英語公用語は必要か?

西村博之(以下、ひろゆき):こんばんは、ひろゆきです。ということで今日は「英語公用語は何が問題か」という事で、鳥飼先生に来ていただきました。よろしくお願いします。

鳥飼功美子氏(以下、鳥飼):先生なんていいですよ、鳥飼さんで結構です。鳥飼功美子です。よろしくお願いします。

ひろゆき:職業としては通訳になるんですか? 先生になるんですか?

鳥飼:大学教員です。通訳者だったのは大昔です。

ひろゆき:そうなんですか? ウィキペディアによると、アポロの中継の……。

鳥飼:だからその、大昔の話はちょっと嫌じゃないですか(笑)。

ひろゆき:僕生まれてませんからね、その頃(笑)。

鳥飼:そうですか、じゃあやっぱり今の話にしましょう。

ひろゆき:英語の授業を教えられている先生になるんですか? 大学では。

鳥飼:大学院で、異文化コミュニケーションというものを教えてます。その中で言語コミュニケーションとか、コミュニケーションとは何かって事を研究したり、教えたり。

ひろゆき:別に英語がどうこうってより、コミュニケーションがどうなのか。

鳥飼:そうです。コミュニケーションを使うってのはどういう事なのか、って話を。

ひろゆき:具体的にはどういう授業やってるんですか? 

鳥飼:一言では言えないんですが……是非大学院にいらして下さい。

ひろゆき:ああ、そうですか(笑)。じゃあ潜り込んでみます。

アポロの月面着陸、通訳が見たウラ話

ひろゆき氏:というわけで、最初のアポロの話を引っ張れって言われるんですけど、アポロの……。

鳥飼:だからそれ止めようって言ったじゃないですか(笑)。生まれてなかったんでしょ?

ひろゆき:60何年でしたっけ? アポロって。

鳥飼:思い出せないぐらい昔なんですけど、69年でしたかね。要するにアメリカが人工衛星を打ち上げて、アポロという名がついたのが月まで行って着陸したわけですよ。で、着陸して宇宙飛行士が色々喋ったりなんかしてるのを、同時通訳したっていうね。

ひろゆき:あれって生放送? 生中継だった? 

鳥飼:生だったんですよ。完全に生で。

ひろゆき:月から来た電波はアメリカのNASAにいって、日本にも生で届いた。

鳥飼:日本だけじゃなく全世界。だから結構、その思い出を共有してる人は世界中にたくさんいるんですよね。

ひろゆき:今、世界中が中継で繋がるのなんてないじゃないですか? 同じ番組を見るのに世界中で生で繋がってって。

鳥飼:リアルタイムで皆で一緒に世界中の人が見るのってあんまない、そういうので稀有だった。もう一つ稀有だったのは、同時通訳者がヘッドフォンをつけて同時通訳してるのを見たことあります? ある!? 

ひろゆき:ええ、国連とかでやってるんですよね。

鳥飼:テレビ局のスタジオでこうやって宇宙から聞こえてくる宇宙飛行士の声なんかをね、同時通訳するっていうのをやったんですよ。それで皆は「あんな事してるんだ!」って結構インパクトがあったらしいんです。

ひろゆき:それまではやってなかったんですか? 

鳥飼:やってなかったし、今はやってないです。なぜそういう事になったかというと、今と違って技術がなかったから、月に着陸するまで画がなかったんですよ。今は宇宙船の中でもシャトルでも、なんか手を振ったりするじゃないですか。

ひろゆき:何にも映すものがないから、とりあえず通訳映しとくか、みたいな。

鳥飼:映すものがないから、とりあえず通訳者がやってる所を映そうってなって、映っちゃったわけ。今はそんな必要ないでしょ。あの時だけはわーっと同時通訳してる姿が流れたので、結構覚えてる人が。

ひろゆき:鳥飼さんはその時、日本中の人に見られていた訳ですね。

鳥飼:見られていた。でも生まれてなかったんでしょ? 

ひろゆき:まあそうですけど。当時は割と有名人だったりしたんですか? あーどっかでなんか見たことある気がするんですけど、みたいな。

鳥飼:月面着陸が見たくて、みんなテレビ見てましたから。今とやっぱり違うのよね。

ひろゆき:確かに最近、そこまで宇宙に思い入れないですからね、若い子達とか。

鳥飼:そう、もうシャトルも何度も行ってるし、はやぶさも行ったしとかね。

ひろゆき:はやぶさはテレビで中継なんか一切してないですからね。

鳥飼:あれはまあちょっと無理だったしね。誤照射とか色々大変だった訳ですから。でも砂か何か持ち帰ったじゃないですか。だから興味ある人はあるんですよね。

日本企業に広がる英語公用化の流れ

ひろゆき:ほうー。ちょっと本題のほう行きますか。というわけで「英語公用語とは何か?」という事で、今回のテーマ。

ひろゆき:まぁ一応楽天さんだったり、ユニクロのファーストリテイニングさんだったりとか、会社内で英語を公用語にしようと言い出したのは去年あたりですよね。

鳥飼:そうそうそう。

ひろゆき:あとなんか国際的な話でいくと、日本政府もなんか文章公用語として英語使った方がいいんじゃね? とか、国際会計基準もなんか入れた方がいんじゃね? とかで、(光学機器・ガラスメーカーの)HOYAかなんかが昨日か今日、会計基準をアメリカに合わせますみたいな事を発表してたりしますけども。(※この動画は2011年に公開されたものです)

鳥飼:これは公用語じゃないんですけど、三井住友銀行が一万何千人いる総合職の全行員に、TOEICで800点以上取るように義務付けると言う事を発表して、結構大きなニュースですよね。

ひろゆき:三井住友銀行の総合職。他の会社でいくと、楽天・ファーストリティニング社内の公用語を英語化、日産自動車経営会議は英語、社内資料も英語を併記。

鳥飼:日産は社長がゴーンさんですから。

ひろゆき:まあそうですね。伊藤忠商事、入社後4年以内に3か月~6か月海外で語学研修。これ、別に普通ですよね? 

鳥飼:伊藤忠は商社ですからね、それはしょうがないでしょう。

ひろゆき:NECは新入社員約40人を2年目からを海外研修へ。クボタは大卒以上の新入社員が1か月間、米国で語学研修。これは研修に行くだけって、別に大した事じゃないじゃん。

鳥飼:だからやっぱりインパクトが大きいというか、みんなが「えっ!」って言ったのは、楽天とユニクロが公用語にするって言ったからですよね。会社の公用語にするっていう事は、会議も全部英語。日本人同士でも英語で会議するわけですよ。

ひろゆき:すごい気まずい感じしますね。

鳥飼:気まずいですよね。書類書いて社内で回すって事を、全部英語ですよ。

ひろゆき:2、3日だったら面白いと思うんですよね。毎日やるとちょっと恥ずかしさのほうが上回る気が、僕はするんですけど。武田薬品もTOEICの730点以上を、新卒者採用条件にしたと。

ひろゆき氏「TOEICは優秀」

ひろゆき:というわけで、割とTOEICが重要視される昨今ですね。

鳥飼:今、採用とか昇進ではやっぱTOEIC何点以上って言っている所が、多分2,000社ぐらいあるんじゃんないですかね、多いですよ。だから普通の会社企業に就職しようと思うと、やっぱ皆必死でTOEICを受けて、こういうスコア貰わなきゃいけないというね。大変ですよね。

ひろゆき:まあ結構大変でしたよね、TOEIC。10年前くらいに受けましたけど。

鳥飼:他人事のように言いますね(笑)。

ひろゆき:10年前ぐらいに。あれって(公式認定書の再発行期限が)2年でしたっけ? 

鳥飼:賞味期限2年くらいなんですよね。

ひろゆき:英検とかって、あれなんか永遠に一級とか言えるじゃないですか? でもTOEICって2年経ったらもう言えなくなるじゃないですか、公式には。っていう意味で、TOEICって僕は割と優秀な試験だなと思うんですよね。実際、人間の語学力って下がるじゃないですか? 

鳥飼:受けてみたんですね。

ひろゆき:まあ一応。

鳥飼:で、どうでした? 

ひろゆき:830ぐらい。

鳥飼:なかなかじゃないですか、じゃあ三井住友、OKですね。

ひろゆき:三井住友程度でしたらね。……すいません(笑)。ただね、本当に使わないじゃないですか、10年間。僕その後10年日本にいたので……もともと1年間アーカンソー州に住んでて、その後日本に帰ってきて、んで日本で暮らしてるので、英語力って下がる一方じゃないですか? 

鳥飼:下がりますけれども、リスニング力は衰えないし、800点以上取ってたら、本当に使おうと思ってちょっとやり始めたら、すぐ戻りますよ。

ひろゆき:1日ぐらいかかりますよね。

鳥飼:1日ぐらいいいじゃないですか。

ひろゆき:着いた初日に言葉が出ないっていう。お酒を飲むと喋れるようになるんですけど。

鳥飼:まあ翌日ぐらいには結構戻ってますよ。800点ぐらい出来れば良いですよね。

英語ができると本当に得をするのか?

ひろゆき:でも別に英語が役に立った事って、そんなないですよね。

鳥飼:得したって事はないですか? 

ひろゆき:んー、まあ外国人と話す時、たまたま外国人と会った時に割と便利ってのはあるんですけど。別に俺、この外国人と話さなくても仕事に支障ねーな、っていうのはあるんですよね。仲良くはなったんですけど。っていう事が多いからかな、必須だったかて言われると、そういう状況でもないですね。

鳥飼:そういう気持ちで皆さんがいてくださるといいんだけど、何かみんなも公用語って以来……まあ以来じゃないですね、ずっと、結構思い詰めてる人多いですよね。やっぱり英語ができないと、とかね。

ひろゆき:鳥飼さんは元々通訳だし、コミュニケーションだとすると英語推進派じゃないですか? 

鳥飼:あのね、通訳者ってのはプロですから、日本語―英語の通訳やっている通訳者が英語出来なかったら、これジョークにならないですよ。だからプロは別ですよ。英語の先生もプロですから、英語が出来なきゃいけない。

でも普通の人は自分のその必要用途に応じてね、出来ればいいんじゃないですか。友達と喋りたいって言うんだったら、そういう類の英語を出来るようにやればいいと思うし、本当に仕事に必要なんだっていったらやればいいし。

ひろゆき:でも英語の授業とかって「これから国際化だ」「日本にいちゃ駄目だ、海外に行かなきゃ」みたいな話よく言われる訳じゃないですか。そうすると英語を学んだ方がいいんだって普通思うわけじゃないですか? それ聞いて、いや英語なんていらないんだって思う人は、ちょっとおかしいと思うんですよ。

鳥飼:でもね、あんまり周りがそう言うからいいじゃないかって人もいますよ。

ひろゆき:ふーん。

鳥飼:内心はやっぱり心配はしてるんでしょうけれどもね。でも本当言うとね、英語で人間の価値が決まるわけでもなく、必要な人はやればいい、好きな人はやればいい。公用語にするほどのものかなって思いません? 

ひろゆき:例としてあがってる所とは別の会社……という事にしておくんですけど、某社が役員に英語を義務付けたんですけど、あれ僕すごい賢いなって思っていて、10年後に英語の勉強もしないような役員っていうと、大体40歳から50歳以上なんですよ。

で、そういう人って10年後いらないんじゃねっていう時に、クビの切り方として「お前英語出来ないから切るわー」っていうのは、確かに断りきれないじゃないですか? 切られたら仕方ないなっていう。

鳥飼:仕事ができないとかじゃなくて? 

ひろゆき:ええ。管理職レベルであれば「英語くらい何とかしろよ」って言われたら、それぐらい何とか出来るぐらいのスキルはあったほうが、下への示しもつくと思うんですよね。要は何の仕事していいかって、わかんないじゃないですか、10年後。

例えばソニーって会社、10年前やってたのと今やってる事って全然違うじゃないですか? って形で、会社って10年後にどう変わってるかわからないと。そうすると、こっちの方向行くよーって行った時にバッって行けるぐらいちゃんと切り替えが出来て、努力が出来る人が管理職じゃないと、役員以下「それ俺やった事ないからできねーよ」とか言って止まっちゃうじゃないですか。

っていう風に止まらないために、とりあえず英語出来るやつっていう新しいことに挑戦できるやつは残す、新しいこと出来ないやつは切る、って考えてるんだったら、賢いと思うんですよ。

鳥飼:多分そんな風に考えてはいないでしょ。

ひろゆき:はい(笑)。

鳥飼:そういう会社があれば、それはそれで面白い。それがTOEICになっちゃうとね、一つの目安ではあるんですけど、それで10年後が見られるのはそれはちょっとどうかなっていう。

ひろゆき:TOEICが悪い? 英検だったら。

鳥飼:TOEICが悪いんじゃないんです。あれは一つの目安ですから。なんでもかんでもTOEICで判断していいのかなっていうね。

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