新卒入社の同期はヌルかった

麻野耕司氏(以下、麻野):でも、3人とも一緒に仕事してますけど、こういう場では大きなビジョンを語りますけど、それぞれめちゃめちゃ細かいですもんね。だから、そういう土台があってのことなんですね。安部さんどうでしたか?

安部泰洋氏(以下、安部):そうですね。僕は正直、新卒で入社したという印象じゃないんですよ。さっき話したとおり、僕は大学2年のときからもう死ぬほど働いてたので。

朝8時に起きて、9時にはもう(出社していた)。大学は一応卒業してますけど、たぶん4年間で行ったのは60日ぐらいなんですね。ほとんど大学に行ってなくて、仕事しかしてなかった。

朝8時に起きて、9時に出社して、21時まで働いて。だいたい毎日21時半ぐらいから渋谷で合コンするわけですね。

それで24時まわって、「ああ、今日はプリズンブレイクされた」と。プリズンブレイクって、終電で帰られることなんですけど。プリズンブレイクされたら、そこからキャバクラに行って朝まで遊んで。3時間寝て、また仕事をするみたいな。

というのをずっと繰り返していたので、仕事のタフネスさみたいなところに関しては、逆にいうと「ヌルいな」と思ってましたね。同期に関しても、僕は正直言ってライバル意識とか持ったことないです。

すげぇ頭よく聞こえるかもしれないですけど、入社して1ヶ月目から6ヶ月まで全社の売上を個人で更新し続けてきたので、「同期がなんとか」というのは一切なかった。

どちらかというと、「なんかすげえヌルくやってるな」って。「なんでそれでサラリーがもらえるの、こいつらは?」というぐらいの感じで。

自分はフルコミッションでやってたので、「やらないと金が入ってこない」という世界で、3年間飯を食ってたので。「ぜんぜんやる気ないし、土日も遊んでるし、でも18時に帰ってるし。なのに、なんでこいつは給料もらえるんだろう?」ぐらいの感じで思ってました。

そういった意味でいうと、僕は同期がすごい熱くて、「俺たちでやっていこうぜ!」みたいなのは正直ぜんぜんなかったなと思いますね。

リンクアンドモチベーションで学んだこと

一方で、すごく感謝してるのは、本当に良くも悪くも若手にいろいろと丸投げしてくれる会社だったので、手が震える感じというのは1社目で経験できてよかったなと。

僕は2年目で事業責任者執行役員になったんですけど、120人ぐらいの組織で、一番でかい組織の責任者をやれって言われて。もう本当に右も左も分からない状況のなかで。でも、それを任されたことによって今があるということもあります。

本当に泥臭い会社だったので、1社目ですごく足腰を(鍛えられました)。さっきの塩ちゃんの話じゃないですけど、本当に皿洗いをやることの重要性というのは、1社目ですごく経験させてもらえたかな。

2社目のリンクアンドモチベーションは、1社目で下半身の筋肉を鍛えさせてもらったというのであれば、2社目は上半身の筋肉をすごく鍛えさせてくれた会社でした。

足腰をしっかり鍛えさせてもらって、上半身の筋肉も鍛えさせてもらって。ハイブリッドな筋力をこの2社で鍛えさせてもらったかなって。

リンクですごく学んだのは、実は1社目の会社も2000年設立で、リンクアンドモチベーションも2000年設立なんですね。

言っても(会社の)上流・下流はあれども、同じ組織ビジネス領域のなかで、僕がリンクに入社した2008年のときの売上が1社目の会社は20億。2社目の会社は、リンクアンドモチベーションが80人で80億だったんですよ。

「この4倍の差ってなにかな?」って僕なりにすごく研究をして。やってる事業も多少違えども同じ領域であると。同じ設立年であると。

というなかで、「なんでこんな4倍の差がつくんだ?」と考えたときに、一番大きな差が採用だったんですね。採用で採ってる人材のレベルが違うと。

いま僕はリンクアンドモチベーションかもしれませんが、当時は本当に僕たちが落ちるような会社なので。

麻野:それが言いたかっただけでしょう?(笑)。

(会場笑)

ビジネスモデルは真似できても、組織は真似できない

安部:そう。とんでもない優秀な人間を採用してるなと。というわけで、でも本当に1社目と比べると、組織とか採用にかける思いも、当然お金のかけ方だったりとか、社内のリソースのかけ方だったりとか、セールスの設計の仕方、もうすべてにおいて雲泥の差だったんですよ。

やっぱり、事業が人を作るんじゃなくて、人が事業を作っていくと。そう考えたときに、「採用や組織ってめちゃくちゃ重要なんだな」ということを一番学ばさせてくれた会社さんです。

なので、2010年に会社を創りましたが、2010年からもうすぐ新卒採用をやった。会社で出た利益を全部採用とか組織にぶちこんでもいいから、これが10年後20年後、絶対に差別化になっていくと。

だって、いま世の中的にテクノロジーがこんだけ進化してくると、結局のところ、競合優位性なんてもうないんですよ。

よく学生とかから「競合との優位性はなんですか?」とか「ビジネスモデルの差別化どう図るんですか?」って聞かれますけど、はっきり言って、そんなもんないです。

だって、楽天がやってるECのモデルなんて、真似しようと思ったら、みなさんすぐ真似できます。マッキンゼーがやってるビジネスモデルなんて、2000年前から中国で占い師がそのままやってたモデルなので。そういった意味でいうと、誰でも真似できる。

そう考えたときに、はっきり言ってビジネスモデルにおける競合優位性はないわけですよ。でも、唯一真似できない、人の会社が真似できないものはなにかというと、それは組織ですよね。

リクルートやサイバーエージェントはいい組織だってどこでも言われてるんですよ。「リクルートってすばらしい組織だよね。あの組織作った江副(浩正)さんすごい」って言われてますけど、真似できてる会社はすごい少ないです。わかってない。

競合との優位性をどこで図る? これは組織でしかない。これは参入障壁が圧倒的に高い、他社に真似できないものなんだというのはリンクアンドモチベーションで学んで。

それは今、フロムスクラッチでもすごく一番優先順位が高いものとして注力してるということを、学ばさせてもらって。結果的にリンクに入社してよかったかなって思ってます。

麻野:でもそうですね。たぶんサイバーエージェントもDeNAもリンクアンドモチベーションも共通してるところは、採用に力を入れてる会社で。たぶんみなさんの同期はかなり優秀だったはずです。

みなさんに聞くと、この3人も学生時代にかなりいろんなことやってるじゃないですか。この3人が「おっ」って思うぐらいの同期がいたというのは、3人にとってすごくよかったんじゃないかなというのは感じますね。

そろそろこのパネルディスカッションもエンディングに向かっていくんですが、みなさんへのメッセージをまとめてお願いします。

人生の約3万日をどう生きるか

坂本幸蔵氏(以下、坂本):1つはやっぱり、今日みなさんにずっと言い続けてるのが、「できないことはない」「できない人はいない」というところ、なんでそれにたどり着いたのかみたいなところをちょっとみなさんにお話しさせていただきたいなと思っていて。

みなさん、自分の人生、生きられる日数の日にちを計算したことあります? 365(日)をだいたい平均寿命の82〜83歳でかけると、29,000(日)ぐらいになるんですね。

約3万(日)だとしましょう。僕は今33歳です。目の前にろうそくが3万本並んでいて、もう1万本消えてるんですよ。というか、今日また1本消えてるんです。みなさんも一緒ですよ。1本消すんです。今日、「後悔なかった」って本気で言える人どんだけいますか?

さっきの塩ちゃんの話もそうなんですけど、人間って無限に生きられると思ってるから一生懸命やらなかったり、頑張れないというのがあるのかなと思っていて。やっぱり僕は生きてきた意味が絶対になにかしらあると思うんですね。

その意味を最大化したり、充実したものにするのってたぶん1日1日を大事に生きたからだと思っていて。国を変えて、シリアとかに行ったら、本当に死んじゃうような世界観じゃないですか。

なんかあまりにも平和ボケしすぎて、自分自身が生きた証であったりとか、誇りを持たずに死んでいくのってもったいないなと思ってます。

今のみなさんの時期ってものすごく大事な時期だと思うんですね。人生の岐路だと思っています。僕たちも、その人生の岐路みたいなところをしっかり考えて、もちろん今も考えてますし、毎日毎日考えてるつもりでいます。

それを少しでも気づいてくれた人たちから、一生懸命やってもらえれば、たぶんこうなると思っていて。

さっき言ったように、他人の物差しの上で生きるという尺度がなくなって、さっき安部ちゃんも言ってましたけど、戦後の日本のように、「もっと俺らこうしようぜ」とか「もっとワクワクすることをやろうぜ」という人たちが増えれば、この日本という国自体ももっとよくなると思ってますし。ひいては世界的にも影響力のあるものを作れると思っています。

僕らの世代でやりましょうよ。なにか過去の、孫(正義)さんとか三木谷(浩史)さんとか藤田(晋)さんとか、40歳以上の人たち、ものすごいいろんなものを作ってくれてますけど。30代、20代、もっというと10代、僕らがたぶん作っていかなきゃいけないと思っていて。

僕はそれを、せっかく朝早くから起きて来てもらってる学生のみなさんたちに伝えたいなと思ってます。もし重なりがあるんだったら、一緒になにかを作っていけたらなと思ってます。なので、ぜひ僕らで作っていきたいということを伝えたいと思ってますし、3万日一生懸命みんなで生きていけたらなと思ってます。

麻野:ありがとうございます。めっちゃいい話ですね(笑)。

坂本:すいません。なんかシーンってなって。

安部:でも俺、その話40回ぐらい聞いてる(笑)。

坂本:40本消えてますよ(笑)。

安部:2人で呑みに行くと、こういう話をする。

大好きな『ONE PIECE』『FF10』の金言

麻野:いい話です。ありがとうございました。じゃあ、塩田さん。

塩田元規氏(以下、塩田):そうですね。僕がやりたいことはさっきの「感情を報酬に発展する社会をつくる」ということと、それを世界的に広げていく旅を最高のメンバーとやりたいという感じです。

僕は『ONE PIECE』が大好きなので、基本的にはそれがラフテルだと思ってるんですよね。

そこの毎日の旅をワクワクしながら挑戦し続けるということがやりたいと。まあ、やっぱルフィーですということです。塩田・ルフィー・元規という。もしくは塩田・D・元規という。Dのあれが入ってるかも。冗談ですけど(笑)。

メッセージとして言いたいことは、坂本さんの話も人生は終わりがあるという話、僕も本当にそう思ってますけど、一人ひとり自分の人生を生きろということです。自分の人生の物語を生きてくれということで。

僕は、FF10が大好きなんですけど(笑)。アーロンというのがティーダに言うわけですよ。「これはお前の物語だ」ということですと。知ってる人は知ってると思うんだけど。

なにが言いたいかというと、「人生の主役は自分である」と生きればいいと。不満とかいろんなことを言ってもいいけど、それは自分の人生が泣いてるぞということです。

誰に頼るのでもなく、自分がこの人生の物語の主人公であると。もちろん、どんな主人公でもいいと思います。けど、それを忘れずに、死ぬときに後悔なきように毎日をすごしてください。以上です。

麻野:ありがとうございます。では安部さん、ひと言で。

日本人は「安定志向」の捉え方を間違えている

安部:頑張れ。

(会場笑)

安部:まあ会社の話とかは興味があったら、ブース出してるので、人事に聞いてくださいという話ですね。

メッセージ的な話をするとすれば、僕は正直、日本の学生はあんまり好きじゃないです。視野がすごく低いですね。

仕事柄シンガポールとかアジアの学生とかアメリカの学生とかイスラエルの学生とも話すことがありますが、はっきり言って日本の学生とぜんぜん違います。

よく日本の学生って安定志向って言われますよね。僕は「安定志向ってなにが悪いんだ?」って思うんですよ。

たぶんこのなかでいうと、一番僕が安定志向かもしれない。ただ、安定志向の「安定」の捉え方を日本の学生は間違ってるという話です。

「公務員になる、大手企業に入る、名の知れた会社に入ることが安定だ」という捉え方が間違ってるんじゃないの。

人間はマズローさんが言ってるとおり、生存の欲求が一番ベースということは、安定したいんですよ。当たり前ですけど。僕も安定したいです。安定した生活を歩みたい。

ただ、安定するためには、自分自身に力をつけないといけないとか。これがいうところの「安定」なわけじゃないですか。であれば、安定志向大いにけっこう。ぜんぜん安定志向。ただ、安定志向であるのであれば、選ぶ道を間違えるなって話です。

世の中すごく変わってきてると。みなさんが「やっぱり外資のコンサルがいいよね」「やっぱり金融がいいよね」って言ってるなかで、そんな仕事10年後なくなってますよ。

こんなの世界でいったら、「SpaceX」やってるイーロン・マスクであったり、スティーブ・ジョブズもそう、ビル・ゲイツもそう。彼らがなにを見てるのかと。テクノロジーが進化していくなかで、情報の非対称がなくなっていくと。

というなかにおいて、なぜか日本の学生だけはものすごい見てる視点が低いし、狭いというなかで、10年後日本は勝てるわけないですよね。

というなかで、僕たちベンチャー企業の社長の役割がなにかというと、みなさん優秀な学生を採用することよりも、みなさん学生の視座を上げることだと思ってます。

なので、見てる世界をもっと時間軸を伸ばして、空間軸を高く持って、自分たちがどの視点で。「あいつ優秀だよね」ではなくて。

「そんなやつ中国にはゴロゴロいるんだ」と。「このアイデアすごくいいんじゃないかな」「でも、シリコンバレーでそれはすでに焼き直しされまくってるアイデアかもしれない」と。

そう考えたときに、「イーロン・マスクが今なにを考えてるんだ?」というのを、本気で考えられる学生がもっと日本に多くてもいいんじゃないのかな。

そのメッセージを広げるために我々はこういう場に登壇してるというのもあると思うので、そういう思いを持ちながら、今日僕はローソクの火を消せればなと思います。

麻野:ありがとうございます。3人から最後にすごくいいメッセージもらえたと思います。今日のテーマはベンチャー就職ということだったんですけど、やっぱり大手企業に就職するとかベンチャー企業に就職するとかいうことが大切なわけではないと思います。

やっぱり自分で切り開く生き方ができるかどうかが大切ですね。そして、塩田さんのさっきの話、自分の物語を自分で作るという生き方が大切ですよね。

そのうえで、「じゃあどこに就職するの?」というのが大事です。そのときにベンチャー企業というのはいい環境があるかもしれませんよ、という話だったのかなと思ってます。

そういう生き方をする日本の若者が増えたらいいなと思いますし、その背中を見せられるように、この世代の経営者が頑張ってくれたらなと思ってます。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)