誰でも最初は実務経験がないところから始まる

司会者:それではここからは各社さんの挙手で当てさせていただきます。

記者5:テレビ朝日のタケウチと申します。よろしくお願いいたします。

実務経験がおありにならないということは、実際に都知事になった際にはどのような影響が出ると思われるでしょうか。

鳥越俊太郎氏(以下、鳥越):大変でしょうね、それは。実務経験ないんだから。一から全部学ばなきゃいけない。だけど、人間は最初は誰もなにも経験がないままいろんなことをやってきたわけですね。人生のなかで。

僕だって新聞記者になった時、新聞記者の実務経験まったくなかったですよ。

僕は49歳の時、テレビのザスクープという番組のアンカー、日本語で言うとキャスターですが、やりました。まったくやったことなかったです。だけど、最初にやり始めた時はカメラ目線が定まらなくて、チンパンジーのようにキョロキョロしておりましたけども、やっぱり人間ちょっとずつ慣れていくもんで、そこから12~3年は番組をやっておりました。今でもやっておりますけども、アンカーとしてそんなに目線が泳ぐことなく、仕事をするようになりました。

だからこれは誰でもどんな仕事でも、最初は一からなんです。実務経験がないところから始まる。だけどそれは、どれだけ誠心誠意、力を込めてその問題に対処する気持ちがあるかということだろうと思うんですね。おざなりにいい加減な気持ちでやれば、それはもうおざなりな結果しか出てきません。

私は先ほど申し上げましたように、大変な決断をして、この座に座っておりますので、やる以上は心をこめて、誠心誠意ことにあたりたいと思ってますので、実務経験がないということを心配しないわけではないんですけども、基本的にはなんとかやれるだろうというふうに思っております。それでいいですか?

記者5:もう1つだけすみません。ほかの方の公約もお読みになってないということですし、ご自身の公約もまだできあがっていないという段階で、一番のご自身の強みはなんだと思われますか?

鳥越:強み。う~ん……強みね。まあ、楽天的なことかな?

なんとかなるだろうといつも思ってる。ガンになっても別にショック受けなかったですからね。なんとかなるだろうと思ってガンを切り抜けてまいりましたので、ガンになることに比べたら、おそらく知事になっていろいろ遭遇するであろうさまざまな苦難や障害は、まあそれほど大変なもんじゃないんじゃないかなと。

ガンを切り抜けてきたということを考えればね。

と思いますので、そういうガンになってもめげなかったという私の気持ちが常に前向きで楽天的であるということが、あえて言えばね、強みかなと思います。

記者5:ありがとうございます。

自分で自分をチェックできるのかという葛藤はある

記者6:テレビ東京のモリモトと申します。先ほど、インサイダー、アウトサイダーというお話がありましたが、あえてもう少しつっこませていただきたいんですが、これまで鳥越さんは報道の現場でジャーナリストとして権力をチェックする立場におられたわけですよね。

それが、まったく今度は逆の、権力を持つ立場に身を置くということに対してのご自身の葛藤といいますか思いというのを聞かせてください。

鳥越:葛藤はありました。やっぱり自分の天職というのはね、天から与えられたというのはちょっと大げさな言い方ですけども、天職というのは、やはりアウトサイダーとして……。

税金の使い方が、正しく使われているかどうかわからないと。そのチェックを一人ひとりの市民はできないと。その一人ひとりの税金を納めている市民に代わって、その税金がちゃんと正しく使われているかどうかをチェックする使命を歴史的に与えられていたのが私たち、いわゆるジャーナリストと呼ばれる人間だったわけですね。私もそう思って仕事をしてまいりました。

もし、東京都知事ということになれば、税金を使って仕事を執行していくかたちです。チェックを受ける側になるわけですね。これはまるで反対の立場に立つわけですから、それは葛藤がないわけではないです。

「お前自分を自分でチェックできるのか」という内なる声はありますよ。ありますが、そういう自分がアウトサイダーであったということを肝に銘じて、常に自分にチェックを入れながら、「これでいいのか」と。

東京都民が汗水たらして必死の思いで稼いで、それを税金として納めたと。その金を使うのにこの使い方でいいのか、こういうふうに使っていいのかということを常に自分に問いかけながら仕事をしていきたい。

それが、インサイダーになってもアウトサイダーの心を忘れないようにする一番の近道じゃないかなと自分では思ってます。

記者6:すみませんもう1点だけ。鳥越さんの国政に対する危機感というのは伝わってきたんですが、今都民の気持ちとしては混乱している都政をなんとかしてほしい、具体的な政策を動かしてほしいという思いだと思うんですが、その辺りに対する、いま立候補を表明してらっしゃる方たちのなかでも自分がやれるという自信はおありでしょうか。

鳥越:それはなんで混乱したかというと、猪瀬さんがあるところからお金をもらっちゃいました。それから舛添さんが税金をいろんなところで無駄遣いをしてとんでもない使い方をしていきましたっていうその、政治に使うお金ということが混乱の最大の問題ですよね。

この問題をきっちりとケリをつけないといけないので、私はもちろんそういう任に立つようなことがあれば、猪瀬さん、舛添さんのケースはそれなりにきっちりと。

小池さんが確か調査委員会を設けるようなことをおっしゃってましたけど、そこまでわざとらしくやらなくても、きっちりと自分の立場で前任者のことをそれなりに調べて、私1人ではもちろんできないわけですから、そういう立場にある人たちの話を聞いて、どこに問題があったのかというのをちゃんと調査したうえで、先ほど申し上げたように、自分の税金の使い方はこれでいいのかということを問いかけながら仕事をして。

それがおそらく前任者等の混乱を引き起こしたことを是正する道になるのではないかと私は思ってます。

もし調べられても金銭上のトラブルは出てこない

司会者:あと1、2問ということで。

記者7:フジテレビ「とくダネ!」のアベと申します。よろしくお願いいたします。

今の鳥越さんの話にもありましたように、政治とお金、猪瀬さんも舛添さんもそれで辞職されましたけども、都知事になるとしたらば、鳥越さんご自身の身体検査というのも今、都民の方は敏感になっていると思います。そのあたりは鳥越さんは大丈夫でしょうか。

鳥越:私、借金は一銭もありません。すみません。今住んでいる家も、前住んでいる家を売却して買いました。誰からもお金もらってません。これからももらうつもりはありません。身体検査をされても、金銭上のトラブルが出てくるということは、私は予想もつきませんね。それでいいですか。

記者7:はい。あともう1つ、ごめんなさい、もう1つだけ。やはり都民の方が今一番思っているのはどんな方が都知事になってほしいかという人間性もみたいかなと思うんですが。鳥越さんご自身がどんな人間かどうかというのを、もし弱点もあれば、それも含めて教えてください。

鳥越:そんな難しいことここで聞くの!?(笑)。そんなのはね、2人になった時に聞くもんだね。

(会場笑)

鳥越:こんな公開の席上で言えるか(笑)。どんな人間か?

記者7:一言でも。

鳥越:こんな人間です。

記者7:こんな人間?

鳥越:こんな人間です。ちょっとアホな人間ですけどね。

記者7:弱点というのは?

鳥越:弱点はちょっとアホなところ。まあユーモアは忘れないようにしてるつもりです。だから、こういう記者会見もしかつめらしくやるつもりはありません。

できるだけ、みなさんに笑っていただいて、笑いのなかで進行したいなと思ってました。なかなかみなさん笑ってくれないので、「笑えよ!」という気持ちがあります。

そういうのが、サービス精神がちょっとありすぎるのが弱点かもしれませんね。それ以外は別に自分では。弱点ね……う~ん。

非常に好奇心が強いので、気が多いというか、あちこちにどんどん自分の目が移っていくというのはひょっとしたら弱点かもしれませんけれども、それは好奇心のなせる技なので、それは自分としては大事にしてるんですね。好奇心が強くありたいと思ってるので。

それを、しかし、逆に「弱点だな」と言われると、ちょっと困ってしまうんですけれども。まあ、それぐらいしかあんまり考えつかないですね。

記者7:ありがとうございます。

公共事業は抑えていく

司会者:それではもう一方、眼鏡の男性の方、お願いいたします。

記者8:フリーのヨコタハジメですけれども。東京が違う道を歩むことで、国政への反射効果が出ると思うんですが。例えば、五輪関係で道路などインフラ整備で公共事業のラッシュになってますけど、これにメスを入れるのか?

鳥越:ちょっと意味がよくわかりませんけど。聞こえないんです。発音をよくしてくれませんか?

記者8:東京都が違う道を歩むことで、国政への反射効果が出ると思うんですが。そういう意味で都政の重要課題4つほど聞きたいんですが。

1つは、五輪関係の公共事業をインフラ整備含めて削減するという意気込みがあるのかが1点と。あと横田基地へのオスプレイ受け入れについて反対したり、翁長知事と共闘して日米……。

鳥越:わかりました。

記者8:あと3点目が築地市場移転についてどうお考えになのか。4点目が原発ゼロを東京から発信する……。

鳥越:えっ、4つも聞くの!? 欲張りな(笑)。2つぐらいにしてよ。えーと、最初はなんだっけ?

司会者:公共事業です。

鳥越:これは私今わかりません。やってみたいとわからないですね。そういう任にあたってみないと。一般論として言えるのは、できるだけ公共事業は控えめに抑えていくというのは、これは当たり前のことです。

どんどん公共事業に使えた時代はもう終わりました。日本はもう高度成長期終わりました。緩やかな成長もしくマイナス成長の時代に入ってます。

これはもう逆立ちしても年率10パーセントの高度成長を誇った時代に戻ることはできませんので。その頃はバンバン公共事業をやって、借金作ってOKでしたけれども、今は借金が国全体で1,000兆円を超えてるわけですから。

国の今年の予算でも、国債の元利合計を予算から引くと25〜26兆円は引かなきゃいけないという時代ですから、それはもう当然のことです。

築地市場は検討しなければならない

2番目は……。

記者8:オスプレイの横田基地ですね。

鳥越:これオスプレイ、私は基本的に、アメリカで墜落事故が相次ぎましたから、危険な飛行物体だと思ってますので。横田基地というのは住宅の周りにある基地です。

僕は本当は、私はこの横田基地も、それから横田管制ですね、空の。横田管制というのはけっこう大変なことなんです。これは石原都知事がかつておっしゃったことですけれども。

日本の空は、横田のあるアメリカ空軍の管制の下にあるわけです。日本の国がアメリカによって、陸だけじゃなくて、空も占領されてる状態ですから、できれば横田管制もできるだけ日本に取り戻せるようにしたい。

そういうなかでオスプレイの問題もできれば、申し入れるかたちをして、できるだけ控えてもらうようにということになります。

それから3つ目は築地市場ですね。これは僕の友人がテレビ朝日の『モーニングショー』というところで、玉川(徹)君というんですが、今日は来てないと思いますけれども。

彼が一生懸命この問題を取り組んでまして。「鳥越さん、仲買人600業者のうち400業者が反対してます。なぜならば、豊洲のあの築地市場の行った先、コンクリートをちょっと浮かして打ってる。

これはもし地震があったりすると液状化で中から危険物質などが出てきたときに、それを予想してちょっとコンクリートを浮かして打ってるんじゃないか」というふうなことを言ってました。

そして600業者のうち400業者が反対してます、ということを、僕にそういう話を雑談のときにしたことがありますので。

それを思い出してみると、僕はこの問題についてはそんなに深く自分で研究してないので、これ以上のことは言えませんが、そういう話を聞くと必ずしも満点の万歳の移転ではないように思いますので、これはもう一度ちゃんと検討しなきゃいけないのかなとは思っています。

原発はできるだけ減らしていく

それで4つ目は……。

記者8:最後、東京電力の株主総会に出て、原発0を発信するなど……。

鳥越:これはちょっと非常に微妙な問題ですけども。基本的に私は再生可能自然エネルギーで電力はまかなうほうがいいと思っています。

先日ちょっと北欧の視察に行ってまいりました。これはなにを視察してきたかというと、北欧の電力事情はどうなのか。

もうコペンハーゲンとかヘルシンキとかそのへん、会場にダーンと本当にもう港から会場に本当に、すごい風力発電の風車が立ってるんですね。こうやってやっている国もある。

もちろんデンマークは、原発は確か1975年か1985年か、ちょっと年号忘れましたけれども、もう何十年か前に、原発はNOと。やめるということを言ってる国ですよね。

北欧の国ではそういう国があります。ドイツも原発をやめております。そういう国があるということを一応考慮にいれて、日本もできるだけ。

やはり福島第一原子力発電所の事故で、私たちは、とんでもないたいへんな災害を背負い込んだのであって。今でも背負い込んでる。今でも汚染水は解決してない。

安倍総理は五輪招致の大会で、汚染水の問題は「under control」だと言って世界中に嘘をつきました。あれ嘘ですよ。under controlとかじゃない。今でも汚染水をタンクに詰め込んでタンクをずっと並べてるじゃないですか。

そういうふうに、原子力発電の問題は、ひとたび災害が起きたら、私たち人間の手に負えないものであるということは私は思ってるので。

これはできればちょっとずつですね。まあ、いっぺんにすぐなくしてしまうということはなかなか難しいとは思います。廃炉の技術がそれだけないと思いますけれども。できるだけ減らしていく方向というのが、私自身の意見では、いいと思ってます。以上です。

記者8:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。たいへん申し訳ございませんが、質疑応答時間ここまでとさせていただきたいと存じます。

鳥越:どうもみなさん、今日はありがとうございました。