Rh因子と妊娠の関連

ハンク・グリーン氏:血液提供の世界記録を持っているのは、オーストラリア人のジェイムス・ハリソンという男性です。彼は過去60年間で1,000回以上も血液提供を行っており、約200万人の新生児の命を救っています。

では、どうやって見知らぬ人の血液で子どもの命を救うことができるのでしょうか。

胎児は母親と異なる血液型で生まれてくる場合があります。赤血球には抗原というタンパク質が含まれており、それは人によって異なります。

聞いたことがあるとは思いますが、血液型にはA型やB型などがあります。もし、あなたの血液型がA型であれば、A抗原を持っているということです。そして、この抗原はRh因子としても知られているD抗原をもつ子どもの妊娠を引き起こします。

もし、あなたがD抗原を持っていればRh陽性であり、持っていなければRh陰性ということになります。そして、妊娠している女性がRh陰性の場合、問題が起こる可能性があります。

子どもと母親のD抗原が同じでないために、母親の免疫システムが胎児の血球を外部からの侵入とみなし攻撃してしまいます。そして、それが胎児の貧血症や心不全を引き起こすことがあるのです。

しかし、Rh陽性の胎児の妊娠が初めての場合、それほど問題ではありません。Rh因子に対して強い免疫反応を示さないため、母親の免疫システムは胎児の赤血球に対して危険になるまでの攻撃はしません。

しかしその後、母親はRh陽性の赤血球に対して敏感になり、再びRh陽性の胎児を妊娠する場合は溶血性疾患という病を引き起こすかもしれません。母親の免疫システムは胎児の赤血球をたくさん破壊し、貧血症や赤血球の欠乏を招くことがあるでしょう。

もし胎児が十分な赤血球を持たなければ、心臓は酸素を体中に送るために一生懸命働く必要があり心不全を起こすことがあります。これはビリルビンという混合物によって赤血球が破壊されるからです。

ビリルビンは肝臓で生成されますが、胎児の肝臓はその負荷に耐えきれず、脳に損傷を招く黄疸を引き起こす可能性があります。

しかし、ハリソンの血液はこれらの問題が起こるのを防止することができます。それは、彼の血液は抗Dヒト免疫グロブリンという高いレベルの抗体を含んでいるからです。

抗Dヒト免疫グロブリンが妊娠中の女性に注入されると、彼女の免疫システムが胎児の赤血球への攻撃を停止します。この抗体は胎児のRh陽性のいかなる血球をも破壊し、母親の免疫反応が起きる前に母親の血流中に消滅します。

一方、抗Dは胎児まで渡ることはないため、胎児の赤血球は安全な状態を保ちます。抗D注入は、ジェイムズ・ハリソンのような抗Dヒト免疫グロブリン抗体のレベルが高い人の血漿から生成されます。

抗D注入は、胎児の血液が母親の血流に流入しすぎる前に、懐胎の28週前後のRh陰性の妊婦にとっては標準的な処置です。

大抵の場合、医者は胎児が陽性なのか陰性なのかを知りません。なので、すべてのRh陰性の妊婦の方は、念のため検査をしておくと良いでしょう。

もし、再び妊娠すれば子どもの命を救うことにもなります。