「しくじり起業家」に学ぶ、創業期の失敗体験

玉木諒氏(以下、玉木):本日は、「しくじり起業家」というタイトルで、今日登壇いただくみなさまに「しくじり」なんて言って大変失礼だなと思うんですけど(笑)。

起業する上での失敗談をみなさまに共有いただいて、これから起業される方とか、今、会社を運営されてる方の役に立てればということで、このイベントを企画しました。ということで、今日のパネラーのご紹介をさせていただきます。

お一人目は、株式会社ベーシックの秋山さんです。秋山さん、自己紹介のほうをお願いいたします。

秋山勝氏(以下、秋山):こんばんは。株式会社ベーシックの秋山と申します。ここ(のスライド)に簡単に自己紹介が入ってるんですけれども、僕自身は高卒なんですね。

そのあと社会に出て、いろいろな企業を経験していきまして、スモールBからミドル、最終的には1万人以上の企業というかたちで転職をしていって、サラリーマン経験をさせてもらって、2004年に株式会社ベーシックという会社を設立してます。

もうスタートアップというよりも、中小企業みたいな感じかもしれないですけども、会社が今13期目です。資金調達はけっこうやってまして、エクイティもデットも含めると16億円です。バイアウトも6億円ほどやっていて、事業はけっこう、いろいろ立ち上げてきてまして、バイアウト先も基本的には上場企業を対象にしています。

今の主力はメディア事業で、「ferret(フェレット)」というWebマーケティングのメディアをやっています。あとは、創業の時から引っ越しの比較のサイトとか、さまざまやっています。

とにかく事業を立ち上げて、事業化するということに関してはけっこう得意で、自分で言うのもなんですけど、打率で言っても本当に7、8割ぐらい、ちゃんと黒転にできるところまでもっていってます。

ただ、1個1個の規模が、本当に5億とか6億とかそれぐらいで、まぁ小粒っちゃ小粒なので、事業を整理して、集中できる領域でしっかりやっていこうということをやらせていただいてます。

なので、(スライドの)下にも海外の飲食店が今18店舗とありますけど、本当にいろんな領域で事業展開しているので、知見はあるはあるんですけども、今となっては逆に老練さだけが目立ってきてしまっているので、しっかりピュアな気持ちで、もう一度あらためて頑張っていきたいなと思っております。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

玉木:秋山さんありがとうございます。ちなみに秋山さんの一番の失敗をひと言で言うと?   秋山:人材の抜擢ですかね。そこが一番大きな。

玉木:では後ほど、そこのところをお聞かせいただければなと思います。ありがとうございます。

(会場拍手)

金融業界を経て、ベンチャーを設立

玉木:次は、クラウドクレジットの杉山さん、自己紹介をお願いいたします。

杉山智行氏(以下、杉山):私はクラウドクレジットという、いわゆる投資型のクラウドファンティングですとか、ソーシャルレンディングとよばれる事業を運営する会社の代表を務めています。

会社自体は13年に作って14年の6月からクラウドファンティングのサービスの運営をしています。

投資型クラウドファンティングでも、日本国内でサービスをやってらっしゃる方が多いと思うんですが、当社は世界のお金が足りていない国と非常に豊かな国をつなぐということをコンセプトにしています。

今ですと投資先は東ヨーロッパですとか、アフリカのカメルーンですとか、ラテンアメリカのペルーですとかに対して、投資としてのお金を届けるというコンセプトの投資型クラウドファンティングをやっているところですね。

今日のコンセプト・テーマが「創業期、シード期ぐらいの時の失敗を中心に」ということですので、よく起業される方で、ずっと何かビジネスになるものがないか、成長するものがないかとずっと探されて、ベンチャーをやる中で、どんなことに陥っちゃいけないかとか、勉強しながら「これだ」という事業機会が見つかったときに、満を持して起業するという方ってけっこう多いと思うのですが、僕の場合は28か29まで、ベンチャーの「べ」の字も考えたこともありませんので。

前職は、イギリスの銀行の日本支店で働いてまして、イギリスってすごいお金が足りない国で、意外と今でもガーッとBREXITとかでも成長しているんですが、金融的にはお金が足りなくて、海外からのお金に頼っているところがあります。

リーマンショックでけっこうぐちゃぐちゃになっちゃって、逆に日本の銀行さんって今、預金が集まりすぎでけっこう大変になっちゃってるんで、鏡に映したような真逆な状況があるんだなということで、これをつなげるということの可能性があまりにも大きいんじゃないかということに遭遇しまして、これを実現しなかったら一生後悔するだろうなと思って。

最初はふつうにコンサルに入って、邦銀さんのコンサルティングをするとか、「世界に行くといいですよ」とか、地銀さん、日本の銀行さんに転職しちゃって、そういう日本の銀行のグローバル化という可能性はないかと思ってやってたんですけど、ふつうに面接で「日本だけじゃなくて銀行も世界に触れて」とか話したら、「ちょっとこいつ頭おかしいんじゃないか」みたいに思われている感じでした(笑)。

(会場笑)

それで、いろいろやってるうちに、起業という選択があるのを29歳にして初めて知りまして、何ヶ月かリサーチしたら、実際にできそうだという話になってきました。

結局、9ヶ月ぐらい準備して、会社を辞めて、会社を登記して、ということだったんですが。本当にもう、そこのところの一番の失敗は、やはり抜擢とかチームビルディングのところは、なかなかシード期は苦労したなというところですので、そこを中心にお話しできればと思っております。本日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

見切り発車で立ち上げた「Bizcast」の事業内容

玉木:よろしくお願いします。では最後、渡邉さんですね。

渡邉拓氏(以下、渡邉):みなさんこんばんは。私、Bizcastの渡邉と申します、よろしくお願いします。

お二人と比べると、どちらかと言うと、いろいろと計画してやっていってという、なんか輝かしいと言うか、経歴だと思うんですけども、どちらかというと私の失敗は、見切り発車というところがけっこうあります。

今やってるビジネスは、YouTuberさんをはじめとしたインフルエンサーさんと企業様をマッチングするプラットフォーム「BitStar」を運営しております。

私たちは彼ら(YouTuberさん)のYouTubeチャンネルに対してテレビのスポンサード広告みたいなかたちで彼らのチャンネルにスポンサードする広告主をマッチングするとったイメージで考えていただければと思うんですけれども、そういったインフルエンサーさんの収益の支援と、企業様の費用対効果の高い動画広告を両立すべくサービスを運営しております。

BitStarのプロダクトはYouTuberさんとクライアント様をシステムでマッチングするというところから、配信管理や効果測定レポートまで一元管理しているプロダクトを運営させていただいております。

会社自体は2014年の7月から始まって、丸2年経っているところなんですけれども、サービス自体は1年前に立ち上げて、1年間で動画自体も500本配信しているというところで、今、本当に盛り上がっている業界だなというところを感じております。

私自身、もともとこういったことを計画的にやったかというと、そういった人間ではなくて、大学時代はどちらかというと理系で研究寄りで、画像工学だとか動画、あるいはVRですね。

(そのような)研究をやってまして、今けっこうVRって盛り上がってると思うんですけども、当時だと7、8年前とか、そういった時期から「今はVRだ!」みたいな学校で1人で言っているような人間でした。それはなかなかうまくいかなかったんですけども。

そのあとは、ベンチャー企業の社内新規事業で、日本初の電気自動車のカーシェアリングという事業を立ち上げて、マンション向けにサービスをやっていました。

これも、学生の時にシリコンバレーに行って、イーロン・マスクがロードスターを出したみたいなタイミングで、「ウォー!」と燃えて。「これは日本でちょっと広めないといかん」と思って、それで始めたのがこの事業だったりします。

当時のベンチャー企業の社長と縁があって、その新規事業の担当をさせていただいてました。3年で売却というかたちになって、私自身はそのあとも、初めに見切り発車というのをお話ししたと思うんですけども、なにかやろうということを決めていたというわけではなくて。

30前に独立したいという思いもあったので、Bizcastという会社を立ち上げて、いろんな出会いやご縁があって、今のBitStarという事業にいたっております。

お二方と比べるとけっこう見切り発車的な動きが多かったりするので、そういった意味ではかなり失敗も多かったりするので、みなさんに共有できることも多いんじゃないかなと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

ベンチャーにおける人材抜擢の難しさ

玉木:はい、渡邉さん、ありがとうございます。それでは、実は事前にお三方には「一番の失敗って何ですか?」ということで、それぞれテーマをいただいてます。

秋山さんは「人材の抜擢」、杉山さんは「チームマネジメント」、渡邉さんは「見切り発車」ということでしたが、それぞれ詳しいところをお伺いしたいなと思います。じゃあ、秋山さん。「人材の抜擢で失敗された」これはどういうことなんですか? 

秋山:そうですね、この言葉だけで言えば、非常にかっこいいというか、まぁ、本来あるべき姿なんで、僕のやり方が悪かったというだけなんですけども。

当時、創業から5年目で、売上が10億を超えて、社員数がまだ20人に満たないぐらいだったので、自分としてもなかなか成績的には良いんじゃないかなって思ったわけですよ。

「あ、俺ちょっといいな」って思いながら、何を思ったか、僕の中で「ワンマンみたいな組織になっているのってどうなんだろうな?」と思っちゃったんですね。

やはり、権限委譲をしていって、組織を作っていくことがこの先重要だろうという思いもあって、それぞれに抜擢して人を配置していったんです。

当然その時に一緒にやってるメンバーで一番優秀と思われる人材を選んでいったんですけれども、その年から途端に業績がまったく伸びなくなっちゃいまして。

僕として良くなかったのが、まず中身がない。抜擢するにしても、「じゃあ彼に何を期待してるのか」というのを明らかにしてなかったというのと、鵜呑みにしすぎたというのも大きなポイントとしてあるかなと思います。

玉木:鵜呑みにしたというのは? 

秋山:本人たちが言ってることを、例えば「ここってこういう問題あるよね」と言って、「わかりました、やりましょう」と言ったら、「やるんだろうな」と。期待しすぎちゃうと言うんですかね? しばらく経って蓋を開けてみると、ぜんぜん進んでないと。

それで、「ぜんぜん進んでいないのにはまた訳があるでしょう」ということで、話をお互いするんですけども。「わかりました」と。それでまた、「じゃあわかったんだ」と言ってやっていくという、その進め方が違っていて。

いろんな問題を明らかにしてなかった、本当の意味での問題を明らかにしてなかったというのが経験としてはありましたね。