ファッションメディアに感じた可能性

小野裕史氏(以下、小野):まず、「スタートアップのはじめ方」というテーマなんですけれども。それぞれいろんな成長してるサービスをやってるわけなんですが。

なぜそのビジネス・サービスをしようと思ったか。根っこの部分、理由というところを、それぞれ聞いてみたいなと思います。

金山さんは、最初2人で独立したときというのはもう、「iQONというサービスをやるぞ!」という前提でスタートアップを始めたんですか?

金山裕樹氏(以下、金山):僕らはiQONというものをやるために、起業しましたね。前職は、ヤフーに3年間いたんですけども。

ヤフーで新しいサービスを4つぐらい立ち上げていくなかで、ファッションのインターネットメディアというのは、絶対に今後くるだろうと。それまでなかったので。

マーケットとしても、雑誌広告マーケットというのがあったので、そこがインターネットに移っていくときに、受け皿となるような媒体を作れば、これはサービスとして成り立つだろうと。というような、ビジネスとしての確信をもって起業しています。

ビジネスの基礎は、安く仕入れて高く売る

小野:ありがとうございます。金谷さんは営業からスタートというか、その前からサッカーやりながら自分で稼ぐと。チラシを作ったりだとか。それはもう、必要に迫られて、という感じなんですか?

金谷元気氏(以下、金谷):そうですね。チラシをやってたときは、アルバイトするのがなかなか難しかったんですね。

小野:時間の問題で?

金谷:練習とか、毎日やらないといけなくて。土日は試合なんですよ。そうすると、アルバイトはなかなかないんで、もう飛び込みで行ってたんですよ。「アルバイトないですか?」と、チームメイトの分も全部探しに。

飛び込みをしてるうちに、親に「それ、求人広告に載せたら儲かるんじゃない?」と言われて。やってみたら、そこそこ稼げて。起業とかではなかったです。

起業にまったく興味はなく、普通にやったら個人事業になっただけで。あと、生きていくためだけですので、いろいろやってますね。かさを売ったり(笑)。

小野:かさ!?

(会場笑)

金谷:ジュース売ったり。

小野:かさは、なにをどうやってどこから仕入れて?

金谷:梅雨の時期になって雨が急にふってくると、100円均一でかさを買って、それを1本300円でそのへんの人に売るという。

小野:さっきの重松さんの話と同じですね。安く仕入れて高く売る。ビジネスの基本ですね。

金谷:あと、花火大会だとクーラーボックスをコーナンで買って、氷入れて、サンガリアのジュース入れまくって。(1本)38円で買って、それを150円とかで売ると。

小野:付加価値をつけたわけですね、クーラーボックスに。

金谷:そうです。場所で付加価値がつく。それで2〜3万ぐらい1日で稼げるので。そんなことをやって生きてましたね。

社員の声から生まれた「akippa」

小野:そこから「akippa」という駐車場の貸し借りのサービスにいたる、その過程というのは、どういったものだったんですか?

金谷:会社作ってから5年間ぐらい……携帯電話売ったりしていると、すごいクレームが来るんですよ。考えられないぐらいに。

小野:「解約しろ!」だとか、「いらないオプションつけるんじゃねーよ!」とか。

金谷:そうです。でも、どうしようもないんですよ。ソフトバンクが決めてることなので(笑)。

(会場笑)

小野:ソフトバンクさんにやらされてるわけですね、孫(正義)さんに。

金谷:そういう仕組みになってるんで無理なんですけど、そういうクレームに嫌気がさして。自分たちがなんのために会社をやるのかというのを考えて、世のなかに必要不可欠なサービスを作りたいというのを決めて。

壁に、アルバイトも社員も全員で不便に思うことを書いたんですよ。女性社員が、「コインパーキングは、現地に行って満車になっているから不便」と書いてたんで。

「そういえば(そうだよね)。でも、月極とかだったら空いてるんじゃない?」みたいな話になって、akippaが始まったんですね。

そこからエンジニアを採用して作ったので。最初の半年ぐらいはエンジニアなしで、駐車場をただひたすら取っていったという感じです。

小野:社員のアイデアからスタートして?

金谷:社員の不便に思うことに対して。みんなで甲子園に行ってみたら、「あれ? 月極駐車場ある」みたいな感じで。イケると思いましたね。

Google時代に思い出した原体験

小野:ありがとうございます。佐々木さんは、スタートアップやったりだとか、いろんな経緯があるわけですけど。

とくに今のfreeeというのは、先ほどあった、前の会社で社員がデータをひたすら入力しているの、それはもうやめたほうがいいんじゃないかと。それがやっぱり、原体験なんですか?

佐々木大輔氏(以下、佐々木):それが原体験ですね。それのことはもう忘れてしまってたんですけど、ある日Googleでそこそこ……もうわりと仕事にも慣れてきて、すごく安定して儲かってる会社なので、「ああ、楽だな」と思うような瞬間があったんですね。

それで1回……僕のボスはオランダ人で、「1ヶ月ぐらい休みを取りなさい。ヨーロッパでは当たり前だ」と言うので、1ヶ月休みを取らなきゃいけなくて。

それで(休みを)取って、オーストラリアに行って、1人でゴルフスクールに入って1日中ゴルフやって、夜1人でなにもすることがないというのを1ヶ月やったんですね。

そうすると、夜いろいろ考えごとして。僕はこのまま世の中の役に立たず、消費ばかりしてていいのかと(笑)。

(会場笑)

小野:ひたすらゴルフばっかりして(笑)。

佐々木:そう考えるようになって、逆に、なにかもっと世の中に役に立つことができないかなと思ったんですよ。

そのときに僕は、今までやってきた中小企業向けのテクノロジーやってるの好きだし。それに対して、なにかできないかなと思って。

日本では、中小企業はなんかイメージ悪いし、「今でもFAX使ってる人でしょう?」みたいな感じがするじゃないですか? それをカッコよくしたいと思い始めたんですね。

そのときにふと、昔の経理の体験というのを思い出して。「そうだよな、会計ソフトがひどかったよね」と。

「今、どうなってるのかな?」と思って、検索してみたんですよ。そしたら、今でもクラウドの会計ソフトがほとんどないし、すごい使いづらい、古くさい。「こんなの使ってたら、気分もかっこ悪くなっちゃうよ!」みたいな、そういうものしかなかったんですよね。

それを調べてわかったときに、「これは誰かがやって、世のなかを前に進めないといけないんじゃないのか?」みたいな使命感が出てきて。

それで、まず自分でAmazonでプログラミングの本を買って。オーストラリアから帰って来てからプログラムを書き始めたというのが始まりです。

スペースマーケット立ち上げの経緯

小野:ありがとうございます。重松さんは2回スタートアップをやってるわけですけれども。今のスペースマーケットについてはどんな(経緯が)?

重松大輔氏(以下、重松):前職でIPOして、それなりの規模になると、ある意味、楽しても会社が回っていくみたいなフェーズになっていって。これはもう、いけないなと。

だんだん生ぬるくなっていくなという感覚がすごくあって。これ、たまたまなんですけど、うちの妻がVC、ベンチャー・キャピタルやってまして。

うちの奥さんが、「あんた、いいかげんに(真剣に)やらないと離婚する」みたいな、よくわからない話してきて(笑)。

小野:僕もよくご存知の、普通に会ってる奥さまですけど。

重松:それで、当時のフォトクリエイトの社長にも相談したら、「もうお前もそういうころだから、やったほうがいい。応援するから。半年ぐらいなにもやらなくてもいいよ」みたいな、そういう暖かいお言葉をいただいて。

そうすると、もう選択肢がやるしかなくなる。「今さら転職とかも言えないしな……」みたいな。もうやるしかなくなっちゃって、やることになりました。

じゃあ、ドメインどこにしようというのを、すごい考えたわけですね。やっぱり選んだのは、まず自分の今までの能力というか、得意分野が活きる分野。私は営業とかPRでしたので、それが活きる分野で。

あとはやっぱり、やってて楽しいというか、これをやるために俺は生きてたんだみたいな満足感が感じられる。

とくに私は、地方創生とか日本を元気にしたいなという思いがすごく(あった)。出張だといろんなところに行けるみのが、すごく好きだったんですね。そういうのができる分野。

それと、これから間違いなくくる、大きなビッグトレンドというのを探してました。1つ参考にしたのが……これけっこう参考になると思うんですけど、Y Combinatorとか500 Startupsが出資してるリストみたいのが、ネットに落ちてるんですよ。

それをくまなく見ていったら、どうやらシェアリング・エコノミーというのが熱いらしいと。

AirbnbとかUberとかのビジネス(を知ったとき)、「なんだ、これ?」みたいな。Airbnbで自分の部屋を他人に貸すみたいな、こんなビジネスが急成長してるみたいなのがあって。これと同じようなロジックで、なにかできないかなというのを考えて。

それで、前職のときに、結婚式の写真をネットで販売するというビジネスをしていて、結婚式場に営業で行ってたんで、「結婚式場、これ平日空いてるじゃん?」と思って。オフィスも土・日・祝日空いてるし。「これ、お金にできるわ」みたいなところから、スペースマーケットのビジネスモデルを考えて。

「海外に似たようなビジネスモデルあるかな?」と思って(調べたら)、アメリカで似たようなことやってる連中がいて、それなりに成長してたんですね。

「じゃあ、これイケるな」と思って、名前もスペースマーケットとつけて、立ち上げたという感じですね。

世の中の“不便”に対する使命感

小野:ありがとうございます。共通して感じたのは……一番わかりやすく言うと、金谷さんみたいに食うために、お金を儲けるというところからスタートして。でも、結果的にそれだけではない。

例えば、ソフトバンク(のサービス)でいってても、ある程度お金が儲けられたと思うんですけれども、それ以外のものを見つけて。「これを提供したら、世の中に価値が生まれるんじゃないか?」と。そこが原体験になってきて、今のサービスになってくるわけですよね。

金谷:そうですね。まさしく、社会がよくなるというところじゃないと、コミットし続けられないと言いますか。ソフトバンクの携帯、30年売り続けたくないなと思いまして。

小野:ほかに売ってる人もいますしね。

金谷:そうです。いくらでもいますので。そのとき1万人ぐらいが同時に売ってたので、なんの意味もないと言いますか。

小野:金山さんもそうですよね。雑誌が廃れていくなかで、みんなが当たり前に読んでるファッションのコンテンツが、インターネットや携帯の世界にないじゃないかと。

金山:これはやばいと思いましたね。インターネットに接する時間というのは、どんどん伸びていく時代だったんですね。今も伸びてると思いますけど。

ただ、そのなかにあるのはニュースとか、ゲームとか、動画とかばっかりなんですよ。そこにファッションの情報がない。誰もそれをやらなかったとしたら、女の子がどんどんオシャレじゃなくなっちゃう。

小野:かっこいいですね〜(笑)。

金山:「こんな未来を自分は生きたくない!」と本気で思ったんですよね。

重松:かっこいいな〜。

金山:やっぱりこれはもう、ある意味みなさんと一緒で、使命感みたいなものがそこでビビッときて。

佐々木さんと一緒で、「誰かがやるんだったら、じゃあ俺がやるわ」となるものが、たまたま見つかったんだと思います。それは探さなきゃ見つからないと思いますね、どんなことであれ。

小野:佐々木さんの場合であれば、過去の原体験というのがあったわけですよね。前の会社や中小(企業)にあんまりかっこよくない状況があったり。実家は中小(企業だった)?

佐々木:うちは、実家が美容院だったので。振り返ってみれば、月末になると家族みんなで会計帳簿つけて、みんなの給料計算をやらないといけないというのを見てましたね。

小野:それをなんとか変えたい、かっこよくしたいという思いが大きかったから、スタートアップという。

佐々木:そうですね。

小野:重松さんは、どちらかというと、起業ありきということだったわけですけれども。でも結果、原体験として、やっぱり営業やっていて結婚式場だとか見ていて、課題があったから「それは、もったいないんじゃないか?」とか「助けられるんじゃないか?」というところでやってるんですよね。

重松:そうですね。だから、前職の体験がイベント写真のビジネスでもあったので。イベントするときは、必ず会場が必要になるんですけど、会場がなくてイベントがつぶれるというケースがけっこうあったんですね。「すごいいろんな機会ロスしてるな」みたいな。

でも、よくよく考えてみると、会場探しはすごい大変だなと。私よく、合コンとかの幹事やってたので。

幹事大変じゃないですか? あれで、めんどくさいと(イベントが)なくなっちゃうのは、すごいもったいないと思って。そこのチョイスをもっと増やせるビジネスだなと思って、ワクワクしたという感じですね。