肉体の限界に挑戦する芸術家たち

カリン・ユエン氏:みなさん、日曜日を楽しくお過ごしでしょうか。今回の「5 Artists in 5 Minutes」は、肉体の耐久性とその限界についてです。

まず、追記としておかなければならないのは、私は身体にまつわるアートについてお話ししますが、いくつかの裸体イメージがあります。しかし裸体はこの動画のトピックスではありません。ポルノではありませんし、具体的に明示したりもしません。不快な気持ちになったり、あるいは年齢が足りなかったら、飛ばして見ることをおすすめします。このような注意書きが本当に必要かはわかりませんが、万一のために入れておきます。

では、最初にマシュー・バーニー(Matthew Barney)から始めましょう、彼は大変多くを成し遂げたアメリカのアーティストです。最近(2015年)では、ポップカルチャーの雑誌で話題を呼んでいます。というのは、歌手のビョークと別れた後、ビョークがその破局の顛末を時系列で記録したアルバムを最近リリースしたからです。彼の現在でも進行中の≪拘束のドローイング≫シリーズは、1987年から始まります。

このシリーズでは、運動能力を開発する装置をつけてドローイングを行います。これらの装置は、身体の動きを制限することによって、力を増強させるように作られています。筋肉が抵抗に遭遇すると、充満したり退行し、そして癒しを通してより強くすることができるからです。彼は名前通り、身体を押さえつけながらドローイングを描き、写真やヴィデオでそのプロセスを記録します。

そして、≪拘束のドローイング≫の1つでは、制限のために着用している装具の緊縛を受けながら、壁に描くために傾斜を上っていかなくてはなりません。壁には、欲望と訓練の終わりの無いループが描写されています。このシリーズは後に17のヴィデオが続き、抵抗に対する肉体の力と精神的な意思の力の、手の込んだせめぎ合いが示されています。

1992年に ヴィーコ・アコンティは、1972年ニューヨークのギャラリーにサウナ・ベッドを置いて、≪苗床(Seedbed)≫と呼ばれる作品を実演しました。部屋の幅に添って木の床の傾斜があり、3週間の間、アコンティはこの傾斜の下に隠れていました。そして彼の夢想を言葉にした声を、ギャラリーの拡声器から観客が聞いている間、作家は自慰を行っていました。

パフォーマンスアートの祖母

次にお話しするアーティストは、2005年の≪7つの簡単な作品(Seven easy piece)≫という作品の一部として、この≪苗床(Seedbed)≫を再制作し実演しました。マリーナ・アブラモヴィッチ(Marina Abramović)は、「パフォーマンスアートの祖母」と自己宣言するアーティストです。そのパフォーマンス作品は、身体と心の関係性だけでなく、観客と演者の関係性を追求しています。

彼女は、しばしば極端に過激な作品で知られ、自分自身を危険な状況に置くことがあります。彼女の最も良く知られる挑発的な作品は1974年の≪リズム0(Rhythm 0)≫です。彼女は、テーブルの上に72の物品を置き、公衆がそれを好きに選んで使えるようにし、彼女自身は受け身のままでいました。その物体の中には、バラ、羽根、はちみつ、そしてホイップクリーム、オリーブオイルやはさみ、メス、そして銃と一個の銃弾などがありました。

6時間の間、その観客のメンバーは彼女の身体や操作し行為を加えました。社会的な因果関係を除去した時に、いかに人間というのは脆弱で攻撃的になり得るかを試したのです。パフォーマンスの終わりには、服がはぎとられ彼女の身体に攻撃がなされました。その落としめられたイメージとすべてのいきさつを、アブラモビッチは聖母として供述したのです。

このアーティストが師匠と呼ぶのは、すぐ次にご覧いただくアーティストです。謝德慶(Tehching Hsie)は、時間や、参加の度合いそして、拘束という意味でも、身体の耐久性に対して最も極端な試みをしたと思うアーティストです。1978年から2005年にかけて、彼は6つの持続するパフォーマンスを行いました。5つのパフォーマンスはそれぞれ一年間続き、最大の作品≪13年の計画≫は、1986年から1999年まで13年続いたのです。13年もです……。

彼は「この時期はアートを制作するが公的には発表をしない」と最初に表明しました。これは36歳の誕生日に始まり、そして1999年の12月31日の49歳の誕生日まで続きました。そして2000年の1月1日に彼は「1999年の12月31日を過ぎて、私は生きていた」という声明を出します。その後すぐに、自分はもはやアーティストではないと宣言しました。

みなさんとシェアしたい最後のパフォーマンスは最近行われ、多くの注目を集めました。エマ・スルコウィッツ(Emma Sulkowicz)の≪その重さを運ぶ(Carry That Weight)≫というマットレスのパフォーマンスです。これはスルコウィッツのコロンビア大学での卒業論文であり、女子学生暴行事件に対する大学側の対応に抗議して、マットレスを大学のキャンパスのあちこちに運びました。

彼女の勉強部屋の内壁に取り組みのルールを書きました。彼女が行くところどこでも、大学の備品のマットレスを運ばねばならないこと、スルコウィツがいないときにはキャンパス内に残されること、そして他の人に運ぶのを手伝ってもらうように頼まないこと、でも協力者が助けを提供したら受け入れること、などです。

美術批評家のジェリー・サルツ(Jerry Saltz)は、この試みを2014年のベスト美術展19のひとつに入れました。アブラモビッチがこれを称賛し、またヒラリー・クリントンが、「このイメージは誰もの心を打つ」と言及しました。

この作品は、すぐに何十人の学生たちが参加し、キャンパスじゅうにマットレスを運ぶ運動になりました。ギルブランド上院議員は、彼らは同僚やホワイトハウスに向けて、学内での性的暴行を告発するメッセージを発していることが重要だと述べました。この作品を最後に持って来るのは素晴らしいことですね。

この動画では全部の詳細に及ぶ時間はありませんでしたが、もし、彼女がしたことや、あの少々狂った年単位の計画に興味をお持ちであれば、Little Art Talks.comの私のブログに投稿記事がありますから、そこに行って参照できます。

身体とその耐久性を扱った、みなさんの好きなアートを、下のコメント欄にぜひお知らせいただければと思います。また、テキストを作品に用いたアーティストについてお話しした先週の「5 Artist in 5 Minutes」もご覧ください。ご視聴ありがとうございました。