ジェットコースターを発射させる水力

マイケル・アランダ氏:想像してみてください。あなたが大きな鉄の塊に縛り付けられ、上空120メートルの高さまで持ち上げられた挙句、そこから落とされるのです。ビューと坂を下り、輪を描いて逆さまにもなります。

そのように描写すると、ジェットコースターはちょっと恐ろしいものに聞こえますよね。しかし、スリル満点ですし、実際とても興味深い物理学により、高速で落下するスリルが可能となっているのです。

ほとんどのジェットコースターはリフトヒルと呼ばれる坂から始まります。

ここで機械により始めの一番高い場所まで上がります。しかし、ほかのジェットコースターは、もっと突然始まります。

水力のおかげで突然発進できるのです。水力は物理学の一分野で、液体と他の様々な機械がどう影響しあうかという分野です。水力発射システムでは、2つの重要な部位に繋がるケーブルを利用します。

カッシュカーという部分はジェットコースターの底に付いていて、また、大きなリールである巨大なウインチでモーターによりケーブルを巻き上げます。

ジェットコースターの車体を発射させるとき、魚を釣り上げるように、このケーブルを巻き上げて車体が線路の上をものすごい速さで下がるようにします。数秒後にカッシュカーは車体を離し、それによりジェットコースターは大きな坂を登ることができるのです。かなり複雑な仕組みです。

ですから、基本的な部分を説明しましょう。水圧液と窒素ガスが、ハイドロリックアキュムレータと呼ばれる空間の中で、ピストンにより分けられます。

そして、この発射システムの鍵となるのは、水圧液のような液体は圧縮できないというところにあります。それにより、水圧液がアキュムレータに入り窒素ガスを圧縮します。すると、小さなスペースに高濃度のガスが溜まります。それにより圧があがります。

窒素ガスは安価で手に入りやすく、熱や圧に対する反応も危険ではありません。つまり、大きな爆発を起こすことはないのです。

圧力が十分に高くなると、バルブが開き、水圧液が勢いよく飛び出し、モーターを回します。モーターがウインチを回し、ウインチはケーブルを引き、それにより車体は勢いよく進みます。

このように、ジェットコースターに乗ったあなたは数秒の間にものすごいスピードで進むことができるのです。

どうやって減速し、停まるのか

そして始めの坂の頂点に来て、少し下り始めた時、少し変な感覚に襲われるかもしれません。

あなたを興奮させるアドレナリンなどの化学物質以外に、お腹が沈むような、無重力になった感じです。なぜならあなたはフリーフォール、つまり、あなたの体に働いているのが重力だけになった状態にいるからです。

日常で私たちは、床や椅子などが体を押し返すことにより、足から骨、そして内臓がそれを感じ、いつも自分の体重を感じられる状態にいます。

しかし、フリーフォールの状態の時は、あなたの体はなににも支えられていない状態です。あなたの体を押し返す力がないのです。あなたの身体が、他の落下物と同じように9.8メートル毎秒の速さで地球に向かって落下しているのです。

そして、良いことにも悪いことにも終わりが来ます。ジェットコースターは止まらなければなりません。

伝統的には、底に付いた歯止めや、金属製ヒレを締める締め具などを使って、車体と接触することにより停止させていました。これらのブレーキは摩擦に頼るもので、運動エネルギーを生み出します。それは動きのエネルギーで、それを熱エネルギーに変えて車体を停止させるのに効果的ではありますが、接触により擦り切れてしまいます。

しかし、接触を必要としないブレーキがあるのです。これは伝導体、つまり、車体から飛び出している金属製ヒレを、磁界を通して動かす方法です。

磁界は電流により生じさせることが可能です。電流がワイヤーを流れたり、電子が原子の中を動くことにより微量の電流が生じたりします。そう考えるなら、永久に磁界を生じさせることができるのです。

ですから、いくつかのジェットコースターの線路には、磁界を発生させる永久磁石の列が付いています。

金属製ヒレが磁界を通り過ぎる時、渦電流と呼ばれる、リング状の流れが生じます。これはレンツの法則と呼ばれます。レンツの法則により、基本的に、金属製ヒレのような伝導体は変化が嫌いであるということが分かります。

それで、金属製ヒレが磁界に入りこむ時、それは、元はなかったものですから、そこに自分の磁界を作り出します。それにより変化に反対するのです。

この変化により車体が速度を下げることができるようになるのです。なぜなら動いている車体の運動エネルギーが、レンツの法則が金属を伝うことにより熱で消滅するからです。

そして、車体は次第になににも接触することなく停止することができるのです。

ですからあなたがジェットコースターを好きであれ嫌いであれ、ジェットコースターの背後にある物理を理解するならば、すこし感謝できるかもしれませんね。