恐竜の肉の味

マイケル・アランダ氏:ふとした時に、「恐竜の肉ってどんな味がするんだろう?」と考えたことはないですか? 実は誰しもが、最近恐竜を食べたことはあるのです。

専門的な話をすれば、鳥と恐竜はほぼ同じです。鳥の骨格を見ると、恐竜の骨格と非常によく似た特徴があります。始祖鳥からオルニトミムスに至るまで古生物学者が過去数百年にわたって発見したたくさんの化石は、現在の鳥が恐竜の子孫であることを示しています。

生物学者は生物ごとの関連性に基づいて分類していくため、ハト、ハヤブサといった現代の鳥こそ、まさに生きる恐竜である、と結論できるのです。前の晩に鶏肉の入ったポットパイを食べたり、テレビで試合を見ながらバッファローウィング(鶏手羽の素揚げ)を食べたりしたなら、それはもう美味しい恐竜肉を食べたと言っても過言ではありません。

となると、アメリカで恐竜肉は最もポピュラーな肉、ということになります。もちろん大抵の人が想像する恐竜は絶滅しているので、鳥が恐竜だとは考えません。では、絶滅した恐竜も鶏肉の味がするのでしょうか。

現代の鳥たちも味は様々です。ニワトリと七面鳥の味は違いますし、七面鳥とカモでも、さらにはエミューもまた違った味がします。恐竜肉の味の決め手には、たくさんの要素が関係しています。

肉とはつまり筋肉のことで、2種類の筋繊維でできています。赤身やモモ肉を構成しているのは遅筋線維で、歩き回るといった低負荷で長時間の運動を担っています。赤い色はミオグロビンというタンパク質の影響によるもので、これは鉄と結合して筋肉に酸素を補給する役割があります。

一方ムネ肉は速筋線維で構成されていて、ニワトリが胸筋を使って羽ばたくように、瞬間的に大きな力を出すための筋肉です。速筋線維はエネルギーを常に必要としていないので、糖を蓄えるグリコーゲンを用い、ミオグロビンは含まれていません。そのため肉は白っぽく見えるのです。速筋線維はそこまで酷使されないため、口当たりは柔らかいですが旨味はイマイチでしょう。

恐竜はその生活環境によって、モモ肉とムネ肉の割合が異なっていたと考えられます。ブラキオサウルスのような草食動物は、餌を求めて動き回っていたためモモ肉が多く、ベロキラプトルのような狩りの際に瞬発力が必要な捕食動物はムネ肉が多かったことでしょう。

肉の味はその動物が何を食べていたかにも左右されます。牧草を食べた牛と、穀物を食べた牛では、その肉を使ったハンバーガーの味はそれぞれ違います。穀物を食べる恐竜も幾らかはいましたが、ほとんどの恐竜は草を食べていました。どちらが美味しいでしょうかね。

中生代に目を向けてみると、恐竜は哺乳類を食べていたようですが、中には恐竜を食べる哺乳類もいたようです。2005年研究者たちはオポッサム程度の大きさの哺乳類の化石を発見し、そのお腹に恐竜の赤ちゃんがいた痕跡を見つけました。

結局、恐竜肉の味は厳密には分かりませんが、私たちの祖先はウマい具合に食べてたんでしょうね。