トイレの流れ方に影響するコリオリの力
ハンク・グリーン氏:こんにちは、オーストラリア人のみなさま。北半球に行ったことはありますか? 北半球ではトイレが流れるときの渦の回転が逆であることに気が付きましたか? ないですか? それは“コリオリの力”と関係があるかもしれないということは聞いたことがありますか?「IDTIMWYTIM」(私はあなたと理解が違う、の英文単語の頭文字を並べたもの)へ、ようこそ。
あなたはわざわざ「自分の家のトイレの流れ方はどうか」なんて考えることはないかもしれませんが、なぜか、「北半球と南半球ではトイレの流れる方向が逆である」という話は、私たちの関心を集めています。
この現象が起きる原因は、コリオリの力と呼ばれる影響によるものではないかとされています。それは地球が継続的に東方向に自転しているがゆえに生じる力のことです。その力は、私たちが動いている物体の軌道をどう見るかに影響を与えます。
地球の直径、赤道の長さは40,076キロメートルで、対照的に地球の極は0キロメートルです。ですから、赤道直下の大陸は地球のどこよりも早く動いているのです。
赤道は時速1,638キロメートルで回転していますが、対照的に北緯60度の場所の速度はその半分になります。地球の両極に至ってはほぼ静止状態です。
赤道から南極にボールを投げると左に曲がる
そうです、「コリオリの力」は、19世紀の数学者、ギュスターヴ・コリオリからつけられた名前です。実際この力は本当に、東回りの自転を続ける地球上を動く物体に影響を与えています。あなたが赤道直下から、友人の立っている北極にボールを投げるとしましょう。するとあなたの投げたボールは右方向に曲がっていきます。なぜならそれは起点で生じた運動量を保持するからです。
反対に、もしあなたが赤道から南極に向かってボールを投げたなら、それは左方向に曲がっていくのです。これも同じ理由からです。
コリオリの力は本当の現象ですが、実際に地球の両半球で流れる水の渦の回転も影響を受けるのでしょうか?
私たちの惑星は24時間ごとに1回転していますが、そのことは、5秒で流れる私たちのトイレに影響を与えるものではありません。
トイレの水はトイレの形によって左右される
基本的に排水される水の流れる方向は、シンクやトイレなどの形によって左右されるのです。しかし、コリオリの力はさらに大きな流動体に対して影響を与えます。例えば地衡風や海流はその回転によりハリケーンが起こることがあります。
もし地球が地軸に沿って回転しなかったとすれば、あまりうれしくない現象が生じるでしょう。例えば風は、西にも東にも吹くことがなくなります。気圧の高い極から圧の低い赤道に対して風が吹くだけです。
しかし、コリオリの力によりこれらの風は北半球では右向きに、南半球では左向きに偏向されるため、北半球では時計回り、南半球では逆時計回りの気象システムが生まれるのです。
コリオリの力はとても大きなスケールに作用するため、全体の気象パターンに影響を与えますが、あなたの小さなトイレのなかに影響を与えることはないのです。コリオリの力は天気に影響を与えます、トイレには与えません。わかりましたか?