サンパウロで見つかった新種のカタツムリ

マイケル・アランダ氏:自然科学者により、新種の発見と研究が日常的に行われていますが、いまだに地球上では数百万種の未発見の生物がいるとみられています。そのなかのいくつかは海底にひそみ、またはジャングルに生息しているであろうことに疑いはありません。しかし、新種の生物は街中、家の近くにいる可能性もあるのです。

DNA分析テクニックの進化と都市の生態系への注目によって、ロサンゼルスの裏庭や自由の女神の足元の生物多様性が明らかになりつつあります。通常、新種は小さいかほかの動物に似ているために、世界中の忙しい都市では気づかれにくいのですが、これから都市で発見された7つの新種を紹介しましょう。

もしブラジルで新種を探すのであれば、南半球でもっとも人口の多いサンパウロではなくアマゾンの森林からと考えがちですが、サンパウロは2014年の軟体動物の生物調査で、街のブリュレマーク公園の木々から新種の陸貝が発見された場所なのです。

新種の陸貝は同属のほかの種より少し大きめで、ピュアホワイトではなくライトベージュの殻を持っていました。

カタツムリは世界的に、種で一貫したスパイラルの特性をもつ殻から認識できますが、サンパウロのカタツムリは別種であることを示す細部の違いがあります。生まれたばかりの小さな殻は、カタツムリ属のほかの種の2回転の代わりに、1回転半の螺旋しか持っていません。さらに、大人のかたつむりは螺旋のトップにスレッドと呼ばれる20以上の小さなリッジを持ちますが、新種のカタツムリには16しかありませんでした。

研究者は、誰かの名前から、Adelopoma paulistanumという生物学的名前をつけました。研究者はその公園がかつて、大都市化と共にほとんどの生物が場所を移動したなかでも、小さなカタツムリが生き残ることが可能だった原始雨林の一部だったと予測しています。

南半球の別地域で2015年、ナチュラリストのペアが、タスマニア島ローンセストンのシティパークで偶然ヤスデの新種3種を発見しました。

小さな節足動物を識別するのは難しく、性器の形状を調べるのが1つの方法となっています。性器の形状は種の違いで分かれており、個々の種は同種のものとしか繁殖できません。

新種のヤスデは虫の研究者か昆虫学者に届けられ、1つの種は男性器の突起で目立っており、明らかにジャッカルの頭のようでした。そのためその種は古代エジプトのジャッカル神から、Tasmaniosoma anubisと名付けられました。

T.Anubisは12平方キロメートルのシティパーク内では知られており、自然に保存されていたが、街近くのユーカリ林から姿を消しつつあります。昆虫学者は、羊が食べたり開発されたりしたことで森林が破壊される前にこのヤスデが拡散したと推測する。サンパウロのカタツムリのように、このジャッカルジャンクヤスデは、街に囲まれた自然界の一部に避難したようです。

自由の女神の近くで発見されたカエル

昆虫学者は2011年、2009年にブルックリンの植物園で採取した新種を含む多くの種などと共に、ニューヨークシティと郊外のミツバチの調査結果を発表しました。その結果、すべてのミツバチが、ニューヨークシティがニューアムステルダムだった以前からその場所に生息して留まっていたのかが不明であることがわかりました。

自然科学者は、別の虫だと確かめることなく、いくつかの種と遭遇したかもしれません。ハナバチは米粒とほぼ同じサイズで、別種であることを判別するには通常遺伝子情報が必要になります。

DNAバーコーディングと呼ばれる新テクノロジーがそれに相当します。DNAバーコーディングは、通常種ごとに異なるメスから引き継がれるミトコンドリアゲノムの一部である短いDNAの連続を用います。小さな細胞サンプルと増加し続けるバーコードのデータベースから、科学者は迅速に検体を解明できるのです。

発見されたシティホームからLasioglossum gothamと名付けられたボタニックガーデンミツバチは、ニューヨーク4種のうちの1種です。

ニューヨークシティには、研究者が調査すべきもっと大きなは虫類と両生類も生息しています。は虫類学者はビッグアップルのヒョウガエルはなにかが違うと疑いを持っていました。そして、1937年、Carl Kauffeldという生態学者が、知られていた2種より短く快活に鳴くヒョウガエルがいることに気付きました。

彼は街の池に潜伏する第3種類目の新種の存在を論文で推測しました。そのアイデアは少なくとも、研究者チームがキーキーと鳴くカエルの数種を徹底的に研究した論文を発表した2014年まで十分な証拠がありませんでした。2008年、科学者は自由の女神からわずか10マイル離れたスタテンアイランドで初めてそれらのヒョウガエルを捕獲し、なにかユニークな特徴を持つことに気付きました。

ヒョウガエルはニューヨークシティで発見されましたが、記録によるとコネチカットからノースカロライナでも発見されています。詳しい調査によると、これら両生類は、ほかのヒョウガエルとはわずかに違う体の特徴を持っていました。鳴嚢は少し大きく、足の色が少し暗かったのです。

決定的な証拠は遺伝子でした。爬虫類学者は、ミトコンドリアDNAと核遺伝子のいくつかのセクションを配列し、ヒョウガエルは特別な種であることを確証しました。そして、最初に存在を予測した科学者の名前からRana kauffeldiと命名されました。

30種もの新種のハエが見つかる

ニューヨークの科学者がカエルで困惑するように、生物学者はオーストラリアのメルボルン近くに生息するハンドウイルカを奇妙に思いました。ハンドウイルカは数年にわたって、ハンドウイルカ属の種にまとまっていて、科学者は、頭蓋骨や鼻の形状、ユニークなカラーパターンなど身体的特徴からオスとメスを判別していました。

2011年、海洋生物学者は遺伝子の分析によりはっきりと問題を決着させました。イルカのミトコンドリアDNAやマイクロサテライトと呼ばれる核DNAの反復配列を解析したのです。多くのマイクロサテライトは通常プロテインのコード化をしないため、ほかの部分のゲノムより頻繁に突然変異が起こり、別種であるとの判別に活用できます。

その結果、メルボルン近海に住む約100頭のイルカは、まったく別の種であることが明らかになりました。科学者は彼らをTursiops australis、もしくはアボリジニ語のネズミイルカを意味するブルナンイルカと名付けました約50頭のイルカが、100マイル離れた塩水湖沿岸のネットワークに暮らしています。

数が少ないため、汚染などの人の活動に対し脆弱であり、生物学者はオーストラリアの絶滅危惧法の下、保護に協力しています。

新種の発見と調査は、印象的な出来事に聞こえます。ハエについて30の新種を発見することを想像してみてください。2013年、ロサンゼルスの自然歴史博物館がバイオスキャンと呼ばれるプロジェクトを開始しました。昆虫学者がロサンゼルスの家主と共同で、裏庭に昆虫のトラップ用のテントを仕掛けたのです。博物館の研究者たちは捕獲した昆虫を調べ、地域の生物多様性を調査しました。

2015年、30のハエの新種が発見・報告されました。

ノミバエと呼ばれるファミリーからのもので、ミバエとほぼ同じサイズです。ヤスデと同様、本体がまったく同じに見えてもハエ種の性器はまったく異なります。そのため研究者は、顕微鏡による注意深い調査の結果からそれらの新種を判別しました。そのうちの1種は、昆虫の捕獲テントの設置に協力し発見につながった市民科学者のために名付けられました。

私たちはハエを疎ましく思いがちですが、生態系において重要な役割を担っています。個体数をモニタニングしながら害獣の餌になったり、有機廃棄物を食べたり、またほかの昆虫科学者は都市の生態系がどのように変化しているのかを学ぶことができます。

雑種から新種へ

ご紹介したほとんどの種は、おそらく巨大なビルに囲まれて住む人の前に存在していたのでしょうが、組織が新種を進化させることもあります。オオカミと犬の雑種、コイウルフ(Coywolf)の場合です。

コイウルフはイースタンコヨーテとほかのDNAが混在しているため、現在では認識されている種ですが、次のような道を辿ってきたと信じる人たちがいます。

コヨーテは元々、北米の西に生息しており、1800年代に森林伐採により天敵がいなくなってきたため、徐々に東に生息範囲を広げてきました。そこでイースタンコヨーテの残りや固有の犬と遭遇し、異種交配が始まりました。馬とロバの異種交配で生まれたラバとは違い、それらの種は生物学的にかなり似ており、イースタンコヨーテは大量に繁殖しました。

この10年にかけて、科学者たちは別の動物間で遺伝子リンクを解明する一塩基多型、またはスニップと呼ばれるさまざまな手法を用い、イースタンコヨーテのDNAの解析をしました。2013年の約430頭のコイウルフを対象にした研究論文で、DNAの30パーセントがオオカミで10パーセントが犬だと発表したのです。

行動にも雑種性が見られ、ウエスタンコヨーテやオオカミよりも都市環境に適しているようです。孤独な単独行動をするコヨーテとは違い、コイウルフは小さなチームで狩りを行います。また、オオカミより小さめで、人々の近くで生きることを厭わないので、多くの生息地で生き残ることができます。

イースタンコヨーテは新種の始まりの段階にあります。今のところ違いますが、もしそれらの動物が時間とともにもっと遺伝子的に別なものになれば、生物学者は新種であると認め、コイウルフは単なる雑種のニックネームを超えることができるでしょう。

世界的に、生息地の減少が、野生動物への巨大な脅威になっています。都市の人口密度の高い地域にも生息できるいくつかの動物がいるからといって、それがベストな状況とはいえません。これら7つの新種が示すのは、私たちは都市での生物多様性を発見し始めたということです。あなたの裏庭にも新種が隠れているかもしれませんね。