやすくなるかもしれない。

小野:大ヒットになるんですか?

小林:いいご質問ですね。まあ量だけではダメなわけです。

小野:そうですよね、良かったです(笑)。いい振りでした。

小林:このへんすべて社内のプレゼン資料から全部おもろいなと思ってパクって、もとい、引用してきたんですけれども、ま、量だけじゃいかんと。なので質に徹底的にこだわらなきゃいけないですけれども、間違えるとこういうふうになるので。

(会場笑)

小野:やってはいけないことやっちゃうわけですね。

小林:ユーザーが求めてるものを作らなきゃいけないというところですね。じゃあDeNAがこだわるクオリティってなんですかというとことなんですけども、正直に申し上げると、例えばカプコンさんとかスクエニさんのようにずーっとコンソールでゲームを作られた会社に勝てない面って確実にあって、何をどうやっても追い付かない面っていうのは当然存在します。

すみません、これ車の中で描いたんですっごい雑な絵で申し訳ないんですけど、何を言いたかったかというと、将来端末自体の性能が上がりますと、表現力ってのは確実に上がるんですね。そして、表現力が刺さるジャンルとか領域って絶対あって、そういったものは例えばPS3、4とか発展する中で絶対にウケてきたジャンル、シューターだったりとかレーシングゲームとかそういうジャンルですが、それはスマホにも一定割合でてくると思うんですね。

モンハン2のダウンロードの多さとか直近のやつ見てて、やっぱりああいうのに反応する層っていうのは絶対いて、そこはある意味今後またどんどん立ち上がっていくジャンルだと思うんですけど、それと両立する形で、これはゼロサムじゃなくて僕は両立すると思うんですけど、モバイルのTPOにマッチしたエンターテイメントっていうのは必ずあると強く思っています。このTPOって何ですかっていうとラフに書くとこんな内容(フィードバックが非常に細切れである、など)なんですけど。

例としていうならば、「やってるときに話しかけられるとできなくなるゲームじゃダメ」というようなものです。「今集中してんだから話しかけんなよ」みたいな感じのゲームではなくて、いつでものほほんとやってて、話しかけられても「お、何?」って手を止めればいいみたいなゲームですね。。

1時間かけて次の町に行って、ていうんような長いプレイサイクルじゃなくて、パズドラを例にとると、4秒おきくらいにフィードバックを作る、っていうような細切れ感ですね。相手が攻めてくるものに対して対応するのか、自分から攻めるのかっていうのはバッターかピッチャーかというような立場の差ともいえるわけですけど、そのどっちの立場なのか、というのも気軽さに大きく関わると感じてます。次に、入力系統の単一化ですが、たとえばテトリスって非常にスマホに向いていないゲームで、2つの操作、移動とローテーションを同時にやらなきゃいけないんですけど、それってスマホだと途端に集中力を要してしまう難儀なゲームになってしまう。でも3マッチ型のパズルって1個しか動かさないので一気に楽になる。

こういった要素がここで網羅的にあげきれているわけじゃないですけど、こういったことを意識してやっていく領域で、我々がずーっとブラウザ時代からやってきたとこに繋がるところはいっぱいあると感じています。

そういう意味ではDeNAはモバイル最適エンターテイメントっていうのを新しく作っていきたいなというふうに思っていて、それはリッチになっていくものとはまた別の新しいジャンルのエンターテイメントを作っていきたいなというふうに思ってます。今日は個別のゲームの画面を一個一個出さないんですけど、クオリティにこだわっていろいろ仕込んでますというところをやっていて、そのモバイルにバッチリ合ってるよっていうのがどういうふうになるかは今後の成果を見てください。そういう意味では実際やるしかないという状況にきてるので背水の陣でやっておりますということであります。以上です。

小野:はい、ありがとうございました。

(会場拍手)

GREEとDeNAが「ブレイブフロンティア」を作れなかった理由

小野:改めまして、テーマとしては「モバイルゲーム市場の今後」なんですけども、各社いろんなテーマで話をしてもらって、いくつか僕のほうで用意してきたディスカッションのテーマがあって、まず1.プロダクトの開発戦略どうするべきか、まあ各社いろいろ話が出ましたし、あとは2.パブリッシングどうすんだろうとか、3.海外の戦略どうすんだみたいないくつかあったんですが、共通して出てきたのは開発、どういうノウハウを貯めてそれが活きるケースもあれば、地雷を踏まないようにするっていう過去の失敗をもとに次に進むっていう戦略もあれば、あと具体的な事例として結構おもしろかったのはグリーの荒木さんのほうでパッケージのゲームの人とWEBゲームの人の組み合わせがうまくいったとか、あとは成功してるゲームの写経ですね。

あれすごいおもしろい事例だなと思ったんですけども、そういうふうに各社いろいろと老舗が苦しんでる中で一人絶好調のエイリムさんとしてはこうやったらうまくいくんじゃないかと、一発目でいきなりかなり大ヒット飛ばしてるわけなんですが、なぜ生まれたのかですとか、比較して何が違うのかなっていうあたりを俯瞰視するとどうでしょうね?

高橋:そうですね、エイリムって会社は一本目なんですけど、僕ゲーム作りだしてから今12~13年で、過去はクソゲーの死屍累々の上に立ってるんで、いきなり一本目で当たったわけじゃないんですね。いろいろ先程の開発のノウハウとかも含めて、フィーチャーフォンでもずっとモバイルのゲーム作ってたんですけど、そこで作っててモバイルで遊ぶためにはこういう感じにしないと、多分遊びづらいというようなとことか、そういうところはずーっと培ってきたノウハウの上でブレイブフロンティアも設計してるところは結構ありますね。

小野:先程のコバケンさんのグラフから見ると、ドット絵だったりだとかそういう意味では今の流れとはかなり違う路線なんだけれども結果が出ているわけですよね? ここって逆にコバケンさんとか辻本さんとか荒木さんから見て、なぜブレイブフロンティアは、さっきなぜできなかったのかっていう話ありましたけれども、なぜなんでしょうかね? どうですか、思うところとか。どうぞどなたでも。なぜカプコンさんではブレイブフロンティア的なものが出なかったのかっていう。

荒木:僕は自分の会社についてしか言えませんが、やっぱり典型的な教科書通りのイノベーションジレンマというものはあるなと思っています。WEBゲームという市場は非常に大きくて、自分たちが優位なポジションにいてしかも利益率が高いところにいる中で、新しいプラットフォームや新しいテクノロジーに取り組む本気度、投資規模というところが足りてなかったと感じています。そこのアンラーニングに時間がかかったところはあります。ひと通りアンラーニングしきって、ネイティブチームとしては背水の陣という状況になっているので、そろそろヒットを出したいなと。

小野:やっぱりシンプルにWEBからネイティブへのシフトが、WEBでの成功があったがゆえに遅れたという?

荒木:シフトしたタイミングはそこまで遅くなかったと思うのですが、徹底しきれていなかったと思います。

小野:DeNAさん、カプコンさんはいかがですか?

小林:何て言うんでしょうね、例えば当たるゲームと当たらないゲームって比較してみたときに、例えばパズドラにフィーチャーされた、影響を受けたゲームってすごいいっぱいあると思うんですけど、どこにも行かないやつとすごい当たるものがあります。で、機能面で仮に比較をしてみるとすると、ほぼ一緒なんです。メタゲームもほぼ一緒だと思います。強化の仕組みとかキャラの獲得とかほとんど一緒だと思うんです。

ただ、何か違うんですよね。この何かってノリとかテンポ感とか引っかかりとかフィードバックの早さ、さっき言ったようなかなり定性的な感覚の部分が多くて、そういう部分でやっぱり詰めがしっかりしてたと思うんですよ、ブレイブフロンティアは。逆に言うと我々は甘かったと思います。それをもっとちゃんとやっていくんだっていう覚悟が足りなかったと思うんですね。まさにそこって経験値による部分もあると思っていて、まさにその部分を一番積み上げているっていうふうに感じるんですよ。WEBのころなら機能群で書けばよくて、そこのノリのブレっていうのが少ないんですよね。

例えばアイコンどこ置くってそんなに置けるところないし、ページの構成とかもそんなに差異が出ないんですけど、ネイティブだとこういう機能だっていうときにそれをどう表現しますかっていうのにすごい差があって、そのノリとかテンポ感といういろんなものの変数がある中で、「このへんじゃない?」っていうのをどうやってこだわって出すかっていう詰めっていうのがやっぱり素晴らしかったし、そこをやっていかないといけないなって感じています。

小野:先程まさにカプコンさんは、今のソーシャルゲーム以降っていうのは作ってからでもいじれるじゃないですか。もう完パケ出しちゃったら終わりっていう世界の中で、もちろんいろんな失敗作もあるのかもしれないですけども、かなりの数のヒット作を継続して出されてきた中では、今の話を聞いてどう思われますか?

カプコン「本来はソーシャル系の継続ビジネスが望ましい」

辻本:当社の場合、モバイルでもいわゆる1ダウンロードいくらの売切り型の時代には、そこそこヒットしたものもありましたが、フリートゥープレイが主流になって、有名なIPを使用してグラフィックもしっかり作り込んでいることもあり、ダウンロードは好調ですが、やはり課題は課金部分です。

当社が開発してきたコンシューマゲームはいわゆるストーリーに終わりがあるゲームです。開発側も終わりがあるからゲームが作れる、2年間頑張れば終わると考えてきた。でも、ソーシャル系のDeNAさんやグリーさんが作られたフリートゥープレイのゲームや、高橋さんが開発されるゲームは、いかにビジネスを継続するかというネット出身者の発想で、ビジネスモデルだけでなく、発想や考え方そのものが違っています。

本来はそれが望ましいことだと思います。ユーザーの方々は継続して遊びたいから、「モンスターハンター」も「1」から「4」まで購入いただいています。一方、タイトルに携わる開発や販売、マーケティング部門は、1つのタイトルが終了したら次に進むということに慣れてしまい、発想が転換できていません。

7年ほど前に当社でもPCオンラインゲーム「モンスターハンターフロンティアオンライン」のサービスを開始しました。ここに運営ノウハウがあるので、ここから巻き返そうと考えています。本来、経営側としては、2年間かけて何十億円かけて開発して、プロモーションしてヒットしたのだから、継続してビジネスができることが望ましい。前回のIVSで申し上げた通り、コンソールの専用機でもネットワークを活用し、継続的なオンライン課金が可能なビジネスモデルになっていますので、経営者としては継続ビジネスへの対応を会社としてしなければなりませんし、ユーザーの方々のことを考えても各部門にも新たな発想で取り組むように意識の変化を促しています。

とはいえ、継続ビジネスだけに偏るのも経営上のリスクになるので、コンソールもしっかり対応していきます。コンソールで得た経営資源をオンラインにも配分しながら、社内の発想を切り替えていく。私は経営という立場から、マルチプラットフォームは絶対推進すると社員に言っています。

ヒットするゲームは誰か1人が引っ張って作られる

小野:ありがとうございます。開発適応度はたくさん出てきてるんですけども、先程グリーさんの中であったような写経だとか、各社何かその、確かにヒットを作るのは難しいとはいえ、ヒットを作るためにこういった取り組みをしてる、何かユニークな取り組み的なものを、開示できる範囲で紹介していただければと思うんですけれども、高橋さん何か自社ならではの工夫みたいなもの、ありますでしょうか?

高橋:そうですね、うち一個しか作ってないんでアレなんですけど、ブレイブフロンティアっていうコンテンツに関しては一つ決めていたことがありまして、それは今CEOの早貸がこだわりを持ってゲームを作るタイプなので、例えば運用のシーンでデータを追加してキャラクターを追加していくシーンも未だに早貸が全部見てます。

もう11カ月くらい経つんで何百個かキャラクターを追加してるんですけど、そのキャラクターのドットの動き一つ取っても彼が全部見ているし、そういうところで開発の体制というよりは、プロジェクト作るときに「これ誰が作ってんだっけ?」っていうのって結構ユーザーさんに伝わるなって思っていて、ゲームがヒットしちゃうと突然「俺が作った」みたいな人が出てくるんですけど(笑)、作る前とか作る途中とかっていうのも実は誰がどういう思いでどういうことをやりたくて作ってるのかっていうのはやっぱり一番大事だと思っていて、その人が最終ビジョンが見えている。

ビジョンが見えている人って、極論ですけど僕は一つのゲームに一人しかいらないと思っていて、いろんな人が合議制でゲーム作るってちょっと、今まであんまりそれでうまくいったの見たことないんですね。誰か一人がガンガン引っ張っていって、これをこうやって作るんだって言って、最後のところではともすればただ選択肢でしかなくて正解じゃなくて、「どっち選ぶの? A? B? あ、Aが好き」だからAみたいなことでもそれは良くて、その積み重ねが最後多分色気になって出てくるんだと思うんですね。

そういうところではうちは終始一貫して一人の人間がクオリティコントロールをするってやってる結果がユーザーさんには見えて出てるのかなと思いますね。そういう特徴があるかなと。それが良いことかどうかはまた異論があるとは思いますが。

小野:これはリーダーを変えない、継続ずっと続ける。

高橋:そうですね、それがボトルネックだとなかなかコンテンツが進まないのかもしれないですけど。まあ良し悪しはあると思います。

「合議でゲームは作れない」に皆同意

小野:コバケンさんどうですか、今の話。

小林:いま本当にそうだなと感じたんですが、「合議ではゲームは作れない」のはまったくその通りだなと思っていて、今までと比較して体制を含めていろいろ変えたのはまず、非常にフラットにしてゲームについて判断する人っていうのを非常に絞った、ということなんですね。これは荒木さんの話とも通ずるかもしれないんですけど、その人ができるだけ多くの経験を積んで、経験っていうのはユーザーにどう反応されるかっていう感覚をチューンしていくイメージですけど、そういう形でユーザーに問うことをたくさん経験したほうが良いとおもっています。

自分の感覚が合ってんのかズレてんのか、ものすごく厳しく言うとズレてんなら変わったほうがいいし、合ってるんならその人がバンバンジャッジすればいいし、っていうところをたくさん出す中で見極めていって、感覚のあっている人をいっぱい作ってきました。

その上で開発プロセスのもう少し具体的なところで言うと、これは多分今後の結構大きなトレンドになるんじゃないかなと思うのが、キングが上場するときにすごい喧伝したやり方で、ものすごいゆるいプロト段階からユーザーに問うて、反応が良いやつに徐々に絞っていくグリーンライト方式ですね。

彼らはキングドットコムっていうPCのサイトでPvPのやつを出して、エンゲージメントが高いやつにどんどん絞っていって、それをブラッシュアップして完成度を上げてスマホに出すということをやっています。で、それで一定の歩留まりの高さをキープしています。実際には彼らはめちゃくちゃでかい開発体制を持っているので、もっとたくさん作ろうと思えば全然作れるんですけど、いっぱいトライしてそれこそ数十本作って、出るの3本とか、そういうぐらいの歩留まりですね。

小野:スーパーセルとかもそんな感じですよね。

小林:ですね。同じようなスタイルをいろんな会社が最近採用してきてるなと感じます。全部作っちゃってユーザーに問うと、それこそダメでしたっていうときに開発費全部落とすんかいみたいな話になるので、早く問うたほうが良いっていうのはあって、その早く問う中で、それは直接ユーザーなのか社内のユーザーテストなのか、あるいはわかる人がジャッジするのかはともかくとして、たくさんトライした中でグリーンライトで絞っていくっていうのは各社なりに今すごく模索していて、その方式っていうのは一気に広まってきたなという気はします。

小野:荒木さんのところ、どうですか?

荒木:本当に同じですね。多分DeNAさんと同じで、とにかくゼロから作ったことがあって、ちゃんとお客さまに問うて、その反応を見たことがある人というのは今まで少なかったんですよね。グリーの内製のゲームは結構少数精鋭主義で、本数自体はすごい少ないけど、一つ一つのヒット率は高かった。ただある程度できたゲームを引き継いでその売上を伸ばしていくとか運営していく能力と、ゼロから作る能力は全然違います。ゼロから作れる能力を持つ人を増やしたいというのがありつつも、全員に1億円2億円の予算を10カ月与えるわけにはいかないので、いかにそのサイクルを小さく短くして、経験を早く積ませるかというところをすごい意識しています。