自分の「時給」を意識しているビジネスマンは少ない

藤原和博氏(以下、藤原):「ニッポンの時給を考える」(というテーマ)、これが情報編集力とどう関係あるのかというのは後からわかりますが。この、時給というのをみなさんもちょっと意識してほしいわけです。いいですか。

ちょっと質問しましょうか。まず、この(ホワイトボードの)左から右への数直線を考えていただきたいと思います。ハンバーガー店やコンビニで高校生がバイトしますね。そうすると、だいたい時給いくらだと思います?

地方だと700円のところもあるんですが、800円ぐらいから。夜だと1,000円になったりしますね。

例えばそれが、コンピュータ系を扱えるとなると、パートでも2,000円近くになってきますね。例えば、プログラムができる、それからゲームのプログラムができればもっと上がってきますよね。

それが、だんだん時給3,000〜5,000円ぐらいになってくる。この仕事はどういう仕事かというと、実はみなさんのようなサラリーマンをやっている方や公務員・教員はだいたいこの辺の前後に入ってくるんです。

ちょっと聞いてみましょうかね。自分の去年の年収を聞かれたらさっと言える人。はい、多いですね。年収はわかるんですね。

では、自分の年間総労働時間が、「だいたい何千時間かな?」というのがつかめてる人。はい、少ないんですよね。

つかめてる人は、今もう暗算してもらって、自分の時給がいくらかを出してみてください。とにかくこれからみなさん、自分が1時間あたりに生み出す付加価値ということで、ほかと比較して欲しいんですよ。(年収を総労働時間で)割ってみると、上司だから、課長や部長だから時給換算で高くなるかというと、そうでもないんです。

というわけで、たぶん3,000〜5,000円の間になる方がかなり多いと思います。「年収400万の人が2,000時間働いてたら時給2,000円ですよね」という感じ。ぜひ計算してみてください。

稼げる仕事と稼げない仕事の違い

その時給を上げるということが大事なんですよ。稼ぐというのは、時給換算でフィーが上がっていかないと。年収が上がっても、もっと働かされたら……例えば年収が1.5倍になっても2倍働けと言われたら、ぜんぜん効率が良くないですからね。

というわけで次、(数直線の)もっと右側にいきます。これは専門家の領域です。例えば、大工さんでも1棟丸ごと建てられる棟りょうとか、ランドスケープのデザインまでできる庭師だとこれぐらいいくかな? 時間1万円ぐらい。

けっこう売れてる弁護士だったら、時間3万円ぐらいいきます。弁護士になったって、今はもうほとんど余っちゃってるので、食えない人がいっぱいいるんですけど、人気が出れば3万円。医師もこれぐらいですね。

それが最終的に一番右側、世界レベルのコンサルタント。カルロス・ゴーンに世界戦略を授けられるような人気コンサルタントだと、もうちょっとはじけるかもしれませんが。例えば、マッキンゼーが、そのシニアコンサルタントに1時間どれぐらい課金するかというと、だいたいいくらだと思います?

これぐらいなんですよ。8万円だと思っておいてください。いろいろありますけれども、1時間8万円ぐらいだと。

そうするとみなさん、日本のいろんなお仕事で800円〜8万円まであるわけですよ。同じ仕事なのに、100倍の差がありますよね。これが一体なんなのかという、その本質を見極めないと。

みなさんがもっと稼ぎたいといった場合、何を上げれば稼げるのかわかりませんよね。あるいは、(これがわからないと)みなさんのお子さんにキャリア教育をするときに、何が一番大事なのかということを教えられないですよ。

というわけで、今からまたみなさんに2分間、先ほどのブレストをしてもらいます。今度は3〜5人で。いったいこの100倍の差は何が鍵なんですかと。(数直線の)こっち(左)からこっち(右)に行くというのは、どういうことなのかです。

みなさんだったら、何が上がればもっとこっちに来るかです。例えば今、時給3,000円の人が4,000円、5,000円になるのかです。これを議論していただきたいんです。

時給の差は「技術」や「労力」では決まらない

僕が小学生にこの出張授業をやりますと、小学生だと「大変さ」とか答えるんですよ。大変さだったら、時給800円のマクドナルドのバイトだって夜中大変ですよね。大変さというのは、たぶん種類が違いますよね。わかりますよね。

それから、「年齢」とか答える子もいるんだけど、違いますよね。熟練度というのも、それぞれの仕事で違いますよね。

もっと言うと、必ず「技術」という声も上がるんです。でも、プログラマーの技術と弁護士の技術とは違いますよね。

プログラマーの技術レベルはこれだとか、庭師の技術レベルはこれだと言っても、これは比較できないですよね。

というわけで、この数直線で左から右に動かすものは一体なんなのか、何が鍵なのか、その本質だけを議論していただきたいです。

一応、最初に言っときますと、別にここに並べた仕事は、右のほうが左よりも偉いとか、そういう職業上の貴賤を言ってるわけじゃないです。

ただ単に、1時間当たりの付加価値レベルで比べてるわけですね。だからどっちが偉いとか、どっちが大切だというようなことはまったくないです。全部大切ですね。

さらに言うと、800円のこっち(左)側には、有償無償のさまざまなボランティアがあります。マザーテレサが典型的ですけれども。

それから、この8万円のこっち(右)側には、例えば孫(正義)さんだったり三木谷(浩史)さんだったりというような起業家、あるいはトップスター、例えばスポーツスター。

もう時給なんていうのは超越してるような人たちがいますよね。年収数十億とか、そういう人はこっち(右側)にいるわけです。

日本で普通に仕事してたらだいたい(時給)800円〜8万円なんだけれども、この100倍の差はいったいなんで生まれるか。では、1分半か2分しかあげません。これを議論してみてください。

(議論開始)

稼ぎたければ「レアカード」になりなさい

はい。じゃあそこまでにしてください。私の考え方を述べさせていただきますね。これは希少性です。簡単に言うと「レアさ」ということですね。

こっち(左側)にある仕事というのは、言っちゃえば、誰でもできるんです。だからマニュアルワークですよね。

例えば、日本人じゃなくても中国の人でも韓国の人でも、ある程度日本語が話せればできちゃうわけです。だから取っ替えられちゃうわけですね。あなたがやっていても、取っ替えられちゃうんですよ。

経済に強い人はわかると思うんですが、こういう仕事というのは、世界中で一番(時給が)安いところと一致していきますので、今はまだ日本の需給関係で維持されてますが、基本的にはあと10年ぐらいすると、どんどん下がっていく可能性がありますね。

こっち(右側に)行けば行くほど、どうなるかというと、希少性が高まる。つまり、かけがえのない仕事になりますよね。かけがえのない仕事、あなたしかダメというやつです。

その究極は、「もうあなたしか頼れるものはないんですよ」と。こういう話ですよね。希少性が上がれば上がるほどこっち(右側に)行くということです。

つまり、稼ぎを上げたいんだったら、みんな一緒のほうに行っちゃダメなんですよ。一人ひとり、かなり孤独感があると思うけれども、希少性のあるほうへ走らないといけないと。こういう話ですね。

これは、みなさんのお子さんにもぜひ伝えていきいただきたいんです。なぜなら、日本ではまだ小学校の教育目標というのは、ほとんど「みんな一緒に仲良く元気よく」なんですよ。

そっちに行けば行くほど価値を失っていくわけですね。そういうことに気づいていないんです。ほとんどの小学校がそういう教育目標ですからね。

そのときに、子供に希少性というのは、とくに小学生にはきついですよね。希少性という漢字は難しいし、意味がわからないと思うんです。

でも実は、子供が一発でわかる言い方があります。

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