質問に答えながらのパネルトーク

田中美和氏(以下、田中):今、小安さん、小崎さんのお話をみなさんに聞いていただきました。これからのお時間では、会場のみなさまからご質問なども受け付けつつ、少しパネルトークの時間を持たせていただければと思っております。

今、お二人に余すところなくお話をしていただきまして、会場のみなさまもいろいろとお話をうかがうなかで、「もう少しここを聞いてみたいな」というところが出てくる頃かなと思います。ぜひここからは、ご質問などをいただきながら進められればと思っております。

なにかご質問がある方、ぜひ承りたいなと思いますけれど、いかがでしょうか? ……最初って、手を挙げにくかったりいたしますけど(笑)。

小安美和氏(以下、小安):じゃあ、最初、当てましょうか?(笑)。

(会場笑)

田中:もしお知り合いの方がいらっしゃれば……ぜひ(笑)。

小安:じゃあ、○○さん。

質問者1:ありがとうございました。○○と申します。よろしくお願いします。小安さんに質問です。

「スイスに行く前に、めっちゃモヤモヤしていました」とおっしゃっていて、スイスに行った後に、「ある程度、晴れやかになりました」ということだったんですけれど、このモヤモヤしていたことというのは、端的にいうと、なにがモヤモヤだったのかを、教えていただきたいと思っています。

小安:ありがとうございます。○○さんとは、一時、一緒に働いていたんですけれど、モヤモヤ感、見えなかったですか? あまり見えてなかった?

(会場笑)

質問者1:み、見えて……。

小安:あ、見えてた? なるほど(笑)。

(会場笑)

少数派であることにモヤモヤ

小安:なにがモヤモヤだったかというと、やはり男女の比率ですね。比率によって、こんなに自分の振る舞いだったり、表現に制約が生まれるんだということに、スイスに行って、数字で気づかせていただきました。

つまり、モヤモヤは、……なんでしょうね。モヤモヤだから、モヤモヤなんですけど(笑)。自分は「男女関係ない」と生きてきたつもりだったんだけれど、少数グループとして、「自分は自由に表現できないな」「なにか怖いな」と、先ほど少し話しましたけれど、そういう思いが生まれたんですね。

そのことが、「怖い」とまで言語化できてなかったんです、日本にいた時には。わからないけど、ただ、「なんか自分らしくないな」と思っていました。「自分らしさを出せないな」、とくに男性が多い会議の場では「なかなか出せないな」みたいなものが、私のモヤモヤだったかなと思います。

質問者1:ありがとうございます。

田中:ギンカ先生も、「一定数のパーセンテージが必要だ」ということを、おっしゃっていましたよね。

小崎:そうですね。

小安:まさに一定数、本の中にも書いているんですけれど、「ティッピングポイントは35パーセントだ」と書かれています。35パーセント、そのグループがいると、ものが言いやすいということなんですよね。15パーセントだと「トークン」といって、その人の言うことがそのグループの代表だと思われてしまう。

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15パーセントでもそうだということは、日本の場合、12.5パーセントですよね。みなさんの会社はどうかはわからないんですけれど、役員でいうと1パーセントですから、1パーセントの人は本当にものが言いにくいというのは、データでも言えるんじゃないかなと思います。

田中:圧倒的な少数派になってしまっているんですよね。

なにか、ほかにもご質問があれば、ぜひ。どうぞ。ベージュのお洋服の方。

自分らしさをどうやって見つけましたか?

質問者2:今日はありがとうございました。自分らしさについてお聞きしたいんですけれど、お二人はどのように自分らしさを見つけましたか?

田中:ありがとうございます。自分らしさをどうやって見つけたか、というお話ですね。小崎さんはいかがですか?

小崎:そうですね。私は小安さん以上に『しくじり先生』なんですけれど、私は大学卒業して就職するまで、ものごとを深く考えたことなかったんです。

就職も、「数字を扱うのが得意だから、そういうところに行こう」みたいに、ずっと自分の心と真剣に向き合ったことがなかったんです。でも、結婚して夫の関係でアメリカに行くことになって、その時に、なにもなくなっちゃったんですね。

どこに行っても、「○○の奥さん」みたいに言われるようになって、それで「私ってなんなんだろう?」と、本当に山の頂上から地獄に落ちたみたいな感じでした。

そこから、「私って、本当はなにをやりたいのかな?」をゼロベースで考えて、本当にやりたい勉強をして、帰国して。その後、出産したので5年ぐらい働いてなかったんですけれど、そこから、人がなんと言おうと本当にやりたいことだけにフォーカスすることにしました。私の場合は、なにもなくなっちゃったところからというのがあるかもしれないですね。

小安:自分らしさ、自分らしいリーダーシップ、どっちでしたっけ?

質問者2:自分らしさ、です。

小安:自分らしさ。そうですね、さっき言ったように、私の場合は自分にすごく興味がある人なので(笑)、いちいちホテル合宿をするんですね。

(会場笑)

小安:1人で。

田中:プライベートでもやられているんですか?

小安:そうなんです。1人でやるんです、必ず。迷った時は、とにかく1人になって自分に聞く。「あなたはなにをしたいの?」ということだったり、「あなたはどうしたいの?」「どう生きたいの?」ということを問い続けて。

自分に嘘をついたらしんどいじゃないですか。なので、本当にまがいものではない、オーセンティックなところまでいけているかどうかわからないんですけれど、とにかく1人で自分に向き合う時間を作る。それをやり続けるということをやりながら、自分らしく生きていけるといいなと思いながら、がんばっています。

逃げたくなることはないですか?

田中:ぜひ、その流れでおうかがいしたいんですけれど、そういう自分らしさ、今日もお二人のお話を通じて、やはり自分と向き合うことが、すごく自分らしいリーダーシップとつながっているんだなということが、非常によく理解できました。

でも、自分らしさと向き合うって、すごく苦しいことなんじゃないかなと思うんですね。自分を知る楽しさ、ワクワク感もありますけれど、同時に私自身なんかは「すごく苦しいな」と感じることが、とても多いんです。すごく逃げたくなってしまうんですよ。私は、それで時々遠くに行きたくなっちゃうんですけれど。

(会場笑)

田中:それに共感してくださる方もいらっしゃるんですけど、「わかります」と。お二人は自己を探求することから逃げたくなることはないのかなとか、逃げたくなる自分とどう折り合いをつけられているのかなと、ぜひうかがってみたいです。

小安:逃げたくなる、ですか? 逃げたくなることがある方(手を挙げてください)。

(会場挙手)

田中:私はあります。

小安:あります?(笑)。

(会場笑)

小安:そうなんですね。

田中:なんか、苦しくなっちゃって。

小安:苦しい。それはなにがですかね?

(会場笑)

「自分らしさを失いたくないから闘い続けている」

田中:美和さんはあまりない感じでいらっしゃいますか?

小安:私はどちらかというと、自分が自分らしくあることを絶対失いたくないと思って、闘い続けているんですよ。

田中:なるほど!

小安:なので、逃げるというよりは、「向かってこい!」みたいな感じですかね(笑)。

(会場笑)

田中:そうなんですね!

小安:そこにけっこう必死で、隠さずに生きていくことに一生懸命になっているので、逃げるというよりはぶつかるわけです。ぶつかるということは、傷つくし、血も出たりするんですよね。

血を流すんだったら、それなりのレベルのことで闘おうと思うので、そこは自分に向き合って一生懸命。血を流してもいいから守りたいもの、打ち出したいものを常に考えている感じですね。

田中:すばらしいですね。小崎さん、いかがですか?

小崎:私も逃げたくなること、あまりないですね。

田中:おぉ、そうなんですね!

小崎:仕事をしてなかった期間が5年もあったので、本当に仕事があるだけで幸せと思っているところがあるので。ただ、自分らしい提案じゃないことを、時間がなくてササッとしちゃうような時はすごく反省したりします。

あと、なんとなく特定分野で知見ができてきて、成長がなくなったなと気づいていても、そこにちょっと安住してしまうと、「ヤバイな、自分」とは思います。

小安:「逃げてません」と言っているんですけど、それは自分が思っているだけで、人から見たら十分逃げていると思います、いろんなことから。それは、今回、IMDに行って、すごく学んだんですけれど、私は「逃げてない」と言ったんだけど、コーチから「あなたは逃げた!」と怒られたことがありました(笑)。

(会場笑)

小安:「I'm sure!」とか言われ、「あなたはさっき逃げたじゃない!」と言われて、「逃げてないです」と言ったんですけど、ビデオを撮られているので、「じゃあ、巻き戻してみましょう」と言ってそのシーンを見たら、逃げているんです、私。

(会場笑)

小安:自分でびっくりして。だから、私、ちょっと自己認知はまだ弱いのかもしれない(笑)。

田中:やはり自分との戦いなんだな、ということが伝わってきました。ありがとうございます。