ハヤカワ五味は特別じゃない

高橋ひでつう氏(以下、ひでつう):このあと質問コーナーがあると思うので、先によくある質問も言っとこう思います。

それは「ハヤカワさんが特別だ」と。「ハヤカワさんには才能があるからだ、私にはそういうのはない」という、「だったら、お前質問すんなよ」という話なんですけど(笑)。それにはどう答えてますか?

ハヤカワ五味氏(以下、ハヤカワ):特別だったら、彼氏に浮気されることもないと思うんで(笑)。

ひでつう:(笑)。

ハヤカワ:私自身もたいがいだということですよ。Twitterとか見ればわかると思うんですけど、なるべくフランクにいようと思ってて。

というのも、私自身が遠いところみたいに思わないでほしくて。言ってみれば、ぜんぜん安いスーパーで買い物して「今日はキャベツが安い」とか考えてるし、ホテルでめっちゃいい飯食ってるわけでもないし。

正直、家庭環境も若干悪いほうではあると思うんですよ。そんななかでやっているというのは、すごい伝えていきたいなとも思ってるし。

あまりそこにハードル作って「ハヤカワさんは、(一般人とは)違うんだ」と思うのは、しょうもないなと思ってて。なので、ハヤカワ五味を倒すつもりでやったほうがいいかなと(笑)。私ぐらいだったら、ぜんぜん優に超えられると思うんで。

作品でお金を払うのは悪いこと?

ひでつう:このゼミの裏テーマとして「お金を考える」みたいな。たぶん、ハヤカワさんも美大なのでわかると思うんですけど、「作品で金を稼ぐのは悪だ」というのがあるじゃないですか。もしくは「金を稼ぐやつは悪いやつだ」みたいな。

僕が見てると、「feast」とか「secret」とかもうすごい、どんどん予約がきて予約が取れなかったとか。ぶっちゃけ売れてるじゃないですか?

ハヤカワ:ぶっちゃけ売れてますね。

ひでつう:ぶっちゃけ売れてますよね。それで、ハヤカワさんにとってお金とはなんですか?

ハヤカワ:私のなかでは2つ考え方があって。1つは人からの評価だと思ってます。というのが1つと、もう1つが次のモノを作るための資金というか、次のステージに行くための準備だと思ってます。

ひでつう:なるほど。人からの評価というのは「本当は(自分をはかる)物差しだ」と、僕はいつも言ってるんですけど。

アートとかクリエイティブは本当にそうで、例えば世界アート協会とか、世界クリエイティブ協会が(あって)、サッカーやボクシングみたいにランキング決めてるわけじゃないですか。

結局、いくら(ファンが)「好き」だと言っても、別にアーティストは食えないので。例えば、どういうアーティストの作品が高くつくかという、資本主義においてお金はめちゃくちゃわかりやすい評価だと思ってるんですよ。

ハヤカワ:そうですね。

ひでつう:例えば「feast」の商品が500円なのか5,000円なのか……。ちなみに今、一番多いボリュームゾーンはいくらぐらいなんですか?

ハヤカワ:5,000円ぐらいですね。

ひでつう:それは5,000円分の価値があると思ってみんな予約をしたり。あと、水着も作るんですよね?

ハヤカワ:そうですね。

ひでつう:水着はどれぐらいなんですか?

ハヤカワ:水着はだいたい1万5,000円弱とか。

お金と時間は1つの評価基準

ひでつう:けっこう払いますよね。それでもみんな予約したりして、Twitterで検索すると「予約できた」とか、「超かわいい」とか「早くきてくんないかな」とかバーッときてて、それはハヤカワ五味の「feast」に対する評価だと、お金は評価だととらえてるということですよね。

ハヤカワ:お金は評価だと言うと、まだやっぱり抵抗感がある人がいると思うので、私はお金と時間がお互いに依存関係にあって、お金と時間は評価の1つの基準だなと思っていて。結局、人間で一番極限に制限されているものは時間だと思うんですよ。

例えば、友達がプレゼントを探してくれている、時間を割いてしてくれてるんだとか、なにか時間を割いてくれてやってくれると、すごいうれしいじゃないですか。

ひでつう:ですよね。

ハヤカワ:というのは、たぶんお金にも換算できるなと思って。結局、時給800円なり900円というなかで、1時間働いて得た800円のモノの5倍なり6倍なりを払って商品を買ってくれてるということは、本人の5倍なり6倍なりの時間を私にくれてるのとほぼ一緒なんですよ。その間で変換されてるだけで。

なので、お金というとすごい汚い感じがするんですけど、時間の代用品と考えると、「お金を払ってもらうのは気持ちいいな」と思うし。

たぶん制作するなかでも、やっぱり材料費がかかるし。さらにみんなそれぞれ時間かけて、例えば10時間なり20時間なりかけてとなったときに、その作品に対して何時間払えるかというのを、それぞれが持っていて。それだけお金をもらったり、時間をいただいたりしたら、やっぱりうれしいなと思うので。

ひでつう:本当に、お金は愛ですよね。

ハヤカワ:そうですね、愛ですね。

ひでつう:例えば「feast」を愛してる人が、バイトをしたりもしくはキャベツだけ食べて食費を浮かせて、その分で買ってくれてるわけですよね。

ハヤカワ:そうなんですよ。みんな、お客さん一人ひとり、なにかを犠牲にして、それを使ったらちょっといい生活ができたかもしれないけど、そのいい生活という部分を「feast」に託してくれてるんだというのが、やっぱりうれしいと思うので。

変に作品でお金を稼ぐというよりは、それだけほかの人の時間を奪えるくらい魅力的な作品が作れてるんだという考え方ができるといいのかなと。「それだけ敬意を払いたいと思われてるんだ」と思ったほうがいいなと思います。

日課は「早寝早起き」と「瞑想」

ひでつう:ありがとうございます。ずっとお話を聞きたいんですけど、質問も受けたいと思います。今日いっぱいいるので、選びたいと思います。みなさんFacebookを開いてください。Facbookの「ひでつうゼミ」のところに、コンパクトに質問を書いてください。

その質問がバーッと揃いしだいハヤカワさんに選んでもらって、回答して、授業をいったん締めたいと思います。

ハヤカワ:いいっすね、Messengerで。

ひでつう:うちは全部Facebookでやってる。

ハヤカワ:ログが残るからいいですよね。

ひでつう:誰が言ってるかもわかるし。

ハヤカワ:メーリス、めっちゃめんどくさいですよね。うちの大学はメーリスなんですよ。もうゴミですよ。

ひでつう:いったん締めますんで。じゃあ、ハヤカワさん1つ選んでください。

ハヤカワ:そしたらサクッと、ひと言ふた言で答えられそうなやつを3つくらい答えようと思います。

「なにか日課はありますか?」というので、私はなにかしらの瞑想をすることと、早寝早起き。

ひでつう:「めいそう」は、別に迷って走るわけじゃないですよね?

ハヤカワ:集中することで、女子の場合だと料理とかもけっこう瞑想に入るなと思って。

ひでつう:おもしろい。

ハヤカワ:なにも考えずに、1つのことに集中する。例えば男子だとスポーツ、水泳だったりとか、女子だと料理するとか、なにかしらそれぞれにあると思うので瞑想。ない場合は、ただ黙って目を閉じてるだけでもいいんですけど。瞑想すると案外いいです。けっこう集中できます。

ひでつう:なるほど。1日中Twitterやってるというわけじゃないんですね。

ハヤカワ:そうですよ。案外Twitterもなにも考えてない時間が、1日に15分なり30分くらいはあると、けっこうスッキリするのでおすすめです。というのが1つ。

影響を受けた作品・人物

「なにか影響を受けた人や尊敬している人はいますか?」というので。私は正直ビジネスに関しては、全員ディスっていく方向がけっこう強くて。

ひでつう:(笑)。

ハヤカワ:あんまり、こうはなりたくないなという反面教師が多くて。逆に作品とかで尊敬するなというのは、Diorというブランドがけっこう好きです。Diorは女性が服に縛られてて作業がしづらいとか、コルセットで動きづらいとかあったんですけど、それを解放した人というので、すごい尊敬してます。なので私、すごいDiorにお金落としてるんですけど(笑)。

あとは個人的に、漫画家の古屋兎丸先生と小説家の乙一さん、映画監督の園子温さんが好きです。もうそれだけで私の人格がまるわかりという感じですけど。

ひでつう:そうなんですか。園子温さん、1回この精華(京都精華大学)にも来ました。この授業じゃないですけど。

ハヤカワ:いいっすね、最高じゃないですか。そんな感じのが好きです。

あと、「『別人格でツイートするのは自傷行為だ』と哲学の先生が言ってたのを、私は素直に『確かにな』と思い、それからツイートしなくなりました。自傷行為にならないツイートは、どういったツイートだと思いますか?」というのに対して。

まず私は「別人格でツイートするのは自傷行為」だとは思ってなくて。これが成立してしまうと、サンリオキャラクターのなかのTwitterの人が自傷行為まみれになってしまうという(笑)。それは控えたいなと。

ひでつう:ファーファのTwitterとかね(笑)。

ハヤカワ:そうなんですよ。ポムポムプリンのなかの人、ヤバいじゃんみたいな感じになってしまうので。

ひでつう:くまモンのなかの人とかもヤバいっすよね。

ハヤカワ:くまモンのなかの人、もう死んでますよね(笑)。という感じなので、私は自傷行為じゃないと思っています。

例えば、漫画を描いてるのと同じ感覚だと思ってて。漫画家の「このキャラクターだったら、これ言うな」というので別人格という意味だと思ってます。

ひでつう:なるほど。哲学の先生なりの考えもあるし、ハヤカワさんの考えはそうなんですね。

ハヤカワ:なので、完全にそれを受け入れなくてもいいんじゃないかなと思うし、それで言えなくなっちゃうほうがしんどいかなと思うので。

能力や知識がないのは1つの長所

じゃあ、長くなりそうなやつで。「今まで、なんとなく言われたことだけ、やらなきゃいけないことだけやってきました。そんななかで、際立った能力は身につけてこなかったんで、自分に価値がなにもないように思います。そんな自分でも、発信したり行動したりし始めたら、やりたいことに繋がる道は開くのでしょうか?」。

なにもやってこなかったというのは、正直1つの長所だと思ってて。いわゆる意識高い系の人とかは、1個のことを勉強し過ぎちゃってて、専門性が高過ぎて、一般人とわかり合えないというのが、わりとデメリットだと思うんですよ。だから、そのわからないというのが1つすごいいいことで。

例えば私もなにか企画を出すときとか、けっこう(自分が)賢いほうだと思ってるので、言い方悪いですけど、「賢いし、いろんなことを知ってるからこういう企画出すけど、一般的にどう思う?」というのを、わりとふつうの人に聞いたりするんですよ。そういう需要は絶対あるので、なにもないなりに、なにも守るものがない。

例えば、家庭もないし、彼氏もいないからなんでもできるみたいなのもあると思うし、なにも知らないからこそ新鮮な気持ちでモノをやれるという方向に転換していけばいいんじゃないかなと。私も最初ぜんぜんなにもなかったんで、気にしないでいいと思います。

あと、「ハヤカワさんはとても苦労されてるのに、それを重いように伝えず、軽く、相手に不快感を与えず、うまく話しているように思いました。それはもともとの性格ですか?」。

これがぜんぜん違くて、私はもともと超コミュ障で、クラスの端にいるような感じでした。マルチメディア部という、しょうもない部活に入っていたぐらいで。

ひでつう:すごいね、マルチメディア部(笑)。懐かしいね、いわゆるパソコン部みたいな感じですよね?

ハヤカワ:そうですね。そんな部活に入ってるぐらい、けっこうコミュ障で。だから、どっちかというとネット弁慶過ぎる感じではあったんですけど。

でも、必然的に話す機会が増えたりして、さらに「ハヤカワ五味」という人になりきってるんだと思うことで、ここは直したほうがいいとか。

例えば私の場合だと、語尾をちょっと強くして1回切るように話してたりするんですけど。そういったものは、自分のなかである程度マニュアル化できてきて。言ってしまえば、場数を踏んだからできているというものですね。

ひでつう:なるほど。

ハヤカワ:だから、最初のころは録音して聞いたりして。私はけっこう声が特殊なんで、本当に聞いてるの苦痛なんですけど。「もっとこうしたほうがいいな」みたいなのを案外試行錯誤してますね。

あとは最後に「暗い苦労をされたことをうまく話すために気をつけていること・心がけていることはありますか?」というもの。

なんか暗いこととか苦労したこととかは、正直「人の不幸話は蜜の味」じゃないですけど、人からしたら案外おもしろいものだったりすると思うので、そういった部分は芸人さんの話し方とかまねて、まくし立てるように話すとか、おもしろいところだけやたら大きい声で言うとか、まあそういうメソッドを自分のなかで作ってますね。

ひでつう:すごい!

ハヤカワ:ちなみに私、大阪と京都ではウケるんですけど、福岡に行くとウケないんですよ。

ひでつう:そうなの? なんかあるのかな?(笑)。

ハヤカワ:たぶんあるんですよね。私は大阪・京都とか、関西圏のしゃべり方になってるんですかね? 自分のなかでだんだん、しゃべり方とかプレゼンのやり方というのは作っていくものだと思うので。今なくても、あせらなくていいと思います。これからだんだんできてくると思うので、意識してやることですね。

ハヤカワ五味と一般の大学生の唯一の違い

ひでつう:なるほど、了解です。ということで、まだまだお話を聞きたいんですけれども……。もう一度聞きます。今、ハヤカワさん、おいくつでしたっけ?

ハヤカワ:今、20歳です。

ひでつう:今、何年生でしたっけ?

ハヤカワ:今、大学3年生です。

ひでつう:(会場に向かって)みなさんと同じです。ただ、ハヤカワさんご自身も言ってましたけれども、「特別な人じゃない」と。

これはなにが違うかというと、ここに大きな谷があると思ってて、やってる人とやってない人(の差)だと思うんですよ。

結局「ハヤカワさんは才能があるから」とか「運があるから」とか、「ハヤカワさんはお嬢さまだから、どうこう……」というのは、今日の話を聞けば「ああ、違うんだ」という。

いろいろつらいこともあったり、彼氏さんに浮気されたりとか(笑)。その話題、かなりホットな感じですけれども。

ハヤカワ:(笑)。

ひでつう:いろいろあるんですけれども、それを乗り越えてというか、受け流して、また新しい方向に持っていくみたいなことをすごく感じたんですけど。

今後どんどん進化していくというのは、当然みんなも「ハヤカワ五味を倒せ」みたいなこと言いましたけど。

ハヤカワ:ぜんぜん、殴ったらワンパンなんで(笑)。

ひでつう:別に物理的に倒すわけじゃないですから(笑)。それぐらいみなさんやるということを、ハヤカワさん見てるとPDCAサイクルが回ってるんですよ。自分のインタビュー聞くとか、けっこう苦痛じゃないですか。

ハヤカワ:超しんどいですよ。

ひでつう:しんどいですよね。それをチェックして、新しいしゃべり方をして、ハヤカワ五味としてこうあるべきだと。でも、ブランドはそうあるべきじゃないですか。それがブランディングだと思います。今日は、本当にすばらしいお話をありがとうございました。あとでいろいろパクって、ツイートしたいと思います!(笑)。

ハヤカワ:(笑)。

ひでつう:はい、ハヤカワ五味さんでした。みなさん、大きな拍手で。

ハヤカワ:ありがとうございました。

(会場拍手)