ビールの泡に関する科学

ハンク・グリーン氏:ビール、それは爽やかで、美味しくて、アワアワで、ゾクゾクするもの。その1杯につまっているのはたくさんの科学です。以前、ビールができる科学についてお話しましたが、ビールの注ぎ方にも科学があるんですよ。

グラスを傾けてビールを注ぐ、というのはご存知でしょうが、なぜグラスを傾けるかは知っていますか? それは泡が肝だからです。

ソーダを泡立たせるのと同じように、ビールにはたくさんの分解された炭酸ガスが入っています。

炭酸ガスは酵母による糖類の発酵によって発生します。この過程でアルコールも生産されます。

缶ビールや瓶ビールを開けた時にプシュっという音が聞こえるのは、圧力によって容器の中に閉じ込められていた炭酸ガスが外気に出ようとするときに出る音なのです。

容器が開くことによって炭酸ガスは少し抜けますが、ほとんどのガスはビールの中に留まったままです。あなたがビールを注ぐ時にグラスを傾けるのは、炭酸ガスが抜けてしまうのを防ぐためなのです。

ビールの中の炭酸ガスがビールの中から出て行こうとするとき、分子同士が泡を作り出すためには、一体となる場所が必要になってきます。核形成部位と呼ばれる、泡が作り出される場所です。

グラスの泡がある1ヵ所から連なって抜けて行くのを見たことはありませんか? それが核形成部位なのです。

グラスを傾けるべき理由

核形成部位はグラスに付いた細かい埃の粒子や繊維、グラスの欠陥部位や欠けている所、もしくは小さな気泡が基となってできているのでしょう。

核形成部位こそが、あなたがビールを注ぐときにグラスを傾け、できないようにしているものなのです。気泡は核形成部位になりますからね。

グラスを傾けないでビールを上から注ぎ入れると、ビールの中に空気をしこたま入れてしまうことになり、炭酸ガスの抜け道となる、小さな核形成部位をたくさんつくってしまいますからね。

ガスが上昇する時、ガスの周りは穀物からのたんぱく質によって膜が張られます。その膜と表面張力がガスが大気中に出て行くのを防ぐので、ビールの上の方にはヘッドと呼ばれる、泡としてのガスが残るわけです。

グラスを泡でいっぱいにしたくなかったら、炭酸ガスを上手に逃がし、理想的なヘッドをつくるようにしないといけません。

グラスの縁のほうから優しくビールを注ぎ入れると、空気があまり入らずに済みますので、核形成部位が生み出されるのをできるだけ防ぐことができ、炭酸ガスが抜けるのを防げます。言い換えると、つまり、泡が少なくできるのです。

注ぎ終わりにはグラスを傾けるのを止めましょう。いつもしているでしょうけど。そして、ヘッドが数センチだけできるようにね!

泡も少しはあるほうがいいんですよ。泡があると飲んでいる間ビールのいい匂いがしますからね。まあ、そんなには要らないでしょうけどね!

グラスを傾ける方法は、なにもビールだけに有効な方法ではありません。フランスのランス大学の科学者はグラスを傾ける方法がシャンパンのひと口目のシュワシュワを味わうためには最良の方法だということを突き止めているのですから。 

フランスの科学者に乾杯! ですね!