200万部の大ヒット!

西村博之氏(以下、ひろゆき):今日は『買ってはいけない』の本についてのトークということで、よろしくお願いします。

北村肇氏(以下、北村):よろしくお願いします。

ひろゆき:渡辺さんです。

渡辺雄二氏(以下、渡辺):渡辺雄二です。よろしくお願いします。

ひろゆき:北村さん、何か自己紹介的なのをお願いします。

北村:みなさんあまりご存じないかもしれませんが、「週刊金曜日」という雑誌があります。これの……。

ひろゆき:結構有名ですよね。

北村:有名ですか?

ひろゆき:今まで何部ぐらい出てます? 「週刊金曜日」って。

北村:「週刊金曜日」は定期購読誌なんで1万6,000人ぐらいです。今日の本題である、その『買ってはいけない』は、最初の第一弾は200万部。

ひろゆき:そんないったんですか。

北村:この話は後で。まず「週刊金曜日」から。この編集長ですね……。

ひろゆき:1万6,000部のわりには存在感ありますよね、「週刊金曜日」って。

北村:そうですね。

ひろゆき:筑紫哲也さんのご出身、みたいな。

北村:わずか1万6,000ですけど、結構な存在感もあろうかなと。これの編集長を5日前までやってたんですが、5日前に編集長を降りて、今は発行人、いわゆる社長さんになってしまいました。この「週刊金曜日」でこういう「買ってはいけない」という連載をずっとやってまして、これを本にした『買ってはいけない』という本が、さっき言いましたように、最初の本が200万部ぐらい。

何でこういうものをやれたかというと、「週刊金曜日」っていう雑誌は基本的に広告に頼っていません。ですから、いろんな企業の悪口は幾ら書いても構わないと。ほかの雑誌や版元、いわゆる出版社だとなかなか企業の悪口を書けないもんですから。だから「買ってはいけない」本のようなものはなかなかできない。今も多分そう……。

ひろゆき「暮しの手帖」ぐらいですよね、そういう方針というか。

北村:そうです。「暮らの手帖」も昔やってましたけども、今もう、ちょっと他にはないです。たまにスナック菓子の特集などもやっていると。今日は、このスナック菓子の特集号をひろゆきさんに特別に差し上げようと思って持ってきました。

ひろゆき:ありがとうございます(笑)。

北村:あんまり食べないほうがいいな、ということで。

ひろゆき:そんなに食べないですけど。

北村:ということで、北村といいます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

スポンサーがいないことの強み

ひろゆき:よろしくお願いします。じゃあ、渡辺さんから。

渡辺:どうもこんばんは。渡辺雄二です。『買ってはいけない』の著者で、一応肩書は科学ジャーナリストということでやってます。よろしくお願いします。最初に『買ってはいけない』が出たのはもう11年前になるんですけども、その後も、延々と「週刊金曜日」に「買ってはいけない」の連載は続いておりまして、今年の9月に『買ってはいけない』の第7弾の、この『新・買ってはいけない(7)』というのを出しました。今日はここで取り上げた商品をいろいろお話ししたいと思ってますので、ぜひ見てください。よろしくお願いします。

ひろゆき:渡辺さんはほかにどんな本を書いてらっしゃるんですか?

渡辺:最近出したのは、ちょっと宣伝になってしまいますけど『コンビニの買ってはいけない食品 買ってもいい食品』というのを出しました。

ひろゆき:こっちは買っていい食品も書いてあるんですね。

渡辺:これは買ってもいいのを入れて……。つまり、今までいけない、いけないというふうなことばっかり言ってきて、じゃあ、何を買っていいんだ、何を食べていいんだっていう声をたくさんいただきましたので、じゃあ、買ってもいい物をと。今はコンビニでも結構いい物があるんですよ。コンビニも随分変わってきてまして、やはり世の中全体が健康志向なので、それに応えなくちゃいけないっていうことで、いいのも結構ありますので、そういう物も紹介したというものです。

ひろゆき:それは何かスポンサーとかついてらっしゃるんですか。

渡辺:いや、もちろんついていないですよ、そんなのは。

ひろゆき:じゃあ、単に褒めただけ。

渡辺:そりゃあもう、スポンサーついたらこういう本は出せないですね。

ひろゆき:でも、メディアってその昔はそういう志のもと始めたのが、広告取っていっていつの間にか変わっていくじゃないですか。多分「週刊金曜日」って売れてないから、いまだに堅気でいけてるんじゃないかって気がするんですけど。例えば10万部とかになって、広告がつき始めたら、そういうスタッフとかが増えてきて、「スポンサー切られたら存続できねーよ」みたいになっちゃうじゃないですか。

北村:ただ、広告が無ければ無いでやりやすいっていうこともあるので。広告をあんまり取らなければ誰の悪口でも、何の悪口を言っても、どこからも文句言われない。そうすると、そういう雑誌だから読みましょうっていう人も出てくるし。

ひろゆき:別に悪口を言うための雑誌なわけじゃないんですよね。

北村:いやいや、なるべく悪口を言うための雑誌ですからね。

ひろゆき:そうですか。

北村:ええ。

渡辺:先ほど、部数の割には存在感があるっていうふうに言われたでしょ。多分企業広告を出してないっていうのは唯一に近いと思うんですよ。それで自由なことが言えるっていうのがまず存在感がある。だから『買ってはいけない』も、これ広告があったら商品なんか当然取り上げられないですよね。

北村:そうです。

渡辺:例えば新聞などでも、まず大手の新聞は洗剤の批判はやらないです、洗剤メーカーっていうのは大スポンサーですから。テレビにしても、ワイドショーであんだけいろんな番組をやってても洗剤のことは一切批判しない。それから、車の排気ガスのことも問題にしてないでしょ。あれは二大スポンサーですから、テレビの。だから『買ってはいけない』はそういうスポンサーがないから、商品をいろいろ批判できてる、そういうことです。

『買ってはいけない』に取り上げられた食品を検証

ひろゆき:というわけで『買ってはいけない』でいろいろ買っちゃいけないっていう商品があるんですけれども、買ってきました(笑)。じゃあ、出してみますか。これいいんですか、『買ってはいけない』っていうので、一生懸命買わないように言っているのに、商品買った番組に出てるっていうその矛盾性は。すげー量、買いましたね。

スタッフ:持ってきてもらったんですよ。

ひろゆき:持ってきていただいたんですか。

渡辺:そうですよ。

ひろゆき:すげー。

渡辺:これは、今までこの本に取り上げたものを並べたわけです。

ひろゆき:じゃあ、ここにあるものは買ってはいけない物ですね。

渡辺:そうそう、それ全部『買ってはいけない』に取り上げた物……。

ひろゆき:これも買っちゃいけない物っていうことでいいんですか。

渡辺:そうです、そういうことです。

ひろゆき:そうですって。

渡辺:ちょっと誤解しないでね。

ひろゆき:はい。じゃあ、どうします? 適当に説明してもらえます?

渡辺:じゃあ、少し主な物を。全部はちょっと無理ですから……。

ひろゆき:じゃあ、ここら辺の毛生え薬からいってみますか。

北村:それ最後に。

ひろゆき:最後ですか。

北村:はい。

薬事法の抜け穴

渡辺:まずこのサプリメント。例えば、これ皆さんご存じのDHCのサプリメント。コンビニで売られてますよね。ドラッグストアでも売られてます。ノコギリ椰子エキスっていうのは商品なんですけども、これはどういうことかというと、肥満気味の人が下腹部を押さえてる。それから、パジャマ姿の人がトイレに行こうかなっていうような感じ。その後に「回数の多い方」にというふうな。

ひろゆき:漫画の絵ですね、このおなかいっぱいな感じの絵とそのポカーンとしている漫画の説明を今しました。

渡辺:要するに今、頻尿の人が多くて、その頻尿を和らげるというんですか、そういう効果を暗示してるんです。明らかに。

ひろゆき:普通に、絵的にはそうですよね。太っている人がいて、あと、回数が多いって言ってトイレっぽい男マークがついていて、パジャマっていう。

渡辺:どう見てもそうでしょ。だけれども、薬事法っていうのがあるんです。これは医薬品ですとか医薬部外品ですとか、そういうものを規制してる法律なんですけども、この薬事法では、この暗示的な効果も普通の食品に関しては禁止なんです。つまり医薬品、あるいは医薬部外品として認められた物はこういう効果を表示できるんですけども、これは一般の食品ですから、あくまで。

錠剤とカプセルの形しているんで、皆さん医薬品っていうふうに思っている人もいるようなんですけど、これはあくまでも食品ですから。そういう食品に関しては薬事法ではこの暗示的な効果も禁止してるんです。

ひろゆき:そうすると、この「頻度が気になる男性に」と「回数が多い男性に」しか文字では書いてないんですけど、何の頻度が気になる男性と何の回数が多い男性向けの商品なんですか、これは。

渡辺:そこがミソなわけですよ。もしこれが「トイレ」っていうふうに書いたら完全に薬事法に触れるんです。

ひろゆき:ここ、アウトと。

渡辺:アウトと。

ひろゆき:じゃあ、何に効くか書いてないからアウトにはなってないと。

渡辺:ない。だから取り締まれない。だけれども、この絵と文字を見れば何に効くかは明らかでしょ。誰だって、どう見てもそれはトイレですね。

ひろゆき:国語の問題でこれ何を暗示してますかっていったら、普通トイレって答えますからね。だから……。

食品の効果は検証されていない

渡辺:これ食べてもおいしくないですよね、当然、錠剤だから。結構値段もする。食べてもおいしくない、値段もする物を何でみんな買ってるかっていうと、やっぱりその効果を期待してでしょ。でも、その効果は基本的には言ってはいけないし、それから、本当に効くかどうかもわかんないんですよね。それは検証されてないから。

ひろゆき:検証してないんですか、これ。

渡辺:してないですよ、もちろん。食べ物ですから。医薬品っていうのはいっぱいありますよね、いろいろ。もちろん頻尿にいい、効く医薬品もあるんですけども、そういうのはちゃんと人間で臨床試験っていうのをやってるんですよね。

ひろゆき:効くかどうかって。

渡辺:実際に人間に食べさせたり飲ませたりして、実際にトイレに行く回数が減ったとか尿が減ったとかっていうのを調べてるんだけど、こういうのは一切調べてないわけです。でも、その効果を暗示して売ってると。そこがやっぱりちょっと詐欺的だろうと。

ひろゆき:スタイルを決めたい人のダイエット、びしっ(と書いてありますけど)、これは痩せる薬でいいんですか。

渡辺:これは一応、「太ももをすっきりさせる」っていう効果を暗示してるんですけど。ただ、このメリロートっていうのは恐ろしくて、肝臓障害を起こす可能性が……。実際に、過去に女性2人が肝臓障害を起こして入院してるんですよ。

ひろゆき:それは、痩せるっていうのは科学的には証明されてないけれども、肝臓障害を起こすことは証明されてるんですか?

渡辺:太ももの血行をよくするっていうのはヨーローッパのほうでは大体わかってるようなんですけども、痩せるっていうのはちょっとそこまではわかっていないし、普通に摂ってても肝臓がちょっと弱っている人なんかは、肝臓障害を起こして入院した人が実際にいるんです。これは厚生労働省が発表しているんですよ。

「季節の変わり目とひき始め」で連想するものとは?

ひろゆき:じゃあ、次、これ。「ひき始め、季節の変わり目に」。

渡辺:そうそう、これですけれども、これどう思います?

ひろゆき:ひき始めと季節の変わり目に。何に効く薬なんでしょうか。季節の変わり目とひき始め、っていったらアレですよね、普通。これは何に効くんですか?

渡辺:もちろん風邪ですよ。

ひろゆき:だって、マスクつけてる人が「さむっ」て書いてるよ。「いつも元気でいたい」「かかりやすい人のバリアになる」ともありますね。何にかかりやすい人なんですか?(笑)

渡辺:だから、これも同じことです、これも食品ですから。そういう効果は法律的に表示してはいけない。あんまり法律法律っていうふうには言うつもりはないんだけども、ただ、実際に効果も非常に曖昧なわけですよ。これもさっき言ったように人で確かめられているわけじゃないから。だけれども、いかにも効きそうな暗示的な表現、漫画とうまく巧妙に入れて、法律に引っかからないようにして、売ってるという……。

ひろゆき:これ、あからさまに風邪的な何かをイメージして。

渡辺:だから、それを、この『買ってはいけない』の7で取り上げた。

行政のチェックは機能していない?

ひろゆき:でも、これ、取り締まる側の東京都のほうはどうするんですか。

渡辺:弱腰なわけですね。

ひろゆき:何で弱腰なんですか。これ見て何に効くと思いますかっていうので、多分9割が「あっ、風邪かな」って思うわけじゃないですか。

渡辺:こういう物が売られてるっていうことをまず東京都の人は知らない。

ひろゆき:だって、コンビニとかで売っているんじゃないんですか?

渡辺:実際にその東京都の担当者の人に聞いたんですけども、知りませんでした。

ひろゆき:その東京都の担当している人、じゃあ何を見ているんですか。

渡辺:私はそれはよくわかりません。とにかく、この両方とも、ノコギリ椰子エキスにしても、エキナセアにしても、私が「知ってますか」って言ったら「知らない」って言ったんですよ。

ひろゆき:知らないからオッケーってことですよね。

渡辺:知らないから、取り締まれない。

ひろゆき:知らないものはしょうがないですよね。

渡辺:それで、内容もお知らせしました。そうしたら、このままでは取り締まれないような。発売する前にこういうことがわかって、いろいろDHCの人に問いただして、「これはトイレのことを言ってるんですか、あるいは風邪のことを言ってるんですか」っていうことをはっきり答えれば、取り締まるって言うんですね。

ひろゆき:発売前に知れば。

渡辺:そうです。

ひろゆき:発売前にどうやって知るんですか。だって、発売しても知らないような都の職員が発売前にどうやって情報を得るんですか? テレビCMも見ていないような人たちですよね。

渡辺:そう、見ていないみたいですね。コンビニにも行ってないみたいです。そこら辺が非常に不思議なわけですよ。だから、そこら辺がやっぱりお役人感覚というか、我々の、一般市民とは随分感覚がずれてるなっていう感じ。

制作協力:VoXT