人間の遠い先祖かもしれない不思議な生物が発見

ハンク・グリーン氏:私たちの存在自体がすばらしいことです。なんらかの方法で、得体の知れない大量の原始的な生き物が今日の地球上の生命体となりました。

なにが起きたのかを解明するため、科学者たちは化石記録に目を向けました。現在の中国中部で発見された5億4,000万年前の人類の顔を、科学者チームが復元したという論文が今週発売の雑誌ネイチャー誌に掲載されました。

まるで宇宙人のような、B級怪獣映画に登場しそうな顔をしていますが、ものすごく小さく、わずか1ミリメートルほどの大きさです。だから怖がる必要はありません。

科学者たちはSaccorhytus coronarius(以下S. coronarius)と名付けました。この生物の体の形、つまり「袋」を意味するラテン語と、ギリシャ語の「しわ」が属名の由来です。だから「しわくちゃな袋」です。そして種名は王冠型の口を見れば納得できます。

S.coronariusは基本的にはミミズですが、単なるミミズではありません。人間から犬まで、すべての脊椎動物に限らず、ヒトデのような無脊椎動物の祖先なのかもしれません。

生物学者たちいわく、私たちは新口動物、つまり、命の起源が胚からです。新口動物の一般的な定義の1つは、口の形ですが、SciShowの視聴者の方々が好む言い方をすれば、肛門の発達も定義のひとつです。

私たちの起源は、消化器の筒になるぶよぶよした小さなくぼみのような細胞です。昆虫やカニやミミズなどの前口動物がこの筒を形成すると、初めに開いた方が口として機能します。しかし、新口動物は逆で、最初に開いた方が肛門になり、次に開いた方が口になります。

今回の発見をした科学者たちは、ほかの60以上ものの生き物と化石を比較した結果、S.coronariusが新口動物の最古の生命体ではないかと考えています。

不思議なことに、S.coronariusには大きな口があるものの、肛門と言えるような穴がありません。でも、肛門がないからと言って、S.coronariusが新口動物に該当しないというわけではありません。「まず肛門、次に口」という発展の定義はあくまでも経験則にすぎないからです。

動植物の分類法は非常に面倒で、生物学や遺伝学が発展してきてからは分類法の規則に例外があることがわかってきました。つまり、最古の新口動物がろ過摂食する際の手助けとなった穴のような共通の特徴を知ることができるかもしれません。

S.coronariusにはこの類の穴が多数あり、もしかしたら体内の不要なものを排出するためにも使われていたかもしれません。だから、我々人間はこの「王冠のような口をしたしわくちゃな袋」と血縁関係にあるのかもしれません。

金属水素の生成に成功?

我々人類の最古の祖先を探し求めている科学者がいる一方で、珍しい、しかしとても役に立つ物質を作り出そうとしている科学者もいます。

先週発売されたサイエンス誌に、ハーバード大学の2人の研究者が金属水素を作成したと発表しました。これは、物理学者が80年以上試みてきたことです。

金属水素は非常に重要です。効率の良い電子機器からロケット燃料まで、ありとあらゆる新しい技術に使われるものです。しかし、結果的にこの成果は大変な物議を醸しています。多くの科学者はこの結果の確実性に疑問を持っていて、いくつかの欠点を指摘しています。

化学を少し勉強した方ならおわかりかと思いますが、通常、水素は金属ではありません。金属は光や熱に反射し、電気を通しますが、水素はこのいずれもできません。

水素が最適な状態、とくに高圧力状態だと金属になると、1935年に物理学者は予測しました。この実現方法を発見できれば非常に便利です。

金属水素は室温で超伝導体、つまり完璧に電気を通すと言われています。これまでに発見されている他の超伝導体は非常に低い温度では機能しますが、室温で同じことができれば電力の伝導がより効率的に行われ、電力産業にとって大革命をもたらします。その非常に強力な結束のおかげで金属水素はエネルギーを蓄えるのに優れているので、液体水素と酸素を使用する現在のロケット燃料よりも高性能なものを作り出すことができます。

研究者たちは何十年にもわたり、金属水素を作り上げる努力をしてきました。そしてついにハーバード大学の物理学者たちがやり遂げました。

0度をわずかに超えた気温の中で注意深く調整された2つの小さなダイアモンドの万力の中で水素ガスに圧力をかけます。

ダイアモンド間の圧力が上昇すると、サンプルが黒く変わり、黒い水素の固形が形成されました。海抜ゼロ地点の気圧の500万倍の圧力に達すると、サンプルは輝いてきました。まるで金属のように、サンプルに当たる光の90パーセントを反射したのです。

研究者たちは、固形の金属水素の作成に成功したという結果を先週発表しました。しかし、ほかの物理学者たちはこの結果に懐疑的でした。

これまで何十年も過去の優秀な科学者たちが試しては失敗してきたことなので、私ですら懐疑的になります。というのも、今回の実験では、ダイアモンドが壊れないように表面を酸化アルミニウムで覆っていたので、キラキラ輝いて見えたのが金属水素ではなく、金属酸化アルミニウムだった可能性も否めません。

また、圧力を正確に測定するためのレーザーは、ダイアモンドを弱める働きがあるため、実験の間ずっと圧力を測定することができませんでした。しかも、でき上がった物質の伝導性のみならず、本当に固形物なのかどうかも確認していません。いずれも、固形の金属超伝導体を作成したなら確認しておかなければならない重要な項目です。

研究者たちは、当該サンプルを破損する可能性があるので、これ以上テストしないと言っています。研究結果をまず発表したかったのです。

しかし、次のステップは、レーザーとX線を分散させて水素エネルギー源を分析することです。結局、万力を取り外し、その後も水素が固形性や金属性を維持できるかどうかを見ることになりました。理論的に言えば、そうなりますよね。

もちろん、サンプルをもっと作ることも考えています。これらのテストがすべて成功すれば、もっと説得力のある実験になるでしょう。それまでは本当に金属水素を作るのに成功したとは言えないでしょう。でももし本当であれば、未来の科学技術に対する大きな進歩になります。