日本の教育には発信に関する授業がほとんどない

木暮太一氏(以下、木暮):今日はコミュニケーションを専門に考えている人間でもありますので、人に伝えるためにはどうすればいいかという話を少しさせていただきます。

時間としてそんなに長くはないのでかいつまんでの話になりますけれども、どうやっていけばいいのかというコツですね。小難しい考え方とかではなく、コツをいくつかお伝えしたいと思います。

最初にみなさんに見ていただきたいものがこの数字です。

81.4パーセントってこれなんの数字だかわかります?

と言ってわかったらすごいんですけど、これは「日本で働くビジネスパーソンの1,000人に聞きました。あなたは人に説明するのは得意ですか苦手ですか?」という質問に対して、「苦手です」と答えた人の割合です。8割以上の人が伝えるということに対して苦手意識を感じているんですよね(出典:「マイナビニュース会員調査」、調査期間:2013年3月14日~3月18日)。

なぜかというと、習ってないからなんですよ。僕は今年39歳ですけれども、僕がいた時の小学校教育は少なくとも発信に関する授業はほとんどなかったです。受信ばっかりですね。

「これを読んで答えましょう」とか、「この主人公の気持ちを答えましょう」とか、「知るか」と思うんですけど。

(会場笑)

「この時のメロスの気持ちは?」「いや、苦しいんじゃないの?」みたいな。

(会場笑)

僕は本を47冊書いているんですけど、そのなかで受験の問題に使っていただいているものもあるんですね。

あれはあれですごく光栄ではあるんですよ。なんとか高校とかなんとか中学の入試の問題に僕の文章が使われるんですけど、入試という性格上、事後連絡なんです。「あなたの文章をなんとか高校の国語の何問目に使いました。いいですか?」って言われるんですけど、いや「ダメって言えるの?」みたいな感じで。

すごく光栄な話ではあるんですが、ある学校の問題を見た時、びっくりしたんですよね。

問1はどんな接続詞を入れたらいいかという話なんですけど、問6か問7くらいに「この時の作者の気持ちを答えろ」と書いてある。(自分は)覚えてない。

(会場笑)

僕が覚えてないものをどうやって問題に出しているんだろうっていうのと、答え教えてっていうのとですね。僕が覚えてないし、そもそも正解っていうのはないはずなのに、それを一生懸命受信しなければいけない、考えて正しいものを察しなきゃいけないというふうになっているのが今の日本社会です。それが少し残念だなっていう感じがしています。

木暮氏の著書・出演番組

もっと日本人は、受信するだけ、察するだけじゃなくて、自分から発信していく力を身に着けなければいけないと思っています。

それは自己主張しなさいということではなくて、コミュニケーションは双方向なので、聞いているばかりじゃコミュニケーションは取れません。だから発信しなければいけません。その発信の仕方を学ばないと、これからちょっと難しくなってくるのかなと思っています。

「じゃあどうすればわかりやすく伝えることができますか?」という話です。みなさん興味を持っていらっしゃる分野かなと思います。わかりやすく伝えられたらいいことはたくさんあるんですけど、どうすればいいかわからないという方も多いと思うんですよね。

それを今日この時間で話をしようと思うんですが、自己紹介とかは時間がもったいないので割愛します。「こんな本を書いてます」という話です。

今回のテーマに一番近いのはこれですかね。「自分の言葉で人を動かす」という本があります。

今日、僕の話のなかで「いくつかヒントになることがあったな」というふうに感じていただけた方は、この本を読んでいただけると、より勉強になるかなと思います。ここでの話がちょっとつまんなかったなと感じた方は、本を読んでいただければ面白いと思います。

(会場笑)

僕は「とくダネ!」に出演しています。それから取材とか色んな雑誌に連載をしたり、取材を受けて色んな話をしたりという仕事もしています。

人に伝える力は大別すると2つしかない

話を戻しますが、わかりやすく伝えることができたらどんな場面に役立ちますかねっていう話なんですけど。僕はこのわかりやすく伝えるということを中学校2年生の時からずっと考えているんですよ。

中学校2年生の時に学校で出た数学の授業がわかりづらくて、というかあえて難しく言っているように聞こえてしまって、「そんな難しい言い方しなくてもいいじゃないか」っていうふうに感じちゃった時があって。

そこからじゃあどうすればわかりやすくなるかということを考え始めて、かれこれ25年ずっと考えているんですよ。気持ち悪いでしょう?

(会場笑)

そういう気持ち悪いことをずっと考えながら、仕事で使いながらやっています。25年間考えてきた結論として、伝えるという力は、センスじゃなくて科学だと思います。僕が25年間考え続けてきた結論はもう科学なんですよ。やり方があるっていうことなんですね。

わかりづらい説明には、わかりづらくなっちゃう理由がある。それにはわかりやすくするやり方があって、それは誰でも見つけられますよという話なんですよ。

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