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高級ワインが世界の電力不足を救う!? 実は身近な“超電導”と”お酒”のハナシ

高級ワインが世界の電力不足を救う!? 実は身近な“超電導”と”お酒”のハナシ

電気抵抗を限りなく少なくし、電力を減らさずに遠くへと届ける”超電導”。砂漠にソーラーパネルを敷き詰め、超電導を使って世界中に供給する技術の研究が進んでいます。そこで発見された、超電導とワインの意外な関係性を、物質・材料研究機構の高野義彦氏が語ります。(TEDxNagoyaU 2014より)

スピーカー
物質・材料研究機構 グループリーダー 高野義彦 氏

参照動画
超伝導の人間くさい科学

「超電導」が可能にする未来の世界とは?

高野義彦氏(以下、高野) みなさん。こんにちは。物質・材料研究機構の高野です。今日はみなさんに、超伝導の話をしたいと思います。超伝導と聞いてどうでしょう、知ってる人、なじみがある人、どれぐらいいらっしゃいますか? 手を挙げてみてください。ちらっと。あー、まだまだ。みなさんと超伝導の間に大きなギャップがある、らしいです。今日はそのギャップを埋めていきたいと思います。 さあ、電気製品からいきたいと思います。身の回り、スマホ、このマイクも電気もそうですけど、電気製品ってたくさんあります。非常に便利な電気なんですが、これにはちょっとややこしい問題があって、電気は発電したら、すぐに使わないとダメ。大量の電気を貯めておいたり、それをトラックに詰めて運んだりということは、できないわけですね。さあ、このグラフの上を見てみましょう。 photo3 太陽光発電で電気が生まれてます。電気君は走って電球の方に向かってるんですけど、徐々に疲れて、電気のエネルギーが減ってきているのがわかります。これは、普通の電線には電気抵抗があるので、電気のエネルギーは徐々に減って、遠ければ遠いほど電気は徐々に減っていってなくなっていくわけです。だから、電球もあまりよく点いてません。 じゃあ、一方、この電線を超伝導に変えたらどうなるでしょう。太陽光発電で生まれた電気君は、最後まで元気よく走ってます。そう、超伝導体は電気抵抗が0。ですから、100のエネルギーを100伝えることができる。これは、どんなに遠くても100伝わる。 じゃ、ちょっとイメージしましょう。電線をぐるっと丸くして、始点と始点をつなぎます。もうちょっと正確に言うと、ぐるぐるぐるっと巻いて、最後につないだとしましょう。そこにいったん電気を流すと、このコイルには、電気抵抗がありませんから、永遠にこの電気は流れ続けるわけです。この超伝導のコイルを使って、強い磁場を発生させることができるわけです。 医療装置として不可欠な装置、MRIにも実はこの超伝導のコイルが入っています。これは強い磁場で体の断面を見る装置です。 photo3 そして、名古屋の皆様が、おそらく楽しみにしていると思います、東京-名古屋を結ぶ、リニア新幹線。これは東京名古屋をたった40分で結びますが、実はこの部分にも超伝導体が入っています。このように超伝導は非常に有用なものですが、我々はもっと大きな、グローバルな夢を持っています。 photo4 これは、地球規模の超伝導ネットワークで、ここ、サハラ砂漠に太陽光パネルを敷き詰めています。実はこのサハラ砂漠の20%に太陽光パネルを敷き詰めると、世界の電力をまかなうことができるという計算ができてます。意外に、少ないですよね。このサハラ砂漠で発生した電気を、超伝導を伝って、日本に運んでしまおうと。ちょうどサハラ砂漠が昼のとき日本は夜ですので、非常に都合がいいんじゃないかと。 砂漠はあちこちにあります。世界の砂漠に太陽光パネルを置いて、地球を全部、結ぶように超伝導でつないでしまおうじゃないかと。どこかは昼で、どこかは夜です。どこで使って、どこで発電しても、距離は関係ないんです。こんな世の中にしたら素晴らしいと思うんですけど。こういう世の中を作るためには、実は性能の良い超伝導材料が必要です。

偶然から生まれた新発見

photo5 これは、超伝導体材料の解読の歴史です。約100年前、水銀超伝導が発見されました。そう、実は超伝導は温度を下げないと、超電導現象は起きない。できるだけ高い温度で、超伝導が起こる物質が見つかれば、非常に有用です。もしこの室温でなれば、これはもちろん、ノーベル賞間違いなしの発見になるわけです。こういう夢を実現するため、みんな新しい超伝導体を探しています。 今最も超伝導の温度が高いのは水銀系と言われています。マイナス約110度ぐらいで、超伝導になります。そして最近注目されているのは、鉄系超伝導という物質類です。まだ超伝導になる温度はそれほど高くないのですけれども、新しいので、いろんな新しい物質が発見されていて、この先どのぐらい伸びるかという意味で、非常に期待されています。我々も、この関連物質に非常に有用な超伝導体があるんじゃないかと思って、新しい超伝導物質を探しています。 そこで、鉄系と言いますが、鉄、テルル、硫黄、これらの元素を混ぜて新物質を作ってみました。この実験をするときに、面白い現象にたどりついたわけです。超伝導物質を作るときに難しいことをするんじゃないかという気がしますが、実はプロセスは簡単で、鉄とテルルと硫黄を量って混ぜて、オーブンで焼いて、チーンとできあがりです。 (会場笑)  photo6 なんか、小麦粉と砂糖と卵を混ぜて、オーブンに入れるとケーキができるのとあまり変わらない。おそらくケーキ作りが得意な人は超伝導作りも得意だと思います。普通、ここでできたものが超伝導だと超伝導だし、失敗であれば超伝導ではなく、それで終わりだと。 ところが今回うちの、あまり勤勉ではない学生が試料を作ってみたら、超伝導にならなかった。ならなかったからもういいや、とほっといたんですけど、2週間ほどしてふと思い立ってもう一回測ってみたんです。そうしたら、超伝導になったって。普通、超伝導物質をほったらかしにしたら、劣化して超伝導が消えた。これはよくある話。ほっといたら超伝導になった。これはおかしいじゃないか。 それでいろいろ調べてみると、どうも空気が影響してるらしい。酸素かもしれない、窒素かもしれない。日本は湿気が多いので、水分かもしれない。調べてみるとですね。水の中にちゃぽんとつけると、じわじわ超伝導が出るということがわかってきた。 「水」か。じゃあ、いろんな水につけてみよう。いろいろ試してみた。でも、あまり超伝導はなかったんですね。「もっと刺激的な水はないの」。そこで、お酒につけてみることにしました。 (会場笑)

超電導も人間も、美味しいお酒が好き

photo7 高野 みなさんも好きですよね。はい、ここ見てみてください。できた試料をお酒に漬けて、しかも煮ます。70度で、24時間煮ます。そして出てきたものがどうなった? これです。でも、お酒でもいろいろあるんですよね。今回使ったのは、6種類の酒です。 photo8 ビール、赤ワイン、白ワイン、日本酒、焼酎、そしてウイスキーです。みなさん、どれが好きですかね。うちの研究室の飲み会のときに、その場で適応できますから。 (会場笑) これはお酒に見えるかもしれませんが、私たちにとっては試薬なんです。さあ、結果はこうでした。 photo9 この折れ線をグラフ見てください。これは、実験室の純粋な水とエタノールで、混合液を作って実験しました。いわゆるコントロールです。あまり超伝導出ませんでした。ところがどうでしょう、赤ワイン。なんと、7倍近く、超伝導が出ています。次は白ワイン、5倍近くですね。ビール4倍近く出てます。あきらかに、水エタノールよりも超伝導が出現している。 これは何を意味しているか。赤ワインに含まれる、水エタノール以外のなんらかの成分が効いているということです。これは面白いということで、国際会議でこの話をすると、フランス人がつかつかっと来て、「赤ワインがいいのはわかったけど、フランスにはもっといい赤ワインがある。どうしてフランスの赤ワインを使わないんだ」と。 (会場笑) フランスワインはともかくとして、赤ワインに種類があることは間違いない。じゃあ、いろいろやってみよう、ということで、近くの酒屋に行きました。 photo10 6種類の赤ワイン。これ、無秩序に買ったわけではない。なんかポリシーがあるんです、実は。さあ何でしょう。 実はブドウの種類を変えて、そのブドウ100%で作った赤ワイン。すなわち例えば、これはガメイ100%。メルロー100%。カベルネソーヴィニヨン。ピノ・ノワール。サンジョベーゼ、これはイタリアですね。そして、最初に使ったボン・マルシェ。これが、我々のスタンダードな赤ワインということになる。実験する前に、テイスティングしました。ブラインド・テイスティング。 (会場笑) 正直言うと、あまり当てられませんでした。どうして当てられなかったかというと、テイスティングしているうちに、我々サイエンティストなんで、検証実験をたくさんしているうちに、酔ってきてあんまりわかんなかったんです。(会場笑) ただ、みんなの意見が一致したのが何かというと、このガメイ、メルロー、カベルネソーヴィニヨンのワインはおいしかった。これは、みんな合意した。おいしいワインがどうなるか、気になります。そして、結果です。 photo11 なんと、ガメイが95%超伝導になる。そして、2番がカベルネシーヴィニヨン、ピノ・ノワール。おいしいワインが良かったんです。残念ながら、ボン・マルシェはビリでした。何が効いてるんでしょう? 我々も超伝導も、おいしいほうがいい。 photo12 さあ、おいしいっていうのは難しい。横軸を金額にしてみました。高いワインほど、超伝導が出る。右肩上がりですよ。でも超伝導率に比べて、ピノ・ノワールは高すぎる。この辺(楕円で示したあたり)がいい。さてじゃあ、どうして超伝導は起こったんでしょうか?

解明に2年を費やした「お酒」と「超電導」の関係

photo13 高野 ちょっと考えてみたいと思います。実は我々は、原因を解明するのに2年の歳月がかかりました。この際、医学系の先生の助けが非常に大きくありました。僕らも超伝導になったという理屈が気になって、このペレットばかり一生懸命調べていたんですね。ところが原因は、ペレットのほうではなく、液体のほうにありました。 この液体が、どう変化したかと調べてみたんです。すなわち、溶液に溶け出した鉄の量を測ってみました。そうすると、溶液に溶け出した鉄の量が多ければ多いほど、超伝導がたくさん出てる、ということがわかりました。鉄が溶けだしたら困るじゃないか、と最初は思ったのですが、実はこの結晶の隙間に、余計な鉄が入っているということがわかった。結晶には隙間があるんですけど、本来いてほしくない鉄がいた。その鉄が、超伝導の仕組みを邪魔してました。 ところが、酒に含まれる有機酸がこの中にあった余計な鉄を溶かしだしてくれて、超伝導が出現した。これが答えでした。実はこの試料、酸に溶けてなくなっちゃう。だから我々は酸に弱いと思ってた。ところが我々が普段使わない有機酸という、弱い酸を使うことによって、余計な鉄を、まさに結晶を洗い流すようにして、超伝導ができた、ということが最後わかりました。

サイエンティストは”冒険家”であるべき

高野 これで一つまとめたいと思います。最初に気づいたことは、試料を空気中に置いといたら、超伝導になった。この不思議な現象が起きた時に、我々はちょっとあきらめたけど、いろんなことをやってきた。酸素が欲しい。超伝導は酸素が欲しい。空気が欲しい。そして次は水が欲しいと言ってきてる。その次になんと、お酒が欲しいと言ってる。そして最後なんと、おいしくて高い赤ワインがいいと言ってる。 (会場笑) なんて人間的な超伝導なんでしょう。実は、お酒に試料を漬けるなんていうのは、サイエンティストとしてまずやらないことです。だけど、やらないことをやってみた。それが大きいんじゃないかと思ってます。ちょっとこれ見てみましょう。これは、島に人々が住んでいる様子です。 photo14 この島に住んでいる人たちはまだ、海には行ったことがない人たちで。この島の中はみんな、歩き回ってよく知っています。だからこの島は知の島です。未知の海にはまだ行っていない。この時、すなわちこの海岸線は、未知と既知の境目であって、最先端。我々サイエンティストは、昔の冒険家と同じように、誰も行ったことないところに踏み出してみよう。これが冒険家であり、サイエンティストであると。 もしかしたら、失敗して何もつかめないかもしれないけど、もしかしたら宝の島に、宝の大陸にたどり着くかもしれない。みんなが行ったことないところに行ってみること。これがすなわち、大発見のチャンスなわけです。 さあ、もう一回聞いてみたいと思います。今日の話の聞く前よりも、今、超伝導にちょっとなじみが出てきたな、と思われる方はぜひ手を挙げてみてください。……ありがとうございます。大成功です。どうもありがとうございました。

  
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