『ハミダシター』DMM亀山会長×キンコン西野対談

西野亮廣氏(以下、西野):お顔を出されないということで、番組で聞き手の顔しか映っていないというのはなかなかないと思います(笑)。

亀山敬司氏(以下、亀山):俺は「振り向いちゃダメ」って言われたから、振り向けない(笑)。ちょっと、背中大丈夫?

西野:背中だけが映っているという(笑)。初めての方もいらっしゃると思うので、もうざっくりと、何をされてるんですか?

亀山:俺の自己紹介ね。DMM.comという会社をやっています。昔はエロで有名だったんだけど、そのあとFXをやったり、英会話をやったり。あとは最近だと、太陽光発電とか、(DMM.)PLANETSとか。

西野:いろいろやられてますよね。

亀山:いろいろやるんだよ。最近は(DMM)モバイルとか。

西野:亀山さんはもともと、何からスタートされたんですか?

亀山:最初は、原宿の明治通りあたりの露天から始めたのよ。

西野:ええっ!?

亀山:あそこで布敷いてアクセサリーとか売ってたの。

西野:そこからスタートしたんですか?

亀山:フランとかダイム(硬貨)とかに鎖つけて、500円ぐらいで売ってたよ(笑)。

西野:露天からスタートしたんですか。

亀山:そうそう、初めはね。19歳ぐらいかな。

西野:そのときは別に、「会社を大きくしてやろう」というのは考えられなかったんですか?

亀山:それまでは税理士を目指してたんだけど、なんかもう将来性ないなと思って、事業資金の300万円を貯めようと思った。昔は貸しレコード屋があって、それをやろうと思って。

西野:ありましたね。

亀山:そのための資金で300万円がいるということで、そのときたまたま知り合った露天商の人に「こういうふうにやればいいわよ」って教えてもらったの。

露天商を経て、レンタルビデオ店を経営

西野:その露天から……。だって亀山さんって一代ですよね? 別にDMMは先代がいて、みたいなことじゃないですよね?

亀山:でも、うちの親父が石川県の田舎でカラオケの飲み屋をやってたから、それは引き継いだんだけどね(笑)。

西野:その露天から、どうやって今のDMM.comになるんですか?

亀山:うーん、トントントンって感じ(笑)。

西野:いや、そんないきますっけ? 普通にいったら100年とかかかりそうな感じじゃないですか。

亀山:そのあとでいうと、露天してから、貯めた金でメキシコに行って石を買って売ったりしてたんだよね。そのあとに田舎に帰って、カラオケの飲み屋をやったり、雀荘をやったり。

西野:へぇー。

亀山:あとは、ビリヤードを置いたプールバーみたいなやつ。

西野:はあ、なるほど。

亀山:それで旅行代理店をやって、ビデオレンタル店を始めて。これがまあまあ当たったの。

西野:そこからスタートですね。

亀山:ここからが調子よかったの。それまでは借金返すので精一杯で。もうコーヒーとか酒売っても、飲み屋なんてなかなかねぇ……。

西野:はいはい。

亀山:田舎でビデオレンタル店がうまくあたって、5店舗まで増えたんだよね。それで、ビデオレンタルをいつまでもやってても将来ないなと。

西野:思われたんですか?

稼いだときにやっておかないと手遅れ

亀山:そうそう。『Back to the Future 2』という映画で、(未来の世界で)モニターに、「こうだ、こうだ」と(チャンネル番号を)言っていたら、画面がパッパッと変わっていくわけよ。「ああ、この頃にはビデオレンタルとかないな」みたいな。

西野:なるほど、なるほど。

亀山:「じゃあ、どうしようか」「やっぱり映画かな」と思ったら、1本作るのに何億円かかるとか言われるし(笑)。

その頃の利益が、ビデオレンタル5店舗で年間8,000万円ぐらいしかなかった。「じゃあ何を作ろうかな」と言って、「アダルトを作ろう」となった。

西野:そもそも、アダルトを作るノウハウはなかったわけですよね?

亀山:そうそう。田舎者だったからね。だから、うちの会社のなかで1人、「ちょっと東京行って来い」と言って、「とにかくアダルトを作れるところを探してこい」みたいな。

西野:へえー。おもしろい。

亀山:そうそう。うちらは作ったわけじゃないんだけど、お金を払って、「いくらで作ってくれって」制作会社に依頼をするわけよ。でも版権はもらえるわけよ。

営業マンが向こう(東京)へ行って、初めは騙されたりいろいろしたけどさ(笑)、途中でいろいろと制作をやって、1本400万とか500万円ぐらいでできたから、それを石川県に送らせて。

西野:おもしろい。

亀山:俺は一生懸命ポジ(フィルム)を切ってさ(笑)。

西野:亀山さんがそういう作業をされてたんですか?

亀山:やってたよ(笑)。

西野:それはおいくつぐらいのときですか?

亀山:25、26歳じゃない? そんなもんだと思う。平成1年だ。

西野:怖さはなかったんですか? レンタルビデオをショップがうまくいってるわけじゃないですか。うまくいってなければ「ちょっとあっちいこうかな」というのも考えそうですけど、一応ある程度うまくいっているところを離れるという。

亀山:というか、どうせそのうちダメになると思ってた。

西野:もう見えてたんですか?

亀山:というか、別にビデオだけじゃなくて。今はもう「インターネットはそろそろきついな」とか。今は早いからさ、もう10年20年でだいたい終わっちゃうというか、変わるというか。

西野:はいはい。

亀山:出版が電子書籍になるのも(そうだし)、いろんなテクノロジーで変わるじゃない。それでいうと、ビデオ屋が10年も20年もあるかなんてわからないからね。

西野:ああ、超わかる。

亀山:今のうちにやっておかないと。稼いだときにやっておかないと手遅れだしさ。

“初志貫徹”の危険性

西野:それは僕もすごい思っていて、僕の親父世代とかはそうやって教わったんですが、初志貫徹みたいなものがあるじゃないですか。

亀山:はいはい。

西野:最初に掲げたことでずっといくみたいな。あれがあまりにも危ないと思ったんです。なぜなら、すごいスピードでもう職業ごとなくなっちゃうから……。

亀山:そうだね。だからもう、「会社のビジョン」とか言われてもうちはない。

西野:ないんすか(笑)。

亀山:ないのがビジョンみたいな(笑)。

西野:「こうなろう」みたいなのはなかったんですか?

亀山:「経営哲学なんか持つな」みたいな話でやってるんだよね(笑)。

西野:今はだいぶ寛容になってきたと思うんですよ。転職とか職を越境していくというのは。でもその当時は……。

亀山:お笑いやってても、絵本描けるらしいからね(笑)。

西野:いや、そうですよ。だって僕「絵本描く」って言ったときなんてバッシングがすごかったですよ。今はもうあんまりなくなりましたけど、当時はやっぱりありましたし。

亀山:いろんなことをやってることとか、一途じゃないのが許せないとかね。

西野:イチローみたいな、小学校から大リーグまでずっと野球みたいなことが美しくて、点々とするのはチャラチャラしてるように見られるみたいな。

亀山:そうだね。でも職業なんていうのもね、天職かわかんないじゃん。

西野:わかんないっす。

亀山:お笑いもちょっとモテそうだからってやったんじゃないの?

西野:そうです、そうです(笑)。

亀山:それだけでやったけど、「ちょっと違うな」とか、「こっちのほうが才能あったな」とかあるかもしれないよね。

IT業界に進出したきっかけ

西野:バッシングはなかったんですか? 当時、アダルトにバッと行ったときに、「おいっ!」みたいな。

亀山:うちの親父も若い頃から、呉服屋とかカメラ屋とか、キャバレーとか海の家とかうどん屋とか、いろいろやってたのでとくに変わりない。「今度、アダルトやろうと思う」って言ったら、「そうか」みたいな(笑)。

西野:それでアダルトがすごくうまくいって、そこでまた永住しようとは思わなかったんですか?

亀山:うん、別に。ちょうど20年ぐらい前にインターネットが出てきたから、「あ、これか!」みたいな。

西野:「次、こっちだ!」みたいな。

亀山:「じゃあ、エロを使ってインターネットでがんばるぞ!」みたいな(笑)。

西野:へえ〜。

亀山:というのは、コンテンツがあるじゃない。当時は映画とかもやりたかったんだけど、映画会社とかテレビ局にかけあっても、予告さえ出してくれない。パッケージでもダメとか言われたから。

西野:ああ、なるほど。

亀山:アダルトはけっこう版権が楽だったから、「先に配信やっちゃえ」みたいな感じ。これで配信とってたら、そのうち一般もできるかなと思って。

西野:けっこう(先々のことを)考えられるんですか? それとも、なんとなく感覚で「こっちかな?」みたいな感じなんですか?

亀山:なんとなく「こっちかな?」ってやってみて、「こっちじゃないな」となったらやめる。とりあえずだね。今はとりあえずの人生よ。

西野:それいいっすねえ。

亀山:まあでも、とりあえずじゃない?(笑)。

西野:僕は……。

亀山:絵本をやってても、そのうちまた「映画を撮ろう」とか。わかんないじゃない。

西野:はい、その先々でまだわかんないです。急に農業始めるかもしれないですし。

亀山:農業とか、海外行っちゃうかもしれないからね。ハリウッドとかいるかもね(笑)。

西野:急にそうなるかもしれないですもんね。

大事なのは「とりあえず」やってみること

亀山:まだまだ決めるのは早いんじゃないかな。今、何歳だっけ?

西野:僕は36歳です。

亀山:36歳か。

西野:36歳のときって何されてました?

亀山:何やってたかな……。36歳だと、向こうで一生懸命ダビングしてたな。エロビデオをダビングしてた(笑)。

西野:36歳のときに?

亀山:そうそう(笑)。スーパーの跡地を借りて、石川県にすごい工場を作って。

その頃はみんな売り切りだったんだけど、うちは委託販売ということで、大量にビデオ作って送って。もう夜中まで24時間ずっとビデオ録画回してたね(笑)。

西野:アダルトから次に興味を持たれたのはなんなんですか?

亀山:そのあとは別に興味というか、例えば太陽光とか。

西野:またなんで急に太陽光になったんですか?

亀山:たまたまNHKスペシャルを見てたら、「今から太陽光だ」みたいなことを言ってたの。「今、ドイツはこういうことになってます」みたいな(笑)。

西野:テレビ見て「あ、いいな」ってなっちゃったんですか。おばちゃんみたいですね(笑)。

亀山:いやいや(笑)。

西野:でもおもしろい。実際にやっちゃうんですもんね。

亀山:田舎にいた頃なんて、『NHKスペシャル』と『クローズアップ現代』ぐらいしかネタがないわけよ。

西野:おもしろい(笑)。

亀山:もうそこから考えて、 タイトルコールの後ろのほうに会社名が出てたら、そこにすぐ連絡するとか。

西野:とりあえずやっちゃうんですね。

亀山:Amazonがまだ日本に上陸する前だったんだけど、「私、日本語しゃべるよー」とか「漢字もかけるよー」とか言って、「なんだこいつ?」という外国人が出た覚えがあって。

西野:電話に対応して。

亀山:うん。「Amazon.co.jp」のドメインをとってやろうと思ったわけよ。高く売れるかなと思って。

西野:へえ〜、すげーことするな。

亀山:(すでに)取られていたんだけど。

西野:でも、やっちゃうってすごいですね。

亀山:まあ一応ベンチャーだからさ(笑)。

DMM亀山会長の原体験

西野:なんでそうなったんですか? 思っててもほどんどやれないじゃないですか。いや、「太陽光いいな」と思ってても、それで終わると思うんですけど。なんでそういう人になったんですか?

亀山:昔から、なんとかなると。例えば、親父は銅像があると、その上にみんなを乗っけて写真を撮るタイプ。もう怒られるまでやるみたいな(笑)。恥知らずという、そういうところじゃない?

西野:なるほど。もう原体験がそうだったんですね。

亀山:たぶんね。あんまり恥ずかしくないんだよね。それでも原宿の道で初めて布を敷いたときはちょっと恥ずかしかったけど(笑)。

西野:でも、やっちゃうのいいっすね。

亀山:やっぱり慣れてくるんだよね。

西野:やり慣れてくるってことですか?

亀山:やっぱり初めは恥ずかしいし。でも、そのうち誰か話しかけてくれると露天もできるようになってくるし。

西野:机の前で考えてやるよりも、とりあえずいってから思い知って、「これが必要で、これがいらないんだな」ってしたほうが早いですよね。

亀山:早いし、自分のネタでしゃべれるじゃない? 芸人もほら、読んだネタで「こんなんありました」というよりも、「僕がこういうことがありまして」って。『すべらない話』でよくあるじゃない。 西野:つまり体験談で。

亀山:そうそう。やっぱり体験談のほうがリアルじゃない?

西野:はいはい。

亀山:最近スマホばっかりでわかった気になってるしさ。

西野:そうですね。

『えんとつ町のプペル』は世界を獲れる?

亀山:でもほら、絵本描いていて……。

西野:絵本描きました。(今日)お持ちしたらよかったですね。

亀山:あれ読んだよ。

西野:ホンマですか!

亀山:たまたま話がくる1週間ぐらい前に、知り合いの女の子がくれたんだよね。

西野:本当ですか?

亀山:ほっといたんだけど(笑)。(絵本の話を)聞いたら、「もしかしてこれ?」「あった、あった」みたいな。そのうちブックオフにでも売ろうかと思ってたら。

西野:なんちゅーこと言うんですか。

亀山:いやいや(笑)。「あ、これだ」「じゃあちょっと読んどこう」と。でもおもしろかったよ。

西野:ありがとうございます。

亀山:日本っぽくないね。なんかグローバルでいけそうな雰囲気。今度うちアニメーションやるんだ。今、DMMで何本か制作に入っていて。要は、日本で売るものはアニメしかないって話になっているけど。

西野:なんですかそれ? ちょっと僕やりたいですよ。

亀山:うん。だからあの絵本をアニメにしようかと。

西野:いいっすか? 今、言いましたよ。

亀山:うん。もうCGで(笑)。

西野:本当に? 今、言いましたよ。これ何か撮ってますか?

亀山:いやいや(笑)。あれはもしかしたら世界獲れるかなって思った。

西野:言いましたよ!?

亀山:(笑)。

西野:ちょうど一昨日、うちの社長と「あの絵本をアニメにしよう」みたいな話になってたんですよ。

亀山:ディズニーっぽい感じじゃないけど、あの路線っていうか。例えば、どんなにいいコンテンツでもゴジラとかは世界で売れないのよ。日本ではいいと思うんだけど。あと難しいのは、けっこう「萌え」も難しいしね。

西野:もうこれ、言いましたよ?

亀山:あれ(『えんとつ町のプペル』)はちょっとおもしろいなと思って。

西野:僕、本当に今の動画、勝手にYouTubeにあげて拡散させますからね。

亀山:俺と一緒に世界を獲るか(笑)。

西野:言いましたよ。絶対……本当に言ったよ!

亀山:(笑)。

西野:今いちばん興味あるんですもん! 言いましたよ!?

亀山:機会があればやりたい(笑)。

西野:本当に?

亀山:俺はもう言ったらやるから。

西野:マジっすか。僕もう、「ウォルト・ディズニー倒す」とか言っちゃってるんですよ。絶対倒しにいきたいんです。

亀山:うん、それぐらいイキのいいのがいいよ。

西野:言いましたよ。やったー! もう絶対言った。

亀山:(笑)。

西野:この動録くださいね。証拠としてYouTubeに勝手にあげてやろう。うれしい! でも次、アニメやられるんですか?

亀山:うん。今何本か投資してるんだけど。できればそれこそジャパンアニメーションランドみたいなのやりたいね。

西野:いや、絶対いいですよ。ぜんぜん勝てると思うんですよ。

亀山:まだいろいろやれそうだね。

西野:すごいなぁ。

亀山:いや、とりあえず。