都心の都バス24時間よりも、高齢者の移動手段の確保が優先

瀬口:ありがとうございました。先ほど、渋谷駅の2階建な話や五輪に向けて自転車の話などありました。あと、地下鉄の話を伺いたいんですけれども、都営地下鉄と営団地下鉄の一体化を猪瀬(前知事)さんが、一生懸命やったんですけれども、その後舛添さんの取り組みとしては、これについて力を入れていくことはあるんでしょうか?

舛添:これも優先課題ではありません。乗ってる人の便利が良ければいいんで、皆さんがたが、ここから羽田に行く、どこかに行くのに鉄道路線やバス路線を全部見て、どのルートが1番便利がいいかな? 今、PASMO(パスモ)とかSuicaとかカード1枚で行けますから、1番便利なところでやっていけばいい。

なかなか時間がないからお話できませんけれども、東京メトロと都営地下鉄、それぞれいろんな問題を抱えている。いっしょにすれば全部片付くか? そんな話ではないんで、2つの路線を遮っている壁を……壁というのは、物理的にコンクリートの壁を壊すことで、そう交通体系が変わるんだったら、そんな楽なことはない。そんなレベルの話ではないだろうと。

つまり、日本人というのは、全体のグランドデザインが欠けているから、これを持ってこないといけない。グランドデザインがあった人というのは後藤新平(東京市第7代市長)ですよ。大震災のあとに、昭和通りとか、あんな大きな通りを作っちゃったわけですから。ああいうグランドデザインって、オスマン男爵っていうパリのまちづくりをやった人を真似てやったんですけれど、そういうグランドデザインが(今の東京には)なんにもない。

みなさん郵便番号見てください。自分の郵便番号を。これって何かと連動してますか? フランスで75と言ったら、パリだってことそれでわかる。車のナンバーが75で、電話の番号が75で、なんでも75。どうせ決めるんだったら、省庁の縄張りじゃなくて、千代田区は何番って決めて、あらゆるものがそれになればいい。そこに住んでる人たち、健康保険証の番号まで全部これになれば、こんな便利ないいことはない。

そうするとね。今度世田谷ナンバー作る、富士山ナンバー、湘南ナンバーって言うけれど、あんなの漢字が読めない人がいっぱい来た時に(わからない。)車のナンバーなんてわかんなくてもいいけども、(もし)数字でバーと見て、1番って書いてあったら東京の車だってわかる。日本語がわからなくてもわかるんですよ。そういうグランドデザインがない。たとえば全東京を歩きなさい。

今、六本木から渋谷まで24時間走っているバスがあるんです。一年間、検討期間をやってみて、残すかどうかを決めないといけないと思うんですけど、おそらく黒字じゃないと思います。今度、多摩の方に行きます。どういう陳情が来るかと言ったら、昼日向、市民の足である都営バスが赤字だということでカットされて、1時間に1本どころか3時間に1本しか来ない。彼らから見ると、ふざけたことやってんじゃねえよ。そんな真夜中遊んでいるやつらのために24時間六本木や渋谷でバスを走らせる暇があったら、なんでウチのじーちゃん、ばーちゃんが病院に行こうというのにバスがない! と。こっち考えてくれてるんですか? って声が同じ東京の中からあがるわけですよ。バス路線1本だけ見て、一個のところだけ見てマスコミうけするとか、ちょっと話題になるとか。話題になるようなことで行政はやっちゃダメですよ。

だから、都バス全体で見たときに、私なら24時間走らせるバスを便利のいい都心でやるよりも、おじいちゃんおばあちゃんが病院に行くバスすらない、そっちにやったほうが同じ金を使うならいいんじゃないか? という意見があってもいいでしょう。そんな夜遊びする奴はタクシーに乗って帰ればいいだけの話であって。死なないですから。真夜中遊んでる人はそれだけ元気がいいんだから。病院行かないといけないじーちゃんばーちゃん、死んじゃいますよ(病院に)行かなかないと。どっちが大事なんですか? それが福祉世界一の街にするというと共に、何度も言うけども、「木を見て森を見ず」ではダメだと思ってます。交通体系について。それを含めて、とにかくグランドデザインがちまちま目先のことをやる。全体を見る。鳥の目で見てくれって。パーアと鳥が上に上がって全体を鳥瞰的に見て、あそこがおかしい、ここがおかしいとやるべきであって、みんなアリで動いていて、自分の周りしか見えてない。これを改めたほうがいいと思ってます。

東京だからこそ、水素エネルギー開発を推し進める意味がある

瀬口:ありがとうございました。先ほどの再生エネルギーのお話もございましたけれども、原発の問題についてもお伺いしたい。東京新聞の世論調査で、知事が当選された時に、原発の再稼働に反対する人が、知事選でもっとも投票した候補者は舛添さんだったんですね。

舛添:そうですか。

瀬口:そういう期待があるということを前提の上で、会場からも質問があったが、福島に象徴されるように、地方が大きなリスクを負いながら、東京都民に電力を提供している一方的な構造があったと。これ、今もあると。都知事として、こういう問題をどう捉えていくか? 伺いたい。

舛添:さきほども申し上げたように、やっぱり大きなエネルギー政策の転換を図らないといけない。それは、ただ電力だけの話ではなく、水素ステーションの話をしたのは、ガソリンから電池へという動きなんです。それと地産地消というか、事故の前から常に言ってきたのは、我々東京都民は福島や新潟や沖縄に足を向けて寝ちゃいけないんじゃないか。安全保障は全部沖縄にかぶせておいて、原発は向こう(新潟や福島)に。(エネルギーを)自分たちで作ろうじゃないかといったときに、もっとゴミや下水の利用によって電力、再生エネルギーを作ると。

東京人は東京の人間、自ら生み出したエネルギーでやろうじゃないか。6%ってのは低すぎるんですよ。せめて2割に。だから今、東京都の各局を競争させて、自分たちで何ができるか? もちろん、あと省エネですよね。省エネで浮いた分と、再生エネルギーを東京のゴミから作る。燃やせばできるわけですから。それを合わせて、絶対2割以上、オリンピックまでには確立する。そういういことを地道にやっていけば、我々が6%から20%まであげれば、現在は原発が稼働していませんけど、例えば14%分原発に頼らなくていいですから。大言壮語をするだけでなくて、できるところからやってくのは大事。しかし、東北の方々にはお世話になっているので、東北の地価の安い大地を使って、再生エネルギーで電力を生み出したい。再生エネルギーファンドが40億(円)ぐらいある。今募集中なので、ぜひ民間の方々にも投資をお願いしたい。そういうことをやっていこうと思ってます。

瀬口:関連して、水素について質問があったので伺いますけども、何から作るのか? 電気分解すると効率は4分の1に減る。石油から作ると石油精製所が必要になり軽油や重油の商品を増やすことになってしまうんじゃないかと。水素の製造と貯蔵、輸送っていうのはまだ未開発なんじゃないか? そういう疑問がありましたのでお答えいただきたい。

舛添:これは私は専門家じゃないので、正確にお答えできるかわかりませんが、すでに研究会をスタートさせて、海外の技術を使ってやるとか、いろんな方法を事業者の皆様方が開発中です。どういうふうに運んでくるか? 外から持ってくる、近いところでやる。それを含めてまさに研究をスタートしたところ。技術的なことは、私は専門家ではないんで申し上げませんけれども、私の直感でいうと『そこまで進んでるのか』と。つい先週ですが、水素エネルギーの研究会がキックオフした時に感じましたので、これを今から数回積み上げていってどういうことをやるか具体的な形でやりたい。

そのときに、国はできないと思います。国よりはるかに我々のほうが、できないというと語弊はありますけど、霞ヶ関の縄張り争いで、経済省はこう言う、環境省はこう言うでは、ちょっと待てよ。と言っている間にどんどん遅れていく。我々は東京都が「こうやる」と言ったらそれで一発で済みます。まさに水素エネルギー開発というのは、東京都が先行していくのにふさわしい内容だと思います。

学者は、批判ではなく100年先を考えた東京のデザインを提案してほしい

瀬口:ありがとうございます。観点を変えて、先日、日本創成会議が人口減少問題検討会で、豊島区もあがっていましたが消滅の可能性都市が2040年に523に増えている。逆に言うと東京に一極集中してくる結果じゃないか? というのがあると思うんですけど。つまり、東京だけ豊かになってしまっていいのか? という問題定義であると思うのですがいかがでしょうか?

舛添:同じところの研究成果で、人口減少率が1番激しいのは東京であるということも同時にあります。まずひとつは、人口が減少したら日本がダメになるっていう、その後ろ向きな考え方はやめましょう。3000万人ぐらいしかいなかった江戸時代に、世界でもっとも発達していた都会は江戸ですから。衛生から水から環境技術から何から含めて。

だから人口が多ければいいというものでもない。人口が少なければロボットの開発をやればいい。知恵を働かせる意味では、人口減少はヤバイとそんなに恐れる必要はない。人口のサイズに合わせた、ゆとりのある社会ができればこれほどいいことない。半減して、今住んでいるお家の2倍の広さにみんな住めるのはいいじゃないですか? だが、その富をどうして生み出すか? って話だけだと。

地域の格差の問題で、村や町が無くなるのは非常にショッキングではあるけれども、それはようするに47都道府県という中央集権、戦後、もっと言うと幕末、明治維新以来、ずーっと走ってきた路線をそろそろ展開しないといけないということに尽きると思います。東京が良くなるから地方が悪くなる。東京が悪くなれば地方が良くなる。そういうゼロサムゲームではなくて、東京もよくして地方もよくするってのが政治家の仕事だと思っている。

今のような状況で、東京が頑張らなきゃ日本全体が良くならない。機関車ですから、機関車として全力を上げてやっていく。その時に、ひとりでは大変だから、もう一両機関車を。「誰か手を上げてくれないか? どうだね大阪は。もうちょっと大阪、しっかりして下さいよ。関西からイノベイティブなものが全然生まれてこないじゃないですか? 最近は。」ってなことが言われないように、関西もがんばっていかないと。名古屋、有効求人倍率見て下さいよ。東京も高いですけど、名古屋(には)トヨタがありますから。すごいですね。有効求人倍率が高いところは、ものすごい元気です。(日本国内に)何箇所かあります。機関車を5両ぐらい増やしてくれれば、こっちの負担も少なくなる。そういった大きな国の形の変更は必要だと思います。

ただ、しょっちゅう選挙をやっていると、国政選挙含めて選挙の頻度が高かったら、腰を落ち着けて大きな国の形考える余裕が無い。参議議員の選挙改革だって、県をまたぐ選挙区を作るだけでもえらい騒ぎになってる。そうは言っても、ぜひ大きな国づくりみたいなことを、学者の人たちはそういう観点からやってもらう必要がある。東京都がやっていることにいちいちケチをつける政治家みたいなこと、政治家みたいと言っては悪いんだけど(笑)。やらないで、やっぱり天下国家を論じて「舛添さん。あんた忙しくて毎日都政に追われて大変だろうから、僕が代わりに100年後の日本のデザインを考えてみる、東京のデザインを考えてみる」っていうような学者がうまれてくれないかな、と期待しております。私も学者の端くれだったので、自分の反省を込めて言うとそういうことです。

この20年で日本から人材がいなくなった。だからこそ、外から誘致しないといけない

瀬口:もうちょっとだけ質問を。これは会場からなんですけど、東京をアジア、ひいては世界の金融センターに復活させたい、そういう構想がおありと伺っているんですけど。具体的なプランなどはあるのでしょうか?

舛添:人が集まらないとダメなのと、ヘッジファンド含めて新しい金融商品(を作らないと)。どの業界でも、携帯とかスマホにしてもそうだし、それこそ企業の名前を出すのあれだけど、ユニクロなんてのは、着てる服についてものすごいいろんなことやってますね。銀座に店を持ってるわけですから。じゃあ金融商品で売れるものを何か作ったことあるのかこの国は、って言ったらないですよ。せいぜいリートでJリートぐらいでしょ。そういう金融を開発出来るだけの人材がおりません。完璧にこの20年間で。

思い出してみてください。20年前証券会社入ったら22歳で100万のボーナスをもらったなんてニュースが出てた時代から、この人達はどこへ行ったのだろうと思うぐらいこの20年間で人材が消えてしまった。人材がおりません。優秀な人材を外から入れない限り無理だと思います。だから、高度な、とてもじゃないけどこれだけの金融の商品を開発出来る人は、世界にいないってような人をウォールストリートから、ロンドンから、シンガポールから輸入する。そういう高度人材が入れるような状況を整える。「なんで来ないんですか?」と言うと「もうちょっと英語がしゃべれないと。英語表記がないと……。」「では東京都はどんどん英語表記をしましょう。」「会社作りたいけど、1回、1回日本語でこんな分厚い書類作るのか?」「東京は全部英語でいいですよ。ワンストップサービスでやりますよ。どうぞ来てください」と。こういうことをやっていく必要がある。あとは、金儲けしたい人たちが集える場所を作る。それを日本橋にセンター作るとか。

大田区なんか中小企業が盛んなのはその町全体に集積があるから。隣の町工場に行けば、三軒となりに行けばすぐなんか作れるってことがいい。そういうことができて、世界の情報が集まるようにしないといけない。それにはやっぱり楽しい人生じゃないと集まりませんから。仕事が終わったあとに、ちょっと一杯飲みに行く。一杯飲みに行くだけじゃない。ちょっと芝居を見に行く。映画見に行く。おいしいもの食べに行く。だんだんそういうものが増えてきてます。そういう生活インフラもやりながらやっていくけれども、やっぱりこの20年のデフレ最大の影響は人材枯渇なんで、そこをやりたいと思ってます。

国政なんかに出る余裕はない

瀬口:最後にもう1点だけ。会場からなんですけど、東京都の問題の解決のために、次に国政に進出されるお考えはありますか? と質問がありました。

舛添:いや、今、毎日、この東京都の都政を朝から晩までやるのに精一杯なんで、まったくそういうことは考える暇もありません。そういう暇があれば、またこの幸町をどう開発するか? このプレスセンタービルをどう壊して新しいものにするか?(笑)。そっちのほうに発想が行くと思います。

小栗:はい、ありがとうございました。まだまだお伺いしたいことがございますけれども、時間になりましたので、これで記者会見終わりたいと思います。知事には今後とも定期的にこちらのクラブにお越しいただいてお話伺いたいと思います。

舛添:ありがとう。またぜひお招きください。

小栗:ありがとうございました。恒例の揮毫の方をご紹介させていただきます。この通りで「東京世界一」という風にお書きいただきました。知事、ひとことここにこめられた思いを。

舛添:もうその通りであって、選挙の公約でありますんで、6年後には必ずそうしたいと思ってます。皆様方のご協力もよろしくお願いします。

小栗:ありがとうございました。