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1着15万円のカーディガンに注文殺到! マッキンゼー出身者が発掘した、地方ビジネスの可能性とは?

1着15万円のカーディガンに注文殺到! マッキンゼー出身者が発掘した、地方ビジネスの可能性とは?

東日本大震災で多くの人が仕事を追われた宮城・気仙沼市の再生のため、マッキンゼー出身の気仙沼ニッティング・御手洗瑞子氏が始めた新ビジネス。それは、港町であるという地域特性を活かした、漁網の扱いに慣れた漁師の妻が編む手編みのニットでした。気仙沼ニッティングではオーダーメイドで作られる1着15万円の高額カーディガンに注文が殺到。御手洗氏はこのスピーチで、ハンドメイドのこだわりと復興への思いについて語ります。(TEDxTokyo2014 より)

スピーカー
ブータン政府初代首相フェロー/気仙沼ニッティング代表 御手洗瑞子 氏
参照動画
Kesennuma sweaters

仕事がないと自尊心も奪われる

御手洗瑞子氏(以下、御手洗) こんにちは。皆さん、たまたま行った町を、すごく好きになっちゃったことってありますか? ……あ、パトリック(TEDxTokyo創設者)に観客に質問するなと言われていたのに、最初から質問で始めてしまいました。 私はあります。気仙沼っていう町なんです。気仙沼は東京から4~5時間かかります。東北新幹線に乗って一ノ関まで行って、そこから大船渡線というローカル線で、ずっと山越え谷越え行くんですね。ずいぶん遠くまで行くなぁという感じで、最後に長いトンネルを通るんです。トンネルを抜けると、パッと景色が開けて、こんな場所に出ます。 1 これが気仙沼です。気仙沼は人口7万人のすごく小さな町なんですけど、行ってみたら何にびっくりしたって、人々がものすごくグローバルなんですね。例えば日常会話の中で、「えーっとこの前、ケープタウンまわってラスパルマフに行って……」とかですね、「今、スエズ運河が……」とかが普通に出てくるんです。 それもそのはずで、この気仙沼は遠洋漁業の港町なんですね。漁師さんたちは魚を追いかけて、地球の反対側まで行く、そういう町です。今日の会場は渋谷ですけど、気仙沼のおじちゃんだったら、「うわー渋谷なんて怖いところ行ったことねー」って言うと思うんですけど、「あぁハワイなら、昔よく行った」って言うんですね。船でって意味なんですけどね。そんな町です。 気仙沼の人たちが皆グローバルなんで、面白くってですね、すっかりこの町が好きになっちゃったんです。でもこの気仙沼、大変なことがありました。2011年の東日本大震災で、被災したんですね。 2 こんなに大きな船……気仙沼だから船があるんですけど、こんな大きな船が陸に打ち上げられるぐらいの大きな津波が来て、たくさんの建物が流されました。家も、会社もですね。だから私が気仙沼に行ったとき、多くの人が仕事がない状態だったんです。で、仕事のない状態の人に会うとですね、そうか、仕事って単にお金のための物じゃないんだ、ってすごく感じました。 仕事のない状況の何がつらいって、自尊心が奪われてしまうんですね。自分は人の役に立つことが出来る、そして喜んでもらえる、っていう自尊心が奪われてしまう。じゃあ気仙沼で、人が誇りを持てる仕事を作りたいな。且つ、それがビジネスとして成り立てば、地域で持続していきますし、地域の経済に継続的に貢献できる。

「漁師の妻」というスキルを活かしたビジネス

そういう仕事を作ろうと思って始めたのが、「気仙沼ニッティング」という会社なんですけど、何をしているかというと、大体名前からバレてしまうんですけど、編み物の会社なんですね。 3 気仙沼の編み手さんたちが、セーターやカーディガンを編んで、それをお客様にお届けする仕事をしています。この話をすると大体ですね、「なんで編み物なんですか?」と聞かれるんですけど、割と答えはシンプルでして。気仙沼は港町なので、漁師さんや奥さんたちが漁網を補修したりしていて、手先が器用なんですね。 4 さらに、今漁師さんたちは着るものがダウンやフリースになっていますけど、その前はセーターだったので、奥さんたちが編んでいたりですとか、そのセーターを編む仕事をしていた人がいっぱいいました。編み物はすごく身近だったんですね。じゃあこれを仕事にしようと。 ところで皆さん、編み物したことありますか? 1着のカーディガンやセーターを仕上げるのに、何時間ぐらいかかるでしょうか? 質問するなと言われているのに、またしちゃってますけど(笑)。これ、物によりますけど、標準的なフィッシャーマンセーター、フィッシャーマンカーディガンですと、50時間以上かかります。 じゃあこれをビジネスにしようと考えたときにですね、1着あたりいくらぐらいになんないといけないか。編み手さんたちにちゃんと編み代を払おう、というのがもともとの目的ですよ。だからそこは、ケチれない。じゃあ、15万円。15万円で売れるカーディガンを作ろう、という風に考えたんですね。なかなかです。そうしたらもう、最高の物を作らなくてはいけない。単に「編むのに時間がかかったから高いんです」、では通用しないので、最初に毛糸を作る所から始めたんですね。最高のカーディガンを作るんだったら、最高の毛糸を作ろうと。 5 それで、世界中の羊毛を集めて、何度も撚り(より)をかけなおして、糸を作った。もちろんデザインも大事です。人気の編み物作家さんにお願いしました。 6 もちろん編む技術も必要です。もともと家族のセーターを編んでいたとはいえ、それがすぐプロのレベルにはならないので、何か月も練習しました。 7 そうやって、最初の商品が出来ました。最初はうちの会社、編み手さんが4人しかいなかったので、4着しか出来なかったんです。オーダーメイドで作ります。4着のこのカーディガン、欲しい人! って募集掛けたんですね。ちゃんとお客さんいるかなって、すごいドキドキしたんですけど、何と100件もの応募がありました。今に至るまで、ずっと募集をかけているんですけど、ずっとたくさんの応募をいただくので、このオーダーメイドのカーディガンは、未だに抽選販売をしているんです。

一生モノの服を気仙沼から

なんでそういう服が欲しいんだろう? 逆に質問なんですけど……また質問しちゃった。皆さん、お家に、一生着たいなって服はタンスの中に何着ぐらいありますか? もしくは自分が子供にまで引き継ぎたいなと思う服、もしくは自分が親からもらった服。……着物を思い浮かべました。日本には着物を受け継いでいくカルチャーがありますけど、着物以外にそういう服ってありますか? 「気仙沼ニッティング」で注文してくださったお客様が言っていたのは、ある日タンスを開けたら、自分が子供にまで引き継ぎたいと思える服が、1着もなかった。だから「気仙沼ニッティング」でカーディガンをオーダーしたいです、と。 また、あるお客さんが言ってくれたのは、まるで気仙沼に親戚が出来るみたい。自分のためにセーターを編んでくれる人がいて、何か嬉しいことがあったら報告したくなって、東北に出張になったら、じゃあ気仙沼に寄ろうかなと思える、と。このご家族は海外に住んでいるんですけど、一時帰国のたびに、お休みのたびに、家族で気仙沼にいらっしゃって下さいます。 「気仙沼ニッティング」は小さいんですけど、そんな風にお客さんとの濃いつながりで始まって、今どうなったかというと……編み手さんは最初4人だったんですけど、30人以上になりました。商品も最初一つの種類しかなかったんですけど、増えてきました。この前法人化して、最初の決済を迎えたんですけど、お客様のおかげで、無事に黒字だったんですね。 それで編み手さんたちに、「皆さんがコツコツ編んでくださったおかげで黒字になりました。だからこれで気仙沼に納税できます!」って発表したら、編み手さんたちがわーって喜んでくださって、「良かった、これで私たち、肩で風を切って、気仙沼を歩きます」って言ってくれたんですね。もう冥利に尽きる、とはこのことだって感じだったんですけど、こんな風に「気仙沼ニッティング」は進んでいます。 ここまで、さんざん会社の話をして……セーター、出してないですよね? セーター見たいですか? (会場拍手) 御手洗 見たいですか? それでは、どうぞ舞台に出ていらしてください。今日気仙沼から来て下さった編み手さんたちです。 8 (会場拍手) 着ていらっしゃるのが、今編み手さんたちが編んでくださっている、セーターとカーディガンです。 この「気仙沼ニッティング」というのは、もともと震災後の気仙沼に、人が誇りが持てる仕事を作りたい、というところから始まった一つのビジネスです。でもこういうものが、もっともっと出てきてくれたらいいと思うんです。もちろん東北からもですし、日本のいろんな町から、世界の町から。 やっぱりどの町にも、課題はあると思うんです。でも同時にどの町にも、可能性がある。だからそれを形にしてくれる人が、たくさんたくさん出てきてくれたらいいな、と思っています。You can make a difference、どうもありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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