優秀なメンバーを活かせるフィールドを作る

次に、具体的なプロジェクトの回し方ですけれど、「実際にどういうメンバーで、どのくらいでやりましたか」「大きく仕様を変えましたか」という話がありました。

前提条件として、ソウゾウは本当に、ドリームチームというか、優秀なメンバーばかりです。なので、私はディレクションですけれど、「ついてこい」というリーダーではなくて、みんなが働きやすい、レバレッジを効かせやすかったり、幅を出しやすかったりするフィールドを作るようにしたいと思っています。

メルカリアッテリリースまでのステップ

具体的なステップとしては、2015年10月から始まって、12月に一回初回サブミットをして、2016年2月に招待制リリース、3月に正式リリースをしました。

まず、キックオフのときに、コンセプトとか、松本の作った中期計画の合わせをしています。この段階で、1ヶ月くらいで、基本機能の仕様検討をしました。そこで、ペーパーモックがだいたいでき上がったので、それに合わせて、機能の全体最適化。それが見えてくると、詳細な機能にも全部落とせるので、そこで詳細な機能に落としていくということもしました。

それから、招待制リリースをして、実際にユーザーインタビューなどで使っていただくと、やはり少し想定と違ったり、見えてきた部分があるので、そこで優先度を再考したり、今後半年でどういうことをしていきたいかということを、検討しました。

メルカリの立ち上げも担当したメンバー

そのときの体制が、こういう感じですね。iOSの大庭、APIの鶴岡は、メルカリ立ち上げのメンバーなので、本当に安心して任せられる、頼りになるメンバーです。ここの2人が言っていたインターンメンバーですね。

次に、井上からいろいろ説明してもらえると思いますが、彼は仕様からなにから、超頼りになるデザイナーです。

10月から11月には、コンセプトを明確化して、共通認識を作るというかたちで、モックまで完成させる感じですね。

そのときのポイント、松本からも話がありましたけれど、slackとかでコミュニケーションする企業が多いと思うんですが、1つの机で、口頭でコミュニケーションをとることを大事にしながら、実機で、prottをスマホで確認するということをしました。

あとは、共通言語として、すべての機能の言語を合わせて、仕様のときに認識を合わせてずれないようにする。みんなで初期から検討するということをしました。あと、仕様の背景を説明することで共通認識を作っていくということを気をつけました。

「チャット感が大事」優先順位の付け方

例えば、コンセプトが決まっていくイメージなんですけれど、一般的にはファーストビューに詳細な説明とかが入るべきだと思うんです。でも今回は、チャット感が大事。じゃあ、ファーストビューに詳細が入らなくても、下のほうにして、チャット感が出ればいい。そこよりもチャット感を意識しよう。こういうふうに、どこに優先順位をつけるのかというのが、わかっていきます。

12月から3月に向けては、詳細を詰めていく感じです。この辺から、デザイナーも仕様書を書いたり、エンジニアも、前提条件がわかっているので、もう自由にやってくださいという感じで、どんどんディレクターが楽になっていく時期に入っていきます。

これが、12月から3月の体制なんですけれど、みんなプロフェッショナルでポジティブで、コンテンツが好きなメンバーです。よく「分担どうしていますか」質問されるんですが。

この辺(右上)が、iOSのメンバーです。この辺(右下)のメンバーはAPI書けます。この辺(下)のメンバーはフロントエンド書けます。この辺(左)のデザイナー含めて企画書書けます。みんなマルチスキルで、垣根なくみんなでやろうということを私たちは大事にしています。

エリアより位置情報起点を重視

質問の3個目に「大きく仕様を変えましたか」というものがありました。変えました。

先ほども出ましたけれど、エリアではなく、位置情報起点が大事だと。今、スナップチャットで情報が消えちゃうとか、最初に加工しなくていいとか、情報や記録を制限されることで、今までわからなかったけど、こういう新しい気づきとか、それによる発見とかがあったりするんだということもあり、「位置情報起点」自分を起点にするということが大事かなと、あえて情報を最初に絞っています。

あとは「メルカリID」。今、メルカリアッテに登録すると、スマホ内にメルカリのアプリがあると、まず「メルカリで始める」という画面が勝手に立ち上がるんです。それでスマホのなかにメルカリアプリがダウンロードされているかどうかを自動的に判別するので、こういうふうになっています。

松本からもありましたけれど、メルカリIDとして、プラットフォームとしてやっていくということで、優先順位をあげました。

ですので、結論として、仕様変更がありました「再発防止はどういうふうにしたらよいか」という話もあったんですが、正直、変わってしまうことはあると思っていて、「大きい仕様だから変えない」ということが一番よくないと思っています。

そのときに、「こういうものが大事。だから今回変えるんだ」という話をすることでメンバーの納得感が得られれば、変えることがあっていいんじゃないかなと思っています。

日本で一番成功の条件がそろっている

今後についてですが、クラシファイドの文化自体を根付かせることが大事じゃないかと思っています。今までにはないものなので、それを作るってすごくハードルが高いことだとも思うんです。

誰もがアプリ内で気軽に募集できたり、助け合いができたり、仲間ができたり、ということが大事なんじゃないかと思っています。

「(文化をつくることは)大変だよね」と思うんですが、ソウゾウならできると思うんです。

日本で一番、必要な条件がそろっているかと思っています。

メルカリのユーザーであったり、C2Cのユーザーサポートなど、こういうところがあれば、ハードルは高いけれど、やっていけるんじゃないかなと思っていて、実際にリリースした時の反応も、想定通りでした。

お客様から「引越しの時に大学生が手伝ってくれて、2人で汗だくになって運んで、ハイタッチして絆が生まれた」とか「手渡しなのがいい」とか「新しい友達できました」とか(声をいただいて)。

「よかったな。これからもこういう事例を増やしていきたいな」と思っています。

今後は、安心・安全とか、アプリ内の評価とか動画とか、決済とかいろいろあるんですけれど、そういうことをしながら、メルカリIDを中心に、発展していきたいと思っています。

最後、「2年後には、誰もがアプリ内で気軽に募集ができて、助けあいのコミュニティや仲間ができることがあたりまえになるといいな」と思っています。

以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)

社内レビューを受けて位置情報起点にシフト

司会者:それでは質疑応答に入らせていただきます。なにか質問のある方いらっしゃいますでしょうか。

質問者1:ありがとうございました。リリース前に、社内でベータテストをされたと、うかがったんですけれど。いわゆる、ドックフーディングみたいなことを、どれくらいの方々を対象に、どれくらいの期間やったのか。それによってどういう学びがプロダクトに対してあったのかを、教えていただけたらと思います。

田辺:社内は、何人くらいかな。回答してくれたのが、80人くらいで、そのときはまだ位置情報が、エリアで設定されていたんです。何県、何県、というように。

もともと私たちは、位置情報起点でエリアを絞っちゃうと、投稿数が少なくなって、離脱しちゃうんじゃないかと思っていたんですけれど、やっぱり自分の近くかどうかが大事ということが、そのレビューでわかったので、そのタイミングで、タイムラインが県ベースだったのを、位置情報起点に変えたというのが一番大きかったと思っています。

質問者2:お話ありがとうございます。アプリを触っていると、「これも買いたい、これも買いたい」という感じになるんですけれど、これはもともと、受動的に情報を得ているユーザーをイメージしているのか、能動的に情報を得ようとしているユーザーをイメージしているのか、というのを……。

田辺:それでいうと、まず検索がないので、受動的なユーザーをイメージしています。なぜならば、メルカリのタイムラインがあると思うんですけれど、メルカリにログインするユーザーって3パターンあって、まず、目的があって検索するユーザー。もともと目的があるので、なにかを検索履歴に残して、常にそれを使っていくという継続的な使い方をするユーザー。

もう1つ多いのは、メルカリのメインのタイムラインをダラ見しながら、そこで気づいたところから検索していろいろ見たりするユーザー。つまり、ダラダラ見ることがおもしろいと思った人がいるので、それを活かしたいと思って。あえて情報を細かく削ったりせずに、タイムラインを見てもらうことをコンセプトにしています。

質問者2:ありがとうございます。

検索機能を入れなかった理由

質問者3:先ほど、ドックフーディングのお話があったと思うんですけれど、ドックフーディングをやられて、ベータ版やられて、リリースというかたちになったかと思うんですが、その段階で、次の段階に進もうと思ったトリガー、なにがきっかけで「じゃあ、みんなに公開しよう」となったのかを教えてください。

田辺:基本機能ができていて、これさえあれば基本的な自分たちやりたいことが伝えられるかな思っていました。評価とか安全の部分とか、動画とか、いろいろ考えているんですけれども、そこはユーザーの反応を見たうえで優先順位を決めようと思っていたので、基本的な、投稿とか、募集とか、いいねとか、それができた時点で、いったんユーザーに聞く、そこで判断するというのが大事だと思っていたので、早い段階で出したというのはあります。

質問者3:さっきおっしゃっていた、社内に聞いたら、やっぱり身近なところ、現在地起点にしたほうがよかったということなんですけれど、それを直して、次に社内ではなく、ベータ版として外に聞こうとしたその判断軸……。

田辺:社内に聞いてよさそうだったので、だったらもう次はユーザーに聞こうってなりますね。

質問者3:なるほど。逆に、これはあとでいいやって思ったものとかはありますか。社内の人に言われたけど、これはユーザーに試さないとわからないからみたいな。

田辺:検索とかですかね。今は検索機能がないんですけれど、まずは自分の近くしか情報が見れないというところが今までにないサービスなので、逆に検索がないことで、「身近な情報って普段気がつかないけど、意識的に表示させてないことで身近を意識する」という感覚を持って欲しいということがあったので。検索を入れると、私たちの意図、最初にやってもらいたい意図とは、外れてしまうので(検索機能は)入れなかったですね。

質問者3:共通意識や理念があって、それに一致するかどうかでやっていった?

田辺:はい。あとは、もともとその位置情報のところで自分たちも引っかかるところがあって、背中を押してくれたというのがありますね。インタビューで。もともと想定していた通りの反応で、唯一自分たちで引っかかっていた部分を言語化してくれたのがインタビューで、その引っかかっていた部分だけ直して、出したという感じです。

「あえてターゲットを絞るのはナンセンス」

質問者4:お話ありがとうございました。先ほど、ペルソナを設定していないっておっしゃっていたんですけれど、とはいえやはりマーケティング上、ユーザーペルソナをある程度決めたほうが、基本的にはサービスを新規でやるときには必要かなと思っているんです。メルカリさんってもともとのサービスはすごく伸びていて、それで新たなサービスを出して新規開拓をしていくと思うんですけれど、具体的にこれからのマーケティングの施策など、仮にペルソナを仮定、設定したとしたうえで、公開できる範囲で教えていただけたらなと思います。

田辺:それで言うと、ペルソナは自分ですね。なぜならば、自分がプロデューサーですし、今までマス向けのサービスをやっていたし、自分が欲しいものを作るというところを選んでプロデューサーをやっているんですね。なので「農園ホッコリーナ」とか「おかあさんといっしょ」のときも、基本自分をペルソナにしました。

メルカリのときも、自分が欲しいかなというベースが、ロジックの部分でもニーズになっているので。DeNAのときも、「農園ホッコリーナ」って、今までほとんどソーシャルゲームに女性のプロデューサーがいなかったなかで、女性だからとか、積み上げが大事とか、私はぜったいガチャ入れなかったんですけれど、自分ベースでなにがいいかという軸を考えて、それを持ってやりました。自分が一番、今のサービスを使いたいと思っていますし、ユーザーとしても使っていますし、だいたい自分が使いたいものはみんな使ってくれるかなって思っています。

質問者3:まずはとりあえず使いたいものを作っていくと。

田辺:そうですね。資料にあったとおり、(ターゲットは)マスなので、逆に今のマス向けのアプリのなかで、あえてターゲットを絞るのはナンセンスだと思いますね。

質問者3:わかりました。ありがとうございます。

サポート体制はどうなっていますか?

質問者4:ありがとうございます。位置情報で現在地周辺を絞るということだったんですけれども、懸念点として、投稿が絞られてしまう。結局、どういうものが投稿されているかということにユーザーは興味があると思うんですけれど、この立ち上げ当初で、投稿が少ないところで、どうやって増やしていったのかなと。

田辺:投稿を増やすということですか?

質問者4:投稿が、コンテンツですよね。なにかあげたいとか売りたいとか、いっぱいあるほうが、ユーザーとしては楽しいと思うので、どうやって増やしていくのかなと。

田辺:初期の段階で言うと、今、タブが3つになっているんですよね。「手渡しアイテム」「サービス」「仲間募集」というかたちになっているんですけれども、その絶対量が「手渡しアイテム」が一番多いと思ったので、それをタイムラインのファーストビューになるようにしています。

メルカリにユーザーがいるので、メルカリIDと連携したこともあって、初期はメルカリのユーザーから流してもらうというところで、まずそこで連携して「手渡しアイテム」を増やすということをしました。

質問者4:そこで、広告とか、なにか流れるような施作をしたんですか?

田辺:したんですが、どちらかというと、まだ一気に流すというよりは、初期のユーザーがどういう反応するかを見ているという段階なので。基本の機能を見ながら、次の優先順位を決めて、基本的な、ここまで入れたらいいなという私たちのラインがあるので、その段階で、一気にアクセル踏もうと思っています。

司会者:最後にもう1つだけ質問受け付けたいと思います。

質問者5:お話ありがとうございました。最近すごく触っているんですが、若い子とかで「渋谷で17歳です、これからご飯食べに行きましょう」という投稿もけっこう見ます。人数が少ないなかで、カスタマーサポートのCSの体制はどのようになっているんですか?

田辺:メルカリと共通の体制をとってます。メルカリのCSを立ち上げたメンバーがアッテのCSを立ち上げていて、外注で24時間目視の監視もしていますし、メッセージについても24時間すべてのメッセージを見ています。そういった投稿自体が上がることは確かにあります。ただそれは、メッセージの段階ですぐ削除されていると思っています。

そういう投稿もあったので、タイムラインのところに「仲間募集はこういう基準ですよ」と、悪気なく「ご飯食べに行きましょう」と書くユーザーもいるので、そこの位置付けを書くということを、アプリのなかに入れています。

ありがとうございました。