いっしょに寝ると、仲良くなる

岡島:レガシーな企業かもしれませんけど、グループ経営に振っていった途端に、壁が高くなっちゃって、三遊間にボールが落ちるとか、逆に自分のところを守るための言い訳が出てきちゃうということもあるような気がして。

川邊:社長同士のリレーションが大事なんですかね。別にASKULは電気通(信事業)対象の会社じゃないですけど、非常に近しくやっていて、この間、岩田社長の家にお邪魔して、担当役員の小澤さんと宮坂社長と岩田さんと僕とで、みんなで一緒に寝ましたからね。

岡島:それは意味あるの?(笑)。

川邊:仲良くなりましたよ。やっぱりみんなで一緒に寝たら。トップ同士の距離が近ければ結構いけるんじゃないですか? 昔なんか、商社とか財閥家とか木曜会とかあったじゃないですか。毎週会って、ただ飯食うみたいな。

岡島:単なるランチ会ですけどね、あれは。

川邊:ああいうの大事なんじゃないかな、という仮説がわれわれの中にありますけどね。

岡島:寝食を共にする。

川邊:寝食を共にする。別にアジェンダがなくても会って、ワイワイしとく、みたいな。

岡島:そういう意味ではコロプラさんは、ここの中でも結構珍しい会社ではないかと思うんですけど、役員合宿一切やってないんでしょ?

千葉:そうなんですよ。

岡島:今の寝食を共にする、というのをやらないで済んでいるのかな?

千葉:多分IT業界で話題の役員合宿なるものを、創業から6年になるんですがまだ一回もやったことなくて。過去2回役員で飲んだことがあるんですが、マザーズを上場した時と、この間一部上場した時と。

岡島:2回しかないんですか?

千葉:2回です。

川邊:さびしがり屋が少ないんじゃないんですか? 会社に。

千葉:いや、みんなさびしがり屋なんですよね。

岡島:なんか清い会社な感じがします。

千葉:でも役員合宿やってみようかなと最近思い始めていて。役員合宿で変革を促すやり方の極意とか、今日は勉強したいなとか……ありますか?

イノベーティブじゃないところは、年配の方に学ぶ

岡島:あるある。グリーさんは今の話でいうと、グループ経営にしていくときに、トップがみんな一緒に育ってきているという面があると思います。今の話の役員合宿も、結構意識的にやっていらっしゃいますよね。

田中:そうですね。ただ役員合宿は僕らもずっとやったことなかったんですけど、ここ1、2年で、泊りでやってみようとか、そういったアプローチをやってますね。

千葉:最初なかったんですか?

田中:毎日毎日会っているんで、これ以上会う必要があるのかと(笑)。でも会社が大きくなると、社内でも会う機会が減ってくる。そのため濃密な時間を増やしたいというのがありました。この2年ぐらいで、僕もいろんなところで未熟だったなと日々反省しています……。

岡島:未熟だったなとか、ずるいですよー。

田中:そんなことないです、未熟者で。

岡島:心証が良くなる(笑)

川邊:何が未熟なんですか?

田中:人生、人生。

(会場笑)

川邊:すみません(笑)。

田中:で、これは私の良いところであり悪いところだと思っていて、それがグリーの良いところでもあるなと思っているんですけど、結構考える必要がないことまでゼロ思考で考えて、全く新しいクリエイティブなやり方を考えてしまいたくなる。

前向きな問題解決能力がある反面、そこ考える必要ないんじゃないか? というところまで考えないと気が済まないというところがあったりしまして。そうして考えながら1,000人規模で売り上げ1000億の会社をやってきた中で、いろいろわからないこともたくさんあるなと。

この2年ぐらいで転換したのは、自分たちよりも大きな会社を経営してきた人たちを、どんどんアドバイザーや相談役という形で来ていただいて、その人たちの意見を聞くという会社に変えていきました。インターネットのInnovationのところは、自分たちでゼロ思考で考えていけばいいと思うのですけれど、経理の業務フローとか、どうやったらより良い会社になるのか、そんなことはどこの会社もそんなにInnovativeな手法があるわけではないと思うんですよね。

うちの会社にも、いわゆる大企業出身の人がたくさんいますが、同年代の人だと、大企業の経営をしたことがあるわけではないんですよね。数千人の会社を経営していたわけではないので、数千人の経営をしたことのある50、60(代)の人、あるいはそういう会社を退陣した人に来てもらったり話をしてもらい、そうやってやるもんなんですね、というのを聞く。

たとえば役員会のやり方ひとつとっても、どうやって議事進行するのかとか、その人たちの言うことを真に受けて、その通りにやってみましょうみたいな感じでやってみて、違うなと思ったことは変えていけばいいと思うんですけれど。そういうアプローチに変えたというのがここ2年ぐらいの変化です。

岡島:ブレーキになったりしないのですか? 違ったらやめる、みたいな話は。

田中:正直、内心どこかで「本当かな?」とか、「そうなのかな?」とか素直に聞こうと思っていても、考えてしまいますが(笑)。それでも素直に聞くよう心がけています。

24時間経った稟議は、自動承認!

川邊:でもお手本があるのは大事ですよね。まずマネてみて、自分たちに合わなかったら変えるということができるので。われわれもソフトバンクの役会のやり方とか……まあものの考え方は、マネしたくないんですけど。

岡島:(笑)。

川邊:いろんなの参考になりますよ。それだけ、やってきた人たちなので。

岡島:ソフトバンクの役員会って、すごい躍動感って。

川邊:この間、「ほえるソフトバンク」って本出たじゃないですか。帯に「会議は動物園!」って書いてあって、その通りだと思った。ヤフーはそれでもそれなりにちゃんと進行するんです。一人一人発言して。ソフトバンクは5人同時にしゃべるんですよ。

岡島:え、聞き取れるんですか?

川邊:皆わーっとしゃべって、より長くしゃべったやつが、最後一人になるっていう。

(会場笑)

川邊:そういう感じなんですよね。

岡島:大きい会社なので、すごく動物園ぽいというか。

川邊:そうです。本当に動物園なんです。あの帯、よくできているな、本当にこんな感じなんだよ、と思ったんです。それを別に参考にしているわけではないんですけど。

岡島:それでも、物事は決まっていくんですよね。

川邊:結構早く決まりますよね。ソフトバンクの人から聞いて、確かにそうしたほうがいいなと思ったのは、「経営っていうのは決めることだよ。間違っても決めるんだよ」と言われたのと、「稟議は24時間制で、24時間経つと自動承認になります」と言われたんです。稟議じゃねーじゃん!と思ったんですけど。

(会場笑)

岡島:私いったグロービスでも、そうですよ。答えなかったやつが悪い! みたいな。そのままスルーされちゃう。

川邊:まあそういうマネする対象があって、情報が取れているというのはすごく大事だなという気がします。

トップダウンか、完全な権限移譲か

岡島:破壊的Innovationの話にちょっとだけ寄らせると、今みたいに喧々諤々議論をするのか、グループ経営をして権限委譲をするのかはその通りだと思うんですけど、さっきの破壊的Innovationみたいなものはちょっと異質なものだったり、正直合理的に説明ができないというか、当たるか当たらないか全然わかんないよねっていう。

こっちは着々と稼げているのにっていう、誰かがちゃんと説明責任を持てるようなものじゃなかったりするじゃないですか。最後は誰かが庇護者というか保護者になって、「いいよやってみ」ってならないと難しい気がするんです。だんだんグループ経営になっていったり、集団的に物事を決めようとすると、摩擦係数を避けるみたいな感じになって、丸っこい感じにはならないんですか?

川邊:ちゃんとラインを通すと丸っこい形になりまくっていたのが、いっときのヤフーですよね。それを解消するためにやっていたのは2つで、1個は思いっきりトップダウンでやるということですよね。滑るときもありますけど。もう1個は逆に、権限委譲してしまって、現場がやりたいことを見ない。見だすと何か言いたくなるし、丸くなるので、見ないで「行けー!」「責任はとるからー!」という、この2つしかないんじゃないかな? 

毎回IVSはソフトバンクの情報が出てこないので、私がソフトバンクの語り部をするのが私のせめて出せる付加価値かなと思っているので……ソフトバンクは孫さんが、3カ月に一度、「10年に一度のチャンスが来た」と話し出すんですね。

(会場笑)

川邊:「聞け川邊、10年に一度のチャンスが来た」と。「それ3カ月に一度のチャンスなんじゃないですか?」って毎回突っ込むんですけど。あそこはどっちかというとそんな感じで、ヤフーは両方ちょっとずつやって、みたいな。

あまり考えずにやる

岡島:バランスがすごく難しいですよね。議論をする、権限委譲をする、現場に任せるみたいなことと、誰かが、えいっと決めることと。アメリカはトップに権限が集中しているような気がして、田中さんは経営トップがえいっと決めること、どう考えてます?

田中:決めるのは決めるんですけど、サービスをつくっていくというのは、相当細かいところまで最後決めなくてはいけなくて。でも私がそれをやるわけにはいかない、というかできないので、できる人に権限を委譲する仕組みを今つくっています。

うちの会社はオーナー企業なわけですけど、会社の良さとして、お前に全部任せる、ということを、大胆にやりやすいという特徴があります。それを最大限に生かさないといけない。皆さんも思い出してほしいんですけど、今ゲームプラットホームとかモバイルゲームとかネイティブゲームはいろいろありますけど、うちの会社も、もともと釣りゲームを作り始めたところから始まっているんですよ!

岡島:そうだった(笑)。

田中:はっきり言って釣りゲームを作り始めたころに、これが将来ブラウザのモバイルプラットホームになって、アメリカに進出して、なんて言って作るわけないじゃないですか。ただそれがうまくいき始めたときに、これはこうしてこうなる、と思ってガッといくと。

最初に釣竿1本1,000円かなと思っていたときには思わないわけですよね。それぐらいのところから始まっても、あのぐらいのInnovationは起きるわけだから、初めからあまり考えてもしょうがない。けれども、ちょっと起きたときにこの先にあるInnovationを推察できるかはポイントかなと思ってます。

岡島:目利きがすごく大事だったりするということですよね。

田中:釣りゲームひとつとってみても、PCからのオンラインゲームの流れは来ている、モバイルの革命が来れば何倍にもなる、さらに韓国ではオンラインゲームは一大マーケティングになっていると。それが三乗ぐらいになると、専用機から汎用機への流れもあるぞ。そういったことは全部これからモバイルゲームが来る、という流れを指しているわけですよね。

それが自分たちで実現できるのかというのは、実際の製品が出てこないとマーケットを自ら主導できないわけですよね。その大きなマーケットがあるというイメージと、この製品で行けるというトリガーが重なったときに行けるなと自分は思っているので、あんまり考えずにトリガーを作らせるということと、本当にその先に大きなマーケットがバコッとあるのか、という両方軸で事業を見ています。

コロプラが業界の集まりに出ない理由

岡島:コロプラさんは、その辺どうですか?

千葉:うちは変わった会社な気がして。もちろん馬場がオーナー社長なので、大きな意思決定とか変換のときは、基本、馬場が決めますね。でも冒頭申し上げたように、社風としてはすごく慎重で、あまり変化を求めないというか、石橋を叩いて物事全部を決めるんです。けれど、うちで徹底してやっているのは、業界の集まりになるべく行かないようにする、という……。

岡島:これ(IVS)は?(笑)

川邊:ゲーム業界の北朝鮮って言われてますからね。

千葉:いや、スイス、スイス!

(会場笑)

川邊:間違えました、スイスですね。

岡島:だいぶ違いますよ。

千葉:中立のほう。

岡島:見出しにゲーム業界の北朝鮮って書かれちゃう。

千葉:唯一僕は社内で、出島と呼ばれていて、IVSだけ行くことの許されている人間で、馬場含めて基本、業界の集まりに行かないと。

岡島:前回は長谷部さんが、場をかっさらっていきましたけど。

千葉:無理やり連れてきたんですけど……今日は来てくれませんでしたね(笑)。まあ一応それには理由があって、ずっと変革していくにはいろんな情報が必要なんだけど、逆に生の情報ってインパクトがあるので、あえて遮断することでピュアに数字や市場に対峙できるんじゃないか、というのがわれわれの思っていることです。

もともと引きこもりの体質もあるんですけど、せっかくだからひたすら数字を見よう、と出来上がった文化が今のコロプラだと思っていて、社内で黙々とありとあらゆる数字を観察しながら、何か状況の変化を見て、次はこっちにいってみようか、みたいなことをし続ける。大きな変革は今までしてきていないと思っているんですけど、破壊的Innovationだけが変化・変革ではなく。

ナンバリングタイトルはつくらない

岡島:でも位置ゲーからの転換は、やっぱり。

千葉:あれは大きかったですね。ただ日常では、今はスマートフォンゲームをひたすら作る会社として注力していこうと思っているし、いっぱいゲームを作ろうと思っているんですね。でも、そこにはルールを持っていて、過去作ったゲームよりもより斬新で未来を追うものだけを作っていこうと。たとえばナンバリングタイトルはやらない、という社内ルールがあって……。

岡島:黒猫2、黒猫3、みたいなのはやらないと。

千葉:やらないですね。黒猫チームが大ヒットしたら、黒猫チームは分離して、白猫プロジェクトという、「自分たちが作った黒猫を超えるんだ!」という想いのもと立ち上がったりですとか。そんな感じで半年や一年後の未来に流行るものを、ひたすら地味に社内でデータを見て作っていくということをやり続けて会社が変わっていっている感じですね。

川邊:スーパーセルもそれやってるって。

千葉:あ、そうなんですか?

川邊:スーパーセルの方針は、とにかく出さない。だって2個ぐらいしかゲーム出してないでしょ? とにかく出さないというのと、ヒットさせたチームをすぐ引きはがして、違うことをしてもらう。

千葉:うち完全に、そのやり方ですね。エンジニアだと年間5回ぐらい社内異動があって、ひたすらプロジェクトが変わっていくわけです。立ち上げると、次、みたいな。

岡島:Innovationという意味で、「揺らぎ」ってとても大事だから、1カ所に人が固定化しちゃうのは……。そこを崩すのが難しいですよね。

千葉:それがやっぱり理想ですよね。コロプラは2年ぐらい前にスマートフォンに移行してから、ゲームの舵を切るぞ、意地でもやるんだと決めてから、人を増やすという核を取ったので、いろんな会社さんにヒアリングして。

コンシューマ系のゲーム業界ではスタジオ制をとってしまうと人を固定化してしまって、そこにノウハウも人も、下手したら情報も隔離されてしまうという話を聞いて、だったら徹底的に異動したほうがいろんな意味でいいんじゃないかと思って、社内はとにかく異動文化にしていますね。

岡島:今おっしゃっていたように、黒猫がヒットしたら、その人たちが引っぺがされて、白猫プロジェクトに自分たちで手を挙げて。そうするとその下にいた黒猫の人たちが、またぐっと伸びてくる。

千葉:新しいメンバーがそこにも入ってくるので、あの「黒猫のウィズ」にいきなり配属された、と思うんですね。

いかに居心地を悪くするか

岡島:やっぱり揺らぎの仕組みをつくっていく。皆さんの定着率みたいなことも、聞きたいなと思うんですけど、ベンチャーってステージにもよると思いますが、あまりにも離職率が低い。5%とか3%と言われると、この会社仲良しクラブすぎるんじゃないかと……。20年ずっといますという人ばっかりみたいなのも怖いなと思っていて。そういう意味で揺らぎを起こすみたいなことは、川邊さんは何かやっていることあります?

川邊:揺らぎっていうのは、すごく大事ですよね。「自己組織化する」という著名な本もありますけど、そこでも揺らぎというのがテーマで、揺らげば何かが起きる、何かを起こす組織をつくらなければいけない。いかに良い意味で居心地を悪くするか、ということに腐心したこの2年間だったなと思います。

ヤフーの場合は、前回のIVSで話しましたが、うちの人事の本間という理論派がいろいろな考えを持っていて、とにかく異動こそが最大の人材開発、という信念を持って今やっていて、3年を目途に役割を変わってもらう。役職は配役という言い方をしていて、役職で固定するのではなくて、役割は配役だと思って変わっていきますよと。現に2年目のこの間の4月に、うちは執行役員を結構変えましたので。そうやって動いて揺らぎを発生させるように……。

岡島:またちょっと入れ替えたりされてますよね。

川邊:そうですね。何人かが入れ替わりまして。

岡島:ごめんなさいね、お二人写真をいただけなかったので白抜きなんですが。

川邊:そうそう。宮澤と梅村と仲原と本間というのが、新しく執行役員に入れ替わりました。なる人もいっときはそういう役割をやると。

岡島:Innovationを起こすためには、ジャングルジム型の異動というか、まっすぐ行くという。どうしてもスペシャリティを深めようとすると、1個のところに塩漬けにしがちですけど、アメリカを見ているとダブルメジャーみたいな人が、それこそ新結合じゃないですけど、面白いものを作っていったりするので、異動とか配置をガンガンやるというのはあり得ますよね。

川邊:そうですね。ある程度組織が大きいからできる豊かさではあるんですけど、大きいからにはそれを活用して、特にヤフーの場合は1社にいながら、グーグルの経験とイーベイの経験とアマゾンの経験と読売新聞の経験と、全部できるので。むしろ異動したほうがトータルにインターネットビジネスやプログラミングに詳しい人がつくれるので、それを有効活用したいなと思っています。

異動させ過ぎると、気持ちに逃げが出る

岡島:私、半沢直樹がすごくまずいと思っていて、出向するとかいうと、なんかもう終わった人みたいになるじゃないですか。もっとみんなが異動するようになったらいいんだろうなと思うのですが……。田中さんのところはInnovationを生み続けるための配置換えのメカニズムとか、どんな感じでやっていますか?

田中:最近家で、たまたま何年も使っていないパソコンを見つけたんです。パッと開けたら、Macのメモ帳みたいなところに、赤字とか太字とかで、次は誰をどこに異動させるかのプランがあって。それくらい、昔は全部自分で人事を考えていた。2~300人のときはできていたんですが、それ以上は難しい。

実際に異動させていくには、逆に異動させないところや、どこを異動させれば会社は良くなるのか、そういったことをまず考えていかないといけない。小っちゃい会社だとその影響も考えられますけど、ある程度大きくなってくると、自分ではすべての人事の関連性がわからない中で、こことここは維持しようとかを考えなければいけない。

岡島:オペレーションやっているところは、ちゃんと回るようにしようとか。

田中:ただその中で、子会社にしてそこに送り込むということは、この会社と命運を共にしようという追い込みをかけることでもあるんですね。またコロコロと異動させていくと、逆に、次も異動があるんじゃないかと、まあいいか、という気持ちに逃げようとしてしまうこともあるなと思っていまして。

どちらかというと、命運を共にしようと奮い立たせるのが得意なタイプなんで、まずはいかにそう思わせるかを主で考えたうえで……とは言ってもどんどんやっていくと馴れてしまったりするので、その前に変えるということを考えていますね。

コロプラの仕様書ゼロ文化

岡島:千葉さんはこの配置……でも手挙げということもおっしゃってましたね。メカニズムとして仕掛けていることはあるのですか?

千葉:手挙げよりも、会社命令の異動のほうが圧倒的に多いですね。この間、昨年10月に入ったエンジニアとランチしていたら、「千葉さん、もう5回目ですよ5回目」みたいなこと言われて、すんません、みたいな。

岡島:異動慣れというか、アウェー慣れみたいなこともすごく大事だし。

千葉:それを文化にしちゃってるんで、それは良いなと最近思っていて。毎週席替えもやっているし。あ、うちいくつか変なところがあるんですが、プロジェクトの兼任というのをしないんですね。一人が必ず一プロジェクト、兼任なし。スモールチームなので、異動をすると基本そのスモールチームに入って2~3カ月やって、異動をするとまたスモールチームに入る、そのチームはすべて同じ席にいて、その席替えもずーっとやり続ける。

あともう一つ変なのが、コロプラってこの規模でも、仕様書が全くない会社なんですよ。昔からうちは仕様書のない文化だったんですが、この規模になってもサービス全てに対して、仕様書もなければ企画書もなく、経営会議が通っていく。ひたすら変化するということを前提としたチームプロジェクトかな、と思っているので。

半年とか10カ月とか、開発しているうちに時代は変わっちゃうし、思った通りできなかったとか競合で面白いのが出ちゃったというのに対応しなくてはいけないので、毎日壊して毎日新しいものをつくろうと。

下手したら、うちの三国志というゲームがそうだったんですけど、全部作り上がっても一回全部捨てて、1カ月半で全くリニューアルして作り上げるとか。お蔵入りはしないけど、絶対に出すんだ、その代りに全部中身が変わってもやり続けるという文化を。大きい変革って大変なので、毎日スモール変革を……。

攻めて失敗するくらいなら、小さな成功を

岡島:トライアルさせて、くるくる回して、ダメだったら引っ込めるし、あまりルールで縛らず。行動指針みたいな話だと思うんですけど。

千葉:そうですね。ただヤフーさんと真逆なのは、失敗が許されない文化ですね。

川邊:許されない? どう許されないんですか? どんなんなっちゃうの、失敗すると。

千葉:失敗すると、きついっすね……。

岡島:それってこの前の、JTBのバスの人みたいに、失敗を隠しちゃったりはしないんですか?

千葉:(笑)。でもうちの場合はスマホだから、レーティングもダウンロードも出ちゃうんで、ばれますよね。

川邊:左遷されるの?

千葉:いやいや。

川邊:それとも給料が下がるの?

千葉:まあ普通にそういう話ですよね。で、初期のグリーさんがそういう文化だったのではないかと僕は推察していて、うちの役員は社長を含めてグリー出身が2人いるので、そういう文化が色濃くグリーから遺伝しているわけですよ。今のグリーさんはわからないですけど、うちは本当に絶対成功するぞと、ただ大きい成功ではなくて小さい成功でもいいので、とにかく成功だけを積み上げろっていう、考え方です。

社員の成長の考え方も、いきなり大きなチャレンジして失敗するぐらいだったら、小さな成功でもいいから成功させて、それをちょっとずつ大きくさせることで自信をつけさせろというのを徹底しているので、なかなか失敗できないから意思決定が臆病なんです。

失敗奨励文化に変わったヤフー

田中:うちの会社そんな感じだっけ?(笑)

千葉:そうだったらしいですよ、馬場曰く。

田中:そうだったんですね。

岡島:自分の会社(笑)。

千葉:徹底的に失敗が許されない環境だったと。すげー緊張感だったと。

田中:絶対成功させるんだと、そういうふうには思ってました。

千葉:だとしたら、うちで遺伝されて、なんか変化してますね(笑)。

岡島:ヤフーはだいぶ違いますね、そういう意味では。

川邊:ヤフーの場合は、プラットホームというか、そういうサービスなので、オペレイティブな業務が多いですよね。安定してやってくれればいいとか、石橋を叩いてきちんと運用しようみたいなのが、結構長く続きました。そのときも失敗は許されないぞという雰囲気ではなかったですけど、いかに失敗しないように完璧にオペレーションするか、周りから怒られないようにするか。

そうやってきた結果、さっきのオークションの話ではないですけど、ヤフーほにゃららとか、最近話題になるもの無くなってきたじゃん、やんなきゃ、というときに、失敗してもいいからガンガンやろうぜと、当面潰れないんだからむしろ潰れるぐらい損させる挑戦をしてみようよ、とわれわれは途中で失敗を奨励するように変わったということです。

岡島:業務の特性やカルチャーみたいなもの、経営陣の考え方みたいなものもあるんでしょうね。

川邊:まあ途中で忘れちゃうっていうのもあるんですけどね。失敗したのか成功したのかも、途中で話題が移っちゃって、忘れてるっていうのもあると思いますけど。

制作協力:VoXT