スプーンの凹面に光が当たると

ハンク・グリーン氏:スプーンに映った私はなぜ上下逆さまなのでしょう? この質問には、別の質問によって答えたいと思います。その質問とは、あなたはなぜスプーンに映った自分の姿を眺めているんですか? いつまで眺めているんですか?

私たちはけっこうな頻度でこの質問をされるので、ほんとうに不思議に思うのですよ!

それはともかく、スプーンの内側を見ると、そこに映った姿は上下逆さまです。それに右手をあげると映ったあなたの左側の手が上がりますよね。しかしスプーンを裏返して外側を見ると、そこに映ったあなたは、歪んではいるものの、正しい方向に映っているのです。

私の顔は長くなってますね。スプーンを裏返したら映っている状態が変わるのはなんだかおかしな感じがしますが、それには完璧な説明をすることができるのです。もちろん、それには物理が関係しています。

私たちが見るものはすべて自分の網膜に光の光子がぶつかっているからに過ぎません。脳はその活動のすべてを色、明るさ、距離などへの情報へと変えるのです。

あなたが平らな普通の鏡に立つ時、あなたが見ているのは鏡に跳ね返って真っ直ぐ眼に入って来たたくさんの光子です。光子がどのように跳ね返るかは、それを反射する物体の表面にかかっています。

光子をボールだとして考えてみましょう。あなたが壁に向かってボールを投げます。あなたが重力のない仮定宇宙に住んでいるとしたら、そのボールは真っ直ぐあなたに向かって帰って来ます。

しかし、壁の表面が凹面で、上下があなたの側へ向かって傾いているとしましょう。まるで大きなスプーンのカーブのような感じです。するとボールの跳ね方は変化します。

もしボールがカーブした壁の上側に真っ直ぐ飛んでいくなら、床に向かって跳ね返ってあなたの足に当たるでしょう。もし下部に当たるなら、ボールは上側に跳ね返り、あなたの鼻に当たって鼻血が出るかもしれません。

同じ法則が光と反射する表面にも当てはまります。ボールの代わりに光子で考えればいいだけです。もし鏡がスプーンの内側のような凹面だったら、光子はボールと同様に、角度を持って跳ね返ります。上部に当たった光子は下方向へ偏向し、下部に当たるなら上方向へ偏向します。そして右側に当たった光子は左側に偏向し、左側に当たった光子は右側に偏向します。

そのすべての偏向した道が交差したところが焦点となります。

スプーンが巨大か、あなたが極度に小さくない限り、あなたはスプーンの焦点より離れて反射を見ていることになり、光子があなたの眼に当たる頃には上下逆さまの反射が見えてしまうのです。

スプーンの裏側にはこの問題は当てはまりません。表面が凸状ですから、中心が外側よりもあなたに近いところにあります。光子は角度により偏向してしまうものの、その角度は映ったものが広がって見えるようになるだけで、ひっくり返ったりはしません。

ですからあなたが映った自分の姿をどうしても拝みたいなら、またはディナーで暇になったら、スプーンの裏側のほうが信頼できる姿であると言えるでしょう。