下肢静脈瘤について解説

マイケル・アランダ氏:人間は、16万キロもの長さの血管が酸素を一生懸命運ぶことで生きています。酸素を乗せられた血液が、心臓と肺から動脈を通して全身に送られ、二酸化炭素を乗せられた血液が静脈に乗って帰ってきます。こうした循環器系のはたらきは、普通ならスムーズに行われます。

しかし心臓より下、とくに足の静脈は重力に逆らう必要があるため、調子が悪くなることがあります。年をとったり、体重が増えたりすると血液が滞り、ゴツゴツした「静脈瘤」ができてしまうのです。

心臓に方向にのみ血液を流し、逆流しないように静脈には弁がついています。ところがたくさんの原因で、この静脈弁が正常に作用しなくなるのです。

1つは加齢です。年齢とともに筋繊維が弱く細くなってしまうと、静脈弁もスムーズに開閉されなくなります。

また、遺伝によって静脈弁の機能に問題がある場合もあります。

3つ目の要因である肥満は、とくに下肢静脈瘤の原因となります。体重が重たいということは、それだけ足に圧力がかかってしまい、静脈の血圧が上がります。動脈に比べると静脈の血管壁は薄いため、血圧が上がると風船のように膨らんでしまい、静脈弁が正常に閉まらなくなるのです。

静脈瘤となった静脈には、通常よりコラーゲンやエラスチンといった構造タンパク質が多く見つかった、という研究もあります。これはつまり、体が静脈中の高い圧力をなんとかするために、血管を拡張しようと反応しているのです。

さらに妊娠も下肢静脈瘤の原因となり得ます。胎児の成長のために妊婦の血流は通常より多くなり、妊娠中のホルモンは血管を弛緩させるため、より一層血管が膨らみやすくなります。

大抵の人は、下肢静脈瘤になると見た目が悪くなることを気にしますが、なかには痛みを伴う場合もあります。

医師のなかには、弾性ストッキングを履いたり、歯磨き粉を押し出すように足を揉んで血液を心臓に向かって押し出すことを勧める人もいます。

それでもだめなら、レーザー手術や、硬化剤を注射して静脈を塞ぐ硬化治療もあります。体の表面にはたくさんの血管が走っているため、治療を行わなければ跡になってしまいます。

下肢静脈瘤を予防する一番の方法は、立ったり座ったりしている時間より、動き回る時間を長くすることにつきます。ぜひ自分の静脈を大事にしてあげましょう。