年金と健康保険料はいくら引かれる?

瀧俊雄氏(以下、瀧):では、みなさんを現実の世界へ呼び戻そうと思います。現実のお金の話です。

1つ、計算問題があります。「たかしくんは21歳です。今年の1月から時給1,000円のバイトを始めました。月に20日間、毎日8時間働いています。彼が毎月受け取ることになるお金の金額はいくらでしょうか?」。

生徒14:16万円。

:16万円だと思う人?

(会場挙手)

:16万円じゃないと思う人?

(会場挙手)

:「わざわざ質問にしているから16万円じゃないだろう」と思っている人?

(会場笑)

:その人が一番正解で、たかしくんが受け取ることになる金額は、今年は13万3,588円。来年は約12万9,400円です。「わかるかよ!」という話なんですけど。

なぜなのかというところが大事でして、計算の16万円は合っているんです。そうなんですが、実は16万円から控除というものがあります。みなさんが受け取ることになるのは、13万3,588円。けっこう減っているんですよ、2万6,000円くらい。

「2万6,000円引かれてるけど、これは何?」というのが大事で、よく言われるのが、税が引かれますという話なんですが、実は月給16万円ぐらいのケースだと、所得税は3,000円くらいしかかかりません。

ここはそんなに大きくなくて、年金保険料と健康保険料。この2つを足すと2万5,000円くらいになるんです。

だいたいアルバイトでいうと25時間、3日分が帳消し。実はみなさんは3日分、自分がもらえるお金ではなくて、なにかよくわからない保険料という名前が付いたものに取られるんです。

保険料が高いのはなぜか

あとはもう1つ言うと、初年度。今年と来年でもらえる金額が違って、来年からはここに住民税というものが入ります。

これはみなさんが働き始めたら、1年目は引かれていなかったものが2年目に引かれるという、そういうパターンの税金があるんです。

お伝えしたいのは、お給料が上がっていくとだんだん所得税が上がっていきます。例えば、福岡ソフトバンクホークスで活躍して2塁手ぐらいになって、年棒1億円になるケースだと、この人にかかる税金はケースにもよりますが4,000万円くらいです。

けっこう大きな金額が所得から引かれる。まだまだ稼げないときには、所得税はそんなに引かれません。

ただ、将来に向けて、年金保険と健康保険というのは、どうしてもそこそこ引かれることになっていきます。

これは将来、年金保険の方は68歳くらいになったときに、年金を受け取るための権利を保証するシステムに国民が全員強制的に入っているためです。

健康保険料は、風邪を引いたときのみなさんの医療費。本当は1万円払うべきところが1,000円だったり3,000円だったりというかたちになっていて、健康保険が残りを穴埋めしてくれる制度があります。

ただ、毎日そうそう風邪を引くわけではないので、そこはみんなで小さな負担をするという保険になります。

なので今後、大学に入ってアルバイトを始めて、「俺は時給1,500円で8時間働いたけど、1万2,000円もらってないぞ!」と言って、店長に怒らないでください。ちゃんと明細を見せてもらえればそこでわかりますので、それだけは覚えておいてください。

結婚するのに必要な最低金額

みなさんにもう1つ覚えていただきたいことがあります。それは「貯金をどれくらいするべきか?」という話です。

よく「世の中で生きていくためには貯金が必要です、貯めましょう」という話があります。このなかで、「私は絶対結婚しない」と決めている人はどれくらいいますか? 後ろの(記者の)方々も含めて。

(会場笑)

:リクルートが出している『ゼクシィ』という雑誌では、毎年、結婚にかかる平均的なお金の金額を調査していて、「今年は436万円です」みたいな発表をするわけです。

ただ、これは本当に結婚にかかるお金じゃないんですね。結婚するために必要なお金はいくらかというと、交通費くらいです。なので、数百円で済みます。

結婚の仕方を知っている人はどれくらいいます? 結婚したことがあるという人? 女性の方は16歳以上から可能だから、法律的にはありえなくないですね。

結婚はどうやるかというと、婚姻届というのがあるんですね。婚姻届というのは、当然夫になる人と妻になる人がお互いにハンコをつくんです。あとは証人を2人用意して、(証人)AさんとBさんがお互いにハンコをつくんです。

なので、結婚はこの紙。これも最近、世の中にPDFで出回っていたり、キティちゃんとか、いろんなキャラものの婚姻届が存在していて、それで結婚する人もいます。

なので、人間は4つハンコを集めれば結婚できるんです。結婚とは、スタンプラリーなんですよ。

(会場笑)

:要はこの紙はタダで落ちていますと。印刷さえすればいいんですね。あとはハンコが4つ。ハンコを作らなきゃいけなかったら、ちょっとお金がかかりますけど。実は、世の中はそれだけで結婚できるんですよ。

だからこの「436万」というのは必要ないんです。そうなんですが、世の中のみなさんはそうとはとらえていなくて、「結婚したらチャペルで誓いを立てたい」とか「結婚を報告するために披露宴をやりたい」「ハネムーンに行きたい」と。

全部を合わせると、確かに約430万円が平均的な姿なんですけど、実はそれにもからくりがあって、みなさんは430万円も貯めないんですよ。なぜならば、披露宴に行ったことがある人はどれくらいいますか? 親戚の披露宴とか。

(会場挙手)

:みなさんはまだ払っていないんですけど、みなさんが働き始めたり、20代を越えてくると、披露宴に行くのには3万円くらい参加費がかかるんですよ。

3万円をご祝儀袋に包んで、受付に渡すのがだんだん当たり前になっていくんです。例えば、披露宴に100人来ましたと。100人から3万円を預かると300万円の入金があるので、ここ(結婚費用に必要とされる436万円)の金額が136万円にできます。

あと、最近は結婚式でもだいぶ安く挙げる方法があるので、従来だったら250万円や300万円かかっていたものを40万円や70万円くらいでできるようなプランもできています。

なので、決して「貯金がないから結婚しちゃダメだ」と思わないでください。これはけっこう大きな金額に見られているんですけど、世の中でこんなに貯められる人はなかなかいません。

なので結局、結婚はある意味どうとでもなる部分があって、そういうものに対して、あんまり背筋を張らずに予算感を持っていただくのが大事かなと思います。

出産やマイホームの準備資金の誤解

あとはもう1個大事なのが、「子供を育てるときに1人1,000万円が必要です」という議論があります。「1,000万円貯めるまで子供作っちゃいけないのか?」と心配される方もいるんですが、これもそうではなくて、育てながら貯めればいいんです。

育てながら貯めて、もし足りなかったとしても、世の中には足りない教育資金を借りてくる方法がいくつかあります。

教育部分や問題意識などの目的がある。ある種よい投資になることがすごく多いので、旅行に行ってしまう方とか、ほかの内容に比べればまだお金を借りてもいい対象の支出です。

なので、そういうことも合わせて考えていただいて、ぜひ結婚したいときにしてください。子供もほしいなと思った瞬間にしてください。

世の中にはほかにも、「もっとお金がかかります」と。「家を買うのには3,000万円必要です」ということを言う人がいるんです。

ただ、家を買うのも住宅ローンを借りることができれば、手元は300万円で十分だったりします。要は、お金が全部貯まりきるまでにずっと待ってしまっていると、55歳まで家を買えなかったりします。

35〜40歳くらいまでの、子供がワーッと走れるような家がほしいときが、一番家が必要なタイミングかもしれません。

借金するときの目的と計画を考える

よく言われるんですけど、「借金することはどれくらいよくないことなのか?」と聞かれたときに、「借金で得ることができるものは何だろう?」ということをよく考えていただきたいと思っています。

それを考えるときには、やりたいことがあって、それをいつまでに、どうやって貯めるかということを整理していただくといいと思っています。

例えば「5年後に留学するのに200万円かかります」というケースがあったときに、それをコツコツとがんばって貯める方法もあるんですけど、ほかにも「50万円貯めました、150万円は(親族に)なんとか貸してください」と言うこともできるはずです。

意外と、優等生になれば全部払ってくれるプログラムもあって、そういうものをちゃんと探す手間ぐらいは割いたほうがいいケースもあります。

留学は個人的にもしているので、すごくおすすめする経験の1つですけど、やっぱり自分の世界を広げることができるのは若いうちなんですが、若いうちは貯金がないことが多いです。

なので、そういうときは、ちゃんと目的があるのであれば、お金を借りるということも前向きに考えていただければと思います。

お金を増やす3つの方法

世の中には、お金に関するいろんな知識があるんですけど、結果的にみなさんにとって今、一番大事なものはどういう状態になっているか。

おそらくなんですけど、貯金をする能力のほうが大切です。例えば、貯金ができないと人生計画が立たなくて、ましてや「投資でなんとかしましょう」みたいな話がありますが、そういうのはもっと先の話です。

私がこの場でお伝えしたいのは、みなさんが全力で貯金できるような、そういう生活を身に付けていただきたいという1点になるわけでございます。

意外といろんな人が、お金の常識というのを身に付けていないんですね。お金を増やす方法は、3つしかないわけです。

1つは、入ってくるお金を増やす方法。

もう1つは、出て行くお金を減らす方法。あとは、持っているお金が勝手に増えていく仕組みがあれば、それを投資すればいいんじゃないという話になりますが。

2つ目の、出て行くお金を減らす方法が一番努力のしがいがあるところなんです。

なので、今後みなさんが生きていくときには、支出で変なことが起きないかを考えていただければと思います。

一番多いのは、急な出費というのがあります。急に友達が結婚して3万円払うとか、そういうパターンがけっこうあるんですけど。

あとは、急に無性にほしいものがあると。「プレイステーションVRがどうしてもほしい」という人が出てくるわけです。

急にほしいものを、とりあえず「ほしいからほしいんだ!」というので買っちゃうケースもけっこうありますが、最終的にはよく気を付けたほうがいいことの1つです。

ただ、「今じゃないとどうしても買えないんだ」とか。やっぱりアーティストのライブとかはそういうところがあって。僕も10年くらい前に、20年に1回しか来日しないアーティストのライブを、「突発的な消費だな」と思って見送ったことがあって、そのアーティストは亡くなってしまいました。

そういうことがあると、すごく悩むところなんですね。ぜひ、そこでちゃんと悩んでください。迷わずに買うようになると、ほとんどのアーティストのライブに行くようになってしまうので。そうなると、ぜんぜん貯蓄ができなくなります。

あともう1個多いのが、周りの人に引きずられることがけっこうあります。「あいつがVRを持っているのに、俺が持っていないのはおかしい」という感じで、親に「VRを買え」とか。

そういうことは、みなさんが一人暮らしをするようになってからもありますので、「そのへんも気を付けてね」という話になります。「借りる時は目的と計画がすごく大事です」というお話でした。

人生の詰みポイント1「クレジットカード」

みなさんに、気を付けてほしい3つのテーマをお伝えしたいと思います。この3つのテーマが揃うと、けっこう人生が最初から詰んだりするので気を付けてください(笑)。

(会場笑)

:1個目はクレカの話です。クレジットカードというのは、今、手もとにお金がなくても物を買うことができるという、魔法のようなツールなんです。みなさん、親のクレカを見たことはありますか?

(クレジットカードを生徒に3枚渡して)これが僕のクレカです。それぞれ70万円、40万円、20万円の限度額があるので、勝手に写真を撮ってアップしないようにしてください。

(会場笑)

:色が黒いからといってブラックカードとは限らないですよ。それがうまいところなんですけど。クレジットカードというのは、本当に便利なものなんです。

お金が手もとにぜんぜんなくても、すぐに使うことができる。そろそろ僕もソワソワしてきたから、クレジットカードを返してください。

(会場笑)

:お金がなくても、すぐ使えるものなんですけど、来月に請求がきます。そういうときに払えなかったりすると、後々「家を買いたいな」と思ったときに困ったりします。

適切に毎月の払える範囲内で借りるというのが、すごく重要なポイントになります。これが、詰みポイントの1です。

別にクレカを作るぶんにはいいんですけど、「払えなくなるような使い方は絶対にしないでね」ということです。

人生の詰みポイント2「一人暮らし」

詰みポイント2がなぜ関わってくるかというと、このなかで、2年後に一人暮らしをしようと思っている人はどれくらいいます?

(会場挙手)

:いずれ、けっこうな割合で一人暮らしを始めるんですよ。一人暮らしで一番気を付けるべきことは、防犯とかそういうものもありますが、自分の暇です。一人暮らしを始めると、ものすごく暇が発生するようになります。

それをアルバイトで埋めるとか、友達付き合いで埋めるとか、いろんなことをするんです。そうなんですけど、予算もないなかでやったりするので、初めてやりくりというものが発生します。

そういうときに、面倒くさがらずにそれをやってください。やらなくてもなんとなくは生きていけるんですけど、クレジットカードの支払いの直前にいっぱいバイトを入れたり、そういうさらにめんどくさいことに追い込まれたりするので。

ちゃんとやりくりできるアプリなどがいっぱい出ているので、そういうものを使っていただければと思っています。

人生の詰みポイント3「身の丈に合わない支出」

1番と2番が合わさってもまだ詰まないんですが、もう1個、けっこう詰むことがあります。社会に出ると、いろんな人と出会うことがあります。

今、みなさん、すごくいい学校の中でちゃんと育って、学友といろんなことをされていると思うんですけど。今後、大学やアルバイト先で出会ういろんなタイプの人と出会うことになります。

本当にぜんぜん違うタイプの人に出会うんです。自分の名前を漢字で書けない人とかも出てくる。でもそういう人たちが、すごく楽しそうに生きているケースもあるんです。それで、そういう先輩が朝からパチンコに並んでいて、一緒に店が開くのを待ったりとか。ぜんぜん違うタイプの人たちと付き合っていく機会は、今後いっぱい生まれてきます。

そういうときに、友達付き合いとして支出がある部分はいいんですけど、自己主張のための支出というのが出てきちゃうことがあるんです。

大学に入ると、急にファッションに本気を出す人とか。ファッションだけじゃなくてもいろんなグッズとか、そういうものでも自己主張が生まれたりします。自分の趣味(の範囲内)であればいいと思うんですけど、必ずしも身の丈に合っていない自己主張が発生することもあるんです。

これとクレカと一人暮らしが混ざると、しっかり借金を抱えてしまったりするケースがあります。

もちろん、ギャンブルとほどよく付き合うこともできるんですけど。ちゃんと「何のためにお金を使っているんだろう?」というのを、すごく意識していただければいいなと思っています。

最後に。明日までには宿題があって、再来年の今月のみなさんの家計簿をつけることを考えてみてください。

「マネーフォワードで」というのは、別に強制ではありません。考えていただきたいのは、「2年後のみなさんは、どれくらいの生活費が必要か」という話です。

学費込みでもなしでもいいですし、一人暮らしをしていてもしていなくてもいいです。ただ、2年後のみなさんがどういう生活をしてるのかというのを明日までに考えてきてください。個別にお答えいただくので、そういう感じでお願いします。今日は以上です。

(会場拍手)