厚塗りの芸術「インパスト」

カリン・ユエン氏:今日はイタリア美術の言葉、「インパスト(Impasto)」についてお話ししましょう。みなさんこんにちは、Little Art Talksへようこそ。カリンです。

インパストとは、「練ったもの」という意味であり、芸術においては厚く付けられた絵の具のことを指します。筆跡が見えないように薄い絵の具がつけられるスフマート(Sfumato)と異なり、インパストは厚い絵の具によって、筆跡とパレットナイフによる切断面が見えるようになります。

絵画の中にインパストがあるか判別する、最も簡単な方法は、側面に立って絵画の横の重なりを見ることです。もし、キャンバスに一定の固着した絵の具があれば、インパストである部分があると思っていいでしょう。

インパストは、ルネサンス時代のヴェネツィア派の画家ティツィアーノとティントレットの絵画に初めて用いられました。

ルーベンスやレンブラント、ベラスケスなどバロック時代の巨匠たちも、周囲の室内空間から与えられた光を捕えるために、インパストを用いました。

絵画に絵の具の小さな影を投じることで、光と影の強いコントラストを和らげ、ドラマティックな光の効果を求めたのです。より明るく輝かせるために、金属の装身具や甲冑のハイライトとしても、厚塗りの絵の具が使われました。

これは、19世紀の自然主義とロマン主義の風景画で次第に顕著になってきます。インパストは、近代美術の芸術家たちの間で積極的に使われるようになりました。それは「絵画の表面は、抽象的な世界へ違和感なく入る窓ではなく、それ自体が現実感を持つべきだ」という考えのもとです。かつてのように抽象画を創造する手段ではなく、絵の具それ自体が芸術作品であるという考え方です。

この発想により、絵画の質感と筆跡の形は、ある特定の主題の中で、芸術家の感情や気持ちを鑑賞者に直接伝えるものになりました。芸術家たちがメディウム(注:美術作品の制作材料)の不均等さを強調するこの考えは、近代芸術の中心的な議論となり、「素材の真理(Truth to Materials)」という言葉に要約されていきます。

つまり、「なにかを絵の具で描いているならば、絵の具によって語ることができるはずで、絵の具はそれ自体が絵の具らしく見えるべきだ」という意味です。

20世紀の中ごろ、フランク・アウアバークやジャン・デュビュッフェ、レオン・コソフなどの芸術家たちは、インパストを極端なまでに押し進めています。