オルフェウスとエウリュディケーの物語

みなさんこんにちは、Little Art Talksへようこそ。カリンです。さて、今回はオルフェウスとエウリュディケーの話をしましょう。この話は、ギリシャ神話の最も知られた逸話のひとつで、ルーベンス、ティッツィアーノ、プッサン、そしてロダンなど非常に多くの芸術家たちが着想を得ています。

この物語は複数の異なるヴァージョンがあります。しかしながら、一般的には、以下のようなお話です。

オルフェウスは、古代において最も才能ある音楽家でした。彼はその才能を父親のアポロンと、カリオペーというムーサイ(文芸を司る女神)である母親から受け継ぎました。聞いた誰もが魅了される、神から与えられた声を持っていて、竪琴を子供のころから習得していたと言われています。

神々や死の運命さえも、彼の音楽には抗うことができず、木々や岩々もその音色を聞こうと近寄って来ました。ある日彼は、周りに集まった聴衆の中から、美しく控えめなニンフのエウリュディケーを目にとめます。エウリュディケーもまた、オルフェウスの声と美しさに惹きつけられ、お互いから目を離すことができなかったのです。2人は惹かれあい、そして恋に落ちました。

離れがたくなった2人は、しばらくして結婚することに決めました。結婚式の日は、明るく鮮明で笑いが絶えず、彼らの幸運を確信させるものでした。まもなく暗くなり家に帰る時刻となりました。ところが、オルフェウスを憎む牧者のアリスタイオスは、エウリュディケーを自分のものにしようと欲していました。その夜、彼は森の中に隠れていて新婚の2人が通りかかるのを待っていました。彼はそこから飛びかかりオルフェウスを殺そうと企んだのです。

2人が近づいてくると、アリスタイオスは動きだします。オルフェウスはとっさにエウリュディケーの手を掴むと、2人は走り出しました。アリスタイオスは、彼らを森の中に追いかけます。走って走り抜けると、オルフェウスは突然彼女の手が自分の手から離れていくのを感じました。動転して彼女の傍らに駆けつけると、死んだように蒼白になっているのに気づきます。彼女は突然死んでしまったのです。その数歩前に蛇の巣の中に足を踏み入れ、そして毒蛇に噛まれたのです。

妻を取り戻すたびに冥界へ

エウリュディケーの死後、オルフェウスはかつてような明朗な性格ではなくなりました、死んだ妻のことを悲しむ以外に何もできず、冥土の世界を旅して、彼女を取り返そうと決めます。それは、ギリシャの神々に愛された人間だからこそできることでした。オルフェウスは、冥界の番人の前に立つと、なぜここに来たのか話しました。そして、冥界の王ハデスと王妃ペルセポネーの前で竪琴をかきならしました。

神であろうと人であろうと、たとえ石のような心の持ち主でさえ、その声にある哀惜を無視することはできませんでした。ハデスは耳を傾け、ペルセポネーの心は溶かされ、冥界の入り口を守る番犬である、ケルべロスと呼ばれる巨大な3つ頭の犬ですら、耳をふさぎ絶望のあまり鳴いたといわれます。

オルフェウスの歌に心を揺り動かされたハデスは、死んだ妻は彼の後ろに付き従って生者たちの世界に戻すと約束しました。もちろん1つだけ条件がありました。それは、2人とも生者たちの世界の光が見えるまで、決して彼女のことを振り返ってはならないことです。

喜んだオルフェウスは、冥界から出る道のりを行きます。彼が冥界の出口に近づいたとき、妻の足音を聞きました。すぐに振り返り抱きしめたくなりましたが、何とか気持ちを抑えていました。

出口にたどり着くと、その心臓の鼓動はどんどん早くなり、生者たちの世界に踏み出したまさにその瞬間、妻を抱きしめようと彼は振り返ってしまいます。

彼が振り返って見たのは、一瞬のうちに消えていく彼女の姿でした。2人とも光の中にいなければならないということを忘れていたのです。この不従のために、エウリュディケーは暗い黄泉の国に引き戻され、そしてそこに閉ざされてしまいました。たったあと2、3秒待てばよかったのです。苦悩と絶望に襲われた彼はもう一度冥界にやって来ます。

しかし今度は入るのを拒否されました。門は閉ざされ、ゼウスによって派遣されたヘルメスが中に入れようとしませんでした。つまり、彼はひとつの簡単な規則を守り、そのことを咎める神々の怒りも気にかけるべきでした。失意のオルフェウスはあちこちを彷徨い歩き、来る日も来る夜も絶望の底にいました。他の女性と接触することを拒み、若い少年に伴われることを好みました。

彼の唯一の心の慰めは、巨大な岩の上に横たわり、風の音を聞き、広がる空を眺めることでした。トラキアの娘たちの一団は、オルフェウスの拒絶に反抗して、報復の機会を狙います。最初は杖と石を投じようとしますが、彼の音楽があまりにも美しかったので、杖や石は彼にあたるのを避けました。

これによって女たちはますます激怒し、襲い掛かりました。攻撃しただけではなく、実際には虐殺したと言わなければなりません。彼を八つ裂きにして、バラバラにし、そして、竪琴を一緒に川に流しました。それだけ怒っていたのです。

死んだ彼の頭部と竪琴は、それでもなお悲しい歌をうたい、レスボス島まで流れ着きます。

そこで、音色と一緒に発見され、彼のバラバラになった破片は集められ、そして埋葬されます。竪琴は天上に運ばれ星座のひとつになります。オルフェウスの魂は冥界に降ろされ、そして最後にようやく愛するエウリュディケーと一緒になったのでした。

私はハッピーエンドで終わるような話にしようと決めました。というのは、彼が八つ裂きになった後は非常に憂鬱で、いくつか他のヴァージョンの話では最後に一緒になることはないのです。