トコジラミ（南京虫）に関する7つの真実
マイケル・アランダ氏：子どもの頃、親に「トコジラミには噛まれるな」と言われたかもしれません。そして長い間、トコジラミとは何か尋ねられるほど、聞き慣れないものでした。しかし今日では、トコジラミは先進国において、最も緊急に駆除しなければならないものになりました。
5人に1人のアメリカ人が、トコジラミを持っている、もしくは持っている誰かを知っていることになります。そして問題は解決しておらず、実際はむしろ大幅に悪くなってきているのです。
CIMEX LECTULARIUSとして科学界で知られていますが、トコジラミは完全に成長するとリンゴの種ほどの大きさになる、血を吸う昆虫です。哺乳類や昆虫の昆虫でも生き延びられますが、人間の血液を好みます。
トコジラミの巣には、何千もの個体が存在する可能性があります。そしてあなたは知らないうちに、トコジラミに感染してしまう可能性もあります。そこで、トコジラミについて知っておくべきことを紹介します。
1. トコジラミはどこにでも潜んでいる
「トコジラミ」という名前から、ベッドの中にのみ存在すると考えてしまうかもしれませんが、隠れられるところであればどこでも生存することができます。成虫は長さ5ミリ、薄さは紙1枚分ほどです。それらは食べものを見つけるため、一晩で最大30メートルはうことができます。
つまり、トコジラミは壁の電気スイッチの後ろや、はがれた絵や壁の下、また壁と壁下のすそ板の間やその他の場所に隠れているかもしれないのです。また義足の中からトコジラミが見つかったこともあるのです。
2. トコジラミは人類とともにある
我々は非常に長期にわたり、トコジラミについて扱ってきました。古代ローマを荒らしていたことも分かっています。古代ローマ人は実はそれらを醸造し、蛇に噛まれた時の治療薬として飲んでいました。間違いなく美味しかったことでしょう。
エジプト人がトコジラミについて書き記しているので、古代エジプトにも存在したことも分かっています。おそらく、彼らの大家に苦情を言っていたのでしょう。実は考古学的証拠から、トコジラミは少なくとも3500年は人間を餌にしていたということが分かっています、というのも化石となったトコジラミが発掘現場で見つかっているからです。
しかしそれらのミトコンドリアのDNA――つまり細胞の基幹内のDNAに基づいて考えると、トコジラミはもっとずっと長い間、我々を悩ませてきたと思われます。世界中のトコジラミ人口の、ミトコンドリアの目印を比べることにより、それらは中東の洞窟に起源を持つということが判明しました。そこではコウモリをエサにしていたと考えられます。
現在、トコジラミは飛ぶことも、ジャンプすることも出来ません。またそんなに遠くへはうことも出来ません。一晩30メートルでは速さの記録を作ることも出来ません。ですので、それらが我々の後について洞窟から出てきたのではなく、我々が洞窟に入った時に出くわした可能性の方が非常に高いと考えられます。つまり、トコジラミが最初にかみついたのはおそらく穴居者だったということを意味します。
3. トコジラミは熱に弱いが……
我々はずっとそれらを持ち続け、それらはどこにでも隠れることができます。どのように駆除したら良いのでしょうか？ トコジラミを全滅させる最も簡単な方法は熱です。卵も成虫も、約46℃の温度に10分さらされると死んでしまいます。
昔の映画の中で、ホテルや病院の安いベッドに質の悪い金属フレームがついていたのを想像出来ると思います。金属フレームは灯油で摩擦させると火がつくので人気でした。それで間違いなく内部に住みつくトコジラミを一掃することが出来るでしょう。 家具からトコジラミを一掃するのに使われた他の方法は、接合部に火薬を詰め爆発させることです。しかしそれに挑戦しないでください。SciShowは公式に、ベッドフレームに火をつけないようお伝えします。家を燃やさないでください。
トコジラミが熱に弱いとはいえ、ただ夏の熱波によりそれらが死ぬのを待つだけということは、いくつかの理由によって出来ません。まず、外気温が46℃だからといってトコジラミが実際に生息している場所が46℃とは限らないからです。ベッドの下の影、壁の中の涼しい凹みはずっと快適です。
4. 劣勢に立たされると休眠する
しかしもっと重要なことは、トコジラミは「休眠」する能力があるのです。虫にとっての休眠とは、熊の冬眠のようなものです。それは深い眠りで、そこでトコジラミは大半の代謝プロセスを遮断し、エネルギーの蓄えがなくなるまで、もしくは起きるまで、エネルギーの蓄えにより生き延びます。
トコジラミは暑くなりすぎたとき、気温が氷点下となったとき、また食べ物を見つけられなかったとき休眠に入ります。そういうわけで、寝具をゴミ袋に入れ、トコジラミを飢えさせようとしても意味がないのです。
休眠のおかげで、トコジラミは食事なしでも1年以上生き延びることができます。しかし熊が数時間大きな冷蔵庫にくっついただけで冬眠しないのと同じで、トコジラミもただ短い時間暑くなっただけでは休眠に入りません。休眠は夏の始まりのような、ゆっくりとした環境の変化に対する反応です。そういうわけで、ベッドに火をつけると彼らは死ぬのです。
5. トコジラミはかつて1度絶滅しかけた
しかし熱はトコジラミを殺す唯一の方法ではありません。あなたがトコジラミはおそらく現実のものでないとさえ思って成長した理由は、トコジラミは1950年代にほぼ絶滅したからなのです。それはひとえに信じられないほど有効で、しかしまた非常に恐ろしい、DDTと呼ばれる毒性の小さな化学製品のおかげでした。
DDTはDECHLORO-DIPHENYL-TRICHLORO-ETHANE（ジクロロジフェニルトリクロロエタン）の略称で、広く使われるようになった最初の化学的な殺虫剤です。これは第二次世界大戦後広まり、1950年代の終わりまでに先進国のトコジラミの数はかなり減り、科学者たちはほとんどそれらに対する研究を中止しました。なぜなら文字通り、彼らは何も見つけられなかったからです。
DDTはピレスロイドという殺虫剤の同類のもので、菊の花から作られた合成物を統合したものです。以下はその働きです。
虫や人類を含む大半の動物は、神経細胞の膜組織にナトリウムを吸収するために開く毛穴があります。ナトリウムが神経細胞に侵入すると、それが神経の刺激を引き起こします。
ピレスロイドはナトリウムの気孔と結びつき、空いている場所へ固着させます。それによりナトリウムは細胞へ流れ込みます。神経インパルスはコントロールがきかずに燃え上がり、結局まひや死へと導かれるのです。
ピレスロイドは鳥や哺乳類などのより大きな動物よりも、昆虫に対しより大きな影響があります。より良いことには、ピレスロイドは虫のライフサイクルの、卵の中にいるときを含む、どの段階においても影響することです。
DDTという1つの処置は、完全にトコジラミを絶滅させるのに十分でした。そしてそれらは1年間ほど絶滅したままでした。しかし1972年、DDTはアメリカで様々な理由から禁止されたのです。1つには、思春期の前にDDTにさらされた女性は、乳がんになる可能性が5倍高かったのです。
また、DDTは男性不妊や流産、神経組織や肝臓へのダメージ、子供の発達障害などとも結びつけられてきました。それは虫を殺すのと同じように人間を殺すことはないかもしれませんが、間違いなく我々にとって良いものではありません。我々は金輪際DDTを取り戻すべきではないのです。
6. トコジラミはさらに強力に進化している
最近のトコジラミの処置は有効であることもあります。しかしそれらは高価で、DDTほど信頼できるものではありませんでした。
例えば現在、そんなに多くの副作用のない他のピレスロイドがあります。我々はトコジラミに対しそれらを使ってみることは出来ますが、トコジラミはそれらに対しほぼ完ぺきな免疫を持つよう進化しました。
今日のトコジラミは、ピレスロイドに対し50年前に比べ10,000倍も強くなっています。ナトリウムの気孔の話に戻ります。それは約2,000個のアミノ酸からできており、もしたった片手いっぱいのアミノ酸を変えたとしても、ナトリウムの気孔はその役割を果たすことが分かっています。
しかしピレスロイドはそれらの新しいアミノ酸とは結びつくことが出来ません。そのせいでDDTを含むピレスロイドは、トコジラミに対し完全に役に立たなくなってしまいました。そして我々はそれに近い働きをする他のものを持ち合わせていません。
蒸気による処置は効果があります。熱い蒸気はトコジラミとその卵を殺します。しかし殺すためには、熱気は虫に直接触れなければならず、それは例えばマットレスの中にいた場合などに難しくなります。
そのような状況では、トコジラミ防止のマットレスカバーを使用することができます。本質的には、ベッドをプラスチックのフィルム袋にくるみ、トコジラミを飢えさせるのです。
しかし先ほど申し上げたように、それは最大1年ほどかかる可能性があります。なので、寝てる間にプラスチックがカサカサなる音をあなたが好きであることを祈ります。
またトコジラミが隠れられそうなヒビや裂け目をふさぐことも出来ます。それによりそれらが卵を産む場所の数も減らすことが出来るでしょう。
また、リネンや家具を数週間冷凍庫に入れ、トコジラミを凍死させる方法もあります。あなたがトコジラミの横行に悩むなら、これら全てのことをするのにプロの害虫駆除業者が結局必要になるかもしれません。それも1回では足りないかもしれません。その費用は何千ドルも発生する可能性があります。
7. 気持ち悪いけれど、実は清潔
さて、それではいい知らせはあるのでしょうか。はい、ある意味あるかもしれません。血を吸う虫にとってはおかしいのですが、トコジラミは病気を蔓延させることはありません。
人間の血液由来の病気の大半の原因は、トコジラミの体内でほぼ瞬時に分解されるのです。例えばエイズの原因となるHIVですが、トコジラミの消化システムの中で一時間以内に分解されます。トコジラミは数日に一度しか食事をしないので、基本的に噛まれることによって伝染することはありません。
より長く生き延びられるいくつかの病気もあります。例えばB型肝炎は、食事後トコジラミの消化システムの中に最大6週間ほど残ることができます。しかしウイルスが実際に新しい宿主へ移っていくという証拠は何もありません。
トコジラミはとてもきれいな捕食者と思われます。蚊のような病気を運ぶ、血をエサとする生き物は、血を吸うときにあなたの血流に注入する混合物により、あなたを病気にする可能性があります。あなたは麻酔のように噛まれたことを感じず、抗凝血剤のように噛まれている間も血は流れ続けます。それらの物質は他の犠牲者の血で汚染されています。
トコジラミもまた麻酔剤と抗凝血剤をあなたに注入しますが、血は混ざっていません。
理論上、トコジラミが何かを伝染させる可能性はあります。例えばあなたがトコジラミの上を転がり、それが潰れて破裂し、その血が開放創へ侵入した場合です。実に不快ですが。
しかしそれが実際に起こったケースは今までありません。科学者は研究室でそれを発生させることさえ出来ません。1つの例外はシャーガス病で、トコジラミの排せつ物を開いた傷跡に直接入れることにより、彼らがなんとかネズミに感染させたものです。しかしまたこれも人間には起こったことがありません。
もしあなたがトコジラミの横行に悩んでいたり、またただそうなったときのための対処を知りたいというだけでも、あなたの地元の駆除専門業者に連絡してください。ただ過去の授業だけを見ないでください、なぜならトコジラミを絶滅させるための古い学校の方法は良くなかったからです。
おそらく我々の最良の望みは、科学がなにか新しいものを見つけ出すことです。DDTと同じくらい有効で、しかし恐ろしいものではないものです。願わくば、彼らがそれをすぐ見つけ出してほしいと思います。なぜならトコジラミについて10分話した後、トコジラミが全身を這いずり回っているかんじがするからです。
そして半数の人たちはトコジラミが噛むことに全く反応を示しません。痛くもなく、痕も残りません。もしそれらが毎晩あなたの上を這っていても、あなたは知ることさえないかもしれません。
