AIとアートの融合

ダイアン・ブライアント氏(以下、ブライアント):さて、AIと聞いて「芸術」を思い浮かべる人はまずいないでしょう。ですので、次にご紹介する例は、楽しんでいただけることと思います。

Pikazoアプリは、2015年に開発されました。Pikazoは、人工知能を使って、今あるアートのスタイルを変換し、そしてその変換されたスタイルで新しいアートを創造します。アーティストにしてPikazoのマーケティング・ディレクター、エイミー・ヴァンドンセルです。こちらへどうぞ。

さて、始めるまえに……何点か、私のあまり映りの良くない写真を……使うのね。

エイミー・ヴァンドンセル(以下、ヴァンドンセル):(笑)。このアプリは、私は大好きです。ではここで、私のポートフォリオを使わせてもらいますね。写真を撮らせてください。

(ブライアント氏の写真を撮る)

綺麗だわ。次にスタイルを選ぶの。ここではこのモチーフがお勧めです。これで完成を押して、数分待ちます。

ブライアント:では待っている間に、あなたがどのようにPikazoに関わるようになったのか、ご自身の経験などについてお話ししていただけますか?

ヴァンドンセル:はい。私の芸術家としての経歴は、舞台や映画での美術担当でした。いろいろなメディア用に背景などを編集したり、創作したりしていました。

しかし、私は以前からずっと、テクノロジーと絵とを合体させたいと考えていました。そこで、画像工学者である友人のカールに声をかけました。彼は、『マトリックス』や『300』などの映画で映像効果を担当していました。

彼は、私のアイデアを受けて、2015年に奥さんのリサ、そしてノア・ローゼンバーグと共にPikazo artを開発しました。

けれどその時私は、別のメディアで自分のポートフォリオを提供したプロジェクトに携わっていました。それで、そのプロジェクトが終わった後に、そのPikazo artに参加したの。

ブライアント:すてきなお話ですね。では、PikazoがAIの観点からどのように機能するのかを教えてください。

ヴァンドンセル:喜んで。Pikazoは、最新にして革新的なネットワークテクノロジーです。まず、脳の中の視覚野が、どのように画像を感知するかをシュミレーションします。そこで、アートのスタイルを認識・特徴を見出し、その特徴をいかした新たなアートを作成するのです。この2つの機能を使うことで、綿密に計算された新しいスタイルの画像を作成します。

Pikazoが2015年に初めて世に送り出された時、私たちはGPU集積回路を使っていて、3.5メガピクセルの画像を作るのに1時間もかかってしまう状態でした。このスピードはあまりにも遅く、顧客には受け入れられませんでした。

そこで、解決策としてインテルに協力をお願いしました。現在Pikazoは100パーセントインテルの協賛を受けています。

ブライアント:そうですね。

ヴァンドンセル:そしてインテルの協力を受け、ソフトウェアコードを最適化した後は、Pikazoアプリは15倍大きな画像を今までの28倍も鮮明につくれるようになりました。

ブライアント:そうです。すばらしいですね。

ヴァンドンセル:画像は数分で作成することができますよ。

誰でも芸術家になれるアプリ

ブライアント:Pikazo Artは、ユーザーが自身でカスタマイズできる幅を拡張して、ユーザーのニーズや要望に合った場を構築し、それを提供している好例ですね。

Pikazoは本当にクリエイティブなアプリです。私のように、芸術家肌ではない人でも、アーティストのふりをすることができるわけですから。そうですよね?

ヴァンドンセル:はい、その通りです。

ブライアント:まだ作成中ですか?

ヴァンドンセル:はい、まだ作成中です。まだデータはクラウドの中です。さて、さっき言っていただいたように、芸術家であろうとなかろうと、このアプリはたくさんの人を対象にした専門的なアプリです。アーティストが昔から、手で行っていた伝統的な過程を、代わりに自動で行っています。たとえばたくさんの色の絵の具をつかってスケッチをするような。

将来、アーティストたちはプロジェクトの進捗を確かめる為に、自らスケッチを取る必要はありません。Pikazoは、これらの工程を自動で行う手助けをしてくれるからです。

また、私たちのコミュニティ内で実験した時のように、AIアートは今や広く受け入れられています。その理由は、デジタルツールの自動化が便利なことと、既存のアートを想定外のかたちでアレンジしてくれるため、アーティストたちがとてもおもしろがってくれて、興味を持ってくれるからです。

ビデオのプロジェクターに活用してくれる人もいますし、同様に、写真家の方たちがより良いエフェクト効果やファインダー越しに撮る以上のものを求めて使ってくれていたりします。

繰り返しになりますが、Pikazoは毎回まったく新しい画像を形成してくれるので、カメラやPhotoshopでできるよりもはるかにいろいろなことができるのです。

ブライアント:なるほど、すてきですね。ところで、画像がでましたか?

ヴァンドンセル:まだ作業中ですね……。でも、あなたの画像はリハーサルで作ったものよりずっとすてきですね。あ、話している間にできました。すばらしいです。

ブライアント:すばらしい。素敵だわ。輪郭がとってもファンシー。

さて、インテルとのコラボレーションにおいて達成してくださったことすべてについて、感謝の念を申し上げます。私たちのAIに、すばらしく革新的な視点を与えてくれました。ありがとうございました。

また、とても楽しい時間をありがとうございました。

AIで農業の生産性を高め、食料問題を解決

さて、人工知能という言葉は、いまだにネガティブな印象を与えます。どこかのドラマのように、コンピューターの司令塔がモラルを失い、非道徳的なことを行ってしまうのではないか、また、今まで人間がやってきた仕事を人工知能が取って変わることによって、既存の雇用に影響を与えるのではないか、といった具合です。

しかしAIは、人間社会の利益に貢献してくれる重要な技術の1つであり、私たち人間に、多大なる恩恵をもたらしてくれることを、忘れてはいけません。人工知能は、その幅広い相互性と技術革新で、人工知能は、ポジティブでしかも永続的な影響を、世界に与えることができます。

さて、紀元前1,000年に派生した、農業という産業を見ていきましょう。現代の農家は、さまざまなデータを入力することにより、農場のよりよい経営判断ができるようになりました。

そして、そういったニーズはどんどん増えています。食料問題は、いまや世界規模の問題だからです。

最古の伝統的な産業が、いまや最新の人工知能のテクノロジーを享受している様子をご紹介します。Farm Logs生産部副社長、ルカ・キャンデラです。ルカ、お会いできてうれしいです。

ルカ・キャンデラ氏(以下、キャンデラ):お会いできて光栄です。

ブライアント:まず最初に、Farm Logsについてのお話を少々お願いします。どんなお仕事なのか、またどのように設立に至ったのかをお聞かせください。

キャンデラ:始まりは2011年でした。ジェシー・ヴォルマーとブラッド・コッホの農夫2人により、設立されました。2人は、インターネットが、現代社会においていかに多大な影響力持っているにも関わらず、農業の分野では全くそれが生かされていないことに気が付きました。彼らの故郷では、テクノロジーがまったくといっていいほど使われていなかったのです。そこで、状況を変えようと思い立ちました。

2人は、農家がデータを活用できるソフトを作ることに、大きな可能性を見出し日々その実現のために挑戦し続けました。2017年には、アメリカの実に3分の1の農家が、私たちのツールを利用しています。国内の農家です。

ブライアント:そのとおりです。

キャンデラ:このツールは、データを処理したり改革を行ったりするためだけではなく、農業の生産性を将来的により高めるために、非常に重要となってきます。なぜなら、ウォールストリートの予測によれば、2050年までに地球上の人口は900億人にまで上り、それに伴い現在よりも50パーセントも多くの穀物の生産が必要となってくるからです。

ブライアント:そうですね。さらに問題は、今よりも50パーセント以上穀物が必要なにも関わらず、農業自体が年々縮小傾向にあるという点です。農業従事者にとっては、たいへん過酷な試練です。

農耕機械との連携も可能

Farm Logsは、データ分析の補助をする、昔ながらの分析ソリューションのビジネスモデルとしてスタートしたことは存じ上げております。やがてFarm Logsの活動範囲は農地へと広がり、天候や土壌の分析なども行っていますね。現在、人工知能を導入しているとのことですが、Farm Logsの視野に、どのようにAIが入って来たのか、お話ししていただけますか。

キャンデラ:設立当時は、単に昔ながらのデータ分析や生産管理を行っていました。穀物生産において必要だと思われるツールを、なんであれ農家に提供する、といったかたちでした。当初は本当にデータだけでしたが、農家を支援していくうちにだんだんと、農家自身の方が、データを組み合わせて活用したりと、よりよいかたちでデータを応用して利用していることに気がついたのです。

しかしそれだけでは不十分だと考え試行錯誤していたところ、1年半目で私たちは転機を迎えました。農家の方に、自分で見たことだけを頼りに、自ら判断をしてもらうよう丸投げするのではなく、その支援のためにできる必要な情報を集めていました。

農家の方々の目だけではなく、AIの目からみて、どうすればより収益を見込めるのか、解決策を提示できるようにしたのです。単なるダイジェストを提供するのは簡単ですが、それだけではなく、過去のデータを分析し、農地ごとにお勧めの作付け種のピンポイント解説を作成しました。過去のデータを最大限に利用し、農地を最大限にいかし、可能な限り多くの収益を上げる手段を伝えるのです。

ブライアント:農地の資質を最大限に活かすために、農耕機械との連携も可能なのですか?

キャンデラ:そのとおりです。今まさに、それに挑戦中です。

まだ開発途中なのですが、農耕機械のパターンを解析することで、うまく実績を上げていない農地を家族単位で検出することができます。機械が農地を通れば、その跡が残りますよね。それを感知して、穀物の成長具合を検知し、今がなにをすべきタイミングなのかを知らせることができます。

ブライアント:農家にとってみれば、たいへん洗練されたアドバイスですね。

キャンデラ:そのとおりです。

ブライアント:すばらしいお仕事です。(食料問題について)すばらしいパートナーたちが、インテルに解決策を提供してくれますが、その中でもたいへん有意義なお話をさせていただきました。これは、決して無視できない問題である食料生産の解決に向け、世界を変革してくれるテクノロジーです。たいへん感銘を受けました。ありがとうございました。

(会場拍手)

AIのヘルスケアへの適用

さて弊社は、私の個人的な情熱に基づき、社会への利益提供を目標としていますが、ありがたいことに大きな影響があるのは、AIのヘルスケアへの適用です。

2015年に開始されたプログラムについてお話します。私たちは、ヘルスケア産業のリーダーたちが達成しようとしていることを推進し、これを2020年までに達成したいと考えています。このプログラムは、ガンをターゲットとしています。

男性のうち半数が、女性のうち3分の1が、生涯に一度はガンの診断を受けます。ですから、このプログラムの目標である闘病は、大きな課題です。

このプログラムの目標が達成されれば、2020年のある日、あなたがガンの診断を受けて医者を訪ねたとします。そこでは、自分のすべての遺伝子情報(今までの持病や受診歴なども含めて)を、膨大にある今までの患者の悪性腫瘍に関するデータベースと照らし合わせます。そして、該当する腫瘍を特定し、過去その症例に適用された治療と患者のその後(生存しているか否か)を調べたのち、あなた専用の治療方法をAIが処方してくれるのです。しかも、これらすべての過程を、1日で行うことができるのです。

人工知能がヘルスケア産業に与える影響は、すでに表れています。

例を挙げましょう。130億人を抱える中国では現在、ガンを検出する熟練した放射線技師の不足が深刻化しています。そこで、浙江大学医学院においては、ガンの検出について、AIソリューションを導入しています。インテルは大学と協力して、ガン腫瘍を検知するためのテクノロジーを、共同開発しています。その成果は、すばらしいものでした。

AIのソリューションの画像と、10年の経験を持つ放射線技師グループの結果とを並べて検討すると、技師たち画像の正確性は70パーセントだったのに比べ、最新のAIソリューションのそれは85パーセントだったのです。

つまり、このような仕事をAIのような機械にやらせることは必要不可欠なのです。これらのシステムの適用は、中国全土の病院、例えば世界でトップ10に入る病院のひとつにも、広がり多く導入されており、すでに5,000人以上の患者のために利用されています。

もう1つの大きな変化は、AIによる予測分析です。ペンシルバニア大学医学大学院は、ペンシグナルと名付けたAIプラットフォームを開発しました。このプラットフォームは、データ分析科や、研究者たちに予測分析を助けるためのプラットフォームを提供しています。

ペンシグナルは当初、再入院に絞られていました。再入院に特に多いのは心疾患です。心疾患は、アメリカだけでも5,800万人おり、成人の2パーセントを占めています。アメリカ国内の患者のうち25パーセントが心疾患を占め、30日間のうちに再入院します。予後が悪い人、つまり半年後の再入院率は、50パーセントにも上ります。

ペンメディシン(ペンシルベニア大学 医学大学院の愛称)は、AIでデータを駆使し、AI入院時のケアを向上させることにしました。これからもAIを永続的に使っていけるように。

行方不明の子供を探し出すことも

さて、子供の人身売買は、わが国における重篤な問題です。アメリカ国内だけで、年間50万人の子供が行方不明になっています。テクノロジーやインターネットが、児童ポルノの増加を促進させ、また子供の人身売買の市場がオンラインにて盛んに行われるようになりました。

良いニュースは、テクノロジー、つまり人工知能が、そういった子供たちをより簡単に特定し、救出できる鍵となっていることです。

インテルは、「行方不明および虐待された子供のためのナショナルセンター」通称NCMECと協働し、こういった問題の解決に取り組んでいます。NCMECは、行方不明の子供を探し出す使命を担うNPOです。

現在、クラウドサービスのプロバイダは、日々進化していくAIソリューションを導入し、オンライン上の疑わしいコンテンツを探して特定、通報し、NCMECに報告を送ります。

とても印象的な出来事でした。NCMECは、創立してから最初の15年間に、サイバー捜索網から合計50万件の報告を受けました。それに対して、2016年だけで1,000万件の報告を受けるようになったのです。劇的な変化です。

しかしこの成果は、単にシステムが増えたためではありません。データが増加したのです。そしてテクノロジーの劇的な進化にも関わらず、NCMECの作業の大半は、手作業です。つまり、分析官たちは、目の前の膨大なデータを見直しながら関連付けを行わなくてはならないのです。ソーシャルメディアや、施設から報告を受けた何百もの写真を、ホームシェルターや養護施設からの写真と照らし合わせ手作業で見つけていかないといけないのです。これは、たいへんうんざりする、しかもエラーの起こりやすい作業です。とても、間違いが起こりやすいです。

例えば、みなさんには人を特定する能力は、どの程度あると思われますか。この写真のうち、どちらがこの行方不明の少女か、分かりますか?

報告を受けてから地元警察が配備されるまで、平均では30日ほどかかります。私たちは、AIを使うことにより、この時間を30日から1日に短縮することに挑戦しています。AIに自ら学習をさせることにより、チームは膨大なデータの中から、より可能性の高い人物を割り出し、一致性の高い写真をかなりの数まで絞ることができます。

より学習を強化させていくことで、より多くのデータが提供される中でも、さらに高い精度で一致性の高い写真を見つけることができるでしょう。技術の導入によって、人間の手だったら1ヶ月かかるところを、数時間で処理が可能なのです。

AIは、NCMECが、針の山から1本の針を見つけ出すことを可能にしたのです。より膨大な量のデータを、わずかな時間で処理できるようになりました。この場合、いかに早く解決するかが何よりも大切だからです。

AIの秘められた可能性は、「仮に」ではなく「いつ」を問う状態になってきました。社内では、信頼性のある数々のコラボレーションに注目が集まっています。アイデアを出し合い、多様な視点を共有しあうことは、とても刺激になります。

AIという分野には、たくさんの貢献者や開発者がおり、新たなメソッドや新技術の実装を日々行っているのです。

社内においては、仕事から遊びに至るまで、AIに適用できるような最高のプラットフォーム技術を創造し、将来永続的にAIが使えるように研究を重ねています。そして、今現在私たちは、Nervanaプラットフォームの導入を進めていて、AIの拡大と加速にむけて、尽力しています。

ありがとうございました。