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「無いものを欲するより、あるものに目を向けよう」 発達障害の保育士が子どもたちに教わったこと

「無いものを欲するより、あるものに目を向けよう」 発達障害の保育士が子どもたちに教わったこと

現代社会のストレスは大人を蝕み、挙句その影響は子どもたちにも表れているといいます。子どもは大人の鏡だとするフリーランス保育士の小竹めぐみ氏は、大人も子どもも本来の自分の形を認め、活かし合いながら暮らしていくべきだと語りました。(TEDxFukuoka 2014 より)

スピーカー
特定非営利活動法人オトナノセナカ 代表
フリーランス保育士 小竹めぐみ 氏
参照動画
こどもに学ぶ 明るい未来の作り方

悪気なく子どもを追い込んでいませんか?

小竹めぐみ氏(以下、小竹) 自然のものはみんな違う形を持っています。例えば、空の雲も、海辺の貝殻も、小石も。ひとつひとつが違う、それこそが自然なんです。そして私たち人間も違う形を持ってるよと、それを私に教えてくれたのは小さな小さな子どもたちでした。 保育士というと皆さん、どんな仕事を思い浮かべますか? 子どもに寄り添って生活のお世話をしたり、遊んだり。実は私はそれとは少し違う保育士として生きています。私は園には属さずに自由に動き回って、子どもにとって良い環境を作る。それを自分の仕事にしています。これは私の形を活かして、自分で選んで作っていった保育士の形です。 保育士をして私は何百人という子どもたちと出会って来ましたが、彼らが私に教えてくれたたったひとつの、シンプルな事。それを今日は皆さんにお伝えしたくてここに立っています。昔の話を少しさせてください。私の保育士1年目の話です。たくさんの感動とショック、いろんな出会いがありました。その中でも印象的だった子どもの話。 ある男の子はいつもおもちゃを投げつけていた。私は「壊れちゃうよ」と伝えました。するとケロッとした顔で「また買えばいいじゃん」と教えてくれました。何でそんなことを言うのかと思いましたが、でもよく考えたんです。私も物が壊れたら買ってるなと。そう、彼らはよく見ている。そして、私たち大人の行動、言葉を吸収しているだけなんです。 また、こんな子もいました。お絵描きをしようねという時間に、何もしない。そして不安げに言うんです。「何色で描くの?」「何描けばいい?」「先生、描いて」と。何でかなと思っていると、お迎えにきたお母さんはその子に「はい、カバン持って。はい、靴はいて。はい、早く行くわよ」と。その子が考える余地も与えずに、たくさん言葉を与えていました。もちろん、悪気があってじゃありません。 また、こんなこともよくありました。チックって聞いた事ありますか? いつもとは違う行動を子どもがすることがあります。爪を噛んだり、性器をいじったり。大人はやめさせようとしますが、止まらないんです。そんなとき、私は保護者の方とたくさん対話をしました。「最近どうですか」と。すると、実は最近こんなことがあって、イライラしてたとか、こんな変化があってすごく落ち込んでたとか、そんなことが出て来ます。 そして、たくさんたくさん聞いて、フッと肩の力がおりる瞬間があるんです。そうすると、子どものチックは綺麗さっぱり治っている。そんな事例を、私は目の前でゴロゴロと見て来ました。

人間本来の姿を現している子どもたち

保育士1年目、私が知った事は、子どもは私たち大人の鏡。そんなことに気づいた2006年、私はアマゾン川へ旅行に行ったんです。そしてここでひとつ、大切な問いを持ち帰ることになりました。葉っぱや小鳥、たくさんの命に囲まれて、ああ、人間も自然の一部だと思ったんです。その時、人間の自然な状態ってどんなだろうと、浮かび上がりました。そして帰国後、答えは子どもたちの中にありました。 彼らは大いに泣いて、大いに笑います。そして思い切りいじけますね。そして、タタタッと近づいて来たかと思えば、「メグ先生大好き」と言って逃げたりします。 雨の日には雫のダンスを踊って、晴れの陽にはお日様の歌を歌っている。そう、彼らは自分にとても素直に生きているんです。そして、無いものを欲しがるんじゃなくって、ある物に目を向けて喜び、楽しんでいる。人間の自然な姿ってこれなんだなと、私は実感しました。

子どもは大人の鏡

さて、先ほど言いましたように、大人たちは子どもたちにたくさんの影響を与えています。でも、現代の大人たちってどうでしょうか。たくさんの保護者の方に出会って来ましたし、たくさんの保育士の人と一緒に働いてきましたが、全員ではありません、けど、多くの大人がとても忙しい。そして心が疲れている。 例えば、生涯に一度鬱病にかかると言われている人間は15人に1人。そして今、100万人を超える人が医療機関に鬱病患者として通っている。そんな現状があります。さらにその患者さんはほとんど、子育て世代に集中している。保育士さんもそうです。さらに2010年には児童虐待の相談件数が5万件を超えました。 それらの大人のストレスや疲弊、全部子どもたちに伝わっています。言葉で、態度で、エネルギーで、悪気が無くても伝わっていく。その結果、ニュースに出たり出なかったりして、いじめや学級崩壊、ひきこもりなど、今度は子どもたちのところに鏡となって写っていっている。そんな負のチェーン現象があると、私は感じています。 さて、私は何ができるんだろう。保育士は卒園してしまったら何もできない、そう思って、無力感に襲われて泣いた日がありました。でも、よく考えたらそれは概念かもしれない。そう思ったんです。そんなに影響力があるなら、私は保育士として子どもだけではなく、子どもの隣にいる大人が笑顔になるお手伝いもしたい。 私は欲張りになりました。どうして笑顔にならないって、それは、一生懸命大人たちは理想に近づこうと、同じようにしようと、完璧にしなくちゃと頑張っているから。そして自分をどこかに置き忘れて来てしまう。

ありのままの自分を認め、活かす勇気

実は、私もこんなところに立って、皆さんにお話をしていますが、もともと生き生きと生きていたわけではないんです。私の話を少しだけしたいと思います。 もともと私はとてもおっちょこちょいで、一日に何度も物を落としたりして大騒ぎでした。そして小さい頃から周りの大人に「何でちゃんと出来ないんだ」「何でそんなに不注意なんだ」と怒られてきました。その度に私は私を怒りました。何で皆と同じように出来ないの、と。 大人になってからも、実は当たり前の業務が出来なかったりして「こんなことが出来ないなんて、保育士失格だよ」なんて先輩に言われたこともあったんです。本当にそうだよなと思って、また私を怒りました。 けれど、目の前の子どもたちを見てみたら、耳の聞こえない女の子がいたんですが、その子にいつも優しくしている男の子がいたんです。そして、耳の聞こえない女の子は、手先がとても器用だったから靴ひもを結んであげていました。その支え合いを見た時に、「ああ、これだ」と思ったんです。 よく見たらそこだけじゃない。子どもたちはいろいろな出来ることと、出来ないことを支え合って暮らしていたんです。私たちはそうやって、支え合うことが出来ることをいつしか忘れてしまったのかもしれない。 そして、1年半前です。私にとってとても大切な最後の1ピースが揃ったんです。ひょんなきっかけから、私は病院で診断を受けることになりました。私は発達障害だったみたいです。診断書を手に持って、プルプルと震えました。そして涙が流れた。だってようやく言えるんです。「何で出来ないの私」じゃなくて、「出来なかったんだよね、でも頑張ったね」って。ようやく認めてあげられたんです。 とても素敵な先生が、こんなことを言いました。「あなたは出来ないことがあるけど、出来ることがあるよね。人って、プラスマイナスゼロ。皆そうなんだよ」って言いました。私は母親に電話をして、こんなスペシャルに産んでくれてありがとうと言いました。自分を知って愛した時、そこから私の世界は動き出したんです。 WS000003_R 自分の形を勇気をもって知る。そして、それを受け入れるとどうなるか。目の前にいる人の形が見えてくる。凸凹が愛おしくなる。そしてあの小さな子たちのように、活かし合える、違いを活かし合うということが、その後出来ていくんです。 人には役割があると感じています。自分の形を知る事から、それは始まります。私はただ、この言葉を言いたいだけなんです、子どもたちに。「そのまんま、大きくなってね」。これを言う為に、なにも1000人、1万人、社会を変えようじゃなくてもいいんです。たったひとつの家族からでもいい。たった数人の仲良しグループからでもいいから、違いを活かし合うことを始めてみませんか。だって私たちは自然の一部だから。 今日は皆さんに、私から伝えたいことがあったので、短い短い手紙を書いて来ました。最後に伝えさせてください。 「凸凹なあなたへ 不器用でありがとう。寂しがりやでありがとう。わがままでありがとう。出来ないあなたでありがとう。あなたの凸凹が、私と誰かのありのままを支えてくれる。 あなたはどんな形をしていますか。世界でたったひとりのあなた。私はこれからも、私に出来るやり方で、私らしい保育士として生きていきたいと思っています。是非、手をつないでください」。

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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「無いものを欲するより、あるものに目を向けよう」 発達障害の保育士が子どもたちに教わったこと

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