誰が盛り土をしないと決めたのか

小池百合子氏:それでは、今日はこの時間を設定させていただきまして、豊洲市場のいわゆる地下空間についてこれまで事務方のほうが自己検証、第二次報告をまとめておりました。それを受けたかたちで今日の記者会見をさせていただきます。

豊洲市場のいわゆる地下空間でありますけれども9月30日の時点で一度みなさま方にはご報告をさせていただきました。そこのポイントは「いつ、誰が、どの時点で決定したのか」。つまり「盛り土をしない」ということを決めたのかという点が、その解明が不十分であるということでございましたので、私の方から今一度、都職員自らの手で書類を精査をするように、と。

そして、問題の原因を究明するように指示をしていたものでございます。そして、また詳しい調査結果につきましてはこの会見のあとに事務方より詳細な説明をさせていただきますけれども、まず私のほうから、報告の概要についてご説明をさせていただきます。

前回の報告以降でございますけれども、当時の職員のヒアリング、そしてまた現在の職員のヒアリングをいたしました。そしてさらには技術会議の委員のみなさま方や、設計事務所のほうにも話をうかがわせていただいたということでございます。

また、打ち合わせ会議の会議録など、新たな資料の分析も含めまして精査をした結果、「地下空間を設け、盛り土をしない」という決定をしたのは、段階としては設計段階であると判断するのが妥当であると考えられます。

そしていつ誰が盛り土をしないと決めたのか、という前に、盛り土について都がどのように認識していたのかということを改めてここで振り返っておきたいと思います。

まず、平成19年度から20年度にかけて開催されたのが専門家会議でございます。そして専門家会議は平成20年の7月に終了いたしまして、その1ヵ月後にすぐ技術会議が開かれることになります。そしてその2つの会議から、建物下を含めて敷地の全面に盛り土をするという提言をいただいたわけでございます。

その後、平成21年2月6日、これは当時石原知事でありました。「豊洲新市場整備方針」なるものを策定しております。そしてその時点におきまして、敷地全面に盛り土をするということがここで都の方針として明確に定められたのがこの平成21年の2月6日の会議でございます。

平成24年の5月の段階で盛り土をしないことが確定

そこで問題の設計の時期でありますけれども、まず、基本設計の時期は平成22年の11月。11月に起工が決定されております。ちなみに起工というのは設計や工事を委託する、にあたりまして、発注者、この場合は東京都ですけれども、発注者が条件を決めるということであります。

この時の仕様書には、地下とは書かれておりませんものの、「モニタリング空間、設計等は本設計に含む」と、このように明記されております。この頃からモニタリング空間の設計という認識があったということでございます。

それで、その後の設計事務所との打ち合わせ記録を精査いたしました。そうしますと、都の側から、地下空間のイメージ図を示すなど、地下を想定して具体的な検討を設計事務所に指示をしていたということがわかっております。つまり整備方針に反する検討、つまり全体に盛り土をするということを決めておきながら、方針策定の約1年後の基本設計の段階から具体的に、これまでの都の決定とは違う方向に進んでいったということでございます。

そして結果として平成23年の6月でありますけれども、この段階で提出された基本設計の成果物におきましては、寸法は明記されておりませんが、建物した全体に地下空間が記載された断面図が添付されていたところでございます。

そして、基本設計が完了いたしますと、より具体的な検討をすすめるということで、実施設計に着手することになりますけれども、これは平成23年9月に起工決定が行われ、その仕様書を確認いたしますと、基本設計で作成した断面図が添付されておりました。

この実施設計の起工に大きな影響をおよぼしたと考えられますのが、平成23年8月18日に新市場整備部において開催された部課長級の会議ということになります。

この会議の場におきまして、地下にモニタリング空間を設置する方針を確認した、と当時の複数の関係者が証言をいたしておりまして、つまりこの会議で決せられた方針が、これまで都の方針に沿わずに極な判断でこれが行われたということになるわけでございます。

ですから、「いつ、誰が」といったときにはここが「いつ」ということになると考えられます。それから、いろいろとメモや会議録を精査したわけでございますけれども、設計事務所との打ち合わせ記録がございます。

その記録によりますと、コストの面、工期の面、多くの課題をクリアするためにモニタリング空間の扱いについても、設けるのか設けないのか揺れ動いた形跡はございますけれども、報告書では、平成24年の5月の段階で、建物下に盛り土をしないということが最終的に確定したと、このように判断されることになります。

そして、平成25年2月に完了した実施設計の成果物には、寸法まで記載された地下空間のある断面図が提出をされております。これに基づいて建設工事が着手されて、現在に至ったと。これが時系列的、そして各会議の内容、さらにはなにがそこで決まったのか、ということをいま詳しくご説明をさせていただいたところでございます。

実務上の決定者は8名

もちろん今回の報告書はみなさま方のお手元のところに第二次自己検証報告書ということでいまお配りをさせて……、後ほど。すみません。今はパワーポイントのペーパーだけでございますが、後ほどこちらの方にまとめたものがございますのでご参照いただければと思います。

以上申し上げましたとおり、基本設計から実施設計にかけて、整備方針、つまり全体に盛り土を敷くという方針に反しまして、地下空間を設けること、そして盛り土をしないということが固まっていったという形跡が見られるわけでございます。

したがいまして、この間に市場長を務めましたのが2名、OBが1名と現職が1名。そしてまた当時の部長級の職員は6名おります。内訳はOBが3名、現職が3名。合わせまして計8名ということになりまして、この8名が盛り土をしないことを決めた、実務上の決定者。また、事実を知り得る立場にあったという判断ができるかと思います。

当時、豊洲市場の整備の中心を担っておりましたのが新市場整備部でございまして、ここには技術系の幹部5名が関わっており、結果を見ますと、都が定めた整備方針に反する内容で事業を進めていたことになります。

それから、新市場整備部長、これに該当するのはOBが1名なんですけれども、この整備部長は平成23年の11月16日に設置をされました新市場整備を統括するライン部長の立場にあった人物でございます。

そこで事情聴取から得られました多くの証言からも、新市場整備部長は整備方針の遵守、市場長への報告・説明、技術会議等への確認を行うべき立場にあったわけでございますし、また、実務的に地下にモニタリング空間を作ることが決定されたと考えられます平成23年の8月、つまり先ほど申し上げました部課長級の会議の責任者であったと、このようになります。

また、新市場建設調整担当部長、および、基盤整備担当部長、これにあたるのがOBが1名、そして現職が1名でございますけれども、この2人は土木ラインになります。

それから新市場建設技術担当部長、および、施設整備担当部長、それぞれOBが1名、現職1名でございますが、こちらの2人が建築ラインということになって、それぞれトップとしての責任を有することになります。

それから次に、岡田(至)元市場長でございますが、この方は今OBでございますが、岡田元市場長と、中西(充)元市場長、現副知事でございますが、この2人につきましては、市場の最高責任者であり、「盛り土がないことは知らなかった、報告を受けていない」とそれぞれおっしゃってはいるんですけれども、それで済まされるというものではございません。責任者であったわけでございます。

そして、新市場の整備という重要案件に責任を持つ者でございますので、実務を進めている技術陣に、文系とか技術系とかそういう話ではなくて、管理をしているかどうか、責任者であるかどうかという観点でございます。

実務を進めているのは技術畑でございますけれども、そちらに対して、都の整備方針に沿ったかたちできちんと進められているのかどうかという確認をすればよかったわけでございますが、その点がなされていなかったということになります。

そして、市場長の補佐をして、局全体に目配りすべき立場にあるのが管理部長でございます。この管理部長は、当時でありますけれども現職1名でございますが、この点についても責任という観点からは同様のことが言えるのではないかと思います。

情報公開は徹底して行うということが必要

で、前回も申し上げましたけれども、今回の事態を招きましたもっとも大きな要因というのは複数の要因が考えられると思います。

先ほども、土木ラインそして建築ラインそれぞれが分かれていること、技術畑と文系とそれをつかさどる市場長であったり、それぞれの部長ということもございますけれども、システムの問題と言ってしまえばみんなそうなってしまうんですけれども、改めてその中身を考えてみますと、マネジメントが欠如していたと。責任感の欠如、そして前例、前がそうだったからいいじゃないかということ、それから、チェック確認が行われていなかった、意思決定プロセスが不備であった、連携不足であった。

つまり専門家会議が平成20年の7月に終了して1ヵ月技術会議が開かれるわけですけれども、せっかく平田先生をはじめとする専門家会議がそのあと技術会議につながれていったけれども、それが途中から消えていくといったこと、今回の会議録やメモなどを精査していくなかで、そういった連携がうまくできていなかったということが明らかになりました。

マネジメントの欠如、責任感の欠如、前例踏襲、チェック不足、意思決定プロセスの不備、職種間などでの連携不足。残念ながらキリがないんでございますけれども、しかしながら今回改めてこういったことを考えますと、やはり1つ1つの情報公開、それも正しい情報公開ですね。

例えば専門家会議も、あの頃、工夫して確かに会議そのものも全部オープンにしていたけれども、それがうまくつながっていないで、そしてこの技術会議にはそれが十分生かされないまま、だんだんとモニタリングということをベースにして地下空間が生まれていって、それに対して誰もがチェックをしなかったということだと、このように考えます。

ですから、情報公開は徹底して行うということ、それが必要だと思います。

それから、事実と異なる説明を続けてきたということはこれについてはもはや言語道断というしかないわけであります。

建物の下に盛り土をしないで地下空間を設けるということが、もしこれが方針転換として、意思を持って方針転換をするということであるのだったらば、その情報をそのときにオープンにして、これまでの専門家会議や技術会議の結論を「いやいや、こういう考え方で進めたいけれどもどうか」と言って諮るなりなんなりをすればいいわけでございまして、そこで変更しなければならない理由はそこで丁寧に説明すべきだったということだと思います。

仮にそうしていたならば、今申し上げたように専門家に相談をして、安全性などについては確認を求めていればよかったわけで、そうなればこのような事態は回避できたはずでございます。

そもそも地下にモニタリング空間を作るといった考え方も、土壌汚染対策法の改正に対応するためにはどうしたらよいのか、万が一の場合に備えることが必要ではないかという発想から出てきたものであるにせよ、これまでこういったかたちで流れが途中で途絶えて、そして方針がいつの間にか変わってしまうということで、このような事態を招いているということは、きわめて残念なことだと思います。

先ほど、原因は組織運営上の数々の問題が重なったこととこのように申し上げてまいりましたけれども、今回の豊洲市場につきましては、課題はまだまだ多々ございます。

食の安全、地下水の問題、大気の問題、多々ございますけれども、今回このかたちで地下の空間の問題ということ、これがいつ誰がどこでなにを決めたのかということにつきましては、これまで会議録やメモ、そういったこれまでの資料や、本人の直接のヒアリング、行政監察に基づいたかたちでのヒアリングをして、今日このような会見をさせていただいているわけでございますけれども。

しかしながらこのような問題につきましては、今後再び起こらないためにも、これをきっかけといたしまして、改めて職員の一人ひとりに、より責任を持って、都民ファーストの基本を忘れることなく、しっかりと一つひとつのことを丁寧に、かつわかるようにすすめていくようにしたいと呼びかけてまいりたいと思います。

それから今日は8名のポスト名も挙げさせていただきました。

関係いたしました職員の責任の所在は明確にする必要もございます。そこで、懲戒処分等の手続きでございますけれども、速やかに進めるように指示をしたところでございまして、厳正に対処してまいりたいと考えております。

むしろ、これを契機といたしまして、職員のみなさまがたが、都民のみなさん、納税者のみなさんに対しての責任を改めて痛感していただいて、やはり信頼できる都政づくりにともにがんばっていただければと思うところでございます。

冒頭申し上げましたように、調査の内容の詳細につきましては、このあと事務方からより詳細にご説明させていただきますので、その場でお聞きいただければとこのように思っております。

私のほうからお伝えすることは以上でございます。