昔の独演会には怖い人がいた

トンボ:かつての独演会のトラブルとはぜんぜん……。

西野:ぜんぜん違う。もっと怖い。今もっと怖いですよトンボさん。かつての独演会のトラブルっていうのは、田舎の方行くと、何て言うんですかね。もう当時ですからもう10年とか前ですかね。

トンボ:そうですね。

西野:普通に客席に、田舎の方ですから怖い人がいるんですよ。

トンボ:そうなんですよ。

のぶみ:やくざ的な。

西野 はい。たしかめてはないですよ? でも、まぁそっちであろう人。前列20、30人ぐらいは隣に女の人を置いて、こうやって怖い人らが見てるみたいな。でもその人たち別に嫌がらせで来たわけでは決してなくて。

トンボ:見に来てるお客さん。

西野:普通に「地元でこんなお笑い見れるんや」。みたいな漢字で見に来たのね。だけどそういう人たちがいると、会場の雰囲気はけっこうなものじゃないですか。それをトンボとか僕とかで、なんとか突破するという、そういうトラブルはありましたよ。

トンボ:そうですね。

のぶみ:そうかぁ。

西野:さっきも言いましたけど、下がクラブになっていてブースの音がドンドンドンドン聞こえる中やらなきゃいけない。

トンボ:そもそも設備がちょっと不備があるみたいな。

西野:そう。そういうトラブルはありますけど、今はもっと怖い。今はもっと怖いですよ。

のぶみ:なんかやってきたりするから。参加してたりするから。

西野:ほんとにね。でもね、とはいえ難しいところで、こっちが素人さんに委ねてるから。

のぶみ:そうだねー。

西野:ある程度そういうことは引き受けなきゃいけないけど、難しいのは、そこに来るお客さんにとっては主催が誰とか関係ないじゃないですか? 吉本興業主催なのか、そういう一般の方主催なのか。主催が誰かわかんないから、この人からすると、なんなら僕がやる日比谷公会堂とかキネマ倶楽部でやる独演会よりも、素人さん主催の独演会のが高いんですよ。

それは何故かというと、僕は友だち価格とかでけっこう突破できるところを、素人さんはできないし、もっと言うと収益の仕組み。つまりチケット代で元取るしか方法を知らないから。

トンボ:そうかなるほど。そこでもう全額回収しないといけないから。

西野:高いから。日比谷公会堂の倍ぐらいの値段をして、これをやらされてるっていう。

トンボ:いやーすごい。

のぶみ:すごいよなぁ~。

西野:そうなってきたときに難しいですね。

伊集院光氏のラジオに出た時の話

のぶみ:でも急にそれをされて、よくその順番で喋れるなってすごい尊敬するわ。俺だって昨日、伊集院光さんのライブ出てきたんですよ。おれ伊集院さんのラジオを中学ぐらいのときにけっこう聞いてたんですよ。

西野:はいはい。

のぶみ:あ、伊集院さんのラジオ出られるーって思ってて。そしたら伊集院さんが「あのぼく元ヤンってのが嫌いなんですよ」って話から始めて。それで「絵本作家っていうのも、ぼく大人向けの絵本作家って大嫌いなんですよ。今日のぶみさんって人がゲストで来られるんですよ」って。「ちょっと僕どうしようかと思ってるんですけどね」って言ってからどうぞって言われたのよ。

西野:はいはい。

のぶみ:うわーこれどうすればよかったんだろうって、いまだに昨日悶々と眠れなかったんですけど、その場合どうしたら良かったんですか?

西野:いやたぶん……。

のぶみ:「いやおかしいじゃないですか」みたいなこと言った方がよかったかな?(笑)。こんなのないぞと思って。朝6時起きで来て、朝の番組だったんですよ。

西野:はいはい。

のぶみ:うえー。そんなかんじで、しかもその番組も、けっこう優しい番組とかそんな感じじゃなかったんですよ、絶対。

西野:深読みかもしれないですけど、それは伊集院さんの優しさっていうか。

のぶみ:たぶん優しさだと思う。

西野:そういうところからスタートして、話してみてすごい好きになりましたっていう。プラスで終わるっていう。そっちかもしんないですね?

のぶみ:そっちー、そっちだったらできてましたね。

西野:要はのぶみさんもそこに出て、普通にお話をすれば伊集院さんが最後、「ほ! なるほど!」とか言うて、それで最後に「失礼、僕が間違ってましたって」言うたら、絵本作家さんとかに対して、ちょっとネガティブな捉え方をしている人とかに対して……。

のぶみ:興味ない人とかもいるからね。もしかしたら。

西野:まず内面から入って、「ごめんなさい、僕たちが間違ってました」ということで、のぶみさんを上げて終わらすっていう、そういうMCのやり方かもしれない。僕もときどきそれしますから。

のぶみ:あ。そうなのか。

西野:ちょっと要はあのー……。

のぶみ:ちょっとアレだなって。

西野:そこまでのことは言わないかもしれないですけど、「僕ふだんこういう曲聴かないですけどね」というところからスタートして、ゲストの方お招きして聞いて、「ちょーいいっすねー!」みたいな。

のぶみ:あー! 「こんなのが美味しいわけないだろう」って言って、食べて「美味しい!」って言うやつみたいな。

西野:はいはい。

のぶみ:でもそうだとしたらたしかにそうでしたね。やっぱそういうのがあるんですかね?

西野:伊集院さんとか、もちろんちゃんとデザインしてそうですけどね。

のぶみ:やっぱ話聞いてると、「あぁこれめっちゃ調べてくれてるじゃん」ってなるか……。

西野:だから好きっすよね。優しさですよね、伊集院さんの。

のぶみ:柴田理恵さんもいて、柴田理恵さんもものすごい優しかったですね。ちゃんと読んで「こういうのがいいねー」ってすごい褒めてくれて。

西野:そこはね。言ってもプロですからね。委ねていいの。

怖いのは素人の演出

西野:怖いのは素人の演出ですよ。

のぶみ:そうだろうね。

西野:ホントに怖い。

のぶみ:だっておっさんが例えばこうやって腕組みして、何にも笑わないでずっと見てるだけで怖いですからね。結局。

西野:まじでほんとに……。

のぶみ:なんすかそれ?(笑)。

西野:これ300人こうですよ。

トンボ:むちゃくちゃ怖いわぁ~。

のぶみ:そんなんだったんだ。

西野:袖見たらスタッフがこうやって。

のぶみ:(笑)良かれと思ったんだ。

トンボ:そんなシーンあったんだ。

西野:これ着てこうか。

トンボ:(笑)どっかなんか入ったんでしょうね。狭間に。

西野:どっかなんか入ってもうてんねんな。

トンボ:空間の狭間に。

西野:どのタイミングでそこに入ったのか知らないけども。

のぶみ:(笑)怖かった。小谷さんは勧められたんですか? そのお面的な……。

西野:いや小谷も上手いんですよ。こいつは小谷とかトンボとか知ってるじゃないですか? こっちのこと。やっぱり上手くバランスとってくださるんですよ。この2人が間取り持って、「まぁまぁまぁ」って言いながら、やんわり素人さんの企画を潰しにかかるんですよ。

例えば、潰すというか名古屋で同じようにトークショーがあった時に、そのMCの方が「打ち合わせしましょう」みたいな。1時間半のトークショーで3、40分ぐらい打ち合わせをしようとするんですよ。

トンボ:あー怖い。

西野:僕その人と喋るんですよ。それで、要らないんですよ、もう打ち合わせとか。僕は打ち合わせやりましょうとか言って、まず私がこういう質問しますんで、次にこういう質問してください。はい、わかりました。大丈夫大丈夫大丈夫ですって言うんです。つまり僕のこの大丈夫ですっていうのは、もうそのへんで……。

のぶみ:全部大丈夫です。

西野:全部大丈夫だから、全部大丈夫だからもうそのへんで終わってくれっていう。だってここで僕の受け答えを楽屋で全部やっちゃって、その後本番で僕がまったく同じこと喋って、この人がいいリアクションをするとは思えないから。1回聞いてる話を。

のぶみ:そうですね~。

西野:大丈夫ですって言うと。もう説明大丈夫ですって言うんですけど、向こうは心配だから全部言おうとするんですよ。要は前日の夜とかに決めてたようなことを、全部スケジュール通りにいく。こっちは大丈夫ですって。

のぶみ:緊張してるからなぁ。

西野:そうです。30分ぐらいマジで、「次にこういう質問してこういう質問して」っていう台本みたいなんがあって、全部読もうとするんですけど、僕が「大丈夫です大丈夫です」ってやったら小谷がスッとこう間入ってきて、「大丈夫です。あーなるほどいいっすねー」って。

のぶみ:やってくれんだ!? 汲み取ってる。

西野:いいっすねーとか言って、打ち合わせを徐々に徐々に部屋の外の方に押し出していく、押し出しってう技をやって。

トンボ:偉いっすねー。

のぶみ:よく考えてるなぁー。

西野:押し出しです。

トンボ:押し出しや(笑)。

のぶみ:そうだよなぁ~(笑)。

西野:この2人はホンマに間入って、大丈夫大丈夫ですとか言って押し出してくださる。「でーすだーす(笑)、でーすだーすですよホントに。でーすだーすでいいっすねー」て言いながら押し出してくれる。向こうも「ホンマっすか?」って言いながら気持ち良く出ていくんですけど。

トンボ:(笑)。

西野:あれはすごい技ですね。僕にはできないっすよ。

のぶみ:でもたぶん初開催の人が多いんですよね?

西野:初開催の人が多いから不安なんですよ。だけどこっちの大丈夫は本当に大丈夫だってことです。

<h2プロフィール紹介はいらない!

のぶみ:だって僕のときでも、よく素人のママさんが開催してくれることがあるんですけど、プロフィールを絶対紹介しますって言うんですよ。

西野:はいはい。

のぶみ:でも僕その後に絵描きながら実はNSCでこういうことやっててって言うんですよ。だから俺それいらないですよって言うんですけど、もう絶対プロフィールは紹介させてくださいって言うんです。

西野:あーわかる。

のぶみ:えーなんでー? と思って、そんで怪獣の着ぐるみで登場して、こうやって子供たちが新聞紙を当てるってやつがあるんですよ。その時に「『怪獣さん』って言って呼んでくださいね」って言ってみんなに……。俺怪獣だから(みんな)言ってくださいねって言うんですよ。

西野:はい。

のぶみ:3回目に僕出てきますから、怪獣さんって。子供たち3回言ったら出てきますからねって言ったら、スタッフの人が3回目に怪獣さんが登場しますからねって。

西野:(笑)。

のぶみ:「さぁいいですかー? 怪獣さーん!」って言って、えー? 何でそれ言うの? と思って。見本にあるじゃんと思って、「怪獣さん! あれ? おかしいな声が小っちゃいな。怪獣さん! あれ? おかしいな怪獣さん」て言って、3回目にわーって出てこようと思ってんだけど、それもしないですもんね。

西野:あー怖いっすよー。

のぶみ:そういうことなんだよなぁ。なんか期待はしちゃいかんよね。

西野:これは言ってった方がいいと思うんですよ。つまりその現場入っちゃってから、これはない方がいいんじゃないの? って言っちゃうと、向こうも慌てちゃうから事前にこれは本来アウトですよ、というのを、こういう場で言っていくしかもうないと思って。

のぶみ:絶対そうですよね。

西野:こっちはそれを苦痛だと思ってるだとか、それは気持ちとしてはうれしいんだけどそれはやらない方がみんなが幸せになるというのを、言っていった方が……。

のぶみ:そうだろうね。

安っぽさを演出する「ばばあ花」

西野:それで言うと毎回この議論になったら絶対に言うんですけど、素人の方がイベント開催する時の会場の各所に貼っ付ける、あの紙で作ったお花はホンマに要らないです。

一同:(笑)。

西野:あれホンマに要らない。

のぶみ:ティッシュのね。

西野:何て言うんですか? あれどうやって作るんですかあれ? ばばあが作るじゃないですか(笑)。

のぶみ:小学校の時のね。

西野:小学校の……(笑)。

のぶみ:輪っかね。

トンボ:囲んであるやつあの。

のぶみ:輪っか良かれと思ってるんだよあれ。

トンボ:入園式とかね。

西野:入園式のそう、看板のマークにこういろいろある。あれはホンマに要らないです。あれはあれをやることで、例えば、例えばわかんないここのあのー……ブラインドのここに、これでお洒落じゃないですかもう。これでお洒落なのにあれが、ばばあどもがあれを貼っ付けることによって、「あー飾り付けるお金あんまりなかったんだな」ってなっちゃう。

のぶみ&トンボ:はいはい(笑)。

西野:このままやってたらそもそも、私たちは僕たちはこれがいいと思ってるんですよってできるのに、あれを貼ることによって、あぁーなんかお金がないから一生懸命やってるんだなって、そうなんかねあれはあの貧乏っぽさの……貧乏臭さが出ちゃうみたいな。

一同:(笑)。

西野:せっかくお金と時間かけて、貧乏っぽさが出ちゃうからもう駄目だと思うんです。

のぶみ:あれ誰がいいって言ったんだろうね?(笑)。

西野:誰がいいって言ったんでしょう。

のぶみ:初めに……なんなんでしょうね?あれそもそもそんなに良くないですよね?何だろ。

西野:婦人会テイスト。手間と愛ですよ。いやだからこの手間と愛っていうのが裏目に出てるってことなんですよ。

トンボ:うーん。

西野:俺ねあのー前も言ったんですけど、鳥取で独演会をやった時に、鳥取の田舎の方の学校で、そこまで古くないけれどやっぱ木造の校舎ですっげー雰囲気あるんですよ。

トンボ:古い古い。

西野:古い感じの木造校舎で山の中で、ちょーいいじゃんと思って何これ? と思って写真撮りたいんだけど、やっぱ写真撮るのを止めたのは、そのばばあ花がばぁーって。

のぶみ:ばばあ花って(笑)。

西野:勿体ない。せっかく鳥取のこんな素晴らしい大自然の中にある木の学校で、これだけで天才……天才じゃないですか? これをばばあ花がこうやるもんだから。

のぶみ:ばばあ花って(笑)。

西野:勿体ないねぇ~!

のぶみ:ばが多いですもんもう(笑)。

西野:でも地元の方っていうのは、もしかするとあれが才能ろいうことに気付いてないという。

のぶみ:あぁ~。

西野:つまりあの木造校舎ってむちゃくちゃいい。

のぶみ:そうだろうね。

トンボ:当たり前すぎて。

西野:当たり前すぎて。でも僕らからするとこれはホント写真撮りたい。いやこの渡り廊下むっちゃ写真撮りたいって思ったけど、ばばあ花とかこういうのがあると、「あー、婦人会テイストすげー」と思う。あれ勿体ないっすよね。

のぶみ:でもそんな中がんばってんだ。

西野:いやそうそう。すげーがんばってるから、これはちゃんと僕たち一緒に成長していかないといけないと思う。

トンボ:たしかにそうだ。

西野:そう。これは突き放しちゃ駄目だし、それはもう一生懸命やってくださってるんだから、これは裏目に出てますよとか、ここに時間とお金掛けた方がもっと良いんじゃないですかとか。