アートの中のラブストーリー

カリン・ユエン氏:「おお、ロミオよ、ロミオ……」おそらく『ロミオとジュリエット』ほどよく知られたラブストーリーはないでしょう。運命に導かれし2人の恋人たちのこの物語は、もともとは伝統的な悲劇の説話であり、その原型は古代まで遡ることができます。

最も有名なロミオとジュリエットは、もちろんウィリアム・シェークスピアの戯曲です。この物語は、幾度となく映画や舞台そしてオペラに翻案されました。小学校5年生の朗読の授業やバレエのテーマなどに採用されているのは言うまでもありません。今日は、この物語に着想を得た芸術作品とともに、ロミオとジュリエットの物語の短い要約をお話ししましょう。

舞台は、ヴェローナの街角での、モンタギュー家とキャピレット家の使用人たちの喧嘩から始まります。彼らは主人たちと同様に怨敵なのです。ヴェローナの太守エスカラス公爵は、この喧嘩に仲介し、2つの一族の間にまた騒動が起きたら、死をもって罰すると告げます。パリス伯爵は、キャピレットに、娘のジュリエットに求婚したいと申し出ます。

この縁談によろこんだキャピレットは、ジュリエットはまだ14歳にもならないから、もう2年待つように依頼します。彼女はこの物語では本当に若いのです。ジュリエットの心を射止められればと望みかけて、パリス伯爵をキャピレット家の舞踏会に招きます。一方、キャピレット家の乳母は、ジュリエットにパリスの求婚を受け入れるように説き伏せます。

さて、一方でモンタギュー家の息子であるロミオは、ひどく塞ぎ込んでいます。従兄弟であるベンヴォーリオにからかわれた後、ロミオはロザラインという少女への報われない恋心を打ち明けるのです。ベンヴォーリオとその友人であるマキューシオは、ロミオにロザラインのことを忘れて、もっと美しい別の愛すべき女性を見つけるように言います。

彼らは、ロミオにキャピレット家の舞踏会に出席するよう説得します。そこで他の女性と出会えるからなのですが、ロミオは、キャピレットの親類のひとりである、ロザラインがそこにいるからという理由で同意します。

この饗宴の裏で、ロミオは遠くからジュリエットを見かけ、突如として恋に落ちるのです。ロザラインはどうしたのでしょう……?ティーンエージャーの心は移り気なのです。さて、キャピレット家の若い御曹司のティボルトは、ジュリエットの従兄弟でした。

そしてロミオを見つけると、モンタギュー一族がキャピレット家の舞踏会に侵入していることに怒り、闘おうとしますが、家の中を血で汚してはならないと、キャピレットにいさめられます。

ロミオはジュリエットに話しかけ、2人は心の底から惹かれあいます。そして、名前も知らないままキスを交わします。ジュリエットの乳母によって、ジュリエットが一族の宿敵であるキャピレット家の娘だということがわかったとき、ロミオは深く驚きます。ジュリエットも、先ほどキスをした若い男がモンタギュー家の息子だと知り、同じく動揺します。

舞踏会の後、ロミオはキャピレット家の果樹園に忍び込み、庭の中に隠れていて、彼はジュリエットが窓辺にいるのを耳にとめます。彼の一族が憎しみ合うモンタギュー家であるのにも関わらず、彼女を愛することを誓います。ロミオは外から彼女を呼びかけ、そして2人とも愛の誓いを交わし、結婚をしようと同意します。ちょっと待ってください。まだ会ったばかりなのに、こんなことを考えられますか?

ロミオの友人でもあり、修道僧でもあるロレンス神父は、ロミオの恋による突然の変化に衝撃を受けつつも、それから数日後に秘密に2人の恋人の結婚式を挙げることに同意しました。神父は、キャピレット家とモンタギュー家の長く続いた争いに終止符が打たれることを望んだのです。

その翌日、ティボルトはロミオがキャピレット家の舞踏会に侵入したことをまだ怒っていて、ロミオに決闘を申し込みます。ロミオは、自分がティボルトの従兄弟と結婚したことを知っていましたから、彼と闘いたくありませんでした。マキューシオは、ティボルトの傲慢さとロミオの卑屈な忍従に腹を立て、ロミオに代わって決闘を受けて立ちます。

2人が闘いを始めると、ロミオは止めようとして2人の間に割って入ります。しかし、ティボルトはロミオの腕の下からマキューシオを刺します。悲しみに苦悶し、罪の意識にさいなまれたロミオはティボルトを殺してしまいます。

ところが、マキューシオはモンタギューの一族ではなく、実際にはエスカラス公爵とパリス伯爵の血縁でした。よって、彼は関係のない両家の抗争で死んだことになります。この抗争で親類を亡くしたエスカラス公爵は、ロミオをヴェローナから追放し、もし戻っていたら死罪にすると言い渡します。

運命のすれ違いが生んだ恋人たちの悲劇

出発の前、ロミオは秘密裏にジュリエットの居室で夜を過ごし、婚姻を成就させます。朝が来て、もう2度と会えるかどうかもかわからぬまま、恋人たちは別れを惜しみます。ジュリエットは、父からその前に起こった出来事を知り、父が3日以内に自分とパリス伯爵と結婚させようとしていることを知ります。彼女はロレンス神父のもとに助言を得ようと駆けつけ、神父は2人の恋を成就させようとある計画を思いつきます。

結婚式前夜、ジュリエットは水薬を飲みます。それは一時的に仮死状態になる薬でした。彼女が死んで現れれば、パリスと結婚することはできなくなるのです。そして、ロミオは地下室で彼女と再び会い、彼女を連れて行く算段でした。神父は彼女に薬を与え、そしてロミオに計画を伝える使者を派遣すると約束します。

ジュリエットが家に帰ると、結婚式の準備が1日後に進められていることを知ります。彼女は翌日結婚させられるのです。その夜、彼女は薬を飲み、そして死んだような昏睡状態に陥ります。そして翌朝、乳母が彼女を発見したとき、仮死状態になっていました。

彼女は埋葬のために、計画通り一家の地下の霊廟に横たえられます。しかしながら、この計画には大きな問題が起こりました。使者が時間までにロミオのもとにたどり着くことができず、ロミオが受け取ったのはジュリエットが死んだという知らせのみだったのです。ロミオは悲しみにうちひしがれ、彼女無しでは生きていけないと決意します。そして、彼は自殺をしようと企て、ヴェローナに戻る道すがら毒薬を買い求めます。

霊廟への道中で、彼はパリスと出会います。2人は剣を抜いて闘い、ロミオはパリス伯爵を斬り殺してしまいます。霊廟の中で、彼は仮死状態のジュリエットを発見すると、毒薬をあおり、彼女の傍らで死んでしまいます。ジュリエットが目を覚まし、そしてロミオが死んでいるのに気づくと、毒薬を飲んだ彼の唇にキスをします。それでも死ぬことができないとわかると、彼の短剣で胸を突きます。

争っていた2つの一族と公爵は、霊廟で出会い死んだ3人を発見しました。ロレンス神父は、星が交差したような運命の恋人たちの物語の顛末を語ります。両家は子供たちの死によって和解し、暴力的な抗争に終止符を打つことに同意したのです。舞台は公爵が恋人たちに捧げた弔歌によって締めくくられます。「ジュリエットとロミオのこの物語ほど、悲哀に満ちた物語はない」と。