今後も為替と日本株は関連し続ける

広瀬隆雄氏(以下、広瀬):からの質問に答えたいと思います。まず、最初の方の質問。「為替、ドル・円の目標は?」。

1年間でだいたい7パーセントぐらいのドル高を見ています。それは計算の起点は、来年というか、今年(2016年)の年末から。そのときの為替水準ということですね。

「2017年中のドル・円相場の推移の予想を教えてください」。

いったんはどこかでドルが調整すると思っています。それはたぶん春先というか冬というか、1月末の大統領就任式、そこらへんあたりで1回ドルは下に押すと考えています。

次の方の質問。「ドル・円と日本株の関連性が薄れてきたようですが、いかがですか?」。

うーん、そうかもしれないですね。でも、基本的には、長期で見れば、今後も為替と日本株というのは関連し続けると僕は思っています。

次の方のご質問。「原油とゴールドは今後どうでしょうか?」。

ありがとうございます。2017年、原油は先高を予想しています。60ドル、場合によっては65ドルくらいを見ています。ゴールドに関しては基本的には弱気です。なので、今が買い時ではないと思っています。

ただし、どこかでリスクオフの局面が来て、ドルが売られる、アメリカ株が売られる、そういうような状況になったら、トレーディング的にドルは買いになる局面がどこかで来ると思います。それは今じゃないですけどもね。

ゴールドに関して僕がやりたくないこと、それは、先回りして今からゴールドを仕込む。そういうことはやりたくありません。

なぜやりたくないかというと、政策金利は2017年に1回・2回・3回というふうに利上げ・利上げ・利上げになるわけでしょ。それは、ゴールドにとったらバッドニュース・バッドニュース・バッドニュースというのが出て、頭を抑えられるということがもうわかりきってるわけだから、そのときに漫然と買いにいって、それでやられたくないと思っています。

だから、例えばよ、ドナルド・トランプが大統領に就任して、投資家が「さあ、税制改革やってね!」って思っていたのに、いきなり「最初の議題は最高裁判事の任命問題。それをまず最初に片付けましょう」とかね。そういうふうになった場合、「えー!?」って感じで、アメリカ株は大売られすると思うんですね。ドルも大売られすると思うんですよ。

その局面ではリスクオフになりますので、日本円は買われると思うんだよね。そのときは日経平均は下がると思うんですよ。

それが明らかになった時点で、ポーンとゴールドを買いにいけばいいと思うんですね。あるいは金鉱株をトレーディングでポーンと買いにいけばいいと思うんですよ。だけど、先回りしないでほしいですね。それはよろしくお願いします。

シェールオイルの銘柄はどれを選ぶべきか

次の方の質問。「シェール(オイル)はどうでしょうか?」。

シェールもいいと思います。「じゃあ、銘柄的にはどれがいいんだ?」ということですけれども。一番いいのは、パーミアン・ベイシン、これはテキサス州の西のほうの油田ですけれども、そこで操業してるシェール企業ね。

具体的には、キャロン・ペトロリウム、ティッカーシンボル「CPE」。それから、パースリー・エナジー、ティッカーシンボル「PE」。それから、ダイアモンドバック・エナジー、ティッカーシンボル「FANG」。それから、アパッチ、ティッカーシンボル「APA」。そういったところがいいと思います。

なぜか? その理由はパーミアン・ベイシンは一番ローコストで原油が採れるから。だから、今、アメリカ中のシェールオイルの生産地で一番元気なのは、というよりも、唯一元気なのはパーミアン・ベイシンなんですよね。だから、そこに立地している企業を買うべきだと思います。

「株式市場、年内にNYダウ、2万ドルつけますか?」。

わかんないですね。五分五分ぐらいでしょうね。

次の方の質問。「ドル高でもダウ平均が高いのはどうしてですか?」。

それは基本的によくない、なにかがおかしい状況だと思います。その咎めというか調整は2017年のどこかで必ず来ると思います。

冒頭のところで参加していなかった、聞き逃した方がいらっしゃるかと思うので、もう一度繰り返して言いますけれども、2017年の予想としては、僕はドル高を見ています。7パーセントぐらいのドル高。

アメリカ株に関しては、−10パーセントぐらいを予想しています。来年ね。だから、株はきつくなると思う。なぜきつくなるかというと、ドル高だからね。

ひょっとすればよ、わかんないけど、1月から、1月もきつい相場、2月もきつい相場、3月のきつい相場、4月もきつい相場、5月もきつい相場、6月もきつい相場って感じで、来年上半期まったく箸にも棒にもかからない相場になる可能性がかなり高いと実は思っています。だから、アメリカ株は強気じゃないのね。ということです。

アメリカ株を買うタイミング

次の方のご質問。「アメリカ株を買うタイミングはいつ頃ですか?」と。

今の説明でいうと、まあ6月ぐらい。だけど、こういう言い方したほうがいいかな。「いつだ? 何月かという月で言ってくれ」と、そういう雑な議論はしたくないんですよね。そうではなくて、我々が2017年の相場で気をつけなきゃいけないもの、見どころ、ポイント、そういったものはもう明らかにクリアにわかってるんですよ。

我々、まず見極なきゃいけないことはなんだというと、1.税制改革がちゃんと1月からスタートダッシュでバーンと始まるかどうか。それを見極めてください。

税制改革がスタートダッシュで、「これだ。いけ!」っていうふうにならなかったら、株は売られる。必ず売られる。絶対下げます、マーケットはね。税制改革がまな板に乗らないんだったら、お終いです。フィニッシュ。降りてください。わかる?

じゃあ、その税制改革が乗らないという1つのindication(兆候)、兆しはなんだというと、最高裁判事の任命問題、これが出てきたら揉めます。けっこう揉めると思う。だから、2ヶ月あるいは3ヶ月ぐらい、最高裁判事の任命問題に時間を取られると思う。

それが片付いて、「もう勘弁してくれよ。こういう後ろ向きなことやりたくないんだよ。じゃあ、ぜいせい改革やろうぜ」ということで、腕まくりして「さあ、いこう!」っていったときに、もう5月か6月だったら、2017年中に減税はないわけでしょ。

そうするとね、今、株買ってる人は、なぜ株買ってるかというと、「2016年中にアメ株、お前売るの? だって、そんなことしたら損でしょ。来年になったら減税あるかもしれないのに、なんで今年キャピタルゲイン作っちゃうわけ? 来年売ろうよ。来年」というかたちで、みんながじーっと売りたいところを我慢して、今、じーっと株を持っているわけでしょ。それはどうしてかというと、2017年に減税があるから。だから株持ってるわけですよね。

だけど、2017年中に減税ないんだということは、もう6月ぐらいにわかっちゃうわけだから、そしたら「もうダメだよね」ってことで「じゃあ株売ろう」ということで、利食い先行になるわけでしょ。だから、その点よく見極めてください。

ナンバー2。もう1個重要な問題は、利上げのペースですよね。今日、説明しましたけれども、12月14日のFOMCで「今後の利上げのペース、2017年は3回、2018年は3回、2019年は3回。そういうペースですのでよろしく」というふうに、ジャネット・イエレンは、この前の12月14日に方針を打ち出したわけですよ。

それの最初の試金石が来るのが3月15日。いいですか。3月15日に「当然利上げだよね?」って思ってたのに、利上げがないとなると、「えっ、なんで? 1年に3回ずつ利上げするって言ってたじゃん?」「これって、ブレーキ踏みこんで、アクセル踏み込んで、またブレーキ踏み込む、そういうギクシャクした手綱さばきになるんじゃないか?」という不安が走るわけですよね。

そうなると、リセッションが来るのも早くなるし、株式市場が下がるのも早くなるということなんですよね。だから、3月15日のハードルは絶対クリアしなきゃいけないんですよ。わかります? 

だから、もう1回、くどいですけども、税制改革議論がちゃんとまな板の上に乗るかどうかというハードル、3月15日にちゃんと利上げができるかというハードル、そういったものをきちんとクリアしてるか、それをチェックしてください。それのほうが「いつから相場始まりますか?」というような雑な議論よりももっとはるかに重要だから。

「米国銀行株は買い継続でいいですか?」。

はい。基本的には強気です。ただ、もうBank of Americaとか、大統領選挙の結果がわかってから3割ぐらい上がっているので、目先的には、トレーディング的には、かなり目先の好材料を織り込んでいるので、まあ利食るという手もありかなと思っています。

それを断った上で、「2017年のコアホールディングなんですか?」って言われたときに、まあ今日いくつか銘柄のアイデア紹介しましたけれども、そういう銘柄でもいいと思うけれども、やっぱり銀行株というのはコアホールディングだと僕は思います。

具体的には、JPモルガン・チェース、ティッカーシンボル「CPM」。それからバンク・オブ・アメリカ、ティッカーシンボル「BAC」。ここらへんあたりはコア中のコアだと思います。

次の方の質問。「エクソンモービルはホールドでいいですか?」。

はい。ホールドしておいてください。

Amazonは半値になるかもしれない

次の方の質問。「Facebook、今117ドルですけれども、どのくらいまで下落しそうでしょうか?」。

ちょっとわからないですね。でも、基本的にはあまり強気に見ていません。

ハイテクの話ぜんぜんしなかったんだけれども、好きな順番でいうと、一番好きなGoogleというか、Alphabet(アルファベット)。ネット株のなかでは一番いいと思う。2番目に好きなのはAppleですね。「AAPL」。それがいいと思う。

嫌いなのはAmazon。「AMZN」。半値になるかもしれないと思ってる。半値。Netflix、これも半値になると思います。半値。だから、そこらへんは避けたい。

「ITセクターダメですか?」というご質問ですけれどもね。まあ、どちらかというと、あんありエキサイトできない。とくに嫌なのは半導体セクター。

これはちょっとこの前ブログに書いたんだけれども。ここ3 、4年のアメリカの半導体セクターで最も出世株だった1つは、Broadcom(ブロードコム)。ティッカーシンボル「AVGO」。昔の会社名で言うとAvagoという会社でしたけれども。

これはヒューレット・パッカードの半導体部門、それをレバレッジドバイアウトして、スピンオフして、それが母体としてどんどんLSIとかEmulexとか、そういう会社がどんどん買収して、それで最後にBroadcomという大きな会社を買収して、それで今、大きな半導体企業になってるんだけれども。それがBroadcomという会社なんですけれどもね。

その一連のディールを仕掛けている仕掛け人は、Silver Lake Partners(シルバーレイク・パートナーズ)と呼ばれるプライベート・エクイティ・ファンドです。Silver Lakeは、IT関係の、ハイテク関係のLBOファンドとしては、最もsophisticateされた、最も尊敬されている、事情通のインサイダーたちがやっているPEファンドです。

そのSilver Lakeが、この前ガボッとBroadcomの株を売ってるのね。これはまあ、言ってみればよ、日本海軍が戦艦大和を空売りしてるのと同じで、自分たちの旗艦、フラッグシップであるBroadcomの持ち株をバサーっと処分してるわけよ。それってやっぱりサイクルが終わりかかってる証拠だと思うのね。

だから、僕は今のアメリカの半導体株とかにまったくバリューを感じません。すべて降りたほうがいいと思う。

「NVIDIAどうですか?」。

NVIDIAも降りたほうがいいと思います。さっきSilver Lakeの話したけどもね、Silver Lakeで半導体関係のディールを仕切ってる奴はKen Haoという奴なんですよ。彼がNVIDIAのし掛け人だからね。

最初にNVIDIAという会社をIPOできるんじゃないかということで投資して。それで、彼はH&Qという会社に勤めてたんだけれどもね。それでNVIDIAを仕掛けた男ですよ。そいつが今どんどん半導体の株を売ってるわけよ。だから、本尊が売ってるときにやっぱり買うものじゃないと僕は思うね。

次、「Lloyds Banking Group、LYG、どうでしょう?」。

僕はいいと思います。これ、イギリスの商業銀行ですね。住宅ローンが主なビジネスですけれども。株価非常に安いです。業績は、今、ボトムアウトして、改善しかかっている状況です。

なんで、こんなに株価が下がってるのかという最大の理由は、金融危機が起こった時に、リーマンショックの時に、イギリス政府がロイズバンクに資本注入して、救済したんですよ。

その時に49パーセントぐらいの株式を政府が持ったわけよね。それ以降、どんどんイギリス政府は持ち株を減らして、先週だったかな、先々週だったかな、の時点で最後の6.9パーセント、今、それだけになってるんですよ。だから、イギリス政府が売り切ったら、ロイズバンクの株価は上がります。

次の方のご質問。「長期金利の上昇は続きますか?」。

はい。上げピッチが早いので、1回は調整すると思いますけれども、基本的には長期金利は上がり続けると考えています。

「もう少し金利上げたら、米国債は買いですか?」。

トレーディング的に買いな局面があるかもしれないけれども、基本的には債券には投資したいとは思いません。

米中の貿易戦争はあるのか?

次の方の質問。「米中の貿易戦争ありますか?」。

はい。これは大事な材料だと思います。ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)という、カリフォルニア大学アーバイン校の教授でピーター・ナヴァロという人がいるんだけども、その人をアドバイザーにドナルド・トランプが起用しましたけれども、これけっこうとんでもない人で。

だから、ひょっとしたら来年のリスクとしてはここだね。米中の貿易戦争。それはひょっとしたらけっこう揉めるかもしれない。

だから、トランプ当選以降ここまでの相場というのは、ひょっとしたらあるかもしれない悪材料というのを全部市場参加者は無視して、トランプが唱えているポジティブな材料だけを注目して織り込んできたよね。

だけども、たぶんドナルド・トランプの性格からして、中国から茶々が入れられたら、噛み付くよね。あいつ必ずね。すぐにリアクションする奴だからね(笑)。だから、けっこう2017年は大荒れになると思っていますよ。楽観視しないほうがいいと思います。

もうそろそろ10分オーバーになってきたので、もう1個だけ答えようか。「2025年以降もウランの消費量は増え続けると思いますか?」。

はい。これは増え続けると思います。なぜかというと、原子力発電所は1回火を入れたら止めることできないから。ずーっと稼働させなきゃいけないから。だから、突然どこかでウランの消費がスポンと終わっちゃう。そういうことはないと思います。

「ウランがなくなったら、次はなにに頼るようになりますか?」。

ウランはなくならないと思います。今後70年80年、掘り続けることできると思う。だから、当分の間、ウランは大丈夫です。

もっと言えばよ、この前の東日本大震災が非常に不幸な事故だったわけだけども、アンラッキーだっと思いますけれども、あれは本当に特殊なできごとで、今のウラン価格というのは、そういう非常にpessimistic(悲観的)な状況、それをフルに反映してると思うのね。

だから、今が異常なのであって、これが原子力発電のニューノーマルではないと僕は思います。少なくとも世界中の生産計画を見たら。例えば、中国の生産計画あるいはインドの原子炉の生産計画を見たら、そういうことにはぜんぜんなっていない。

だって、今、北京でもスモッグひどいし、デリーとか、そういうインドの大都市でも大気汚染ひどいわけでしょ。だから、石炭なんか燃やしてる場合じゃないわけですよ。

だから、我々日本人としては、原子力発電というのはすごく今回のことで懲りているわけで、「あーあ」と思うわけだけれども、世界の人たちはそういうふうに思っていないということですね。

じゃあ、もう時間なので、今日はこのへんでお終いにしたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。それじゃあ失礼します。