シリコンバレー内にある流動性

澤山:エコシステムという話で、さっきのサイクルの話で考えると、「死んでいったあとどうするのか」というところがすごい重要なポイントなのかなと思います。

河原:肥料になるんですかね(笑)。

澤山:でも、それは確かに。ちょっとおもしろい話としては、500 Startupsの場合は、アクセラレーターに入ると、3~4ヵ月だいたいみんな一緒のオフィスで過ごすんですよ。

その間にやっぱりチーム同士で仲良くなるので、Y Combinatorも同じようなことがあるって聞きましたけど、どこかのバッチが失敗すると、また別のバッチの同期にそのまま吸収される。

河原:雇ってくれるんだ。へー。

澤山:あと、こっちでクビになったエンジニアが、次の日からあっちで働いていたとか。人材がそのなかで流動性をもったり、そういうセーフティネットみたいなものができてきているというのは聞いたことあります。

河原:それはリアルなエコシステムですね。

木村:けっこう流動的なのは本当にそうで。先ほど言ったのは、アクセラレーターを同期のバッチ内だけじゃなくて、投資家同士が「このスタートアップとこのスタートアップで、こっちはあんまりうまくいってないけど、これ合わせたらおもしろいんじゃないか」というのでガッチャンコしてる事例も、サポートしているスタートアップでけっこう見たりして。ああいうのはおもしろいなと思いますね。日本だとほとんど見たことないので。

河原:なるほど。数年前にクラウドソーシングのでっかい会社が3つぐらい一緒になりましたからね。

でも、そういう面だとシリコンバレーの人たちは合理的かもしれないですね。感情じゃないのかもしれないですね。

木村:あとやっぱり株の持ち方がけっこう違うのもあるでしょうね。

河原:どういうふうに?

木村:ファウンダーが3人ぐらいいたら、やっぱり3人で均等に持っていたりするので。日本の場合だと、株の持ち方がけっこう違うじゃないですか。

澤山:でもそこってすごく難しいポイントで。むしろ2012年、2013年頃は、「株を均等に持ってるんじゃないよ。社長に集めろよ」みたいな話が日本ですごく出てた気がするんですよ。

でも、逆にアメリカだと、Y Combinatorとかは最近はさすがにもうやめたのかな。でも、一時期まではたぶん均等に持ってないかぎり……。

木村:均等に持ってなきゃダメなんですね。

澤山:そう、ダメ。今はさすがにそれは外したみたいですけど、そういうのがあったりはしましたね。

だから、どういうふうに資本政策をやるのかとか、それこそ投資契約書の話だったりとか。

木村:違いますよね、常識が。

「AngelList」などプラットフォームの充実

澤山:そういうノウハウというのは、けっこう明確に遅れている部分もまだあるのかなという気はします。

木村:まあ、どっちがいいかという話で、進んでる、遅れてるじゃないかと思うんですけど、やっぱり違うなとは思っています。

日本だとやっぱり、エンジェルの方が入っているようなところはあんまりよくないって言われたりするんですけど、シリコンバレーだと20~30人いますからね。

河原:そうですよね。

澤山:「AngelList」がすごいそこに貢献しているところはありますよね。

木村:そうですね。

澤山:AngelListのシンジケーションがどんどん今伸びていて。500のslideshareに、この前AngelListの人が神戸に来た時に話していたスライドがあがってるので、ぜひそれ見ていただきたいんですけど。

AngelListで、あるエンジェルが「このベンチャーに投資します」って決めるじゃないですか。そしたら、そのエンジェルが今度「ほかにエンジェルを集めるぜ」って、エンジェルをどんどん集めてシンジケーションを組んで。

要はエンジェル1人がたぶん2,000万ぐらい出して、あとはAngelListでほかの人たちを30人ぐらい集めて、6,000万ぐらい追加で出す。で、投資するということをやるんですよ。

これをやると、最初に発起人みたいになったエンジェルとAngelListがそれぞれ、その投資のリターンをちょっともらえる。

木村:へー。

河原:AngelListって知ってた方どれぐらいいます?

(会場挙手)

澤山:日本だとそんなに。

河原:アカウント持ってる人?

(会場挙手)

ジャーナリストの方だと持ってたりしますよね。

確かにプラットフォームの充実みたいなものはありますよね。CrunchBaseも然りですけど。そういう情報がちゃんと流通していて、みんなが支え合うために使えるサービスがちゃんとあって、そこにちゃんと人が紐付いているというのはあるかもしれないですね。

シリコンバレーの投資額の半分は個人が出している

澤山:ノウハウの発信や共有というのもやっぱりあるんですかね。500を起ち上げてから、僕らはけっこう積極的にブログでどいろいろな情報を発信していて、英語のコンテンツをひたすら翻訳して出したりしてるんですけど、あんまりそういうことをしてる人って周りにいないので。

向こうのVCってみんなWebサイトでこういうノウハウ出しまくってますよね。

木村:やってますね。将来予測とかも出すし。コンテンツマーケティングに近いんでしょうね。

澤山:そうですね。

木村:彼らから見ても情報が多いので、専門性みたいなものをアピールするためにやっているところもあるんでしょうね。

澤山:VCも多いんだよね。競合してますよね。

河原:日本のスタートアップエコシステムとアメリカシリコンバレーの比較で、個人投資家の数の違いってよく言われますけど。

さっきのAngelListの話もありますけど、周りの話とか聞いても、エンジェルインベスターのネットワークみたいものってものすごく活発なんですかね?

木村:すごいですね。日本の年間の投資額は、だいたい1,000億~2,000億って言われてますけど、シリコンバレーの年間の投資額はだいたい4兆~5兆って言われていて、そのなかの半分ぐらいがエンジェルだと言われていますね。

河原:半分は個人が出してるんですね。

木村:個人です。それがけっこうシードラウンドを支えていて。なので、さっきみたいな現象が起こるんですよね。

周りにいるところだと、金融系で働いていて年収がちょっと高いような人が気軽に投資したりしていて。所得制限があって、確か2,000万円以上年収がないと投資できなかったりするんですけど、エンジェルの層がめちゃくちゃ厚いというのはありますね。

河原:まあでも、プチ金持ちみたいな人いっぱいいますからね。

木村:いっぱいいますね。やっぱりSO(ストックオプション)とかでも、上がったときの時価総額がバカでかいので、例えばSOを0.1パーセント持ってるだけで、ミリオネアになっちゃうみたいのがけっこうあるんですよね。

河原:へー。

ストックオプションを配るのは当たり前

澤山:でも、ストックオプションをちゃんとみんなに出すというのも、けっこう違う感じがしますね。

木村:そうですね。徹底してますね。

澤山:だって、今日だったかな、メルカリの山田さんの記事が出てましたけど、全社員ストックオプション配ったってニュースになってましたから。「ニュースになるのかい!」っていう。

木村:確かに。シリコンバレーでいったら、ふつうですね。

河原:確かにそれは現象の違いとしてはありますね。

まあそんな話もありつつ。なんかPAAKの会員さんから「質問がたくさんあったので、ぜひ聞いてください」みたいなのがあったので、ちょっとふってみましょうかね。

「エコシステムの具体例。日本で似たようなことをやっている事例があれば、知りたいです」という質問が来ましたが。

ある意味500は、シリコンバレーのエコシステムの仕組みを日本に持ち込んだ一例かなと思うんですよ。そのへんどうですかね。

澤山:最初にもちょっと言ったとおり、500はやっぱりエコシステムをつくるためにいろんな国でいろんなことをやってるというのが特徴としてあります。だから、僕らはベンチャーキャピタルなんですけど、事業が2つあって、投資と、エコシステム構築なんですよ。

エコシステム構築のなかでやってることっていうのは、大きく分けると、教育プログラムと、コミュニティとかイベントみたいなものですね。イベントは、いろんなものを、「#500STRONG Night」という勉強会を定期的にやっていたりとか。

あと、ちょっと宣伝ですけど、来月10月の8日・9日はハッカソンやるので。

河原:ハッカソンまでやるんですか?

澤山:これはけっこう僕の個人的な趣味なんですけど。

河原:絶対そうですよね。

500 Startupsが最近力を入れているのは教育プログラム

澤山:10月の8日・9日にハッカソンをやって。優勝者は、シリコンバレーへの旅費とAirbnb出しますっていう。29歳以下のエンジニアはぜひって話なんですけど。そんなのをやったりしています。

それはそれとして、そういうイベント系、コミュニティ系はどんどんやっていくんですけど、最近力を入れてるのは教育プログラムで。

やっぱりエコシステムをつくるっていうのは、いろんなプレイヤーが必要なわけですよ。さっきのエンジェルの話とかVCの話もそうですけど、間接的に行政や政府の支援も大事だったり、大企業も必要だったりするわけですけど。そういう人たち向けに、僕たちは今3つぐらい教育プログラムをもっています。

まず投資家教育。我々は「Venture Capital Unlocked」という名前で、スタンフォード大学と2週間の教育プログラムをやってるんですね。日本からも何社か参加していて、2週間かけて本当に投資家としてどういう投資をするべきなのか、どうやって投資をするのか学ぶという教育をやっています。

それ以外にも、オープン・イノベーションの教育プログラム。これはやっぱり最近大人気で。これは1週間はプログラムをやったり。あと2週間前に、今度は1対1のイベントをやって「大企業がベンチャーにどういうふうに連携するべきなのか」、もしくは「連携するときにこういうところに気をつけましょう」という教育プログラムをやりました。

3つ目が起業家教育で。これはけっこうみなさんいろいろやってるんですけど、この前、神戸でPre-Acceleratorっていうのをやって。

20社ぐらい採択されて、6週間かな、正確には2週間やって、そのあと2週間いったん離れて、もう1回2週間やるというプログラムですけど、それでみっちり鍛え上げるみたいな感じでね。

河原:今、日本のスタッフって何人でしたっけ?

澤山:日本は、僕ともう1人と、あとアシスタント1人とインターン2人なので、5人。

河原:それを回して、ハッカソンまでやってってむっちゃ大変じゃないですか? 

澤山:まあまあなんとか(笑)。でも、神戸のプログラムは、日本のチームだけじゃなくて、むしろUSのチームがどんどん来てくれて。なんだかんだで20人以上来たのかな。

河原:そんなに来たんですか。

澤山:さすがに6週間ずっと常駐じゃないんですけど、けっこう代わり代わりというか。日本に来て3~4日ほど、1週間ぐらい働いて、観光して帰る、みたいな。

河原:やっぱり観光が大事?

澤山:でも、それはそれで日本のすごくいい強みなので。

河原:確かにそうですよね。

澤山:それを餌に日本に来させちゃう感じなので。

河原:確かに。この間やった「Moment」ってイベントもそうですけど、けっこうVCの偉い人たちが、なんか料亭かなんかでご飯食べてご満悦みたいな。そういう引っ張りやすい材料みたいなものは、日本にはたくさんあるかもしれないですね。

大企業の連携は日米でどう違う?

木村さん、なにかさっきの質問に対してありますか? エコシステムの具体例。シリコンバレー。

木村:シリコンバレーのほうですか?

河原:日本でもいいですよ。

木村:日本のほうですね。日本って実は逆にすごい充実してるんじゃないかと思っていて。

河原:逆に。そうですか。

木村:例えば、大企業の方もすごい積極的にスタートアップのサポートをやってるし、澤山さんがさっきおっしゃったみたいに、各VCとかもすごい積極的にやってる印象があるし、メディアの方もスタートアップのカバレッジがすごく高い気がするし。けっこうサポートする側が整ってきてるなという印象があります。支える側というところ。

澤山:サポートは多いけど、投資が少ないとか。

河原:人は出すけど、金は出さないみたいな。それはわりと構造的なものはあるのかもしれないですね。

次の質問で、「産学連携、大企業との連携など、日本との一番の違い」。大企業の連携という点だと、木村さんはまさにSUKIYAKIというコミュニティ、そこを一生懸命されていると思うんですけど、日米の違いってなにか見えますでしょうか?

木村:米国は「とりあえずやってみる」というのがすごく強くて、シリコンバレーとかでも、本当にみんなラボ作って「PoC、PoC」と言ってます。スタートアップのかなり早い段階から一緒になにかものごとをやるというのが、かなり多いです。

日本企業の場合は、わりとCVCとか投資がすごく増えてきたなという。あとアクセラレータという仕組みをつくってなにかやるというのがすごい増えてきたな、ということがあると思うんですけれども。

それ以外の、一緒にゆるく実証実験やるみたいなところをやっていくと、まだまだ数でいくと、向こうのほうが多いなという印象がありますね。

河原:ソフトバンクさんとか、最近ちょいちょいやられてますけどね。

木村:そうですね。

澤山:大企業の連携のところは、500も少し前に「INSEAD」というビジネススクールと組んで、リサーチ・レポートみたいなものを出してたんですけど、別に日本に限らず、海外でもアメリカでも、みんなやっぱりまだ苦しんでる。

苦しんでいるというか、なんだろうな、やり方を模索しているというか、みんな意欲はどんどん湧いてきてるんだけど、どうやってやるかというところになるとまだ手探りで。

それで試しにちょっとアクセラレータやってみたり、CVCつくってみたり、買収してみたりというのをけっこう模索しながらやってる感じはあります。その課題は日本だけじゃなくて向こうでも共通なんだなって話は、けっこうチームのなかでもしましたね。

「Pay it Forward」の精神

河原:なるほど。次の質問いっていいですか? 「シリコンバレーのエコシステム」というお題なんですけど、そこに自分が関わっていくなかで、心がけていることとか、自分が具体的にどういうことを実践しているのかという質問があるんですけど。

澤山:僕の場合はやっぱり「Pay it Forward」のひと言に尽きるかなという感じです。

河原:Pay it Forward?

澤山:なんだろう。日本語だと「Give&Give」といったほうがもっとわかりやすいかもしれないですけど。

さっきのアクセラレータのところでも、実はアクセラレータっていう言い方をすると、いかにも500が、ひたすら僕たちだけでスタートアップを応援して支援して育成しているように見えるんですけど、実はかなりメンターが関わってきてくれているんですね。そのメンターのおかげというところがすごく大きいです。

グロースハックの専門家だったり、例えば、SaaSのプライシングの専門家とか、そういういろいろな分野のメンターを呼んでくる。

河原:すごくニッチな専門家いるんですね。

澤山:そうなんです。例えば専門家がレクチャーをしてくれたり。レクチャーを30分ぐらいしたあとで、そのあとオフィスアワーといって、1対1で相談に乗ってくれる機会があったりとか。そういうメンターの人たちが、ベンチャーを直接やっぱり支援してくれるんですね。

そのメンターの人たちに、僕たちはお金払ってないんですよ。

河原:えっ、ボランティアなんですか?

澤山:ボランティアです。我々は基本的にメンターにお金を出さないです。

メンターのメリットはやっぱりそういう新しいベンチャーに関われるということだったり、もうすでに1回イグジットした人、1回ある程度成功してる人だったりするので、もう1回そういうチャレンジに関わってみたいとか。

あと最後に、さっき言った「Pay it Forward」。自分が今こうやって成功してこういう立場にいるのは、自分がまだ本当に駆け出しのベンチャーの頃に応援してくれた人たち、サポートしてくれた人たちがいるおかげなので、だから今、僕たちは支援するんだという。そういう精神がすごく脈々と受け継がれているし、そういうのが当たり前の空気になってる。

河原:確かにそういうのはありますよね。木村さんもたぶん同様の感覚を持ってると思うんですけど。

木村:そうですね。向こうもすごいはっきりしてるので、初めに会ったときになにかできないと、どんどん次の紹介っていうのも入らないし。向こうって、逆にいうと、すごい紹介の文化なんですよね。

河原:そうですね。

澤山:コネの文化ですからね。

「What can I do for you?」って言われた時、なんと返す?

木村:コネの文化なので、紹介が入っていけばどんどん入っていくけど、それが止まってきちゃうと止まっていく流れになってしまうので、とにかく相手のためになにできるんだというのをひたすら意識してますね。

なので、どんなに下手な英語でもいいので、自分のやってることに関係なくても、人紹介するということでも+1になるので、英語がぜんぜんできない時から「What can I do for you?」ってずっと言ってましたね。

澤山:それ必ず言われますよね。確かにね。

河原:言われる。最初に打ち合わせとかで「What can I do for you?」って言われた時に、なんと返していいかわからなかったんですよ。日本人って遠慮がちだから、そこで「別にいいや」みたいな感じで言っちゃうことあるんですけど。

逆にいうと、逆に商談する相手になったときに、「What can I do for you?」という質問に対して、こういうことをしてほしいというのを明確に答えられると、もっといいレスポンスとかいいサポートも得られるようになるので。

「What do you do?」と「What can I do for you?」のコンビネーションはけっこう大事だなというのは、3年間で学びましたね。

ちなみに、なにか「What can I do for you?」って言われたら、どういうことを木村さんは答えますか?

木村:そうですね。相手によって変えるんですけれども、やっぱりだいたい紹介とかが多いですね。

「What can I do for you?」って言ってる時点で、お互いとしてはなにもなかったということにも近かったりするので。「お互いなにかできることありませんか?」ってほかに探している状態なので、お互いそういう場合は紹介になることがけっこう多いですね。

河原:なるほど。自分とは直接なにか生まれるわけじゃないけど、せっかくこの出会いを無駄にはしたくないし、これが先につながればいいなと思って、ほかの人にある意味パスをあげるみあたいな。

木村:それに近い感覚がありますね。

河原:合コンでちょっと合わない女性がいたけど、「あいつなら合うかな?」って紹介する感じですかね。

木村:たぶん。わかんないですけど(笑)。

河原:ちょっと無茶ぶりですね(笑)。

(一同笑)

はいはいはい。よくわかりました。

シリコンバレーにはない日本のよさ

次に質問です。「日本のよさってなんですか?」って。「物理的にシリコンバレーってすぐ行くことはできないから、日本でできることってなにかあるとうれしいな」っていう質問きたんですけど。

木村:でもやっぱり、日本のなかってコミュニティがすごくぎゅっとしてるというか、サポートする人はすごい多いと思うので、そこをうまく使っていけるといいんじゃないかなって思いますね。

河原:確かにね。

澤山:最初の地図の話でもそうですけど、要は日本はすごく物理的にぎゅっと縮まってる感じというか。あと公共交通機関がすごい発達してる。

河原:打ち合わせで電車で2時間とか絶対ないですからね。大阪行けますから(笑)。

澤山:そうそう(笑)。

木村:やっぱり人と人も近いですよね。なので、向こうにいくと、なにかコミュニティ同士もすごい離れてるし、スタートアップでも「何々系コミュニティ」みたいのがあって、そこの壁もけっこう高かったりするので。

それを考えると、わりとスタートアップコミュニティ全体でぎゅっとなっているのは、すごくいいことだなと思います。

河原:僕は1つこの質問でお伝えしたいのが、シリコンバレーに行ったことある人に会っておいたほうがいいです。もし興味があるんだったら。

僕たちは僕たちなりの観点でシリコンバレーのリアル語ってますけど、それぞれがそれぞれの観点でやっぱり経験として持っていたり、あるいはネットワークを個々に持っていたりするので、自分の耳とか自分の肌で、シリコンバレーに自分がフィットするかとか、自分がそこでなにができるか・できないかというのがある程度判断がきくと思うんですよね。なので、いっぱいそういう人には会ったほうがいいんじゃないかな。

東京のいいところは、そういう人がたくさんいるっていうことですよね。そこは僕がお伝えしたいポイントの1つかなと思います。

澤山:あと、日本のいいところっていうと、さっきの家賃の話もあるんですけど、生活コストの安さというのはあると思うんですよね。

向こうみたいに、そんな40万家賃に払わなきゃいけないとかはない。食べ物も高いじゃないですか。日本だったら1,000円以下でぜんぜんいいものが食えるし、むしろ数百円でもぜんぜんいいくらいなのに、向こうだとふつうにそのへん高いですよね。

河原:木村さん出張のときに、毎回、日本のご飯を天国だと思って食べるんじゃないですか?

木村:いや、そうですね。だいたい吉野家(笑)。

河原:安くて、うまくて、24時間食べられるみたいなね(笑)。あ、すいません。

日本のエンジニアは安い

澤山:だから、生活費の安さだったりとか。あと、これは僕としては変わってほしいとは思ってるんですけど、現状としてはエンジニアがすごく安い。

エクセルだけいじってるシステムエンジニアを除けば、たぶんエンジニア自体のクオリティというのはそんなに変わらない。まあトップの層はちょっと違うのかもしれないですけど、そんなに差が激しくあるわけじゃないと思うんですよ。そのわりに日本のエンジニア、シリコンバレーと比べたらたぶん半額ぐらいじゃないですかね、今。

木村:そうですね。

澤山:なので、けっこう私の仲のいいベンチャーで、Y Combinator出資の「Skymind」というところは、日本に来てエンジニア探してたりします。シリコンバレーがあまりにも高すぎるので。

河原:けっこう日本のスタートアップでシリコンバレーにオフィスを置いておいても、そのパターン多いですよね。

木村:多いですね。

河原:エンジニアは日本で雇って。開発は日本、マーケティングとファンドレイズはシリコンバレー・サンフランシスコでやるというパターンが非常に多いですね。

木村:けっこうシリコンバレーの企業でも多いですね。やっぱりシリコンバレーのメリットってマーケティングで。各大企業がラボをつくっていて、それが近接してるので、1ヵ所で世界中に営業ができるというのがあって。

BtoBの企業さんとか、例えば、イスラエルの企業とかはシリコンバレーにブランチを置いて、そこでバーって営業しているところがすごく多いですね。ヨーロッパ系の会社もそうしてますね。

河原:なるほど。オフショア的な考え方がふつうにやられてれる印象はありますね。その場ではなくても開発できるし、チームは組めるという感覚はすごくあるかもしれないですね。

時間もそろそろ迫ってきたので、最初の岩本さんの疑問に答えにいきましょうかという。「日本なりのエコシステムってなんですか?」。いい質問ですね。

だいたいアメリカ人って質問されて、ちょっと回答に困ると「Good Question」って言って時間を稼ぐという、そのパターンなんですけど(笑)。どうですか、木村さん?

木村:そうですね。やっぱり繰り返しになってしまうんですけど、すごい密集度が高くて、サポートが強いというのが日本のいいところだなと思うので、そこじゃないですかね。

あとサポーティブな方も多いので、1人キーマンみたいな人を掴まえると、わりと横で紹介してくれたり、サポートしてくれる印象は強い。日本の企業さんはやっぱりそういう密集度というか、そういうところだと思います。

で、具体的にいうと、大企業のほうでもやっぱりアクセラレーションとかCVCの比率が高いですし。ベンチャーキャピタルのファイナンスでも、やっぱり今日話にあったように、シリーズAでいくと、シリコンバレーと変わらないぐらいのバリュエーションになってますし。

スタートアップから見ると、そういうようなところをうまく活用しながら加速をつけていく。そういう意味ではいいエコシステムなのかなと思いますね。

河原:少なくともサポーターの数の、スタートアップ1社あたりの数は多いんですよね。割り算したら。

木村:いや、絶対多い。

河原:それは間違いない気しますね。澤山さんどうですか?

リスクをわかったうえでの支援が必要

澤山:なんか言おうと思ってたんだけど、なんだっけなぁ。

(会場笑)

河原:思い出せない?

澤山:けっこう日本人の性質なのかもしれないですけど、これからたぶん気をつけないといけないなと思うのは、熱しやすく冷めやすいところなんですよね。

だから、500 Startups Japanは自分たちのファンドなので、実際今回は自分たちで資金調達もしたんですね。いろんな会社に行って、そのなかでみずほ銀行とかミクシィとかニコンとか、そういう会社が僕らにお金を預けてくれたんです。

それでいろんなところと話をしてる時に、「昔やったんだよね。2000年頃にどこかのファンド投資とかベンチャー投資たくさんやったんだけど、それで失敗しちゃったから、うちはもうやらないんだよね」みたいなことをよく聞いていたんですよ。

で、今、僕がすごい気にしてるのは、この5年ですごい盛りががってきて、かなりいろんな支援が整ってきたと思うんですけど。けっこう大企業が占めてる部分って大きいと思うんですよ。大企業がいろんな支援をしてきている。CVCなんかも、資金供給という意味でもそうだし、いろんな実際のサポートという意味でもいろんなところを支援してきているんですけど。

これで例えば「3年やって結果が出なかったから、やめちゃおう」となっちゃうと、すごい怖いなと思っていて。

この前の大企業とベンチャーの連携のイベントでも言ってたのは、さっきもちょっと話出てきたんですけど、95パーセントのベンチャーが要は失敗するわけですよ。さっき話した数字だと、5パーセントがそこそこの成功で、2パーセントが大成功なので、93パーセントはほとんど失敗ってことなんですよ。

しかも、それがわかるのに5年ぐらいかかると。そこをみんなわかったうえで、そういう期待値というかリスクをわかったうえでベンチャーと関わり続けるという、そういうマインドセットみたいなものをもうちょっとつくっていかないといけないのかなって気はしてます。今、ちょうど盛り上がってきたので、あとはこれをちゃんと軌道に乗せるというか。

河原:なるほど。まあリクルートさんは継続してくれるともちろん思いますが。そんな感じでぼちぼち時間が。大丈夫ですか、リクルートさん?

司会者:はい (笑)。

直近でもイベントが目白押し

河原:そういうわけで非常に45分、もうあっという間の駆け足だったんですが、最後になにか告知とかあったら。木村さん、なにかありますか?

木村:11月1日に、SUKIYAKIという団体をやっていて、ちょっと澤山さんの前であれなんですけど、Plug and Playさんと共催ですごく大きいイベントをシリコンバレーのほうでやらせていただくので、興味ある方いたらぜひ声かけてください。

河原:Sunnyvaleというシリコンバレーのど真ん中でやるので。

澤山:シリコンバレーでやるイベントの?(笑)。

河原:はい。ぜひ飛行機で渡って。なかなかめったにないチャンスだと思うので、ぜひ。澤山さん、なにかありますか?

澤山:僕はさっきも言いましたけど、今週の土曜日、午後に「500 Kobe」でどういうことが行われたのかとか、それこそエコシステムとしてどういうふうなところを日本に取り込んでいけるのか、みたいなことを話すイベントを、ここPAAKで予定しています。もしよかったら来てください。

あと10月の8日・9日で、今度はその次の週の土日にハッカソンを予定してます。これは確か恵比寿のガーデンプレイス、コロプラのオフィスを使わせてもらうんですけど、さっき言ったシリコンバレーツアーというか、シリコンバレーに行って、しかも500のDEMO DAYに参加して覗いてこれるというイベントなので。

河原:長めに行ったら、500のやつ見て、そのあとSUKIYAKIのイベント参加して帰ってくるスケジュール組めますね。だって10月28日でしょう?

木村:11月1日です。

澤山:あ、じゃあ行けますね。

河原:行ける、行ける。

澤山:ハッカソンは10月の8日・9日ですけど、デモデーは28日なので。

河原:これ商品ゲットして、ぜひシリコンバレーでSUKIYAKIと500両方楽しんでいってください。

で、私の告知でいうと、東京カルチャーカルチャーというお台場でニフティがやってるイベントハウスがあるんですけど、そこで10月の6日、来週の木曜日に、「シリコンバリズム・イン・トーキョー」というミートアップやります。

これはもう出演者が18人エントリーしてるんですけど、シリコンバレーに行ったことあったり、シリコンバレーで働いたことのある人たちを集めて、その人たちに10分間のショートパネルセッションを10連発でやってもらうと。

澤山さんも登壇者の1人なんですけど。そこでいろいろな、シリコンバレーに行ったことがあって、実際にいろいろ活動している人たちと、生でふれあえる貴重な機会になるかと思いますので、PeaTixで発券してます、よかったらぜひ検索してみてください。

というわけで長くなりましたが。

司会者:本当にありがとうございました。みなさん、拍手をお願いします。

河原:ありがとうございました。

(会場拍手)