2016年9月期通期 決算説明会

藤田晋氏:本日はお忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。今回、当社2016年9月期本決算にあたります。私の方から決算の概況をご説明させていただきます。

第4四半期でもあるんですが、第4四半期のについては補足資料のほうにありまして、今回通期で資料を作っておりますので、こちらをご覧いただき、ご説明させていただきます。

まず、売上は3,000億を超えます。3,106億とY on Y(イヤー・オン・イヤー)で2割以上の増収。営業利益は、投資期にあたりますので減益予想で予測を出していたんですが、最終的にはそれを上回りまして367億円。

そして今、投資期にあたると申し上げましたけれども、注力しております「AbemaTV」、4月11日に開始いたしまして、約半年経ちましたけれども、ダウンロード数は900万を超えて、初速は好調と言えると思います。

広告代理事業も好調でございまして、この規模になりながら2割の年度の増収と、利益のほうも順調に伸びております。ゲーム事業が順調というより、好調と言ってよいと思いますが、Y on Yで40パーセントの増収。営業利益としては、7割の増益という成果となっております。

年度のグラフで見るとこのようなかたちでございまして、当社は、毎回言っておりますけれども大型の買収をせずに、自分たちでゼロから事業を作って育てるという方針ですが、2010年・2011年くらいにスマートフォンシフトをして、大半の事業をPC・ガラケーからがらっと入れ替えたんですけれども、中身を変えつつもも力強く増収していると。

とくに近年、スマートフォンの事業ばかりですけれども、伸びたことによってグンとさらに増収の力強さを増していると思います。

営業利益は、前回の決算説明会、第3クォーターの説明の場で、350億を超えた分は基本的に「全部決算インセンティブにするので、アナリストの方もそれ以上の予測を出さないで欲しい」と申し上げましたが、決算のインセンティブを十分に出したうえで、さらに足元のゲームの調子がよいものですから、上回って360億で着地したという結果になっております。

「AbemaTV」への先行投資

通期の販管費で見ると、(スライド)左のグラフのとおりですが、ご覧いただきますとわかりますとおり、広告費が134億から253億にドンと増えております。

この理由は「AbemaTV」のプロモーションを大きく行ったこと。あと、第4四半期だけで全体の3分の1程度の広告費を使っているんですが、ゲーム関連の広告をかなり行ったということが原因となっております。

連結役職員数は3,971名となっておりますが、どの部署でも業績を反映して順調に人が増えているんですが、とくに「AbemaTV」の先行投資事業などに新たな人員が足されているというかたちになっています。

損益計算書、PLで見るとこのとおりになっております。

これでご留意いただきたいのが、経常利益から最終利益のところの減りが大きい、半分以上減っているというのは、グループの中でも好調のCygamesの少数持ち分。我々が65パーセント程度の持ち分ですので、その分引かれていると。

それにプラスして、今大きく投資をしている「AbemaTV」の損失は、フルで100パーセント取り込んでいるということが原因ですので、当面先行投資が続きCygamesが調子がいいという状況が続くうちは、この当期(純)利益のところは苦しくなるという構造になっております。

バランスシートはこちらのとおりで、現預金が積み上げて500億を超えているというかたちになっております。

2017年の業績見通し

続きまして2017年9月期、今始まった期の業績見通しです。

今期も増収は力強くできそうな見込みではあります。昨年も280億円で業績見通しを出し、結果的には367億で着地をしました。同じく、先行投資期であるという位置づけを続けるということで、280億円の営業利益という業績予想とさせていただきました。

その内訳についてですが、まずゲーム事業は、正直言って足元どうかと言われれば、どちらかと言えばさらに伸びそうな上り調子ではあるんですけれども。なにぶんゲームですので、ボラティリティを1年を通して見たいということで、少しコンサバティブな予算にいたしました。

広告事業は順調に積み上がるだろうという予測にしておりまして、現在先行投資をしている「AbemaTV」を大幅に増やすという計画で、合計280億という見込みをさせていただいています。

もちろんゲーム事業が予測より上振れた場合。あと「AbemaTV」も先行投資の大半は制作費ですとか、コンテンツ調達費ですので、ここにおいて無理をした調達。

大型コンテンツを買おうという気はないんですけれども、いまだ買うものが全部決まったわけではないので、使いきれなかったら上振れするだろうというような見込みになっております。

続いて配当予想ですが、配当総額は投資期ですので据え置きにしましたけれども、配当性向としては大きく上がっているというような数字となっております。

続いて個別の3つの事業、広告、ゲーム、メディアですから、それぞれの事業をご説明させていただきます。

インターネット広告事業

まず、インターネット広告事業につきましては、あまり話すことがないくらい全体的には長期に渡って順調に推移をしておりまして、とくに2016年はまた大きく伸びたと言えると思います。

これがクォーターで見た場合の推移なんですけれども、4Q、7-9月期はトレンドとしては伸びる期ではあるんですけれども、それでも十分伸びたということが言えると思います。これを見ていただきますとわかるとおり、大半はスマートフォンの広告が伸びています。

営業利益もそれに伴って、多少デコボコはあるんですけれども、ちょっと長い目で見れば長期的な成長トレンドが続いていると思います。

注力商材は、今はインフィードと動画ということで、毎四半期決算説明のたびにお話していますけれども。

この両広告商品、両方共とも注力していることもありますし市場が伸びていることもあり、この四半期大きく伸びていますし、基本的にはベースアップして伸びているという感覚です。

インフィード広告は、とくにLINEが伸びていると。LINEのタイムライン広告。

動画広告も大きく伸びておりまして、Facebookですとか、先ほどのLINE、Twitter、YouTubeといったところが牽引しているんですけれども、今後これに「AbemaTV」「FRESH!」といった自社商品の動画の販売も強化していきますので、内容としてはさらによくなるんではないかということが見込めます。

ゲーム事業

続いてゲーム事業ですが、冒頭に好調であると言いましたけれども、YonYで(売上高が)4割、営業利益で7割伸びたと。

四半期の売上の推移で言うとこのとおりなんですが、前回の決算説明会の場で、「当社もミルフィーユ型で積み上げながら伸びている」と申し上げました。

このグラフを見ていただくとわかります通り、今の売上の大半、2014年、2015年の1~2年ぐらい前に作ったものが確かにメインの売上を構成しているんですけれども、一番古い2011年、2012年といった薄い黄色のグラフのところも意外と長くもっているのがわかります。

やはりこういったゲームとかコンテンツ産業というのは、パッケージの場合、バーンと伸びたらそのあとは落ちるのも急激だと思われがちですけれども、ゲームというのはけっこう長持ちする。

急に落ちるということはなくて、徐々に徐々に減っていくようなものなので、ライフタイムバリューとしては、「ゲーム」という言葉の響きよりは意外と長いですから、1個ヒットが出ると、けっこうそれでやっていけるというか、数字が作れると。

そういう意味では、この終わった期にも新たに『Shadowverse』というけっこう大きなヒットが出ましたので、この2016年モノが一番上に乗っかってますけれども、これはしばらく上昇トレンドが続き、そして上乗っていくだろうと言えると思います。

続いて営業利益ですが、フォース・クオーターは相当、広告宣伝費を思い切って使いましたので、そんなに増益はしてませんが、利益を出せる余力としては上がってきております。

主な主力タイトルを並べていますけれども、今期、この『Shadowverse』というかなり多くの人が遊んでくれているゲームが新たに出たということと、『オルタナティブガールズ』がまあまあヒットしているといったところで、さらに加わってきたと思います。

売上高シェアとしても、かなり早い段階からこの市場は最後は残存者利益になるだろうと。体力があり、ノウハウがある会社でなければ、なかなかヒットが出しづらくなり、最後、残存者利益と言いましたけれども、確実にその一角になったんではないかなと思っております。

2017年、これから出すタイトル。ファースト・クオーターで、『おそ松さん』のゲーム、これはエイベックスさんと一緒にやったんですけど、これがそこそこヒットしておりまして、これがすでにスタートしたのと、LINEと組んだ『潜空のレコンキスタ』、このゲームもそこそこはいくだろうと思われます。

今後、日本テレビさんとの共同事業ですけども『エンドライド』、あと『ボーイフレンド(仮)』の音ゲーといったものが順次出ていきます。

セカンド・クオーター以降は、まだ8本のリリースを予定しておりまして、Cygamesで非常に力を入れて作っているタイトルなどもありますので、今後も十分新たなヒットタイトルに育つ可能性はあると思います。

メディア事業

続いて、先行投資中のメディア事業です。

まずAbemaTVの前にAmebaブログ、アメーバピグなどの既存事業ですが、これは今横ばいでしっかり耐えているというような状況ですが、この四半期もしっかり売上はキープしているという状況です。

そしてAbemaTVですが、今900万ダウンロードを超えて……968万までいってるのかな? おそらく来週の段階で1,000万ダウンロードを突破していきます。

もちろんダウンロード数というのは、実際にiPhoneのアイコンでタップされて使われなければ意味がないので、単純に追っかけているわけではないんですけれども、それにしても、このスピードで1,000万ダウンロードを突破したというのは、手応え的には十分得られたものだと思います。

先ほど、「ダウンロードされても使われないと意味がない」と言いましたけれども、基本的に社内ではDAU(デイリーアクティブユーザー)、WAU(ウィークリーアクティブユーザー)、MAU(マンスリーアクティブユーザー)といった、実際の動いているユーザーを数字を追っています。

単純に、DAUとかWAUというのは、非常に人気のコンテンツ、例えば今で言うと野球の日本シリーズとかサッカー日本代表というと短期的に伸びるんですけども、それでもういなくなったら意味がないし、大変人気のタレント・ミュージシャンに頼って一時的に連れてきても意味がなくて、視聴習慣としてAbemaTVを開くという状況を作らなければならないので、基本的には継続性というのを一番重視して見ています。

そういう意味では、開始以来、今DAUで100万ぐらい、WAU300万ぐらい、MAUで600万ぐらいという数字ですけれども、まあ、着々と積み上がっていっているというか。ちゃんと継続性を帯びながら積み上がっていってるので、ここは基本我々が狙っていたとおりになってきているかなと。

ただ、この数字はまだぜんぜん。AbemaTVのビジネスモデルというのは、マスメディアになり、マスメディアにふさわしい広告がたくさん入り、その金額を十分コンテンツに投資するということで成り立つという考え方ですので、2年か3年は損益をほぼ考えないで、マスメディアを作るところに腰を据えて投資をしていくという考え方をしております。

そういう意味で来期は先行投資期であるというかたちで考えてます。このぐらいの規模で広告を売って損益を平均しようと思ってもほとんど意味がないと考えているということです。

若年層・女性利用者の比率が上昇中

続いて属性ですが、スタート直後っていうのは35歳~45歳ぐらいが多かったので、ちょっと想定と違っていたんですけども、順調に18~34歳が一番多いメディアになっていまして。

ただご存知のようにAbemaTVというのはまったく登録不要でスタートできるものですので、我々側で最初に属性をとってるわけではなくて、GoogleAnalyticsを使って出しているデータで、GoogleAnalyticsの特性上、10代以下が出てこないんです。ですから、10代以下を入れると、若者層のシェアはもっと大きいと思われます。

そういう意味では、テレビをあまり見なくなった世代をターゲットにしたという意味では、ドンピシャなところが見ていると。

そして、前回の説明会でもお話ししましたけれども、女性比率が少ないのをコンテンツなどによって解決しなければと言いましたけれども、徐々に上がってきました。今現在35パーセント。当然50パーセントを目指してやっていきます。

200億の赤字を許容するつもりで先行投資

これは投資イメージです。

投資といっても、社内で言っているのは、「去年100億赤字出したけど、今年いくら出すか」という考え方ですので、まあ半年で100億といっても、もう40億ぐらいはオープニングの広告宣伝に大幅に投資しましたので、そういったものはないんですけれども。

来期、制作費をまたかなり増やすつもりであるのと、一部広告の売上が上がるのと相殺して、だいたい200億円ぐらい赤字を許容するつもりで先行投資していくという考え方をしております。

その内訳は自社でコンテンツを作るのに4割、これは自社のスタジオだとか、企画して制作会社と一緒に作っていくものといったものが4割で、外の、外というかその、アニメなどもそうですけども、そういったコンテンツを買ってきて放送するものが3割、広告宣伝を2割弱というようなざっくりとしたイメージでやっております。

2〜3年は損益度外視でやると言いましたけども、基本的には最後は僕の感覚、この事業のビジョンとしては、最後粘り勝ちになるだろうとも考えているので、10年がかりで腰を据えてやっていくということを考えると、無理のない規模の投資、いきなり大金を払って日本代表の試合を買ってきて流すみたいなことはやらないと。ちゃんと身の丈にあった投資をコンテンツにかけていくと考えていただければいいと思います。

広告。損益は見ないと言いましたけれども、広告は今もどんどん販売されております。やりながらまたブラッシュアップし改良していきますけれども。

スポットCM、往来のテレビCMと同じかたちで出しやすいものというのを7月から販売を開始しました。これもそれなりの規模になってきています。数字は聞かれても開示はしませんが。

今後、プランニングツールだとか分析ツール、あとオリジナリティのある広告商品というのを作りながら、AbemaTVらしい収益モデルを作っていきたいと思っております。

AbemaTVがなにで見られているかと。これは「スマホで見るテレビ」とよく言ってますけど、だいたいスマホで見てる方は現時点で8割弱ぐらいです。それ以外はPC1割、タブレット1割ぐらいだと思っていただいたらいいと思います。

これに、テレビデバイスで見られる「(Amazon)FireTV」を24日からスタートしました。つまり、今週の月曜日から。これは数字は出てませんが、けっこう好調なスタートです。

先行して行った「Chromecast」。ChromecastとAbemaTVというのはちょっと違うんですけど。Chromecastというのはスマホで見てるのをテレビに映し出すものですが、FireTVはスマホがいらないので。スマホがいらなくて、テレビのチャンネルを変えるようにAbemaTVが見れるものなんですけれども。

だいたいテレビデバイスに映し出して見た場合、Chromecastだと3.3倍の視聴時間。まだ期間が短いので資料に入れませんでしたけれども、FireTVだと、この数日の数字を見ていると、さらにChromecastの倍あるので、6倍以上視聴時間が長いということが、今のところ数字が出てて、けっこうな好調なスタートを切りました。

AbemaTV、2017年のロードマップ

今後、来月には「Apple TV」「AndroidTV」を順次対応していきますが、ここは新しいメディアの接触の仕方としてけっこう期待できるのではないかと考えています。

ロードマップとしては、今、来月対応が済むと言いましたけれども、今現在行っているのはテレビデバイス対応。そしてより気軽にFacebookとかTwitterを開くようにAbemaTVを開いてほしいと思っていますので、より気軽に開ける、縦型で開くようにも対応し、さらにバックグラウンド再生も同時に行っていくというのを、来年の1月ぐらいに対応し、その他機能をどんどん拡充し、さらにコンテンツも充実させていくというようなことで、とにかくマスメディアを目指していくと。

1,000万WAUと書いてありますけれども、この(300万WAUの)3倍ぐらいはないと、基本的にはこのビジネスモデルは成立していないと僕は思っていますので、そこまで十分投資を行いたいと考えております。

最後、総括いたします。

まず、今申し上げましたとおり、とにかくこれは、マスメディアにしないとAbemaTVが成功したとは言えないと。そのようなビジネスの構成になっていますので、とにかく今は腰を据えて投資を行っていくという時期です。

広告事業は、規模のメリットなども出てきましたので、順調に今後も伸ばしていけるのではないかと思っております。

ゲーム事業。直近でまた新しいヒットが出てますので、先ほど言いましたとおり、上昇トレンドではあるんですが、さらなる期待のタイトルもありますので、シェアを拡大していきたいと考えています。

今、サイバーエージェントの状況を簡単にいうと、けっこうゲームが大きく稼いでくれてるうちに、会社の価値を大きく上げるようなメディアを育て上げてしまいたいという考えをしております。

とにかくもうこの時期に十分な、ゲームで稼いだ分をAbemaTVに投資し、AbemaTVがマスメディアと成功したら、これは企業価値が大きく飛躍するきっかけになりますので、この時期に十分投資をさせてほしいという考え方をしております。

数字で見ると増収減益という予測を出した期ではございますけれども、会社の状況としては決して悪くないというか、むしろ良い状況にあるのではないかと思います。

以上でございます。どうもありがとうございました。