logmi・ログミー

世界をログする書き起こしメディア

「ALSよ、くたばれ!」 30歳にして余命数年を宣告された広告プランナー・ヒロが抱いた”怒り”とは?

「ALSよ、くたばれ!」 30歳にして余命数年を宣告された広告プランナー・ヒロが抱いた”怒り”とは?

全身の筋力が徐々に弱まっていく原因不明の難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」は、動かなくなっていく身体とは裏腹に意識や五感は最後まで残るという、患者に大きな精神的ストレスがかかる病気だ。30歳を目前にALSを発症した広告プランナー・藤田正裕氏が、仕事と並行して行っているALS患者の境遇を変えるプロジェクト「END ALS」について語った。(TEDxTokyo 2014より)

スピーカー
一般社団法人END ALS 創設者/マキャンエリクソン プランニング・ディレクター 藤田正裕 氏
マキャンエリクソン 藤田正裕の上司、友人 ディブ 氏
参照動画
END ALS: 藤田 正裕 at TEDxTokyo 2014

声を失っても伝えたいこと

gazou01 藤田正裕氏(以下、藤田) 私は藤田ヒロと申します。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者です。今はこのようにして(パソコンの音声変換ソフトを利用して)コミュニケーションをとっています。 gazou02 藤田 私は、ALSによって動くことや呼吸することができなくなり、声を失いましたが、コミュニケーションをとりたいという気持ちをまだ持っています。私は人生の99%において感謝していますが、1%の怒りがあります。では、私の友達に代弁してもらいましょう。

人生を謳歌していた10代、20代

gazou03 ディブ氏 私はディブです。藤田ヒロさん本人ではありませんが、私はこの10年間にわたり彼のことを知っています。私は彼の上司であり、友人です。そして、彼は私のヒーローでもあります。彼のすべてを話すことはできませんが、彼の抱いている苦しみについて、彼が何を目指しているのか、そして今彼に何が起こっているのかをお話ししたいと思います。 gazou04 ディブ 彼は大変恵まれた家庭に生まれました。父親は海外で働いていましたので、イギリスやスイスの学校に通い、高校は日本に戻って卒業しました。学校ではたくさん勉強したようで、その価値はあったようです。 gazou05 ディブ 大学にも入り、その後ハワイに渡りました。見た目が洗練されていますね。私が感じる限り、お酒を飲んだり、煙草を吸っていたようです。 (会場笑) とても充実した人生を送っていたようです。10年前私が日本に移ったときに、大変幸運なことにヒロを推薦してくれる人がいたんです。「若い日本人がいて、彼は今ハワイで働いているんだけど、広告代理店に入りたいそうだ」と言うんですね、それがヒロさんだったんです。 その後、彼と電話で話をして、「じゃあ、また話しましょう。今度会いましょう」と曖昧な約束をしたんですが、気付いた時には彼は日本に戻っていて、私のオフィスを訪れていました。ぜひ働きたいということだったので、私は彼を雇うことにしました。大変優秀で、広告業界にぴったりな人でした。 gazou06 ディブ というのも、彼はとても流行に対して敏感だったんです。広告の知識はなかったんですが、パーティを企画したり、クラブに行ったりしたところ、彼は日本のクラブでどれがキているのか、どれがホットでどれがそうでないかということ、どういう人がお酒を飲んでいて、飲んでいないのか、どういう服が流行なのかということを教えてくれました。そして働き始めるとすぐに彼はブランド関連の仕事をするようになりました。

30歳の誕生日を目前にくだされた恐ろしい診断

gazou07 ディブ 彼は、私の組織の中で最年少のシニア・プランナーになりました。私は彼を大変頼りにしていましたし、彼は周りから人気のある人でした。あるときから、彼は疲れやすくなり、指先の感覚を失うようになりました。当初は「これはきっとハングオーバー(二日酔い)だろう」と言ってたんですが、徐々に活力がなくなってきました。そこで病院で検査を行ったところ、恐ろしい結果になりました。 彼はALSにかかっていたんです。ALSというのは、平均寿命が3~5年程度、治療法はないんです。「まぁ残りの人生、頑張ってください」というのが医者からのアドバイスでした。まだ活力のある若者なのに、目の前に人生の終わりが迫ってきたのです。 gazou08 ディブ それからの2年10カ月、彼に何が起きたのか想像してみて下さい。 gazou09 gazou10 ディブ もうお箸やペンも持てず、足首も動かなくなりました。彼に聞いたところによると、「道で倒れてしまったあと、1時間もそのままでいたことがある。道行く人は麻薬常習者だと勘違いして助けてくれなかった」ということもあったそうです。 gazou11 ディブ 日が経つにつれ、さらに感覚を失っていきます。ある日彼はテーブルに突っ伏して、3時間もそのままでした。誰かが助けてくれるまで、その状態から身動きが取れなかったんです。彼は徐々に自分の体が機能を失っていくことと向き合わなければいけませんでした。 gazou12 ディブ 最悪なことに、今の彼はもう自分の力では呼吸ができません。声も出すことができません。彼が今コミュニケーションをとる方法というのは、さっきお見せしたようにコンピュータだけなんです。この舞台ではスポットライトが当たっていないのでお見せできませんが……。 そして、気管切開をして、胃瘻(いろう 切開部から胃内に管を通し、食物や水分、医薬品を流入して投与するための処置)をしたり、機械で呼吸の補助をおこなっているんです。 gazou13 gazou14

ALSに為す術のない日本の法制度

ディブ 今、彼は何を考えているでしょうか。静かに座ったまま、横たわったままでいるしかなく、そうしているうちにも体が機能を失っていくわけです。そして彼は究極の決断をしなければいけなくなりました。 gazou15 ディブ 選択肢は2つ。1つは気管切開をして長期的な痛みに耐えること。しかし、体の機能は日々失われていき、これから3年、5年…この期間がいつまで続くのかは分かりません。2つめは短期的な痛みを選び、周囲の人たちにさよならを告げて、静かに死んでいくこと。毎日この苦しみと向き合わなければならないのです。ヒロの国・日本は、切腹の国であり、死刑が法的に許されている国です。 一方で、自分たちで死を選ぶこと、安楽死を選ぶことはできません。つまり、彼はALSに成す術がありません。彼は悩み、そして生きることを選びました。 何故彼がそのように決めたのか尋ねると、彼は「まだ私は何にも貢献していない。兄弟や家族、友人に何も返してない。でも、私は彼らに対して何かできると考えている。日本の社会に対しても、何かを返すことができると思っている」と言ったのです。そして、それはこれからの人生を通してできる、とも。彼が生き続けたいと願ったのはそのためでした。

体の機能を失っていくなか、成し遂げたい使命

gazou16 ディブ そして、彼は他の人を助けたいという気持ちも抱いていました。声を無くし、体の機能を失いながらも、実は心の声はどんどん大きくなってきたんです。ALSを患い体の機能を失っていくなかで、彼はこの場所からもっといろんな人に対して声を発して、単なる患者であるだけでなく、変化を生み出していきたいと思ったんです。彼は今でも青山通りにあるマッキャンエリクソンで仕事をしています。水曜日の午後にはオフィスにきて、ブレインストーミングをし、同僚とプランをつくったりします。 gazou17 ディブ 他の日は自宅でドキュメントを作ったりしています。彼は人気者ですから、24時間引っ張りだこのようです。 gazou18 ディブ 彼には今、使命があります。それは大変シンプルなものです。 gazou19 ディブ 日本では、治験(薬剤の承認前に行われる臨床試験)の進みが大変遅いという現状があります。患者にとっては一刻を争う事態ですから、そのプロセスで薬が出るまでとても待てないという人が大勢いるわけです。日本のプロセスは他の先進国に比べても極端に遅いという点も問題です。彼は無難に生きていきたいと思う一方で、リスクを冒してでも、自分の体で治験をやってみたい、そしてもっと研究を進めてほしいと思っています。 gazou20 ディブ 政府の研究者たちにお願いしたいことがあります。もっと治験に関する予算を増やしてください。そして、ALSにおける人体での治験を行い、いち早く治療法を見つけてほしいんです。

人生の99%に感謝 残りの1%は「ALSくたばれ!」

gazou21 ディブ 私たちは「END ALS」という活動を始めました。このTシャツもWebサイトから購入できますので、ぜひ買ってください。「END ALS」というのは、これまでお話ししたことを政府に働きかける活動です。 さらに、医療従事者に対して、いち早い治験を求める動きがあるということを、こういう恐ろしい病気があるということを、患者を助けるために治療法を見つけてほしいということを訴えかける活動も行っています。彼は声を失いましたが、昔の飲み仲間、セレブリティなどの友人たちが彼の声を代弁してくれています。 gazou22 gazou23 ディブ そのほかにも、彼に心を打たれた人たちが世界中にいます。彼らはマラソンの主催やパーティやバーベキューを開催して、そこでALSやALSのサポーターを増やすべく活動を行っています。 gazou24 ディブ タトゥーを入れる人もいますし、Tシャツを買ってくれる人もいます。賛同者は世界中にたくさんいます。去年、ヒロは『99%ありがとう』という本を出しました。彼の人生について、そして彼の望むこと、使命について書かれたものです。 もちろん、彼が声に出して読むことはできませんから、友人や同僚たちが彼のために代わりに本を読み上げています。今日の午後TEDxに出演するCharやVERBALさんたちも、本を読みそれをビデオにして貢献してくれています。彼らがヒロの声になってくれているのです。 gazou25 ディブ この本の中で、彼はシンプルなメッセージを投げかけています。「幸福というものは、自分がどう感じるかです」。幸福にならなければいけない義務というものはありません。けれども、ヒロは自分自身を幸福だと感じています。でも時々、やはり苦しむこともあります。では、最後にヒロからメッセージを伝えてもらいましょう。 藤田 私は今このようコンピュータを使ってコミュニケーションを取っています。これまでの私の人生は素晴らしく、99%は良いことばかりでした。しかし、私もあなたもすべての人が特別な人間ではないんです、いつ何が起こるか分からない。私たちは苦しんでいる人たちに何かできるはずです。私のように恐ろしい病気に苦しんでいる人たちがいます。その人たちに出来ることがあるはずです。ですから、まず日本から始めましょう。 私は人生の99%に対して感謝しています。しかし、1%、ALSに「くたばれ!」と言いたいです。そしてALSに関わる規制や治療法の進みを遅らせているすべてのものに対して「くたばれ!」と言いたい。皆さん、ぜひEND ALSの活動に賛同してください。そしてALSを葬り去りましょう。ありがとうございました。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
×
×
×
この話をシェアしよう!
シェア ツイート はてブ
「ALSよ、くたばれ!」 30歳にして余命数年を宣告された広告プランナー・ヒロが抱いた”怒り”とは?

編集部のオススメ

おすすめログ

おすすめログ

人気ログランキング

TOPへ戻る