パラダイムシフトが起きるたびに体を変えてきた

ということで一歩振り返ってみなさん見ていただきたいんですけれども、ソフトバンクの強みってなんなんだろう、ということです。

まだまだ小さな会社ですよ、まだまだちっぽけなレベルの会社ですが、ソフトバンクの強みというのは実はテクノロジーの進化を、ちょっとだけ早く理解し、においを嗅いで、そこに恐れずに突入していくと。そして資金調達を含めていろんな投資に対するリターン、こういうファイナンスについてもそれなりの強い関心と実績も出てきたと。

この両方を持っている会社というのは、我々IT業界にはなかなかないんですよね。技術に強い会社はあります。あるいはファイナンスに強い会社もあります。でもこの両方を同じくらい情熱をもって、同じくらいこだわって、これを掛け合わせていこうという会社はなかなかないんですね。

我々はそういう会社でありたいと思ってますし、これからもそうありたいと思っています。

ということで我々の事業領域というのは、IT業界のパラダイムシフトですね。

だいたい5年か10年か1度ですね、我々の業界には大きなパラダイムシフトがあります。階段の大きなステップが毎日あるというよりは、5年か10年に1回、大きなパラダイムシフトがあります。

パソコンの生まれた年にソフトバンクは生まれたわけです。そしてソフトの卸売業というところから始めたんですが、もしその領域だけをやっていたら今のソフトバンクはないですね。

これがインターネットが始まるという時に、パソコンの入口でソフトバンクは生まれて、インターネットの入口でソフトバンクは生まれ変わって、それがブロードバンドになる時にもう一度会社の社運をかけて、全借金を背負って、持ってる資産を片っ端から売っ払いながら、現金化できるものはすべて現金化して、社運をかけてブロードバンドに取り組みました。

また、モバイルインターネットが始まるときには、これまた「これからはモバイルだ」ということで、もう1回でき得る借金すべてをして、無理に無理を重ねて、ボーダフォン・ジャパンを買収して取り組みました。

このようにパラダイムシフトが起きるたびに、我々は、社運をかけて、出世魚のように体を変えてきました。

人類史上最大のパラダイムシフトが起きる

じゃあ「これからソフトバンクはどこに向かうのか」ということですが、私は人類史上最大のパラダイムシフトが起きると思っております。

このIT業界、情報革命というのは、成熟期ではなくて、今まだ揺籃(ようらん)期であると、私はそう認識しています。ここから本番が始まると。ここから人類史上最大のパラダイムシフトが起きると。私は信じています。

そのパラダイムシフトとはなんなのかということですが、みなさん、「シンギュラリティ」という言葉をご存知でしょうか。ちょっと聞いてみたいと思います。シンギュラリティという言葉の意味を知っている方、手を挙げていただけますでしょうか。

(会場を見渡す)

3パーセントくらい手を挙げられました。97パーセントの方は、聞いたこともない・意味がわからないということだと思います。

流石ソフトバンクの株主総会で、3パーセント「も」手が挙がったと。ふつう同じ質問をすると、だいたい1パーセント未満です。錚々たる経営者の人たちが集まった場所で聞いて、1パーセント未満です。

2・3週間前、Yhooo!JAPANの全社員が集まったときは、5パーセントくらいでした。日本NO.1のインターネットカンパニーのYahoo!JAPANに聞いて、5パーセントくらいの手が挙がったと。

今ここの会場では、3パーセントの手が挙がったということは、相当なレベルです、株主のみなさん! 流石ソフトバンクの株主だと思います。

そのぐらいこのシンギュラリティという言葉の意味がまだ普及していません。知られていません。

このシンギュラリティという言葉の意味が、今から10年20年30年と経つと、もう全地球上の人類の腹に、ズシーンとこたえるようになります。

人類史上最大のテーマになると思います。かなりもったいぶってますが(笑)。

ちょっとビデオを2・3分作っておりますので、見ていただきたいと思います。

コンピュータがついに我々の知能を越える日がやってくる

(ビデオ開始)

ナレーター:人類は、2つの革命によって飛躍的な発展を遂げてきた。農業革命。産業革命。そして今、人類は第三の革命、情報革命の真っただ中にいる。

1チップあたりのトランジスタの数は、2018年に人の脳細胞の数を超え、30年以内にその数は100万倍に達するだろう。

そして、人工知能が人類の知能を超える特異点がやってくる。それを、「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼ぶ。

人工知能の前では、一般人だろうと、ダ・ヴィンチだろうと、一人ひとりのIQの差は、誤差に過ぎない。

ロボットの数は、地球上の全人口を上回り、IoTの爆発的な普及で、人は、1,000を超えたデバイスに囲まれた生活を送る。

シンギュラリティを迎え、人類は初めて、人類を超える超知性と出会う。

この超知性は、世界をどう変えるのか。人類を進化に導くのか。それとも、破滅をもたらすのか。その答えは……。

(ビデオ終了)

:シンギュラリティ、つまり人工知能です。我々人類が生み出した、このコンピューターが、ついに我々の人類の知能を超えると。知識のレベルではすでに我々をもう超えてきております。

なにか知らないことがあったときに、ヤフーやグーグルで検索すると、ほとんど見つからないものがないというくらい、知識については、もうすでにインターネットが人類を超え始めています。

一言検索すればもう出てくるということで、一人ひとりの人間よりははるかに、インターネットに聞いたほうが知識については答えが出るという状況になってます。

しかし、知識だけでなくて、ついに知恵の部分でも、人類をはるかに超える時期がもう目の前に来ているんです。

すでにコンピューターの人工知能が、プロの将棋の棋士に勝つと。チェスは、もう何年も前にコンピュータに負けました。ついに囲碁でも、Googleの「アルファ碁」が、人類の囲碁のチャンピオンを圧倒的に打ち破りました。

つまり、単なる囲碁とか将棋だけではなく、我々人類の知識だけじゃなくて知恵の部分も、人工知能が超えていくということが、この21世紀にやってくるわけです。

地球上の約40億年の生命体の歴史のなかで、この世紀、おそらく30年~40年以内に、さまざまな知恵のテーマの部分で、例えばお医者さんだとか、弁護士だとか、設計士だとか、そういう部分においても、知恵の部分でコンピューターの人工知能が人間を超えていくという時代がやってくる。

コンピュータが人間を越えるのは2018年になる

もう天気予報なんか、昔は漁師さんに聞いたほうが、「時化がいつ来るか」というのがわかるという状況でしたけど、今やその漁師さんも天気予報を聞いて漁に出かけているわけです。

いろんなことを予測する、考えるということにおいて、コンピューターはいろんな分野で、すでに(人類を)抜きつつありますが、考えられるさまざまな部分で、人工知能が抜いていくと。抜くだけじゃなくて、圧倒的に抜いていくという日がやってくる。

我々人類が、お互いの知恵の部分を比較するときに「IQ」というものさしがあります。

平均が100になっているわけですけども、ガリレオ・ガリレイ、ダ・ヴィンチ、アインシュタインだとか、天才と言われている人たちのIQは、140からせいぜい200あるかどうかというレベルです。

100対140。100対200。それらは所詮、人類同士の誤差だ。

人工知能は100対140とかじゃなくて、100対10,000というレベルになる。

100対10,000ですよ、みなさん。もう嫌になるぐらい、さまざまなテーマで彼らのほうが賢いという時代が来ます。

それで、脳細胞というのは、ニューロンがくっつく離れる、で2進法でものを記憶したり計算したりするわけですけども、コンピューターのチップもトランジスタでくっつく離れる、電流が流れる流れない、2進法という原理原則で行われるわけです。

僕20年ぐらい前に予測したんですけども、このトランジスタの数が人間の脳細胞を超える日が、2018年になると。それで4、5年前に再度計算したらやっぱり2018年だ、ということで……2018年、それが早い遅い誤差として、5年10年は誤差ですよ。

コンピュータが地球上を覆い、森羅万象を予測していく

問題はですね、これが1年半ごとに倍になってるんですね、ということは今から30年で、人類の脳細胞を1チップのコンピューターが100万倍になるということなんですね。

100万倍になる、めちゃくちゃに賢い。そうすると、人間が今までコンピューターにプログラミングしていたわけですけれども、我々は、人間の脳が、知恵が発達していくときにプログラムしないですね。勝手に学習していくんです。

今までコンピュータのチップは、チップのハードウェアの能力が低いから人間がプログラムしていたんです。

でもこれが人間の脳細胞を100万倍上回るくらいのハードウェアの能力になったら、もう人間はプログラムしなくていいと。勝手に彼らが学習していくと。勝手に彼らがディープラーニングしていくと。そんな時が来るわけです。

その超知性が、ロボットに入って、これらが超スマートロボット、超知能を持ったコンピュータがモーターを持って動くようになって、自らの知恵で、自らの意志で動いていくと。こういう時代が来ます。

しかもこの数が、今から30年後の私の予想では、人類の数を超えると。これは大きいもの、小さいもの、空飛ぶもの、水中潜るものといろんな形のロボットが、生まれます。これらのロボットは、人間の数を超えると。さらにロボットだけではなくて、あらゆるものがコンピューター、パソコン、iPhoneのようなスマホとかタブレット、ありとあらゆる家電製品、自動車、身の回りのもの、洋服、メガネ、運動シューズ、すべてのものがインターネットにつながると。

今1人あたり2台つながっていますけれども、これが1人当たり1,000個つながるという時代が来ると。

つまり地球上に約10兆個のものが氾濫して、これらが全部地球上を覆ったセンサーとして、森羅万象を予測する。これがビッグデータになっていくという時代が来ます。

その時代が来ると、キーワードは3つです。人口知能の「AI」、そしてその人工知能を持った「スマートロボット」、ありとあらゆるものがこの人工知能にデータをフィードインしていくと。「Internet of Thing」ですね。

この3つのキーワード、この3つの事業領域が、これまで人類史上体験したことのないようなパラダイムシフトを迎え入れるということなんですね。

このパラダイムシフトが、我々人類にとって、我々よりも1,000万倍ぐらい、100万倍ぐらい賢いものが生まれてくると。

「新30年ビジョン」とは

「それは人間にとっていいことなのか?」ということですけれども。私はいいことだと思ってるほうの人間なんですね。

なぜかというと、我々人類は我々よりも賢いスマートロボットとこの地球上に共存すると。一緒に繁栄していくと。彼らと戦うのではなくて、彼らを拒絶するのではなくて。彼らと一緒に住んでいくと。

言葉の壁のない世界がやってきます。未来を予測することができる世界がやってきます。交通事故のない世界がやってきます。ありとあらゆる災害に未然に我々が対処できる世界がやってきます。

原発事故なんかも、あるいは地震なんかもいろんな意味で予測し、止めることができるような時代がやってくるでしょう。

我々人類の平均寿命は、少なくとも今日から300年以内には、我々の平均寿命が200歳になる時代がやってくるでしょう。300年以内にですね。

ということで、我々は、この地球上に我々人類とこの超知性が一緒に共存し、より豊かな、より幸せな時代がやってくると。

僕はそのことのために生まれたと。そのことに人生を捧げたいと思ってます。そういう意味では、真の情報革命は今まだ始まったばかりだと思ってます。志高く残りの人生を過ごしたいと思ってます。情報革命で人々を幸せにするためにということであります。

我々、ちょうど5年ぐらい前に、「新30年ビジョン」というものを作りました。もう既に株主のみなさんには何度も見ていただいてると思いますけれども。

いま私が申し上げた、このシンギュラリティという言葉、この意味を理解したうえで、もう1回このビデオをあらためて観ていただきたいと思います。5年前に作ったビデオです。今もそのままです。ビデオをお願いします。

(映像が流れる)

どうですか? このビデオ、今見ても1ヵ所も編集して作り直すべきと思うところはまだ見当たらないんですよね。

そのくらい一生懸命、我々考えぬいて、思いを1つの表現にしたんですけれども。理念・ビジョンは変わらないと思います。

このことの実現のために、人類同士が戦争してる場合じゃないと。人類を遥かに超える超知性が生まれてくると。

このシンギュラリティの時代を迎え入れて、我々人類は本当に力を合わせて、より幸せな社会を迎えるために努力しなきゃいけないと思ってます。