モルモン教とはどんな宗教なのか?

だろめおん氏(以下、だろめおん):そもそも、モルモン教ってどういう宗教なのか。キリスト教系です。何が一番特徴的かっていうと、イエスは死んで3日後復活して、アメリカにいた、太古のユダヤ人が船を作ってもうアメリカに渡ってたと。

そこでイエスがやってきてそこでまたいろいろやったってことを信じている宗教なんです。

山田玲司氏(以下、山田):イエスキリストはニューヨークにいたことになってるかんね。

おっくん氏(以下、おっくん):いえ、青森ですけどね。

山田:あー、それもあるけどね(笑)。いろいろすいません(笑)。

だろめおん:主人公は布教するために学校に通っていて、学校一の秀才。一番布教の能力がある。「俺はどこに呼ばれるんだろう、どこに行くことになるんだろう? フロリダだったらいいな〜フロリダはディズニーワールドがある。パットパッドゴルフがある」って言ってすごい期待している。

で「君はウガンダ」って言われて。「ウガンダ……。ど、どこ?」っつってアフリカ。そうなんだあって。2人1組で、逆に一番ダメなやつと組まされちゃう。

で、一番ダメなやつは「やったー! ライオンキングみたい」って言ってて。行った先に最悪な情景が広がってて、でどうなるのって話なんだけど、ここで、まー、要はモルモン教ってばかだねーみたいな話が散々続くんですよ。

おっくん:はー。この時点でもう揶揄してるんだ。

山田:まあこの(ポスターの)笑顔でもうバカにしてるよね。

おっくん:あー、はいはい。なんだ、これ真面目なやつかと思った。

天に向かって神様にファックユー

山田:もうオープニング一発めから大爆笑。もう最高だよこれ!それでアフリカに行くんだよね。

だろめおん:あんまりオチを言っても仕方ないんですけど。続きを見てくださいって話なんですけど。着地につなげようと思うと、要するに宗教のことバカにしちゃダメじゃないですか。

おっくん:まあね、人が大事にしているものをね。

だろめおん:だからバカにしたまま終わったら、着地しないんですよそれは。

おっくん:はいはい。

山田:非常にリスキーだよね。

おっくん:ただのディスりで終わっちゃう。

だろめおん:かと言って、モルモン教って良いですねってなっちゃったら。

おっくん:それもまたね、うん。

だろめおん:じゃあどうすんだ。

おっくん:どうすんすか。

だろめおん:まあオチ言っちゃうことになっちゃうからアレなんですけど、それが、「なるほど!」ハッピーエンドではないんですけど、本当に「なるほど!」ってところに落ち着く。

山田:これは、まあざっくり言うと、アフリカは酷いことになってる。で、飢えてて病気が蔓延してて、周りがエイズだらけで、でどうしようもない。でもそれは何でかっつったら白人が来たからだって話になっちゃうわけ。

それで彼らは「ハッサ・ディーガ・イボワイ」っていう言葉で、元気になる呪文みたいに思っている。でそれって何ですか? って聞くんだよね。それで?

だろめおん:天に向かって神様にファックユー。

山田:だから、神様ファックって意味なんだよ。

おっくん:ほー。

だろめおん:要するに南無阿弥陀的に、これさえ唱えておけばって言ってるなかに、アメリカにイエスがいてみたいな話になって、何言ってんの?ってなっちゃう。

山田:で、現場でバタバタ死んでる、人が。仲良くなったら、うちの家族エイズだしこいつもエイズだしって話をして、そもそも……って話。そしたら神を憎んでるわけだよ。そこにこの2人が行くんだけど、1人はマザコンだからね。

1人でジュースも買えない、「ママー!」みたいになってるわけよ。その2人がアフリカの現実にボーンって投げ込まれて、持ってるのはブックオブモルモンだけ。持ってるのは布教の本だけっていう。追い込まれる。

だろめおん:でこの優秀なエルダー・プライス君が、自分の信仰をすごい揺るがされる。「あれ? 俺が一生をかけて信じていたものは本当だったんだろうか?」って。

おっくん:なるほど。

サウスパークは無心論者からの宗教家に対するラブレター

だろめおん:で、こっち的には最初っからあんまりよくわかってないから「それってどういうことなの?」って聞かれた時にスター・ウォーズネタとかを混ぜてデタラメに言っちゃう。

するとデタラメに言ったことがちょうどアフリカの環境に丁度スパッと入ってく言葉になっちゃった。

山田:ジャバ・ザ・ハットが食ってるフロッグだよなんていい方するんだよ(笑)。

だろめおん:これ本当かどうかわかりませんけど、アフリカにはエイズを治すためには処女の人とセックスをすれば治るという都市伝説がある。でもそもそも処女がいない。しょうがないから赤子をレイプすればエイズが治るんだっつたって。

おっくん:ほう。

だろめおん:そこら中の男が赤子を探し回ってはレイプしている。本当かどうかわからないけど、この劇の中ではそういう設定になっている。

おっくん:……ひどいな。

だろめおん:で、エルダー・プライスは「そんなことやっちゃダメですよ! だってこの本には絶対ダメって書いてますよ」「え? じゃあその本にはエイズのことは何て書いてあるんだ」って「聖書にエイズのことは書いてないけど……」ってなって。(エルダー・カニングハム)が書いてるって言って。

「ジャバズハットが食ってたカエルがあるけど、あのカエルをレイプすれば治る」って言うの。で「あ! そのカエル!」って言って「これかー」って。

山田:そこで話がすり変わって。

おっくん:なんか怖いですねー、おもしろいけど。

だろめおん:でこっち(エルダー・プライス)がどんどん「あー、俺が信じてたのはダメだったんだ、嘘だったんだ」ってなってく。で見てる方も「モルモン教ってバカねー」ってなってくんですよどんどん。

おっくん:はー。これちょっと遠藤周作に見せたかったですね。

山田:この2人は結局、神ってなんだって話になってく。

おっくん:同じテーマだ、『沈黙』と。

山田:そして、俺たちにとっての神っていう着地にいくわけ。そしてそれはモルモン教をバカにするわけでもなく、アフリカをバカにするわけでもなくキリストをバカにするわけでもなく、独自の着地を探して降りてくんだけど。

だろめおん:マット・ストーンは自分のことを無神論者って言ってるんですけど。無心論者からの宗教家に対するラブレターだっつってんですよ。

山田:そう。でモルモンの人たちは実際「私たちはそういうラブレターを受け取った」っつって感謝の手紙を返してる。彼らが。