遠心力は外側に押し出す力ではない

オリビア・ゴードン氏:普段の運動や通勤というわけではなく、誰しも毎日動いています。

宇宙が急速に拡大している一方、体内のすべての原子は常に振動し、太陽の周りを回っている惑星の上にあなたはいます。

そして私たちは、私たちのすべての動きについて、どのようにA点からB点に移動しているのかをいつも認識しているわけではありません。

そこで、物体の運動に関する7つのよくある勘違いについて暴いていき、物理的にどのような事象が起きているのかについて説明していきます。

遊園地によくある、床が落ちて回転する乗り物に乗っている時や、車で急カーブをした時など、壁に押し付けられているように感じたことがありますよね?

ほとんどの人がこれを、遠心力と呼びます。しかし、実際は外に押し出すような力は遠心力にはありません。

あなたが車で真っ直ぐな道路を下っており、あなたの体と車が一方向に速いスピードで進んでいるとしましょう。そして突然、左に急カーブします。

もちろんあなたの体は車の一部ではないので、車が左に曲がったとしても、体はまっすぐ行き続けようとします。これを慣性と呼びます。

つまり車が曲がるとき、車の側面に体を打ちつけることになり、強制的にカーブの方向と同じ方向に進むことになります。

本人からは外に向かうように力がかかっているように感じるかもしれませんが、実際は外の方向に向いているあなたの体を車の側面がウチに留めようとしているだけなのです。

自転車がバランスを保つ仕組み

自転車は1800年代の初期から日常生活の中にありますが、いまだに自転車の仕組みについての勘違いがあります。

当たり前のことですが、自転車を立てて、手を離すと倒れます。しかし、自転車が動いている時は、人間が乗っていなかったとしても、ある程度は優雅に無事故で走り続けます。

ほとんどの人が自転車がバランスを保っていられるのは、十分なスピードがあるからだと考えますが、実際はもう少し複雑です。

バランスを保つために、多くの物理的要素が相互に作用しています。重要な要素の1つが、前輪とハンドルの位置です。自転車の前輪はハンドルよりも少しだけ前方に位置していて、回転軸はこの角度になります。

さらに、前輪とハンドルの重心は徐々に前方に向いており、回転軸のかすか前方に集中しています。つまり自転車が左に倒れそうになったとき、前輪が自動的に左に向くのです。

車輪が回転して自転車の重心の下側に移動するのに十分なスピードがある限り、自転車は自らバランスを保つことができます。これが、手放しをしても自転車を運転することができる理由です。体をある方向に傾ければ、自然にタイヤも同じ方向に向きます。

しかし、車輪のような回転する物体の場合、ジャイロスコープ効果という、自転車の運転を補助する別の要素もあります。回転する車輪に押し付けるような左方向への力がかかるとき、物体を回転させる力のあるトルク(回転運動)という現象が発生し、車輪を左に向けます。

このような異なる作用のある要素を考慮して、自転車は車輪を運転手の下に保持するようなデザインで設計されているのです。

飛行機はなぜ飛ぶのか

飛行機については、最低でも重力と同等の揚力を生み出す必要があります。揚力は、飛行機の底と上部に、圧力の差が生じた際に発生します。基本的には、飛行機の上部よりも底の方に空気分子がぶつかるほうがいいと言われています。

ここでの疑問は、なにがこの圧力の差を生み出しているのかです。とても有名になったある架空のアイデアがあります。等時間通過説(同着説)です。

この説は、飛行機の翼が空をきるときに、ある程度の空気は翼の上を通り、ほかの空気は翼の下を通るというものです。ほとんどの飛行機の翼の上部は、下部よりも長く設計されており、上部を通る空気は合流するまでにより長い距離を通ることになります。

空気がより長い距離を通るということは、より速くなるということです。ベルヌーイの定理によると、より速く動く空気はより圧力が小さくなります。

つまり、翼の上部のほうが下部よりも低い空気圧を持つことで、飛行機は飛ぶことができるでしょう。

とてもシンプルですよね。でも、まだなにか納得がいきません。

翼の上を通る空気が、下を通る空気よりも速いということは事実ですが、通常は飛行機を持ち上げるほどの圧力の差は生まれません。翼の上を通る速い空気の流れに加え、飛行機の翼は少し上に曲がっているのがわかりますよね。

これにより、より多くの空気が翼の下部にぶつかり、飛行機を上に持ち上げる力がかかるのです。

理論上飛べないはずのハチ

20世紀の初頭、マルハナバチは飛ぶことができないという誤解がありました。現在では、彼らが飛ぶことができるというのは明らかですが、1930年代からの空気力学の理論を用いて計算すると、彼らの羽は飛ぶのには小さすぎるとされていました。

ここで見逃している重要なポイントが、ハチが実際どのように翼を使っているのかという事です。ハチは羽を上下に動かすのでなく、羽を回転させながら前後に動かしているのです。つまり彼らは、飛べるほどの圧力差を作ろうとしているのです。

飛行機の翼のように空気を下方に働かせる代わりに、彼らは空気の渦をつくり、真ん中に低圧力のかかった小さなハリケーンのような小さい旋風を生み出します。

旋風が作られるように羽を動かすことで羽の上部に低圧領域を作り、その圧力差がハチの体を持ち上げて飛べるほどの揚力を生み出しています。

つまり、ハチは物理学者を困惑させてきましたが、現在では彼らの重たい体を空気中に維持する流体力学作用の仕組みについて、より理解が深まっています。

電気は瞬時に移動する?

宇宙にいる宇宙飛行士を見ると、重力がないように見えて、無重力空間を浮いているように思うかもしれません。しかし、実際は重力はどこにでも存在しており、宇宙でも強く作用しています。重力はいかなる物体をも引きつける力です。

あなたと隣にいる友だちでさえも、お互いに重力によってかすかに引きつけられています。また、重ければ重いほど、より強力な重力圏を持っています。

つまり、地球はとても質量の重い物体なので、重力が彼らを地球に強力に引きつけます。しかし、彼ら宇宙飛行士は地球の軌道上を回るだけで地上に打ちつけられることはありません。

彼らが重力を認識することすらないのは、そのほかのすべてのものが同じく落下しているからです。床や食べ物、ほかの宇宙飛行士も同様です。つまり、すべてのものが落下しているのであれば、それはなにも起きていないということと同じです。

おそらくほとんどの人がこの勘違いに陥っているでしょう。電球を点けるとき、すぐに明かりがつきますよね。そして、電気は電線を通る電子の流れです。つまり、みなさんは電子がものすごいスピードで、バッテリーから電球まで流れていると思いますよね?

答えはノーです。実際には、電子は時計の長針が動くよりもゆっくり電線のなかを動いています。こちらを見てください。電線はすでに電子で埋め尽くされています。

そして、電線は伝導力があるため、いくつかの電子は自由に動き回ることができます。ライトをオフにすると、この電子は目的地もなくランダムに動きます。しかし、ライトをオンにすると、バッテリーの正端子と負端子の間の電子回路が繋がります。

反対極がお互いに引き合い、同極が反発しあうということはよく知られています。そして、電子が負電荷を持つため、正極に動く傾向があります。

そのような小さな移動を、電子ドリフト速度と言います。しかし、電球がこの力の効果を感じて明かりがつくまで、どのくらいかかるのかを測る信号速度というものもあります。

ぎっしり隣に並んでいる長い人の列のようなものを信号速度として想像してみてください。もし一番うしろの人が前の人を少しでも押すと、すべての人がかすかに前方に動くというドミノ効果が発生します。

誰もとても早く、もしくはとても遠くまで動くわけではありませんが、信号は列を通して素早く伝わります。典型的なケーブルでは、信号は光の3分の2速度で伝わります。つまり、電球内の電子はかすかに動き始めて、即座にフィラメントに明かりを灯します。

高層ビルから硬貨を落としたら

もしドバイのブルジュ・ハリファのような高いビルから硬貨を落としたら、道路を歩いている通行人に重症を与えるほど早く落ちるでしょうか?

幸運にも、答えはノーです。

この架空の話は、物体が落ちる時に加速し続けるという発想からきています。少しの間は加速を続けますが、永遠ではありません。

硬貨の落下速度がだんだん早くなると、より多くの空気分子が硬貨にぶつかって、速度を落とします。硬貨は流線形ではないので、この空気抵抗を強く受けます。

空気抵抗が重力と同じ強さになったとき、硬貨は残りの距離に関わらず落下速度をあげることはありません。終端速度と呼ばれる最高速度に達したのです。

実際に、異なる研究者がビルから硬貨を落とすという実験をし、約15メートル落ちると終端速度に到達することが明らかになりました。

つまり、5階建てのビルでも50階建てのビルでも、外的要因にもよりますが、硬貨は時速50キロほどの同速度で落ちます。

ビルの下で不幸にも硬貨が当たってしまった人にとっては、おでこを叩かれた程度にしか感じないでしょう。