吸血コウモリの生態

ヴァンパイアに関しては多くの気味の悪くなるようなストーリーがあります。ヤングアダルトのファンタジーロマンス小説の中にもヴァンパイアが出てくるのがありますよね。

死ぬことがなく、歩き回って血を吸う人間であるヴァンパイアは存在しないかもしれませんが、吸血の哺乳類は存在しています。吸血コウモリがそうです。

「吸血動物」と呼ばれていますが、血だけを取り入れることにより生活することは簡単ではありません。吸血コウモリは、血を求める数少ない哺乳類のうちの1つです。進化の過程で彼らは生きるために有効な技術を編み出しました。でも1つはっきりさせて置かなければならない点として、吸血コウモリはみなさんが思うような吸血はしません。

代わりに、彼らは毛管現象という物理学を用いて血を飲みます。毛管現象とは、液体が細い管やシリンダーの中を動く現象のことを言います。その現象では重力に逆らって液体が動きます。吸血コウモリは舌に特別な溝を持っています。下唇と前歯に沿って、管のような形を作り出すことができるので、液体を容易に吸い上げることができるのです。

それに舌を動かしてピチャピチャと飲むので、さらに速度を早めることができますが、毛管現象にその動作は必要ではありません。その他に血液が流れるのを助けるのは、コウモリの唾液です。吸血コウモリの唾液には「デスモテプラーゼ」と呼ばれるタンパク質が含まれています。研究者たちはそれを俗名「ドラキュリン」と呼んでいます。

それは抗凝固剤の役目をし、血液が固まるのを止めることができます。研究者たちは実際このタンパク質を吸血コウモリの唾液から取り出し、脳卒中を防ぐための薬が作れるのではないかと考え、研究しています。この物質が血液の凝固を止めてくれるので、人間の脳内に血液のかたまりができるのを防ぐことができるのではないかと考えているのです。

コウモリがジューシーな血管に噛み付くと、唾液中のこのタンパク質が動物の血液の流れを良くするので、たくさん吸うことができるというのです。吸血コウモリは食事のたびに、大量の血液を取り入れる必要があります。血液は食材としては養分豊富ではないからです。血液のほとんどは水分で、そのほかの成分は少量のタンパク質、糖分、そして微量のミネラルだけです。脂肪分が足りないのです。

動物は通常脂肪が必要で、バランスのとれたエネルギーの元となる主要な成分となるのです。ですから吸血コウモリは、新陳代謝をスムーズに保つために充分な栄養分を取るために、自身の体重の半分ほどの血液を毎日摂取する必要があるのです。

彼らが摂取する水分が非常に多いため、その消化と排泄のシステムがすぐに水分を排出し、消化するべきタンパク質、糖分、ミネラルを残します。実際、吸血コウモリは食事が終わる前に排尿を始めることもよくあります。そうすることにより栄養を取り入れ、水分を排出するのです。

吸血相手の見つけ方

食事を見つけるのには特別な技術が必要になります。ほかのコウモリと同様、吸血コウモリも反響位置決定法を用いて飛び回り、獲物を探します。彼らにはさらに敏感な嗅覚と、通常の視覚も備わっています。しかしシワシワの吸血コウモリの顔には特別なタンパク質豊富な神経繊維があり、それにより暖かい血液が流れている動物から出る赤外線を感知することができるのです。

食べられるものが見つかると、知られている3種類の吸血コウモリは、どれもユニークな方法で食事をします。普通の吸血コウモリは哺乳類の血液しか摂取しません。そして彼らは家畜の動物を好みます。

彼らは進化により地上を巧みに動いて獲物に容易に近付くことができるのです。彼らの後ろ足には強い筋肉がついていますし、翼の先には長い親指がついています。それを使ってジャンプするのです。

彼らは素早いので地上にいる外敵からも逃げることができます。

それとは異なり、「ヘアリーレッグヴァンパイアバット」は鳥の血液しか摂取せず、樹木の上から狩猟をします。

彼らは自分に気がついていない鳥の上に飛び乗り、鳥の総排出腔に噛みつきます。総排出腔とは鳥の排泄と排尿をする排出腔で、そこには生殖器も収まっています。理由は不明ですが鳥はそれが好きではないので、鳥が反撃してきたり、振り払ってきたりするのを防ぐために、ヘアリーレッグド吸血コウモリは足首についている大きく骨ばった爪を使って逆さまにぶら下がり、獲物にくっつき続けるのです。

「ホワイトウィングヴァンパイアバット」は、哺乳類の血も鳥類の血も吸います。しかし彼らは進化の過程で鶏を獲物にするすべを習得しました。

時々コウモリが鶏の背中に飛び乗ると、鶏はそれが盛りのついた雄が交尾をしようとしていると思うことがあります。ですからその鶏はうずくまるので、コウモリが吸血できるように首元を与えることになるのです。

その他の場合このコウモリは鶏の下の方からこっそりと近づき、通常卵を温めるためにある、毛のない部分を狙って鼻をこすりつけます。すると鶏は雛が体をこすりつけているのだと勘違いし、吸血コウモリがしがみついて吸血するのを許してしまうのです。

これらすべての吸血のためのテクニックを考えてみると、吸血コウモリには食事を探すのに不自由がないように思えるかもしれませんが、充分な量を摂取できないことがあるのです。幸いなことに、充分に食事を摂れないコウモリたちは、何千匹もの大きな集団で生活しているため、相互現象と呼ばれる行動をとることによりお互いに助け合いをします。

よく、一匹のコウモリが、将来自分に見返りがあると期待して、ほかのコウモリのために自分の必要を犠牲にすることがあるのです。この方法は食欲を減退させます。つまり、食事が取れなかったコウモリのために自分が吸血した血を吐き出して分け合う方法です。過去に血の食事を分け与えたコウモリはお返しに、自己中心的なほかのコウモリよりも大きな食事を寄付してもらうことができるのです。

ですから、ドラキュラのように吸血コウモリもスキルのある吸血ハンターですが、自分たちの群れを守るために、互いに対しては優しくなくてはならないのです。