2017年は“トランプノミクス”に期待?

司会者:先ほどから話題にも出ているアメリカ大統領選挙が終了して、2016年も残すところ本当にわずかになってきました。2017年に向けて、注目されているイベントはありますか?

けむ。氏(以下、けむ。):一番大きいイベントは終わってしまったので、あとは市場がそれをどう評価するかということですね。

例えば、アベノミクスの時でも、最初はそんなにだったけど、最終的にはほとんどの銘柄が上がる状態になりました。

そういうのを一番期待してますけど、僕らデイトレーダーとしては12月に毎年IPOが好調で、その辺りがお祭りになることが多いので、今年もIPO銘柄が盛り上がるのかどうかに注目しています。

司会者:カグラさんはどうですか?

カグラ:日銀が(金融)緩和するかどうかというのが気になります。年内にするという話もあるので。あとは強いて言うなら、アメリカの経済指標ですね。

司会者:確かに、アメリカの景気がピークアウトしたんじゃないかいう視点の投資家の方も多いようですよね。

カグラ:そうですね。トランプノミクスっていうんですか? 僕は期待しているんですけど。

年末年始のポジション取りについて

司会者:テスタさんは注目してるイベントはありますか?

テスタ:正月のことしか考えてないですね。いかに休むかですかね。結局4日ぐらいしか休みないでしょ。

司会者:お正月を迎えるにあたって、なんとなくいい気分で迎えたくないですか? 年末年始にチャンスってないですかね?

テスタ:それはいつもあるんですが、みんな年末にポジションを落としがちなんですよね。

司会者:手仕舞うってことですか?

テスタ:ノーポジで新年を迎えたいという人が多くて、実は年末に買って年始に売ったら儲かる可能性がちょっと高かったりするんですけど。

カグラ:僕はバリバリ持ち越して、けっこう食らったんですけどね。

司会者:今年はとくにそんな感じでしたよね。

杉原:お正月は本当に憂鬱でした。

司会者:杉原さんは持ったままでした?

杉原:はい。去年と同じ相場になるかなって期待してたので。

テスタ:普通の人はみんな手仕舞うから、持ち越ししてるってすごいと思う。

杉原:おかげで原油(価格急落)とかまともに食らってしまって。

テスタ:そういうときもある。

杉原:今年はリスクをなるべく減らして、お休みを迎えたいかなと。私はとくにマザーズ上場銘柄をやることが多いので、なおさら慎重に。

みなさんに比べて資金があるわけではないので、動きやすいところを狙わないと利益を取れないというところがあって……。中長期であまり動かない大型株を持っていても勝負できないので、小型株中心になるのですが、なおさら年末年始にリスクは取れないですね。

司会者:なるほど。

著名トレーダーの取引手法

司会者:みなさんが聞きたいのは、このトレーダー3人と杉原さんがどんな取引手法を使われているのかなというところだと思います。

いろいろ経験されて、コツコツ研究もされて行き着いたトレード手法があるんじゃないかなと思うので、順番に教えていただけますか?

けむ。:僕は最初に紹介していただいた通り、基本的には板読みトレード。板の注文をリアルタイムに見て、人間の行動心理学的な感じで見ます。

僕はとくに大型より小型の銘柄が多いので、さっき注文を出した人が変更したからとか、大量買いした人が売り出したとかを考えたりするのが好きだったんです。

ただ、徐々に資金も増えていったのと、新興的な銘柄が減ってきたので、大雑把なチャートを見て、急所となるとこの板を見て、本物かどうか見極めるという手法にシフトしつつあります。

司会者:板読みってなかなか難しいなと思うんですけど、相場の熱みたいなものがわかるんですか?

けむ。:一番最初に気づいた、板読み手法が見せ板と言いまして、買う気のない、売る気のない注文をわざと出して、びっくりさせるわけじゃないですけど、自分の注文を取り消すということをやってる人がけっこういたんです。

それから逆算して、「これだけのことをやるということは、ここで売りたいものがあるんだろうな」とか、そこから始まりました。

今はどちらかというとアルゴリズム売買がものすごく入ってますので。どれくらいの量が入ってきてるかとか、前は対人だったんですけど、今はどちらかというと対アルゴリズムで板読みしている感じです。

司会者:板からアルゴリズムの動きというのはだいたい推測できるんですか?

けむ。:もちろん推測でしかないんですけど、先ほど言った期待値的な感じで、こういう可能性が高いであろうと推測して、そうであればこう動くはずだと。10回中10回成功するといったものではないですけど、10回中6〜7回成功すれば十分な利益になりますし。

杉原:私も最初の頃、見せ板というのに本当にびっくりしていて、バタバタすることが多かったので、最初の初動は落ち着いて見ようということを頭に入れて、朝は冷静に見ています。

司会者:バタバタせずに落ち着いて相場を見るというのも1つのアイデアですね。

けむ。:そうですね。僕は朝のバタバタのほうが心理的な隙があるので大好物で、逆に動きが落ち着いてきてしまうとあんまりやることがなくなってしまいます。

時間軸が長いと、大きな市場に影響されたりというふうになってくるんですけど、僕はそっちの勉強をぜんぜんしていなくて、逆に時間軸をうんと短くしないと勝てないので、本当に自分の得意なところを抜き当てているという感じです。

司会者:性格だったり、時間軸だったり。

けむ。:非常に大事ですね。先ほどおっしゃったように、自分の性格を理解して合わなければあえてやらないっていうのも1つの選択だと思います。

デイトレーダーが見る狙いどころ

司会者:続いて、カグラさんはどんな取引手法なんですか?

カグラ:今年わりと使っていたのは、アルゴリズムに付随した市場のゆがみを利用した手法ですね。

顕著なのはBrexitという、イギリスのEU離脱決定で日経平均が安値をつけたときなんですけど、為替が1ドル103円から100円に向かって下がっていったときに、かなりパニック状態が起こったんですね。節目を割っていくと、売りが加速して、さらに下げるということを繰り返したと思うんですけど。

司会者:投げが投げを呼ぶみたいな。

カグラ:ただし、それは日経平均を構成する銘柄を使って下げるのであって、途中で中小型株は下げが1回止まってしまうんですよね。

ここは本当においしいポイントで、先物で買って、次の日パニックの分が戻ったら売るという手法を使うと、それだけで幅が300円ぐらいの値幅をとれたり。

司会者:指数が大きく動いた時の中小型株が狙い目だったりするんですね。

カグラ:周りのトレーダーに聞いても、本当にほしい銘柄は中小型株に集まっているので、そういう人たちが買ってると聞いたらもうそろそろ止まりそうみたいな。(そういうことを)Twitterで判断したりというのもありますね。

司会者:テスタさんは?

テスタ:僕の場合は短い時間軸でずっとやってきたんですけど、資金が増えると短い時間軸がどんどん窮屈になっていって、買いたい値段で買えなくなったり、売りたい値段で売れなくなったりするから。

司会者:やっぱりテスタさんが動くと相場が動いちゃったりするとか、そういう感じなんですか?

テスタ:そうですね。やっぱり数億円になったらすごい窮屈になってくるから、そこから先は時間軸を動かさなきゃいけなくなります。だからけっこう、中長期とか長期もやってます。今は何でもやってるから、デイトレーダーは卒業しました。

司会者:宣言しちゃっていいんですか?(笑)。

テスタ:デイトレーダーってイメージ悪いから、真っ先に卒業したほうがいいかなって(笑)。最後のデイトレーダーは、けむ。さんだけです。

勝ち続けるために必要なマインドセット

司会者:最後のデイトレーダー! それも伝説になりそうですね(笑)。ただ、中長期投資は今まで取らなくてもいいリスクも取るようになりませんか?

テスタ:だから結局、資産が全部です。100パーセントの資産から中長期に現金を何パーセント残すみたいなことで、常に最悪のリスクを考えて、それでもこれだけは残るみたいな。

あとの人生設計とかはそのうち死ぬので、「死ぬまであったらいいかな」という感じです。相場はどんなことも起こりうるので、何が起こっても破産しないようにとか、そこまで大きくお金を減らさないということだけは注意してやっています。

司会者:お金の管理がものすごく重要になってくるんですね。

テスタ:長いことやろうと思ったら……。どれだけ土地を買っていても、一撃で飛ばしてしまったら意味がないので。何が起こっても減らさないというのを、結局今勝つだけじゃダメで、勝ち続けないとダメなので、そこは注意しています。

司会者:勝ち続けること、大きく負けないこと。短いトレードは、徐々に集中力が難しくなってきましたよね。

けむ。:やっぱり年齢的なこともあって、集中力が落ちてきたので、僕はテスタほどじゃないですけど、資金の圧迫とかもありますので。

単純に小型株しか動いてなかったりするので、スイング(トレード)まではいかないんですけど、自分の中ではだいぶ時間軸が伸びてきまして、最初の頃30秒を1日200回とかやってたんですね。

それが5分、10分くらいのトレードが多くなってきたのかなという気はします。自分の中では随分長くなったなとは思うんですけど、それでもほかの人から見たらすごく短いほうだとは思います。

テスタ:最後のデイトレーダーなのに、そこを強調するんだ(笑)。

司会者:伝説ですからね。1日に200回も……指にタコができそうですけど(笑)。

杉原:そんなに細かく見られれば私もやってみたいですけど、たぶんメンタル的についていけないと思います。

けむ。:逆にもうメンタルをやられている暇がないので。

司会者:取り返そうとか思いません?

けむ。:それはまったくないですね。やるべきことをやった結果負けるのはしょうがないので。大負けしてイライラしている暇があったら、「なんでもっとうまくやれなかったのかな?」「何か見落としてないのかな?」と考えます。そうすると、怒っている暇がないんですね。なので、負けてイライラすることはないですね。たぶん3人ともそうだと思いますけど。

司会者:なんか大人な感じがしますね。

杉原:本当ですね。私もすぐミスしちゃうし、誤操作で数字の入力間違えちゃったりとか。

けむ。:めちゃめちゃあります。そういう時はイライラします。

独自の売買ルール

司会者:続いてのテーマ、「独自の売買ルールを教えてください」。けむ。さんは、ルールってあります?

けむ。:僕は強いて言えば、ルールを作らないのが自分の中のルールでして、ルールだからといって思考停止してしまうのが一番嫌なんですね。

考えて決断しないといけない時に「ルールだから」とやってしまうと、絶対にそこからうまくならないと思うんですね。

だからそういう売買ルールはまったくないんですが、もっと大雑把なルールとして、テスタと同じように一発で資金を飛ばさないようには気をつけています。一銘柄に全資産を入れないとか。まあ手法的なルールとはちょっと違いますけど。

司会者:カグラさんは決めているルールはあるんですか?

カグラ:僕は1個だけあって、先物をやっていると飛ぶお金がハンパないので、マイナス200万を見たらとりあえず自分は間違ってたと認めて全部切るようにしてます。

司会者:金額なんですね。

カグラ:金額ベースで考えています。ちょっと熱くなってナンピンなんて入れてしまうといくらでも膨らんでしまうので、その時は1回リセットするという、要は破産をしないような管理をするということぐらいかなと思います。相場は常にあるので、取り返せるかなと。

司会者:相場って戻ったりもするじゃないですか。「あの時切らなければ……」って思いません?

カグラ:毎日思ってます(笑)。

初心者→プロになるまでのルール作り

司会者:やっぱりルールがあってもそう思うものなんですね。テスタさんはどうですか?

テスタ:例えば含み損では持ち越さないとか、ストップ安に近いやつは買わないとか、 初心者の頃は「これはやってはダメ」というルールをどんどん作っていって、それをいつの間にか当たり前にしていくということはすごく大事です。それでがんじがらめにするんじゃなくて、当たり前にしていって、新しいことを考えていくというスタイルが大事かな。

「やらなくて当たり前」みたいなレベルに持っていかないと、短期でやる時にはいちいち考えてる暇がないので、間に合わなくなる。

司会者:そうなれるまでにけっこう時間はかかりました?

テスタ:そうですね。未だに決めたやつをぜんぜん守らなくて、100万負けるはずだったのが気づいたら1,500万とか負けてる時もあるから、「やっぱりこれはやったらダメやな」というルールを作って、それを守れるようにするという繰り返しを未だにしている気はします。

司会者:杉原さんは何かルールがあったりするんですか?

杉原:私もそんなに厳密に決めてることはないですけど、自分がてっぺんを決めてるわけじゃないって思いながら日々やっているので、自分の決めた何パーセントで、利益をちょっとずつ食べようと決めていて。それをひたすらやっているだけですね。

司会者:欲張らずコツコツと。

杉原:それが一番なのかな?

テスタ:さっきから杉原さんの言っていることは正しいことばっかりなので、すごいちゃんとやってるなと思いますね。

司会者:資産たくさん蓄えてらっしゃいますから。

杉原:ちょっとずつ。

テスタ:おごって。

杉原:なんでですか(笑)。

司会者:残念ながらお時間となりました。本日はありがとうございました。みなさん、大きな拍手でお送りください。

(会場拍手)