2016年8月期の業績と今後の展望

柳井正氏(以下、柳井):柳井です。よろしくお願いします。それでは2016年8月期の業績と今後の展望についてお話ししたいと思います。

2016年8月期の実績ですが、売上収益が1兆7,864億円、事業利益が1,620億円、営業利益が1,272億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が480億円。

連結業績は増収減益になりました。上期は暖冬の影響で減益。下期は大幅な増益に転じました。下期から経費削減をグループ全体で実施し、効率経営へ転換しました。

円高による為替換算損、J Brandの減損損失などで、親会社の所有者に帰属する当期利益は大幅減しました。ジーユーは32.7パーセント増収、営業利益は34.8パーセント増益を達成しました。

中期的には3,000億円。近い将来は1兆円の売上を目指してまいりたいと思います。

2017年8月期の通期予想でございますが、売上収益は1兆8,500億円、事業利益は1,800億円、営業利益は1,750億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,000億円とします。

連結業績は増収増益。すべてのセグメントで増益を予想しております。グレーターチャイナ、東南アジア・オセアニアの増益が全体を牽引してまいります。米国ユニクロ事業の赤字幅の大幅縮小を見込みます。年間配当金は350円を継続する予定でございます。

今、我々の最大の目標は「新しい産業」を創る。すなわち、お客さまを中心とした本当に要望される商品の「素材調達・企画・デザイン・生産・販売までの一貫したサプライチェーン」すべてを変革し、情報製造小売業になるということでございます。

それは情報を商品化する。すなわち人々の生活の変化、ファッションのトレンド、高機能素材と着心地の両立、時代性に合った着こなし。

「人はなぜ服を着るのか?」という根源的な本質を追求し、人々の生活を豊かにするために、人々の生活の変化やファッショントレンドの変化、高機能素材と着心地の両立、時代性に合った着こなしの提案など、さまざまな情報を服作りに活かして、同時に、お客さまへ情報をダイレクトに発信する小売業になっていきたいと思います。

それは顧客中心主義、カスタマーセントリックということで。お客さまの声はビッグデータとして分析され、すぐに商品化できるサプライチェーンになるということでありますし、お客さまの購買動向などを分析し、いつでも精緻な需要予測ができまして、瞬時に販売計画の作成および修正が社員全員のチームワークによってできるようにする。

サプライチェーンの大改革がそのために不可欠になります。お客さまのご要望に応える、サプライチェーンの改革をするためには工場や生産をあり方を改革する。

工場・生産地に物流プラットフォームを作り、生産リードタイムと配送リードタイムを大幅に削減し、お客さまの要望に即応える体制にします。

有明と同様な次世代物流センターが国内で稼動しております。札幌・仙台・名古屋・大阪・神戸など10ヶ所にあります。さらにこれを中国・欧州・北米の海外市場でも稼動を計画しております。

その次は、仕事のやり方をすべて変えようと思います。

インターネットの普及によってお客様、お取引先様、会社内の各企業がつながることで、我々の仕事のすべてのプロセスがグローバルかつコンカレント、すなわち同期・同時に進行して進むように、仕事のやり方をすべて変えようと計画しております。

「ARIAKE Project」ですが、仕事のやり方をすべて変える、そのために来年の春、有明の最上階にオフィスを作りまして、主要な商品・商売機能を移転しようと思います。

ワンフロア5,000坪のオフィスで、チームワークを中心にした社員の新しい働き方を目指してまいりたいと思っております。

行き着くところは、お客さまに新しい買い物体験を提供する。つまり店舗とEコマース、リアルとバーチャルが融合して、今までにない新しいさまざまなサービス、“デジタルフラッグシップストア”で提供しようと考えております。

まずユニクロ会員向けの特別なサービス。購入履歴などに応じたパーソナルなおすすめ情報。店舗決済・EC決済、クリック&コレクト(店舗受け取り)、コンビニの受け取りなどのサービスを開始して、いつでもどこでも我々の商品が買えると。

そしてまた当日・翌日配送のエリアの拡大と配送リードタイムの表示サービス。セミオーダー商品の拡充、マイサイズ登録によるJust Fitサービス。それからEC特別商品、EC限定色、2XS〜4XLサイズまでの大幅な拡張をしてまいりたいと思います。

今後の成長戦略ですが、グローバル化とデジタル化による成長をしていきたいと思っています。海外ユニクロの成長。とくにグレーターチャイナと東南アジア・オセアニアの成長が牽引してまいりたいと思います。

さらにEコマースの成長ですが、中期的には売上の構成比30パーセントを目指してまいりたいと思います。

3番目に、ジーユービジネスをグループの第2の柱として売上高1兆円を目指してまいりたいと思います。

次に先日、カナダのトロントのランドマークでありますトロントイートンセンターに大型店を出店し、大成功しました。10月20日、2号店をヨークデールショッピングセンターに出店してまいります。カナダはユニクロにとって有望な市場でありますし、今後も出店を加速する計画であります。

ファーストリテイリングの中期目標ですが、世界No.1のアパレル情報製造小売業になります。

2020年度に売上3兆円、営業利益率15パーセント、Eコマース事業の大幅拡大を目指してまいります。5兆円の売上に関しては、できるだけ早く5兆円の売上にしていくということで、時期的には多少遅くなると考えております。

次に、我々ファーストリテイリングの2020年度の売上のイメージですが、この世界地図にありますように、ユニクロ日本、ジーユー、ユニクログレーターチャイナ、ユニクロ欧州、ユニクロアジア、ユニクロ北米、セオリーと。そういったイメージとしてはこういう図になると思います。

次に、われわれは事業と同等にCSR活動をさらに強化し、“服のもつチカラ”で社会や人々の生活を豊かにしていきたいと考えております。

みなさまにもご協力いただきました全商品リサイクル活動でございますが、「1,000万着のHELP」プロジェクトを達成しました。本年度の6月20日の世界難民デーまでに1,000万着の目標を上回る1,281万着の衣料の回収を達成しました。

お客さまからお預かりした服を、ウガンダ、ルワンダの難民・避難民に配布してまいりました。今後はバングラディシュ、ジンバブエなどにも届ける予定でございます。

さらに病院でなく地域と共生する、公園内にある、日本初のコミュニティ型難病の子供ホスピスを支援いたしております。ユニクロと日本財団が支援する難病の子供向け「TURUMI こどもホスピス」を、2016年4月に大阪市にオープンいたしました。

地域住民と難病の子供たちがともにふれあう場を提供すると同時に、家族へのサポートと癒やしの場。これは英語でいうとhome away homeというんですけど、そういったものを提供いたしてまいりたいと思います。

ファーストリテイリングは、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」、そういう会社になりたいと考えております。以上でございます。ありがとうございました。