昔は“甘さ”は珍しいものだった

この世界は全部ウォンカ(『チャーリーとチョコレート工場』の登場人物)の工場みたいなものです。天は私たち人間に、お菓子ビュッフェを味わうきちんとした味覚を授けました。

昔は、甘さというのは人間の食事において重要な役割を果たしていたわけではありませんでした。 世界の一部、例えば北極地方では、甘さはとてつもなく珍しいことだったのです。人々はいつも、ベリーやハチミツなど採取できる甘味を大切にしてきました。そういうものは大抵、季節限定だったりしますからね。

でも時代は変わりました。最近では暑い日に草刈から戻ってきて、甘いソーダを飲むことができますよね。リュウゼツランから人工甘味料、普通の砂糖などを使って甘くしたソーダです。

では、どうしてこんなに選択肢が増えたのでしょうか? 甘さというのは、一体なにから作られているのでしょうか? そして、ダイエットコーラはガンの原因になるのでしょうか? SciShowがその答えを教えてあげましょう。

みなさんには舌がありますね。その舌はたくさんの舌乳頭に覆われていて、一般的には味覚芽として知られています。このおかげで食事を楽しむことができるんです。

味覚芽は化学的受容器として食べ物の化学成分を脳が味として認識できるように電気信号に変換します。味覚芽は50~100ほどの味細胞の塊から成り立っていて、食べ物の分子と結合しているタンパク質が厳密にどの味なのかを調べる助けになるんです。

一般的に、人間は塩辛いものや甘いものを好み、極端に苦いものや酸っぱいものは避ける傾向にあります。その理由は多分、自然界ではそういった味は毒である可能性があるからかもしれませんね。生理学的には身体は甘い味と高カロリー、つまりは高エネルギーの食べ物を結びつけるんです。

この世界の多くの動物たちは甘いものを楽しんで食べますが、ネコ科の動物は例外です。ネコは甘さの受容器官を発生させる細胞がないために、砂糖の味がわからないんです。つまり、ネコは肉だけを食べるように進化してきたというわけです。なんだかかわいそうになりますね。

本物の砂糖と人工甘味料の違い

私たち人間は甘いものばかりを食べることはできないし、虫歯になったり、肥満の問題もあります。それで、私たちは単に甘さを味わえるだけではなく、ハチミツ、リュウゼツラン、メープルシロップ、果糖、グルコースや植物、果物、シュガーボールの白糖まで、作り出しているんです。私たちはそれを味わうことができて、それぞれの違いもわかりますよね。

ところで、本物の砂糖は僕たちの味覚芽を即座に刺激し、よい気分で満たしてくれて、なにも後味を残さずにだんだん消えていくものです。美しいプロセスでしょう。

でも本物の砂糖のマネをするのは気が狂うほど難しいんです。本物の砂糖の味を作ることは、食物の化学者にとっては聖杯を探すようなものですからね。

今のところ、私の意見ではいいところまで来てるとは思いますよ。だって、美しいパウダー状の砂糖を指で舐めてみると、ショ糖の分子は舌や脳に甘さの衝撃を与える役目を果たしていますからね。

一方で、消化酵素は代謝を始めて、ショ糖はあなたたちがニューイヤーダンスを踊れるようなエネルギーを与えてくれます。もしそのエネルギーを全部使いきれないなら、太るだけですね。

人工的な化合物は、天然の甘さと同じように私たちの味覚芽に影響を与えます。でも人工的な化合物の分子構造は天然のものとは違っているから、私たちの受容器官に攻撃的な感じで結びついてしまいます。

こういう甘さは優しく感じられるものではなくて、舌を叩かれるような感じになります。だから、サッカリンの味は普通のショ糖の300倍も甘いんです。それに、金属のような後味を感じることでしょう。

おもしろいことに、ほかの動物はこういった人工甘味料の味がわかりません。彼らの味覚芽の構造は私たち人間とは違うんです。どの人工甘味料も違った分子構造をしていて、それぞれ独自の方法で味覚受容器とくっつくわけです。それが印象的な味を生み出します。

だから一般的な夕食では、コーヒーを甘くするカラフルな袋に入った甘味料が用意されていますよね。こういう甘味料を作り出すほとんどの研究所の共通点は、カロリーもエネルギーも入れないということ。なぜなら、私たちの身体はそういったものを代謝することができないからです。そのため、いくつかの種類の甘味料は低カロリーですが異常なほどに甘いんです。例え代謝できたとしても、カロリーの報復は無視できません。

血糖値が上がらない甘味料ステビア

では、色分けされたこれらの包みを見てください。まず、白い包みはシュガーボールかショ糖の塊。

これはサトウキビやてんさいから不純物を取り除いて作られたものです。

サトウキビとてんさいのどちらから作られたものかを知るのは難しいですが、化学的には同じものです。

もしあなたたちが流行のカフェが好きなら、このグリーンの包みのステビアという新参者を目にすることもあるでしょう。

これはステビアという植物の甘い葉から作られたもので、パラグアイやブラジルなどが原産です。

ステビオシド化合物は自身の葉を甘くすることができ、単独で粉末状に精製することができます。私たちの身体はそれを代謝させることができないため、ステビアにはカロリーがありません。合成物質のようなものですね。

これはGI値においてとても低い数値を出すことになり、砂糖よりも300倍も甘いにも関わらず、血糖値を上げることがないということです。南米ではこのステビアを長い間使用してきましたが、アメリカ市場では新しいもので、FDA(アメリカ食品医薬品局)はごく最近それを食品添加物として認めたばかりなんです。

最古の甘味料サッカリンには発がん性が?

あなたたちがおじいさんとコーヒーを飲んでいる時には、テーブルにピンクの包み、サッカリンを目にするかもしれませんね。サッカリンは最も古い人口甘味料です。

これは1870年代後半に、あるコールタール誘導体を研究していた化学者によってたまたま発見されたもの。ある日、彼は手を洗うのを忘れて、夕食で自分の指が甘いことに気が付いたんです。このエピソードは語り継がれることになるでしょうね。テディ・ルーズベルトはサッカリンが大好きでした。砂糖が不足した第一次世界大戦の間はとても人気があった甘味料です。そして1957年にSweet’N Lowとして製品化されました。

もし、タブが付いた缶をお母さんが飲んでいる姿を覚えているとしたら、サッカリンを含むすべてのものに、がんを引き起こす可能性があるという警告ラベルがついていたことを覚えているかもしれませんね。

多くの研究所は1970年代に、ネズミの膀胱がんやそのほかの種類のがんについて、サッカリンとの関連性を研究しました。そして1977年にFDAはサッカリンを使用することを禁じようとしたんです。

しかし過去の研究結果には不備があると主張するダイエットフード業界のロビー活動により、議会は代わりに警告ラベルを付けることを提案し、人々がサッカリンを摂取することをやめさせるにはほど遠くなってしまったというわけです。

そして2000年にはそのラベルも取り除かれることになりました。今でも同じ物質を含んでいるので、摂取するかどうかはあなたたち次第です。

化学の実験中に発見された甘味料も

ピンクの次に来るのはブルーの包みですね。これはアスパルテームです。

1960年代、また別の化学者が新しい薬の試験をしている時に、なにげなく紙を掴もうと指を舐めたときに発見されたものです。柔軟な化学技術に感謝しなくちゃなりませんね。

アスパルテームは1980年代初頭にサッカリンの代わりに商品に使われるようになりました。砂糖よりも200倍甘くて、ほかの化合物とは違い、私たちの身体でも代謝ができるものです。アスパルテームはメタノールと同様に、アミノ酸、フェニルアラニン、アスパラギン酸の3種類の物質に分解されると、ほとんどカロリーがありません。

ついに最後の黄色の包みに来ましたね。これはスクラロースです。

砂糖から作られたもので、元々は「砂糖の味」として売り出されました。ショ糖を有毒化学薬品である塩素と反応させて作られたものです。スクラロースが作られたのもまったくの偶然でした。

1970年代のロンドンで、ある学生とそのアドバイザーが新しい殺虫剤を作っていた時に、有毒化学薬品と塩化物を砂糖水に注いで作られました。そして結果新しい化合物、テトラデオキシガラクトスクロースができたというわけです。

こんな逸話があります。その学生はでき上がったものをTest(テスト)するように言われたのですが、間違ってTaste(味わう)してしまって、それがすごく甘いということを発見したらしいです。それがスクラロースだったというわけですね。

スクラロースを作るためにはスクラロース分子と塩素原子のなかの酸素や水素を取り除きます。この時点でもう砂糖じゃないですね。でも砂糖の600倍も甘いんです。

これらの塩素原子は、私たちの身体がスクラロースを代謝させるのを妨害します。そのおかげでノーカロリーになるんです。そして同時に分子を熱に強くさせるので、焼くことも可能になります。

人工甘味料は安全なのか?

きっと人工甘味料に関連して聞いたことがあるリスクについて不安を感じている人もいるでしょう。そう、「人工甘味料は安全なのか?」ということです。

まず覚えておいてほしいのは、例えばスーパーでシリアルを買ったら、それはFDAにとって試験がなされ、合格をとった十分に安全な食べ物であるということ。例えプロセスのなかで有毒化学物質が使われていたとしてもね。

でも多くの人々がこういった商品について不安を感じています。そして、そういう商品が長い期間摂取し続けた場合の累積効果について計測されるべきだという批判もあります。新しい研究では、いくつかの商品は私たちが思うよりも悪いものではないという結果も出ています。

EUは2010年に研究機関を設立しました。そこでは妊娠中の女性がダイエットソーダを摂取すると未熟児出産のリスクが著しく上がるということを発見されました。ほかの研究では、ネズミの実験においてアスパルテームがさまざまな種類のがんと関連があることを調べています。

そのほかにも、ダイエットソーダを毎日飲むことはある種の肥満のリスクを増幅させることもわかっています。それが最近とても話題になっている健康への影響の1つです。脳は、その食べ物をどのくらい摂取したら体重増加を招くほどのカロリーになるのかを計算することができます。研究者たちは、人工甘味料がどのようにその脳本来の能力を妨げているのかを調べているんです。

先ほど、舌と脳は甘さをエネルギーを作り出すカロリーと結びつけると話しましたね。脳は身体がどのくらいのカロリーを必要としているのかを知っているんです。

だから身体は、「a.バナナは甘い、b.バナナはある程度のエネルギーがあって、このくらいの時間であれば身体を動かせるだろう」とわかるんだ。だから僕たちは甘いものを食べ続けなくて済むんです。

でもこういう説もあります。人工甘味料は脳との関わりにおいては、基本的には薄汚い嘘つきだ、と。だって人工甘味料は、ダイエットソーダだけ摂取することで、私たちの身体がカロリーと甘さを結びつけるのをやめてしまうんですからね。

すぐにまたバナナを食べて、脳はカロリーを低く見積もってしまい、またバナナを食べ続けたくなってしまうんです。

ある研究では、人工甘味料で甘くしたヨーグルトを食べたネズミは、砂糖で甘くしたヨーグルトを食べたネズミよりも体重が増加することを発見しました。それは人工甘味料が動物のカロリーが摂取されたかどうかを記録するという元々持っている能力を変えてしまうようなものです。

人間の脳は、甘さとカロリー、カロリーと食べ過ぎを結びつけるのに使われています。カロリーのない甘さは脳を混乱させて、食べ過ぎてしまう可能性もあるんです。私たちは舌は騙せますが、脳は騙せません。なにを摂取するかはあなたたち次第ですよ。どちらにせよ、節度を守ることが重要ですね。