「ふみふみ」には理由があった
ハンク・グリーン氏:猫ってこう、なにげなくすり寄ってきたり、あなたを見上げてのどをごろごろ鳴らしたりして、いつもなんだか幸せそうですよね。
こう、「ふみふみ」してきたりして、まるであなたからビスケットでも作ろうとしてるみたいに。本当にかわいいですよね。
かわいいんです!
猫に愛されるってのは決して悪くないんです。ただ、彼らは肉球の間にちいさなナイフを隠し持っていますからね、彼らの愛は時に痛かったりもするもんです。
ではなぜ、彼らはあの「ふみふみ」をやるんでしょう? 彼らのこんな行動にもちゃんとセオリーが存在するんですよ。
彼らのこの行動は主に、ほかのたくさんの動物のように縄張りを主張するための行動だと言われています。彼らの肉球からは彼らそれぞれ独自のにおいが出されていますから、それでマーキングをしているんです。
または、成熟した個体に未成熟な性質が残っている、ネオテニーと呼ばれる現象ではないかともいわれています。なぜなら子猫にはもっとたくさんのお乳が出るように母親のお腹をにぎにぎとマッサージする習性があるからです。
成熟した大人の猫でも、毛布なんかをふみふみしている時になにかその辺にあるものを口に含んでいたりすることがよくありますから。
しかし、同じ大人の猫でも野生の猫はこのふみふみをしないんです。こういったネオテニーが見られるのは動物全般で見ても室内で飼われている動物にだけなのです。
なぜそうなのかというと、長年人間に飼われてきた猫は、本来備わっている、どう猛さが薄れ、私たちが好む大人しくフレンドリーな優しい性格へとシフトしてゆきます。
どんどん甘えん坊になってしまうのは、そうすると人間にたくさんかまってもらえることがわかっているからです。
私たちもよく知っているように、野生の猫は社交的ではありませんよね。彼らは私たちを食べようとする勢いで噛みつこうとしてくるばかりで決してすり寄ってきてくれたりしませんから。
ヤマネコというのは私たちがよく知っている猫の先祖であり、孤高のハンターですが、そんな彼らがフレンドリーに接するのは同じ種類のヤマネコたちだけだと言われています。それも交尾のシーズンのみです。
彼らが優しくなる主な理由として挙げられるのは2つ。1つ目は「こんにちは、かわいこちゃん。こっちに来て僕とたくさんのちいさな子猫を作ろうじゃないか」という気分の時。そしてもう1つは母性が働いている時。つまり母猫と子猫の間にある愛情です。
そんな野生の猫とは正反対に、飼われている猫たちにはもっとたくさんの愛情を分かち合える存在があるわけです。だって彼らはもう孤独ではないのですから。人間といういつでも寄り添い抱き合え、食事をねだれる存在があるのです。
彼らの「ふみふみ」は本来子猫として生き延びるための行動でありましたが、今では成猫のこの仕草はどれだけ私たちを信頼し、安心しているかを証明するための仕草であると言えます。
もしあなたに母猫のようなふかふかの毛皮があったなら、彼らの肉球の間に隠れているちいさなちいさなナイフなんかどうってことないんでしょうね。