お笑いコンビ・キングコングの活動

絵本作家のぶみ氏(以下、のぶみ):キングコング的には、新ネタってどんくらい作ってるんですか?

西野亮廣氏(以下、西野):作ってないこともないですけど、そんな頻繁に作ってないですよ。それもむずいんですよね〜。

前もここでお話ししたんですけど、見えちゃうんですね。お客さんは、「芸人だったら漫才作れよ」「漫才の気持ちを忘れたんか」みたいな。そう思うのが普通だと思うし、自分もなんばグランド花月に出るのが好きなので、もちろん作るんですけど。

やっぱりお客さんが「漫才作れ」って言った時点で、お客さんの想像を超えないという。居心地はいいかもしれないけど、「ああ、いいね」で終わっちゃって。インパクトがあんまないみたいな。

のぶみ::そらそうですよね、どう考えても。

西野:お笑いファンは、ずっと言うと思う。「お笑いライブを増やして」とか、「こんなライブやって」とか、「新ネタライブやって」みたいな。だけど、そこに応えていくと、もうフェードアウトしかないんじゃないかみたいな。

たぶん今、若手芸人はみんなそれに応えていってると思うんだけど、じゃあ果たして、それでなにか大きいことをやったかと言ったら、誰もあまり出てきてなくて。ファンばっかり喜んで……う〜ん。

オリラジが歌をやり出したときって、やっぱりファンは「そんなことよりネタ作ってよ」ってあったと思うんだけれど、それでも歌をやり切って、おもしろいってなったから。

お笑いの場合はとくにかもしれないけど、求められることをあんまりやっちゃうと、こじんまりして終わりそうな気がするんですよね〜。

山口トンボ氏(以下、トンボ):そりゃあ、そうなりますよね。

ファンの期待に応えすぎてはいけない

のぶみ:僕らの絵本業界でも、絵本で映画化になった人とか、このくらいの部数いった人とか、もう前例がすごくいっぱいあるんですよね。それを超えないと納得できないみたいになっちゃって、「そうじゃないんだけどな〜」って思うときもあって。

お笑いの人たちもやっぱり比べますもんね。今、この人とこの人がおもしろいとかいうので。それで1位になれる人はすごいかっこいいんだろうけど、中途半端な人たちはむずかしいんでしょうね。

西野:むずいんですよね〜。

のぶみ:そのときに思いっきり切り替えないと。西野さんも絵本作家だったわけじゃないから。それでここまで来たら、たいしたもんだよね。

西野:長い歴史で見ると、島田紳助さんは漫才を辞められたわけですよね。たけしさんもそうですよね。さんまさんも落語じゃないよね。鶴瓶師匠も辞められて。そのときどきで、やっぱりちょっと(ファンに)がっかりされたと思うんですよ。

紳竜続けてほしいっていうファンがほとんどだったと。100人中99人は「紳竜続けてよ」って言ったけど、本人は「それではもう先がないんだ」って見えてたから。だから抜けられたと思うし、ツービートもそうだと思うし。長い目で見たときに、みんな辞めてんだよね。

のぶみ:だけど、キングコングは?

西野:辞めないですよ! 僕らは漫才ずっと続けますけど、陥っちゃダメなのが、ファンの希望に応え過ぎちゃうという。

のぶみ:僕も講演会でファンのことだけを喜ばす絵本だけを描いてると、実はファンもいなくなるんですよ。

西野:そう! そう!

のぶみ:そうなんですよ。世の中のみんなを喜ばすみたいな勢いを持ったやつがあって、その中からわざわざ会いに来てくれるのがファンなので、このファン設定になっちゃうと、(世の中の人たちが)「私たちが望んでいたものと違う」になっちゃうんですよね。

西野:あ〜。

のぶみ:だからやっぱり、クオリティはどんどん上げてかなきゃいけないんですよね。ファンのために作ってるんじゃないんですよね。ファンのために作ると、逆にダメだというね。むずかしいですよね。

西野:ファンがいなくなるっていうね! そうなんですよね。だから僕、当時絵本描くなんて言ったときも、全員反対ですもん。「なんで芸人なのに絵本描くの?」って、先輩からも言われたし、それを支持してたファンなんかいなかったから。「なんで絵本なんて描くの?」みたいな。

今でこそ応援してくれるようになったし、売れたらファンの人も「やったぁ!」とか言ってくれるようになったけど。考えてみると、当時はファンの人も反対やったから。

のぶみ:続けたからだろうな〜。

西野:それでしかないですよね。

『プペル』の人気は予告ホームラン

のぶみ:たぶんそのときは、芸能人が絵本を描くというのが、やっぱりちょこちょこと出す人が多かったんですよ。

西野:あ〜。

のぶみ:アイドルが出すとか、ちょっとしたもので出すというのがあったんだけど、「こんなに本気?」っていうのは、びっくりしたんじゃないですか(笑)。

西野:本気がいいっすよね。

のぶみ:僕も絵本作家を17年やってるけど、本当にドン引くくらい本気だもんね(笑)。よくここまでやったなと(笑)。

西野:出版社から企画が来たときに、のぶみさんの場合だと、「絵本出しましょうよ」だけが来るんですか? それとも「こんな絵本を出しましょう」っていうオファーが来るときもあるんですか?

のぶみ:何個か(企画が)来て、今だったら『君が代ってどんな歌?』っていうやつを出そうって言って、それはおもしろいからやろうかなと思ってて。

君が代って天皇の歌じゃなくて、実は古今和歌集に出てくる恋の歌だったというやつがあって。それはすごくいいなぁと思って、受けようかなと思ったんですけど。

それ以外は今は無視してますね(笑)。今、アニメ案書いてるので、無視して自分がやりたいことを。今、一番自分のことを見てくれる時期なので、そのときに受け手側になるんじゃなくて、もう1回攻めていこうかなとは思ってますね。

本当にやりたいことをやるんだったら、今しかねぇだろと思ってやってますね。だから本当に必死ですね。

西野さんを見て、1年前からこうなるだろうなと思ったけど、実際になってるのを見て、「やっぱりやれることを全部やってたなぁ」って思ったんですよ。西野さんが、途中から、走るときに「神社に毎日行く」とか言って。

西野:今日も行きましたよ。

のぶみ:僕も今、毎日行ってるんですよ。俺もがんばろうと思って。そういうふうにやってよかったなぁと思って。ニコ生やれてよかったし、負けずにがんばろうって思うし、それはすごくありがたかったですね。

だってそんな人が近くにいなかったから。「本当にやってるこの人、予告ホームランみたいなことじゃん!」みたいな(笑)。すごいよね!

西野:神社行きますね。

のぶみ:絵本って本当に売れないジャンルだから、総合で1位になるってすごいことなんだよね。

西野:ありがたいよなぁ。

トンボ:そんなわけで、そろそろ有料のほうに移りたいと思います。11月4日の金曜日は、プペル展からお送りするということで。